く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<サネカズラ(実葛)> 晩秋には黄緑の実が真っ赤に

2020年07月29日 | 花の四季

【万葉集にも登場、「ビナンカズラ」の別名も】

 モクレン科サネカズラ属の常緑の蔓性低木。古くから親しまれてきた日本を代表する蔓木の一つで、関東以西の本州と四国、九州、沖縄の山野に自生する。庭木や生け垣のほか、盆栽や生け花の花材としても用いられてきた。雌雄異株のものが多いが、雌花と雄花が咲く雌雄同株のものもある。学名は「Kadsura japonica(カズラ・ジャポニカ)」。属名に日本語の葛(かずら)がそのまま使われており、種小名も「日本の」を意味する。

 花期は7~8月。葉腋から花柄を垂らし径1.5cmほどの淡黄色の花を付ける。雌花は花の中心部が黄緑色、雄花は赤茶色。雌花は花後、小球の集合果が次第に膨んで、初秋~晩秋に黄緑色から真っ赤に熟す。和名サネカズラの「サネ」は実のことで、その実の美しさから名付けられた。樹皮はネバネバの粘液を多く含み、かつては整髪料や和紙を漉く際の糊料などとして利用された。そのため「ビナンカズラ(美男葛)」「ビンツケカズラ」「トロロカズラ」といった異名もある。

 

 サネカズラは古くから和歌などでよく詠まれてきた。最も有名なのは小倉百人一首の三条右大臣藤原定方の歌かもしれない。「名にし負はば逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもかな」。サネカズラの蔓で密かにあなたをたぐり寄せたいと、忍ぶ恋の熱い思いを歌い上げた。万葉集にもサネカズラを詠んだ歌が10首ほどある。ただ「さねかずら」より「さなかずら」と歌ったもののほうが圧倒的に多い。「玉櫛笥みむろの山のさなかずら さ寝ずはつひにありかつましじ」(巻2-94、藤原鎌足)

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<コノテガシワ(児の手柏)> 手のひらを立てたような葉形から

2020年07月28日 | 花の四季

【原産地は中国北部? 葉先に金平糖に似た球果】

 ヒノキ科コノテガシワ属の一属一種の常緑樹で、原産地は中国北部と推測されている。日本では庭や公園に植えられることが多いが、中国では墓地や寺院でよく見かけるそうだ。大きいものは高さが20mにもなる。1つの株に雌花と雄花が咲く雌雄異花で、3~4月頃、淡紫緑色の雌花と黄褐色の雄花を付ける。ただいずれの花も地味で目立たず、代わりに目を引くのが花後の球果。直径1~2cmほどの灰色がかった緑色で、角が尖った独特の形をしている。

 学名は「Platycladus orientalis(パラティクラドゥス・オリエンタリス)」。和名は平面状の葉がまっすぐ垂直に立ち上がる様子を、上に向け大きく広げた子どもの手のひらに見立てた。ヒノキの葉は水平に広がり、葉の裏が白っぽいのに対し、コノテガシワの葉は全体が緑色で、表と裏を明確に区別できないのが特徴。漢名は「側柏」。葉は生薬の「側柏葉」として止血や下痢止めなどに使われる。「センジュ(千手)」や「シシンデン(紫宸殿)」「エレガンティシマ」など多くの園芸品種が出回っている。

 万葉集に「このてかしわ」という言葉を織り込んだ歌が2首ある。万葉表記は「兒手柏」と「古乃弖加之波」。これをコノテガシワとみる向きもあり、手元の『万葉の花 四季の花々と歌に親しむ』(片岡寧豊著)も巻16-3836の消奈行文(せなのぎょうもん)の歌を取り上げる中でコノテガシワを詳しく紹介している。ただコノテガシワが大陸から日本に渡来したのはずっと後の江戸中期の元文年間(1736~41)といわれており、万葉の時代にはまだ国内になかった可能性が高そう。では歌に詠まれた「このてかしわ」はどんな植物を指すのか? この点についてはまだ定説がないようだ。

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<女優O.ハヴィランド> 東京生まれ、104歳で逝去

2020年07月27日 | メモ

【「風と共に去りぬ」「ロビンフッドの冒険」などで好演】

 米国での白人警官による黒人男性への暴行死をきっかけに人種差別への抗議行動が広がりを見せる中、不朽の名作とされてきた映画「風と共に去りぬ」(1939年)もやり玉に挙げられ一時配信停止に追い込まれた。この映画の舞台は南北戦争時代の南部。主人公は黒人奴隷を多く使う綿花プランテーションの経営者の娘で、人種差別的な言動が含まれるというわけだ。そこでつい最近改めてDVDで視聴したばかりだった。

