く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

〈宝山寺〉 洋館風客殿「獅子閣」を特別公開

2024年08月19日 | メモ

【螺旋階段、色ガラス、漆喰壁┄和洋折衷】

 この建物を単独で見たら、仏塔伽藍の一つとは到底信じられないかもしれない。生駒山の中腹にあり「生駒聖天」として知られる宝山寺(奈良県生駒市)の「獅子閣」。完成からちょうど140年。国の重要文化財に指定されているその建物が8月中、日曜日ごとに特別公開されている。

 獅子閣は山門を入って本堂手前を右手に曲がった奥にある。2階建て寄棟造り(玄関は切妻造り)で、まず目を引くのが1階のアーチ状ガラス窓と玄関上部のベランダ。外観は洋館風だが、瓦葺きや漆喰壁など和風の伝統技法も見られる。

 宝山寺の客殿として1884年(明治17年)に建てられた。西洋建築として有名だった「鹿鳴館」の完成の翌年に当たる。明治初期、文明開化を象徴するものとして、洋館をまねた“擬洋風建築”が各地に建てられた。獅子閣もその一つ。横浜で西洋建築を学ぶため3年間修業を積んだ吉村松太郎という宮大工が設計し棟梁を務めた。

 玄関を入ると、板張りの洋室が広がる。すぐ右側には木製の螺旋階段。漆喰磨き仕上げの真っ白な壁面にアーチ状の扉と窓があり、扉に嵌め込まれた赤青緑の色ガラスが室内を華やかに彩る。左側には6畳敷きの日本間が2部屋。能や狂言に材を採った襖絵はいずれも江戸後期の絵師、土佐光孚(みつざね、1780~1852)の作。

 2階には10畳間が2部屋あり、上の間には床の間や違い棚が設けられていた。襖を飾るのは1階とは趣を異にする花鳥画や山水画(筆者は日本画家真嶋北光?)。天井は碁盤目状に縦横組み合わせた格(ごう)天井。ベランダからは眼下に本堂や拝殿などの堂塔を望む。

 獅子閣を後に、久しぶりに多宝塔、太師堂を経て奥の院へ。無数のお地蔵さんたちが出迎えてくれた。家族とみられる3人の男性が仏様をたわしなどでゴシゴシ磨いていた。ご苦労さまです。

 残念だったのは多宝塔などの賽銭箱に「信者様へ」と題し、こんな一文が掲げられていたこと。「賽銭窃盗事案が夜間に頻発しております┄┄夜間の賽銭献上は門衛に預けて頂きます様、お願い申し上げます」。奥の院の大黒堂には「酒⋅塩⋅穀類をまく事 厳禁します」という貼り紙もあった。

 参道で羽を休めている大きなガに出合った。羽根の目玉模様からたぶんヤママユ。虫好きには憧れの昆虫の一つだ。成虫の寿命は僅か1週間から10日ほど。この間に交尾し産卵する。相手は見つかったのだろうか。

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〈奈良市美術館〉 永井秀幸「とびでる!錯覚3Dアート展」

2024年08月15日 | 美術

【トラのイラストが手のひらを貫通!】

 奈良市美術館(「ミ⋅ナーラ」5階)で3Dアーティスト永井秀幸さんの作品展「とびでる!錯覚3Dアート展」が開かれている。平面のスケッチブックに描かれた絵が立体的に飛び出して見える作品が40点ほど。中には手のひらや甲を貫通しているように見える不思議な作品も。25日まで。

 

 永井さんは和歌山県出身で1991年生まれ。今は大阪市在住で関西を中心に各地で作品展を開いている。著書に『とびだす!3Dアートえほん ひみつのちかしつ』など。作品群は大きく①L字アート②貫通アート③平面アート――の三つに分かれる。

〔L字アート〕見開きのスケッチブックをL字型に置き、濃淡や陰影をつけながら描いたもの。筆記具は黒鉛筆のほか色鉛筆やクレヨンも使用。

〔貫通アート〕二つのイラストのパーツからなり、その一つを手のひらなどに乗せて合わせるとまるで貫通しているように。自由に手に取って体験できる。

〔平面アート〕これらも1枚の紙に描いた作品だが、陰影などによる目の錯覚で立体的に浮き上がって見える。

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〈東大寺二月堂〉 参拝客でにぎわう「功徳日(およく)」

2024年08月10日 | 祭り

【1日で4万6000日分参拝のご利益! 福引の楽しみも】

 8月9日は1年の中でも特別な観音様の縁日「功徳日」。この日参拝すると、なんと4万6000日参拝したと同じご利益があるという。十一面観音菩薩像を祀る東大寺二月堂もこの日が「功徳日(およく)」。朝早くから参拝客でにぎわった。

