く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ナツメ(棗)> 奈良時代以前に渡来、万葉集にも登場

2019年06月30日 | 花の四季

【茶器の棗やナツメ電球はよく似た形のナツメの実に由来】

 クロウメモドキ科ナツメ属の落葉小低木(樹高5~10m)。原産地は西アジア~中国といわれ、日本には古い時代に中国から薬用として入ってきた。6世紀後半の奈良県桜井市の上之宮遺跡からナツメの種子が出土しており、福井県には奈良時代「棗郷(なつめごう)」と呼ばれる荘園があった。万葉集にもナツメが詠み込まれた歌が2首収められている。

 花期は6月頃で、小枝に淡い黄色の径5mmほどの小花を付ける。花弁、萼片はともに5個だが、花弁は萼片より小さくて目立たない。9~10月頃、長さ2~3cmの果実が鈴なりになる。実は生食されるほか乾燥して料理用や菓子用として利用され、漢方では「大棗(たいそう)」と呼ばれて利尿・解熱・鎮痛・強壮などに使われる。茶道では抹茶を入れる茶器に「棗」があり、小型の電球にも「ナツメ球」と呼ばれるものがある。これらはいずれもその丸みを帯びた形がナツメの実に似ていることに由来する。

 一般にナツメの語源とされるのが「夏芽」説。他の落葉樹より遅く初夏になってようやく芽吹くからというもので、貝原益軒も『大和本草』(1709年)に「夏芽を生ず、故にナツメという」と記す。一方でナツメは晩夏に実を付けることから「夏実(なつみ)」や「夏梅(なつうめ)」からの転訛説もある。国内の主産地は福井市北西部の棗地区や岐阜県の飛騨地方で、健康食品や土産物としてナツメの健康茶やカステラ、のど飴、甘露煮などが商品化されている。また沖縄では熱帯果樹として実の大きなインドナツメが栽培されている。「夜もすがら鼠のかつぐ棗かな」(久村暁台)

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<ベニバナ(紅花)> 古くから染料や口紅の原料に

2019年06月29日 | 花の四季

【万葉名「くれなゐ」、山形県・山形市の花】

 キク科ベニバナ属の2年草。原産地は不明だが、一説にエジプトや中近東ではないかといわれる。日本には古い時代にシルクロードを経て中国から伝わってきた。10年ほど前の2007年、邪馬台国の有力候補地の一つ纒向遺跡(奈良県桜井市)からベニバナの花粉が大量に出土した。それまでわが国で見つかった最古の花粉は6世紀後半の藤ノ木古墳(斑鳩町)とされてきた。それを300年以上遡る3世紀には既にベニバナが渡来していたことが分かったわけだ。

 花期は6~7月頃で、鮮やかな黄色の頭状花を付け、花色は次第に朱色に変わっていく。花は古くから染料とされ、口紅や頬紅など化粧用の原料としても利用されてきた。ベニバナの語源も「紅(べに)の花」から。万葉名は「くれなゐ」。これは中国の呉の国から伝わった「呉の藍(くれのあい)」に由来するという。別名に「末摘花(すえつむはな)」。葉はアザミに似て縁に鋭い刺がある。そのため花摘みは朝露で刺がまだ軟らかい早朝、末の方(外側)から花を摘み取ることによる。ちなみに源氏物語第6帖の「末摘花」は鼻先が真っ赤な常陸宮の姫君を「紅鼻」から「紅花」と引っ掛けた別称。

 ベニバナは種子から取れる「紅花油」が高級食用油として注目され、切り花としても人気を集めている。主な国内の栽培地は山形県の最上川流域で、〝最上紅花〟と呼ばれ山形県の県花、山形市の市花にもなっている。花が最盛期を迎える7月上旬~中旬には県内各地で様々なイベントが繰り広げられる。6日には山形市で「紅花摘唄コンクール全国大会」、13~14日には山形市の高瀬紅花ふれあいセンターで「第34回山形紅花まつり」、河北町で「紅花資料館べに花まつり」などが予定されている。「行く末は誰が肌ふれむ紅の花」(松尾芭蕉)

