く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<カラタチ(枳殻、唐橘)> 白秋の童謡に歌われた純白の5弁花

2013年04月12日 | 花の四季

【枝には鋭い棘、ミカン類の台木に】

 「からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ」。ご存知、童謡「からたちの花」の1番目。福岡県柳川市で幼少年期を過ごした北原白秋は大正13年(1924年)郷里でよく見たカラタチを思いながら、この詩を作って児童雑誌「赤い鳥」に発表した。詩にメロディーをつけたのが山田耕筰。藤原義江が東京・帝国劇場で歌ってお披露目するや大ヒットしたという。歌の通り4~5月ごろ、真っ白な5つの花びらからなる直径3cmほどの清楚な花を咲かせる。

 中国原産のミカン科の落葉小木で、8世紀ごろ、遣唐使が持ち帰ってきたといわれる。カラタチの名は「唐橘」が転訛したものらしい。万葉集にもカラタチを詠んだ歌が1首ある。「からたちの茨(うばら)刈り除(そ)け倉立てむ 尿(くそ)遠くまれ櫛つくる刀自(とじ)」(忌部首)。カラタチを刈り取って倉を建てるから用を足すのは遠くでやってくれ……。あまり上品な歌とはいえないが、当時の庶民生活の一端を垣間見るようでおもしろい。

 「からたちのとげはいたいよ 青い青い針のとげだよ」「からたちは畑の垣根よ いつもいつもとおる道だよ」(2~3番目)。長く鋭い棘(とげ)は葉や枝が変形したもの。棘を持つため外敵侵入を防ぐ生垣として活用されてきた。京都・東本願寺の飛び地庭園「渉成薗」(国の名勝)は「枳殻(きこく)邸」の別名を持つ。これは造園当初カラタチが生垣として植樹されていたことに由来するそうだ。

 「からたちも秋はみのるよ まろいまろい金のたまだよ」(4番目)。実は直径3cmほどだが、酸味が強く種も多いため食用には向かない。ただ、緑色の未熟果を輪切りして乾燥したものは「枳実(きじつ)」という生薬になる。整腸や利尿、去痰、しもやけなどに効き目があるという。カラタチは寒さに強く実を多く付けるため、ミカンやキンカンなど柑橘類の台木として活用される。

 新緑はアゲハチョウの大好物。だが、カラタチも普段見かけることが少なくなってきた。童謡「からたちの花」は歌われているのだろうか。カラタチといえば、年配の方にはこの歌のほうが馴染み深いかもしれない。島倉千代子の「からたち日記」(西沢爽作詞、遠藤実作曲)。「こころで好きと叫んでも 口ではいえずただあの人と……」。この歌で紅白歌合戦に出たのが昭和33年(1958年)だから、あれからもう半世紀以上! 「からたちの花を守ると鋭き棘か」(成瀬櫻桃子)。

コメント (1)
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