波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

泡粒の行方   第45回

2016-02-02 07:26:33 | Weblog
親会社のスタッフと組んで仕事が出来ることに力を得ることが出来た。課長を中心に綿密な計画と仕事の割り振りが出来ていく。今まで一人で仕事を進めることになんとなく自信と勇気が必要であったが今回はチームとしての仕事だ。
欽二はこのことで新しい世界への一歩を踏み入れていたのだ。このT者の新工場建設に伴う証券をとるかとられるかはこの事業を進める上で大きな信用が得られるか、負け犬になるかの瀬戸際である。T社の3名の視察ミッションは始まった。広島の同業メーカーは先発であり、開発チームも充実していて立派な工場もある。そして当社はまだこの事業が始まって数年し語っていないことと経験者も技術者も未熟である。それは歴然としていた。しかしそのままありのままに見てもらうこととした。自慢は親会社の資金で出来た新しい工場だけであった。
視察が終わり原料の購入のメーカーが決まるときが来た。思いがけず当社への指名であった。
このことが業界に知られて知名度と信用が増した。会社としても仕事が一段と増えてやりやすくなった。それにしても何故当社が指名されたのか、後日分かったことだが、確かに技術と経験は他社に劣ることははっきりしていた。ただ其の新鮮な何もよく分からない素人さが、T社としては自分の希望をそのまま受け入れることと繋がると見て不足の技術はT社が補いやすいと感じたところであったらしい。それにも増して親会社のバックの信用も大きく、当社を支える力を感じて安心したらしい。
この仕事で同業市場での信用はつき、それからの仕事は順調に進んだ。それほど大きな市場では二ので程なく前者の口座を持ちにほんの主な会社との取引が出来るようになった。
当社だけならそれで満足であり、採算もとれて十分であったが、親会社はそれで満足していなかった。
当時日本のメーカーは景気の高騰と人件費の負担で採算が悪くなり、かねて景気の上昇を見越して買い進出を考え始めていた。