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<アメリカキササゲ(木大角豆)> 円錐花序に筒状の白花

2019年06月28日 | 花の四季

【中国原産のキササゲより花が大きく莢も長く】

 米国東南部地方原産のノウゼンカズラ科キササゲ属の落葉高木。中国中南部原産のキササゲが薬用植物として古い時代に渡ってきたのに対し、このアメリカキササゲはそれよりずっと新しく、渡来したのは明治20~30年代頃といわれる。ただ、キササゲに比べ花が大きく美しいこともあって、庭園や学校などに植えられてきた。

 樹高は10m前後、大きいものは20m近くになる。葉はキリに似た大きなハート形。6~7月頃に花期を迎え、枝先の大きな円錐花序に径3~5cmほどの筒状の白花を多く付ける。縁がフリル状の花弁の内側には黄色い2条の筋と紫色の斑点模様が入る。秋になるとササゲ豆に似た細長い莢状の果実が下垂。莢は30cm前後もあり、キササゲ(15~20cm)より長い。近縁の仲間に北米原産で花が大型のハナキササゲ(別名オオアメリカキササゲ)がある。

 アメリカキササゲの学名は「Catalpa bignonioides(カタルパ・ビグノニオイデス)」。属名カタルパは現在の南北カロライナ両州辺りに居住していた先住民「カトーバ族インディアン」に由来するそうだ。種小名は「ビグノニ属(ツリガネカズラ属)に似た」を意味する。日本で初めて栽培が始まったといわれるのが東京の新宿御苑で、同御苑の名木十選にも選ばれていた。その後落雷で幹が折れる被害に遭ったが、ひこばえが大きく育って再び毎年花を付けている。

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<サクララン(桜蘭)> 花がサクラに、葉がランに似て

2019年06月23日 | 花の四季

【常緑のつる植物、東アジア~オーストラリアに分布】

 日本の九州南部~沖縄から台湾、中国南部、オーストラリアなどにかけて分布するつる性常緑多年草。和名はサクラの花を小さくしたような淡いピンク色の花と、ランのような厚くて光沢のある葉からの命名。ただキョウチクトウ科(またはガガイモ科)サクララン属に分類され、サクラの仲間でもランの仲間でもない。

 花期は6~9月。葉の脇から下垂する散形花序にかわいい小花をたくさん半球状につける。花冠は径1.5cmほどで先が5つに裂け、中心部には星型の副花冠がある。つるが長さ1m以上になると花が咲くようになるといわれ、翌年以降、毎年同じ所に花がつく。沖縄や奄美地方などでは方言名でツバキランやチバチラン、カミサシバナ、チーチークヮーサーなどとも呼ばれている。

 学名は「Hoya carnosa(ホヤ・カルノーサ) R.Br.」。属名は英国の園芸家で熱帯植物の生育に生涯を捧げたトーマス・ホイ(Thomas Hoy、1750~1822)の名前に因む。種小名カルノーサは「肉質の」の意。「R.Br.」は学名の命名者が英国の植物学者ロバート・ブラウン(1773~1858)であることを表す。彼は花粉の破裂後に飛び出す微粒子が不規則に動く〝ブラウン運動〟の発見者として知られる。世界最大の花ラフレシアの学名の名付け親でもある。

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<オリヅルラン(折鶴蘭)> 高い空気清浄能力、NASAが立証

2019年06月22日 | 花の四季

【南アフリカ原産、細長い茎の先に折鶴のような子株】

 キジカクシ科(またはユリ科)オリヅルラン属の常緑多年草。同属の植物はアフリカやアジアなど世界各地に200種余り分布する。そのうちよく栽培されるのが南アフリカ東南部ナタール地方原産のオリヅルランと、中央アフリカ西岸のガボン原産のシャムオリヅルラン。渡来時期は明治時代の初期といわれる。野生のオリヅルランの葉は緑一色だが、観葉植物としては主に乳白色の斑(ふ)入りの園芸品種が広く出回っている。