 4万6000日は約126年分に相当する。この日数はどこから? 一説ではお米1升が約4万6000粒であることから来ているという。加えて一生分の功徳があるとして「1升=一生」とかけたともいわれている。「およく」は「お浴」で「功徳に浴する」ことを意味する。

 参拝客にとっては福引もこの日の楽しみの一つ。灯明料(1口500円)を納めると、1口につき1枚の福引券がもらえる。午前8時半ごろ、二月堂の石段を上ると、福引引替所の前に列ができていた。

 引替所の中をのぞくと、様々な景品が三方の壁面にびっしり。正面の上段には大きなテレビや東大寺管長の色紙などもあった。福引券を1枚入手。直前の男性はたこ焼き機が当たった。もしかしたら正面の┄┄。手に入ったのは可愛いふきん1枚だった。

 二月堂に隣接する無料休憩所「北の茶屋」もにぎわっていた。入り口そばで販売していたのは名物の「およく餅」。その向かい側にはみたらし団子を買い求める客の行列ができていた。かき氷やそうめん、冷やしぜんざいなども販売。どれも100円と格安だった。

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〈奈良市写真美術館〉 「観仏三昧」3人の仏像写真約120点が一堂に

2024年08月08日 | 美術

【工藤利三郎⋅入江泰吉⋅永野太造】

 入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良市高畑町)で、奈良を拠点に仏像写真を撮り続けた写真家3人の作品展「観仏三昧」が開かれている。その3人は工藤利三郎と入江泰吉と永野太造で、それぞれ約40点ずつ、合わせて120点弱の作品が並ぶ。9月1日まで。

 タイトルの「観仏三昧」は奈良を愛し度々訪れた歌人、會津八一が宿泊した旅館「日吉館」に贈った扁額の言葉。「仏像の研究と鑑賞に専心する」という意味が込められているそうだ。

 工藤利三郎(1848~1929)は明治中期から大正時代にかけて活躍した古美術写真の草分け的存在。出身地徳島から転居した奈良の猿沢池畔に写真館を開業、19年かけて写真集『日本精華』全11巻を刊行した。奈良市写真美術館が所蔵するガラス原板は国登録有形文化財になっている。

 工藤が明治後期に撮った写真には戦後に修理される前の文化財が多く含まれ、歴史的資料として高く評価されている。展示作品にも腕や手首が欠けた興福寺の阿修羅像、光背が不揃いな法華寺の十一面観音像、解体修理前の法隆寺の中門などが。工藤は奈良を拠点に東北から九州まで足を運んだ。中尊寺金色堂の写真も展示中。

 入江泰吉(1905~92)が仏像写真を本格的に撮り始めたのは終戦翌年の1946年から。進駐してきた米軍が賠償物資として文化財を接収する、との噂話を耳にしたのがきっかけだった。展示写真には東大寺法華堂⋅不空羂索観音像の宝冠取り付け作業を終戦直後に撮影したものも。宝冠は1937年に盗難に遭い、その後戻ってきていた。1948年秋に撮った法隆寺⋅金堂壁画の模写風景もある。その翌年1月に起きた金堂火災について入江は「まさに青天の霹靂」と書き残している。

 永野太造(1922~90)は1952年に「奈良国立文化財研究所」が設立されたのを機に長年各地の文化財の撮影に携わった。小林剛⋅彫刻室長からは「仏像を単なる被写体と思ってはならない。仏師の気持ちに少しでも近付くように」と諭されたという。展示中の写真には工藤、入江作品と同じ仏像も含まれるが、撮る角度やライトの当て方などで表情が微妙に異なって見えるのが面白い。永野のガラス原板は帝塚山大学が所蔵している。

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〈奈良国立博物館⋅夏企画㊦〉 「フシギ! 日本の神さまのびじゅつ」展

2024年08月04日 | 美術

【一級の美術品を通して“祈り”の形を分かりやすく紹介】

 奈良国立博物館(奈良市)の西新館でわくわくびじゅつギャラリー「フシギ! 日本の神さまのびじゅつ」展が開かれている。東新館で開催中の特別陳列「泉屋博古館の名宝」展との同時開催で、会期も同じ9月1日まで。

 このわくわくギャラリーは子どもにも神様⋅仏様にまつわる祈りの美術に関心を持ってほしいと始めたもので、今回で3回目。展示は「お住まいのフシギ」「おすがたのフシギ」「ほとけさまとのカンケイのフシギ」など6章で構成する。