 この映画の中で勝気な娘スカーレット・オハラ役を演じたヴィヴィアン・リーと好対照の物静かで思慮深い義妹メラニー・ハミルトン役を演じたのがオリヴィア・デ・ハヴィランド。その彼女が7月26日パリで逝去したというニュースが飛び込んできた。1916年東京生まれで享年104。1歳年下の妹ジョーン・フォンテイン(1917~2013)とともに、幼少時に日本から母親と共に米国カリフォルニアに渡った後、ハリウッドで活躍した。「風と共に去りぬ」ではアカデミー助演女優賞にノミネートされながら受賞はならなかったが、その後「遥かなる我が子」(1946年)と「女相続人」(49年)で2度主演女優賞に輝いた。初期の作品で痛快な「ロビンフッドの冒険」(1938年)ではマリアン姫役の彼女の美しさに目を奪われた。

 実はハヴィランドのことを知ったのは妹のフォンテインが主演したアルフレッド・ヒッチコック監督の「レベッカ」(1940年)を見ながら経歴を検索したとき。姉妹が約100年前に日本で出生していたことを知ってより身近に感じ、一時期二人の作品を集中的に鑑賞したことがあった。「レベッカ」は英国出身のヒッチコックにとって渡米第一作。姉妹の両親も英国出身で、父親は来日後、金沢や東京で英語やサッカーなどを教えていた。母親は舞台女優をやっていたという。

 フォンテインは16歳のとき再来日し東京のインターナショナルスクールに通っている。「風と共に去りぬ」のメラニー役は当初監督からフォンテインに打診があったが、彼女が姉のハヴィランドを推薦したという。フォンテインは「レベッカ」の後、「断崖」(1941年)、「ジェーンエア」(1943年)、「忘れじの面影」(1948年)など多くの作品に出演し、ヒッチコック監督の「断崖」でアカデミー主演女優賞を獲得した。アカデミー賞ではその後ヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダの父娘が主演男優賞・主演女優賞に輝いているが、姉妹で主演女優賞を獲得しているのはハヴィランドとフォンテインの二人だけだ。

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<月下美人> 今年は7輪が同時に開花!

2020年07月17日 | 花の四季

【翌朝には花を摘んでサラダや和え物に】

 夜中に大きな純白の花を開いて甘い香りを放つゲッカビジン(月下美人)。中南米原産の神秘的な一夜花が今年も妖艶な姿を見せてくれた。栽培を始めたのは5~6年前。葉っぱ2枚だけの挿し木(確か150円か200円で)を手に入れ、その後行灯仕立ての鉢植えにして育ててきた。開花したのは昨年が初めて。9月中旬と10月中旬の2回開花し、合わせて8輪が開いた(「月下美人」は昨年9月17日のブログで紹介)。ところが今年の開花は7月16日夜~17日未明と随分早く、しかも一気に7輪も開いてくれた。

    

 月下美人はサボテン科クジャクサボテン属の多肉植物。日本には大正時代の末期に渡来したという。高温多湿の環境を好む半面、寒さには弱い。そのため冬の間は室内に取り込んでおり、今年は3月中旬になって外に出した。土の表面が乾いたとき水をたっぷり注ぐ以外、肥料を与えるわけでもなくほとんど世話をしていない。なのに、今年もたくさんの蕾(最初確か10個あった)を付け期待以上の見事な花を咲かせてくれた。その優美な姿を褒め称えてあげなくては、と昨晩は午後8時以降1~2時間おきに4回も様子を見るため庭に出た。

 

 月下美人の花は観賞だけでなく生食もできる。ネットでもレシピなどが公開されている。しぼんだ花をそのまま放っておくのはしのびないし、もったいない。そこで翌朝全て切り取り台所へ。早速半切りにし中の雌しべや雄しべをきれいに取って水洗い。花3輪分を食べやすい大きさにカットして生のまま皿に盛りゴマドレッシングを掛けると、まずサラダの完成だ。続いて残りの4輪分はさっと茹で、一つは春雨を加えた辛し和えに、もう一つは茹でた豚肉を加えてポン酢和えに。月下美人のおかげで、きょうの酒のつまみが短時間で出来上がった。

(P.S.  歯応えのあるしゃきしゃき感とまろやかなトロミが同居した不思議な食感。ゴマドレッシングにもポン酢にもよく馴染んでいた。体にも良さそうな健康食品の一種という感じ。次回の開花がますます楽しみになってきた)

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<カメムシ> 孵化した幼虫が卵殻を囲み整然と円陣!