 学名は「Chlorophytum comosum(クロロフィツム・コモスム)」。属名の語源は「黄緑色」と「植物」の合成語。種小名は「長い束毛のある」を意味する。斑入り品種は大別すると葉の縁に沿って斑が入る「ソトフ(外斑)オリヅルラン」と中央に斑が入る「ナカフ(中斑)オリヅルラン」に分かれる。和名はランナーと呼ばれる細長い茎の先に付く子株がまるで折鶴のように見えることから。5~7月頃、ランナーの所々に可愛い6弁の白花を咲かせる。英名は「Spider plant(スパイダープラント)」。

 オリヅルランには「子孫繁栄」など縁起のいい花言葉がある。子株をたくさん付け、比較的簡単に増やせることによる。同時に「エコ・プラント」としても注目されている。NASA(米航空宇宙局)による実験の結果、オリヅルランの葉はシックハウス症候群を引き起こす有害化学物質ホルムアルデヒドの吸着能力に優れていることが分かった。さらにポトスやサンセベリアなどとともに〝子どもに安全な観葉植物〟にも選ばれている。

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<フウリンオダマキ(風鈴苧環)> かわいい花が風鈴のように揺れて

2019年06月16日 | 花の四季

【中国原産、オダマキ特有の〝距〟がなく別属に分類も】

 キンポウゲ科のオダマキの仲間。原産地は中国南西部の四川省やチベットで、標高1800~3500mの高地の草原などに生える。開花期は春~初夏。草丈は50~60cmほどで径1.5cmほどの赤紫色の小さな花をつける。この原種と通常のオダマキや小型のミヤマオダマキなどとの交配により花の色や形が多彩な園芸品種が生まれ、可憐な花姿が人気を集めている。

 和名は下向きに咲いて風に揺れる花の様子を風鈴にたとえた。園芸品種の「二色風鈴オダマキ」は内側の花弁と外側の萼片の色が白と紫など2色の組み合わせからなる。「乙女風鈴オダマキ」の花色は淡いほのかなピンク色で清楚な雰囲気が漂う。この他に八重咲きや花びらに縞模様が入る絞り咲きなどの品種も出回っている。

 オダマキの仲間は大半が花の後ろから突き出す細長い筒状の〝距(きょ)〟を持つ。花弁や萼片が変化したものだが、フウリンオダマキにはその距がない。このため「オダマキモドキ」と呼ばれることもあり、分類上もオダマキ属(アキレギア属)ではなくヒメウズ属(セミアキレギア属)とされることもある。「セミ」は「半分」の意。ただ、いずれの学名も種小名は「エカルカラータ」で、これは「距のない」「距を欠く」を意味する。

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<オオバナノエンレイソウ(大花の延齢草)> 北海道~東北に自生する〝森の貴婦人〟

2019年06月15日 | 花の四季

【北海道大学のシンボル、発芽から開花までに10年以上!】

 ユリ科エンレイソウ属の多年草で、北日本から千島列島、サハリン、カムチャツカ半島、中国東北部、シベリア東部にかけて分布する。国内では北海道と東北の一部に自生し、岩手県が南限とされる。草丈は30~50cm。落葉広葉樹林の林床など湿り気のある場所に生え、5~6月頃、輪生する3枚の大きな葉の上に直径5~7cmほどの白花を上向きに一つ付ける。

 学名は「Trillium kamtschaticum(トリリウム・カムチャティクム)」。属名は数字の「3」と「ユリ」の合成語で、花弁・萼片・葉がそれぞれ3つずつからなることを表す。種小名は「カムチャツカの」の意。発芽から花が咲くまでに10~15年という長期間を要する。純白の大きな花の気品のある佇まいから「森の貴婦人」と称えられている。一方で「ヤマソバ」という異名も。これは花後にできる黒い果実が三角錐の形をしてソバの実に似ることによる。

