【国内有数産地の喜界島に〝セサミストリート〟出現!】
ゴマ科の1年草。草丈は1mほどで、真夏に上部の葉腋に1つずつ白や淡いピンク、紫色の筒状の花を付ける。花後30~40日で種子がびっしり詰まった円筒形の蒴果ができ、熟すと果皮が裂けて種子が飛び出す。ゴマには外皮の色で白ゴマ、黒ゴマ、茶ゴマなどがあるが、白ゴマには白い花、黒ゴマにはピンクの花が咲くことが多いそうだ。「日照りにゴマの不作なし」。ゴマはこういわれるほど乾燥に強い植物として知られる。
ゴマの英名は「セサミ」、学名は「セサムム・インディクム」。学名の名付け親はスウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネ(1707~78)で、当時は一大生産地だったインドがゴマの発祥地と考えられていたようだ。だが、現在では元々の原産地はアフリカのサバンナ地帯とする見方が一般的。アフリカ中部のナイル川流域では5000年以上前から栽培されていたという。世界の主要生産国はインド、ミャンマー、中国、エチオピア、スーダンで、この5カ国で世界の生産量のほぼ3分の2を占める。日本はゴマの消費大国で、「ごまぞう」「まるひめ」など国内で品種改良されたものもあるが、99%は輸出に頼っている。
日本には古く中国から薬用や燈油用として渡来し栽培されてきた。ゴマも漢名「胡麻」の音読み。漢名は西域からやって来て、麻に似た種子を付けることが語源といわれる。縄文時代後期の遺跡からは炭化したゴマが見つかっており、飛鳥時代に編纂された「大宝律令」の中にもゴマに関する記載がある。国内では鹿児島・奄美群島の喜界島が白ゴマの有数産地。毎年9月頃には刈り取った株が天日干しのため石垣など道路沿いに整然と並ぶ。この光景を〝セサミストリート〟と呼んで、ゴマ収穫期の風物詩になっているそうだ。
ゴマは含油量が多く全体の約50%を脂質が占める。「胡麻の油と百姓は搾れば搾るほど出るものなり」。江戸中期の享保の改革を裏で支えた勘定奉行神尾春央(かんおはるひで)の言葉と伝わるこの表現が、当時の年貢の取り立ての厳しさを物語る。ゴマに関する成句は「ゴマをする」「ゴマ塩頭」「開けゴマ」など多いが、「ごまかし(誤魔化し)」もその一つ。これは一説に江戸時代、小麦粉にゴマを混ぜ焼いて膨らました中が空っぽのものを「胡麻胴乱」や「胡麻菓子」と呼んだことに由来するという。「裏山から来る風すずし胡麻の花」(富澤統一郎)