2020年07月16日 | アンビリバボー

【クサギカメムシ? 発見2日後には脱皮】

 一昨日14日早朝のこと、ブドウ棚を見上げていると、葉の裏側に一円玉ぐらいの不思議な模様が目に留まった。近づいて見ると、真っ白い粒々の玉の周りを米粒より小さいテントウムシのような虫が円陣を組んでいた。玉も虫も12個ずつ。どうもカメムシの幼虫で、卵から孵化してまもないようだ。翌日も同じ体勢のまま。ところが発見3日目の16日早朝、1匹がちょうど脱皮の最中だった。最初は全身ピンク色だったが、数時間後には黒く変色し葉の上を活発に動き回っていた。

 昆虫図鑑やネットで調べたところ、この幼虫は背中の紋様などから「クサギカメムシ」の可能性が大きいようだ。ただクサギカメムシは1回に28個産卵することが多いという。それに比べるとこの集団は卵の数が半分以下と少ないのが少々気がかりだが……。カメムシの幼虫は孵化後しばらくは卵殻の周辺で密集して過ごす習性があるという。幼虫は5齢まであり、5回脱皮を繰り返してようやく羽化し成虫になる。

 クサギカメムシのクサギはクマツヅラ科の落葉樹クサギ(臭木)から。この樹木によく付くことによる命名だが、クサギカメムシはモモやブドウ、カキ、ミカンなどの果実にも集まって長い口吻で果汁を吸う。このためチャバネアオカメムシやツヤアオカメムシなどとともに果樹を襲う代表的な〝農業害虫〟とみなされている。特に今夏は西日本を中心に大量発生の恐れがあるとのことで、奈良県を含む多くの県がカメムシ注意報(病害虫発生予察注意報)を発令し注意を呼び掛けている。

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<オニユリ(鬼百合)> 真夏に鮮やかな朱色の花

2020年07月13日 | 花の四季

【高さ2mにも、鱗茎は食用のユリ根に】

 ユリ科ユリ属の植物はアジアを中心に約100種が北半球の温帯地方に広く分布する。大別するとヤマユリ、テッポウユリ、カノコユリ、スカシユリの4系統に分類されるが、このオニユリはカノコユリ系に属する。その仲間は下向きに花を付けるものが多く、花弁は大きく反り返る。花弁内側には一面に斑点模様。花色が赤、朱、桃、白、黄など多彩なのも特徴の一つだ。

 オニユリは中国が元々の原産地とみられ、古い時代に朝鮮半島を経て日本に伝わったといわれる。デンプンを多く含む球根の鱗茎は古くから食用のユリ根としてヤマユリなどとともに栽培されてきた。草丈は1~2m。真夏の7~8月に数個から20個前後の鮮やかな朱色の花を咲かせる。日本本土で見られるオニユリはなぜか3倍体ばかり。そのため種子はできないが、その代わり葉腋に黒いムカゴ(珠芽)ができ、花後にそれが落ちて発芽し増える。オニユリによく似た近縁種にコオニユリがある。こちらは全体的にやや小型でムカゴができない。

 学名は「Lillium lancifolium(リリウム・ランシフォリウム)」。種小名は「披針形の」の意で、葉の幅が狭くて長いことを表す。和名の語源は鬼のように大きいことから、または花を赤鬼の顔に見立てたともいわれる。ちなみに英名は「タイガーリリー」。長崎県の対馬には「オウゴン(黄金)オニユリ」と呼ばれる珍しい黄花がある。対馬のオニユリは種子ができる2倍体が中心で、突然変異によって生まれたとみられる。花弁に斑点のないオニユリも見つかっているという。長崎県川棚町はオニユリが町の花。石川県白山市の八田農村公園内の「オニユリの里」には約1万5000株が群生する。「単線待ちの駅 鬼百合の一本挿し」(伊丹三樹彦)

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<ヒルガオ(昼顔)> 日盛りに優しげな淡紅色の花

2020年07月02日 | 花の四季

【万葉集に登場する〝かほばな〟はこの花?】

 野原や河川敷、道端などでよく見かけるヒルガオ科のつる性多年草。7~8月頃、漏斗状の淡い紅色の花を一輪ずつ上向きに付ける。日中に開き続け夕方にしぼむ一日花で、早朝に開き昼頃閉じるアサガオ(朝顔)に対して名付けられた。花径は5~6cm。同じヒルガオ属の仲間に全体的にやや小型のコヒルガオ、砂浜に生える海浜植物のハマヒルガオなどがある。

 学名は「Calystegia japonica(カリステジア・ジャポニカ)」。属名はギリシャ語のcalyx(萼)とstege(蓋)から。萼が5裂し、その基部を2個の苞が包み込むヒルガオ属の花の様子を表す。若葉や花はてんぷらやサラダなどとして食用にされてきた。全草を乾燥したものは生薬名で「旋花(せんか)」と呼ばれ、利尿や強壮薬などに用いられる。

 万葉集に4首詠まれている「かほばな」(万葉仮名は容花・可保婆奈など)。この花についてはムクゲやカキツバタなど諸説あるものの、ヒルガオとする説がほぼ通説になっている。4首のうちの1首に大伴家持の「高円の野辺のかほばな面影に見えつつ妹は忘れかねつも」(巻8-1630)。なお夕方咲き始めるヨルガオ(夜顔)は熱帯アメリカ原産の白花で、同じヒルガオ科でもアサガオと同じサツマイモ属。同じく夕方開く白花のユウガオ(夕顔)は全く別種のウリ科ユウガオ属で、実が巻きずしなどに使う干瓢(かんぴょう)の原料となる。「昼顔に猫捨てられて泣きにけり」(村上鬼城)

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