く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<カタクリ(片栗)> 〝春の妖精〟林野の下に清楚な花の群落

2013年04月07日 | 花の四季

【万葉集にはカタカゴ(堅香子)として登場】

 ユリ科で、九州を除く全国の山地や丘陵地に群生する。花期は3~5月。落葉の間から花茎を伸ばし、陽光が差すと紅紫色の6枚の花弁を反り返らせて咲く。その可憐な姿からニリンソウなどとともに〝春の妖精(スプリング・エフェメラル)〟と呼ばれる。その蜜を求めて〝春の女神〟ギフチョウが舞う。

 カタクリは芽が出て花が咲くまでに7~10年の長期間を要する。地上に顔を出すのは春のわずか2カ月間ほど。その間に光合成を行って栄養分を球根の鱗茎に蓄え、その後は翌年の春まで眠り続ける。漢字の「片栗」は鱗茎の形が栗の片割れに似ていることに由来するという。その鱗茎を砕き水にさらして片栗粉を作る。ただ最近はカタクリに代わって、澱粉の性質がよく似たジャガイモから作られる。

 古名は「カタカゴ(堅香子)」。万葉集にも大伴家持が詠んだ歌が残る。「もののふの八十(やそ)をとめらが汲みまがふ 寺井の上の堅香子の花」。カタクリを市や町の花に定めた自治体は多い。栃木・佐野、長野・大町、新潟・魚沼、兵庫・丹波、岡山・美作……。その中で富山県高岡市だけは「カタカゴ」の名で指定している。高岡には家持が越中国司として5年間滞在した。

 カタクリは多くの都道府県で絶滅危惧または準絶滅危惧種に指定されている。国内の群生地でたまに白い花が見つかるが、これはアルビノ(色素不足)によるらしい。自生種とは別に北米で生まれた園芸種の白花カタクリ(品種名「ホワイトビューティ」)も流通している。黄花西洋カタクリ(パゴダ)や紫・薄黄色の2色咲き(佐保姫)など変わり種のカタクリも出回り始めた。

 全国の群生地では花期シーズン「かたくり祭り」が開かれる。仙台市の大国神社山野草公園、福井・大野市の矢ばなの里、茨城・筑波山頂などで現在開催中。兵庫・丹波市氷上町のかたくりの里は7日に開く。青森・湯の島、長野・岡谷市の出早公園、広島・府中市などでは4月中旬から下旬にかけて開催の予定。関西でも葛城山や金剛山の群生地がまもなく見頃を迎える。「片栗の花むらさきを秘め通す」(井沢正江)。(写真は愛知県在住のE・Sさん提供)

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