 国内に自生するエンレイソウ属の植物は9種。北海道にはその全てがそろっていることから、研究者の間では〝エンレイソウ王国〟と呼ばれているそうだ。十勝地方の「シーサイドパーク広尾」(広尾町)は国内最大のオオバナノエンレイソウの群生地として知られる。北海道大学のキャンパス内にある原始林「恵迪(けいてき)の森」(札幌市北区)の群落も有名。北大の校章などシンボルマークにはオオバナノエンレイソウの花が図案化されている。「雲ゆく雲雀に延齢草の 真白の花影さゆらぎて立つ」。恵迪寮の寮歌『都ぞ弥生』の中でもこう歌われている。

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<オオカナメモチ(大要黐)> 西日本の山地にわずかに自生する絶滅危惧種

2019年06月11日 | 花の四季

【垣根に人気の「レッドロビン」はカナメモチとの交配種】

 バラ科カナメモチ属の常緑樹。中国南部から台湾、マレーシア、フィリピンなどにかけて自生し、日本国内でも四国の愛媛県宇和島市や鹿児島県の奄美大島などに隔離分布する。かつて岡山県でも備前市日生町で確認されていた。しかし現在は「野生絶滅」としている。環境省は国内で絶滅の危険性が極めて高まっているとして「絶滅危惧ⅠA類」に指定している。

 樹高は大きいものでは10~14mにもなる。葉も花序もカナメモチより一回り大きい。葉は長楕円形または長倒卵形で長さ10~20cm。学名「Photinia serrulata(フォティニア・セルラータ)」も属名が「輝く」、種小名は「細かい鋸歯のある」を意味し、表面の光沢と縁に鋸歯がある葉の様子を表す。新しい葉が出てくると古い葉は紅葉して落ちる。花期は5~6月頃。枝先の直径15cmほどの半球状の花序に白い5弁花(径6mmほど)をたくさん付ける。赤い葉が美しく垣根によく使われる「レッドロビン」はカナメモチとオオカナメモチの交配種で、米国で作出された。

 オオカナメモチが宇和島や岡山・日生などで発見されたのは50年以上前の1960年前後。当初はオオカナメモチの変種として扱われ、76年発刊の初島住彦著『日本の樹木』にも変種の「テツリンジュ」という和名で紹介された。そのため宇和島市の三浦権現山にあるオオカナメモチも94年に「テツリンジュ」として市の天然記念物に指定されている。また福岡県福津市の宮地嶽神社では境内に植えられたオオカナメモチが御神木になっているが、こちらも「鉄輪樹(てつりんじゅ)」と呼ばれている。

 

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<チャボリンドウ(矮鶏竜胆)> ヨーロッパアルプスの三大名花の一つ

2019年06月10日 | 花の四季

【雪解けとともに鮮やかな青紫の花を上向きに】

 リンドウ科リンドウ属の多年草。ヨーロッパのアルプス山脈~ピレネー山脈の標高1000~3000mの高地の草原に自生する。葉がロゼット状に広がり草丈は10cmほどと低いが、雪解け後の5月から8月にかけて、丈の割に大きな青紫の花を上向きに開く。リンドウの仲間には1つの茎に数輪ずつ花を付けるものが多いが、このチャボリンドウは短い花茎の上に1輪だけ咲く。先端が5つに裂けたラッパ状で、花冠内側の基部には紫色の斑点模様が入る。

 チャボリンドウは学名「Gentiana acaulis」からゲンチアナ・アコーリスとも呼ばれる。属名は紀元前にバルカン半島の西部(旧ユーゴスラビア地方)にあったイリュリア王国のゲンティウス王の名に因むそうだ。種小名アコーリスは「無茎の」「丈の低い」を意味する。頭にチャボと付いた和名も、草丈が低く花茎の短い様子を小型のニワトリで脚が短いチャボ(天然記念物)になぞらえた。