 展示品には国宝3点や重要文化財8点をはじめ一級品が並んでおり、大人にとっても見ごたえ十分。また展示品の所蔵者⋅団体は地元奈良のほか大阪、京都、滋賀、和歌山と広範。テーマに沿った特徴的な美術品展示のため、学芸員らが奔走したことを示す。

 国宝は同館所蔵の『辟邪絵(へきじゃえ)』6幅のうち『神虫(しんちゅう)』(写真㊦=部分)と『毘沙門天』、薬師寺⋅休ケ岡八幡宮の『八幡三神像』、熊野速玉大社の『古神宝類のうち桐蒔絵手箱および内容品』。

 『辟邪絵』は邪悪な鬼神を懲らしめ退治する様子を描いたもの。『神虫』は蚕の成虫の姿をした神様で、「災いをもたらす鬼を朝に三千、夜に三百も食べる」という説明が添えられていた。『八幡三神像』は平安初期の木彫で、中央に僧侶姿の八幡神、右に神功皇后、左に仲津姫命が鎮座。僧形の神像が神仏習合を象徴的に表す。

 重文『東大寺大仏縁起』は東大寺の僧侶祐全が室町時代の1536年頃に描いた。風神と雷神、龍神が大仏殿を建てるための材木をスムーズに運べるよう協力している様子なども描かれている(写真㊤=部分)。

 重文では奈良⋅往馬大社の『生駒宮曼荼羅』、大峯山寺の『蔵王権現像』、談山神社の『沃懸地太刀』、和歌山⋅丹生都比売神社の『金銅琵琶(伝平政子奉納)』などもある。他には奈良⋅矢田原第三農家組合所蔵の『富士参詣曼荼羅』、大阪⋅本山寺の『宇賀神像』、奈良⋅西笹鉾町自治会の『三社託宣』なども展示中。

 この美術展は高校生以下(18歳未満)入場無料で、来場者にはクイズ形式のワークシートを配付している。会場の一角には展示品の中から自由に描いてもらった作品を掲示する「お絵かきギャラリー」やお面づくりのコーナーも。

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〈奈良国立博物館⋅夏企画㊤〉 特別陳列「泉屋博古館の名宝」展

2024年08月01日 | 美術

【住友春翠のコレクションを中心に中国青銅器など80点余】

 奈良国立博物館(奈良市登大路町=下の写真)で特別陳列「泉屋博古館の名宝」展が始まった。泉屋(せんおく)博古館は住友家伝来の美術品の保管⋅研究⋅公開を行う施設として1960年、京都市左京区鹿ケ谷に開設された。現在はリニューアル工事中で、再オープンは来年4月の予定。

 この展覧会には「住友春翠の愛でた祈りの造形」という副題が付く。春翠は住友家第15代住友吉左衞門友純(1864~1926)の雅号。泉屋博古館の収蔵品は青銅器や書画、西洋絵画、陶磁器、茶道具、能面など約3500点に及ぶ。春翠の収集品はそのコレクションの中核を成す。

 

 展示は第1章の「中国青銅器―春翠の情熱」と第2章の「仏教美術―春翠の審美眼」で構成する。青銅器には紀元前14~11世紀の殷の時代やその後の西周の時代のものが多く含まれる。

 古代青銅器に多く見られる文様が怪獣を正面から見た姿を表したもので「饕餮文(とうてつもん)」と呼ばれる。殷代の酒を入れる容器『饕餮文方罍(ほうらい)』はつぶらな愛らしい目の造形が印象的。『犠首方尊』も同じく殷代の作。方尊の「尊」の文字は両手で酒甕を捧げ持つ様子を表すという。

 青銅器では『虎鎛(こはく)』というバチで叩く西周(紀元前11~10世紀)時代の打楽器や西周~東周時代の鐘、前漢(紀元前2世紀)~唐(8世紀)の銅鏡6面なども展示中。銅鏡のうち『画文帯同向式神獣鏡』(後漢3世紀)は重要文化財に指定されている。

 仏教美術の展示品では『線刻仏諸尊鏡像(瑞花鴛鴦八稜鏡)』(平安時代)が国宝。流れるような繊細な線刻で、中央の如来坐像を6体の諸尊が囲む。販促ちらしを飾るのは朝鮮⋅高麗時代の優美な仏画で重文の『水月観音像』。落款から徐九方の筆で制作年も1323年と判明している。

 

 『毘沙門天立像』(鎌倉時代)は京都⋅青蓮院旧蔵と伝わり、作者は快慶の弟子筋という説も。像内に62枚の画像が納められていた。上の仏像は重文の『阿弥陀如来坐像』(平安時代)。春翠の長男、住友寛一(1896~1956)が入手し、その後、泉屋博古館から奈良国立博物館に寄託された。会期は9月1日まで。

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