【沖縄諸島に分布、別名「オキナワキョウチクトウ」】
奄美~沖縄諸島から中国南部、東南アジアまで熱帯、亜熱帯地域に分布するキョウチクトウ科常緑高木。海岸など水辺に多く自生する。枝や葉などを傷つけると出る白い乳液は有毒。触れると皮膚に炎症を起こし、口にすると腹痛、嘔吐、痙攣などを起こす。和名の「ミフクラギ」も樹液が付いた手で目をこすると腫れるという沖縄方言「ミーフクヮーギー」に由来する。
キョウチクトウ属とは別のミフクラギ属だが、樹冠を覆う白い花はキョウチクトウの白花によく似る。そのため「オキナワキョウチクトウ(沖縄夾竹桃)」という別名で呼ばれることも。花期は晩春から秋まで長い。葉は光沢のある深緑色で長さ20cm前後。花後に直径5~10cmほどの卵大の果実ができ、熟すと緑色が赤くなる。中は繊維の多い木質。海水にプカプカと浮き海流に乗って種子を広く散布する。
有毒成分はアルカロイド系の「ケルベリン」など。インドなどに多いオオミフクラギは自殺や毒殺に用いられることが多いため英名で「自殺の木」と呼ばれる。沖縄ではかつてミフクラギの毒性を利用して毒流し漁が行われたという。また種子はすりつぶしてネズミ駆除のための毒団子を作ったそうだ。熟した実はグミや小さなマンゴーのようで一見甘くておいしそう。2013年9月、那覇市の公園でこの実を口に入れた1歳児が救急搬送され入院したことがあった。
ミフクラギの学名は「セルベラ・マンガス」。属名「セルベラ」はギリシャ神話に登場する3つの頭を持つ冥界の番犬「ケルベロス」に由来する。この犬は白い毒を吐くという。種小名「マンガス」は「マンゴーのような実」を意味する。沖縄では成長が早く花が美しいこともあって街路樹や公園などによく植栽されている。名護市の「東江のミフクラギ」、大宜味村の「喜如嘉のミフクラギとフクギ」(2本の木が寄り添うように立つ)は「沖縄の名木百選」にも選ばれている。一方で、公園などを管理する市町村などは立て看板を設置し「実や樹液を絶対に口に入れないで」と注意を呼びかけている。(写真はいずれも沖縄県うるま市の「ビオスの丘」で)