 チャボリンドウは「アルペンリンドウ」とも呼ばれる。エーデルワイス、アルペンローズ(シャクナゲの一種)とともに〝アルプス三大名花〟の一つにも数えられている。よく似た原種の仲間には小型種の「ゲンチアナ・アルピナ」、〝トランペットリンドウ〟という英名を持つ「ゲンチアナ・クルシイ」などがある。国内ではチャボリンドウをもとに作り出された園芸品種が「アルペンブルー」の名称で流通している。

 

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<イトバハルシャギク(糸葉波斯菊)> 葉の形などから別名「宿根コスモス」

2019年06月08日 | 花の四季

【波斯はペルシャ、ただ原産地は北アメリカ】

 キク科ハルシャギク属(コレオプシス属)の北米原産の植物。草丈は30~60cmで、6~8月頃、8枚の舌状花からなる黄色の頭花を上向きに付ける。花径は4~5cmほど。和名は「蛇目草」とも呼ばれるハルシャギクの仲間で、葉が細長く糸状に切れ込んでいることから。ただハルシャギクが1年草なのに対し、こちらは多年草。葉の形や花の雰囲気から「宿根コスモス」とも呼ばれる。

 学名は「Coreopsis verticillata(コレオプシス・バーティシラータ)」。属名の語源はギリシャ語の「南京虫」と「似た」から。果実が南京虫の形に似ていることに由来するそうだ。種小名は「輪生の」「輪生葉を持った」を意味する。イトバハルシャギクの代表的な園芸品種に、矮性で花色が濃い「ザグレブ」や淡い黄色の「ムーンビーム」がある。

 ハルシャギクが日本に渡来したのは江戸後期の1843年(天保14年)といわれる。「ハルシャ」や漢字の「波斯」はイランの旧称ペルシャのこと。北米原産なのになぜペルシャ? 一説に北米からヨーロッパに伝わりペルシャを経由し日本に入ってきたからではないかともいわれるが、和名の由来ははっきりしていない。イトバハルシャギクの仲間には他に北米原産のキンケイギクやオオキンケイギクなどがある。繁殖力の強いオオキンケイギクは全国各地で野生化し、外来生物法で「特定外来生物」に指定され栽培や販売が禁止されている。

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<レブンコザクラ(礼文小桜)> 花が愛らしいユキワリソウの変種

2019年06月05日 | 花の四季

【礼文島や北海道北東部の山地に自生】

 「プリムラ」の名前で広く親しまれているサクラソウ科サクラソウ属の多年草。プリムラの仲間は日本では変種を含めると30種近くが確認されている。レブンコザクラはそのうちの1種で、礼文島をはじめ天塩山地や夕張山地、北見山地、知床半島など北海道北東部にも分布する。自生地は海岸近くの礫地や草地、低山帯~亜高山帯の岩場など。礼文島には他にもレブンアツモリソウ、レブンウスユキソウ、レブンキンバイソウ、レブンハナシノブなど「レブン」と頭に付いた植物が多い。

 草丈は10~20cmほどで、6~7月頃、茎先に径2~4cmのピンクまたは紅紫色の愛らしい花を5~15輪まとまって付ける。葉はへら状の倒卵形。ユキワリソウの変種とされているが、それに比べると花も葉もやや大きい。レブンコザクラは大昔には北海道全域に分布していたと推測されている。しかし現在では局所的な隔離分布となっており、環境省は絶滅の危険性が増大しているとし絶滅危惧Ⅱ類に指定している。

 学名は以前「Primula modesta var.matsumurae」とされてきたが、最近では「Primula farinosa subsp.modesta var.matsumurae」と表記されることが多い。これはユキワリソウ(Primula modesta)が従来別種とされてきたセイヨウユキワリソウ(Primula farinosa)の亜種として分類されたことによる。レブンコザクラの変種名「matsumurae(マツムラエ)」は東大教授で小石川植物園の初代園長を務めた植物学者松村任三(1856~1928)の名前に因む。

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<アフェランドラ・シンクライリアナ> オレンジの苞からピンクの花が突出

2019年06月04日 | 花の四季

【中米原産、珊瑚にたとえ「コーラル・アフェランドラ」とも】

 中南米を中心に200種近くあるキツネノマゴ科アフェランドラ属の一つ。シンクライリアナは樹高1~3mの常緑低木で、原産地はコスタリカ、ニカラグア、パナマなどの中央アメリカ。直立したオレンジ色の苞(ほう)の間から、ピンク色の唇形の筒状花が斜め上に突き出す。その鮮やかな花の色と形を珊瑚にたとえ、英名では「コーラル・アフェランドラ」、漢名では「珊瑚塔」とも呼ばれる。

 属名アフェランドラの語源はギリシャ語の「単性・シンプル」と「雄の」から。雄しべの葯室が1室でできていることによる。種小名シンクライリアナは「シンクレアさんの」を意味し、19世紀の英国の軍医アンドリュー・シンクレア(1794~1861)の名前に因む。シンクレアは船医として訪れた中南米やオーストラリアなど世界各地で多くの植物を採集し、標本を大英博物館に送った。その功績からロンドン・リンネ協会の会員にも選ばれている。

 アフェランドラの仲間には葉も美しく観葉植物として人気のあるものも少なくない。その代表格が〝ダニア〟の名前で親しまれているブラジル原産の「アフェランドラ・スクアローサ」の園芸品種。苞と花弁は黄色で、光沢のある深緑色の葉には葉脈に沿って白い筋が入る。シマウマのような模様から別名「ゼブラプラント」。同じスクアローサ系の〝シルバークラウド〟は葉が明るい黄緑色で白い筋はやや太め。ただ、こちらは花付きが悪いため、花なしで出回ることが多い。

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<ミヤマヨメナ(深山嫁菜)> 野菊では珍しく春~初夏に開花

2019年06月02日 | 花の四季

【別名「野春菊」、その園芸品種が「ミヤコワスレ」】

 本州から四国、九州にかけて分布する日本特産のキク科の多年草。名前は花姿がヨメナに似て、山地の落葉樹林の下などに生えることから。ヨメナやノコンギク、ヤマシロギクなど野菊はほとんどが秋に開花するが、このミヤマヨメナは野菊としては珍しく5~6月頃に盛りを迎える。このため「ノシュンギク(野春菊)」の別名を持ち、「六月菊」と呼ばれることもある。

 草丈は20~50cm。直立した茎の先に径3~4cmほどの花を一輪付ける。舌状花は白~薄紫色、真ん中の管状花は黄色。若芽は他の野菊同様食用とされ、和え物や汁の実などに用いられてきた。「ミヤコワスレ(都忘れ)」という優雅な名前で呼ばれる植物は、山野に自生するこのミヤマヨメナを改良した栽培品種。その名は鎌倉時代に承久の乱(1221年)で敗れ京の都から遠く佐渡島に流された順徳天皇の故事に由来するそうだ。ただミヤコワスとして栽培されるようになったのは江戸時代以降ともいわれる。

 牧野富太郎博士は大正時代、ミヤマヨメナの学名を「Aster Savatieri」と命名した。種小名「サヴァティエリ」は1860~70年代に2度来日し計6年間滞在した医師で植物研究家のフランス人、リュドヴィク・サヴァティエ(1830~91)の名前に因む。サヴァティエは日本の植物分類学に貢献し、帰国後『日本植物目録』(共著)を出版した。学名はその功績を称えた彼への献名。現在ではアスター属(シオン属)から独立してミヤマヨメナ属に分類され、学名も「Miyamayomena savatieri」とされることが多い。「人恋し都忘れが庭に咲き」(高橋淡路女)

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