く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

〈喜光寺〉 淡いピンク色の「中尊寺蓮」お披露目

2024年07月09日 | 花の四季

【境内を彩るハス250鉢 津波で蘇ったミズアオイも開花】

 奈良時代の高僧行基ゆかりの古刹、喜光寺(奈良市菅原町)の境内が花ハスの大きな鉢で埋め尽くされている。8日午前訪ねると、カメラを抱えた中高年数人が“試みの大仏殿”と呼ばれる本堂(重要文化財)を背景にハスの花を撮影していた。伝承によると、行基はこの本堂を参考に東大寺の大仏殿を建立した。

 ハスの栽培が始まったのは30年ほど前から。喜光寺は法相宗別格本山。大本山の薬師寺から派遣された山田法胤住職が、荒れ果てた喜光寺を花の寺にしたいと栽培を始めた。今では栽培数が約70種、約250鉢に上る。

 平年の見頃は6月中旬から7月中旬にかけて。ただ今年は猛暑の影響か、花付きがいまひとつのようだ。前日に藤原宮跡のハス池で満開の花を見てきたという男性はやや期待外れといった表情を浮かべていた。

 そんな中で注目を集めていたのが社務所前に置かれた「中尊寺蓮」。戦後の学術調査で中尊寺(岩手県平泉町)の藤原氏四代泰衡の首桶からハスの種子が見つかり、1998年に約800年の時を経て開花した。

 喜光寺のこのハスも中尊寺から株分けして頂いたもの。花はさほど大きくないが、淡いピンク色で気のせいか気品も漂っていた。

 その近くでは東日本大震災の津波で蘇ったという水生植物ミズアオイも咲き始めていた。環境省のレッドリストで準絶滅危惧種とされる貴重な植物。東北の被災地で津波により地下で休眠していた種子が発芽し、群落が復活した。

 喜光寺ではハスの開花シーズンに合わせ、弁天堂のご神体で秘仏の「宇賀神」を公開中。そのお姿は“人頭蛇身”といわれるもので、とぐろを巻いた蛇が鎌首を持ち上げ、その頭は髭を蓄えた老人の顔を持つ。

 宇賀神の前面には弁財天。水に縁のある弁財天と蛇が結びついて、学問や技芸、福徳円満の神になったという。奈良市観光協会はハスの花が境内を彩る喜光寺⋅西大寺⋅唐招提寺⋅薬師寺を巡る「奈良⋅西ノ京ロータスロード」(共通拝観券4000円)を開催中。宇賀神はその期間中の8月12日まで公開の予定。(下の写真は秘仏「宇賀神」開帳期間限定の特別朱印「福徳圓満銀印」)

  

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<庭の花=立冬11/8> ノコンギク、ホトトギス、ツワブキ…

2023年11月08日 | 花の四季

【ノコンギク(野紺菊)】

【ホトトギス(杜鵑草)】

【ツワブキ(石蕗)】

【トラディスカンティア・シラモンタナ】

【ナンテン(南天)】

【シュウメイギク(秋明菊)】

【シロヨメナ(白嫁菜)】

【ヤツデ(八手)】

【センリョウ(千両)】

【マンリョウ(万両)】

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<藤原宮跡> 大和三山借景に広大なコスモス畑!

2023年10月19日 | 花の四季

【北エリアに続き南エリアも見ごろに】

 約1300年前に都が置かれた藤原京(奈良県橿原市)の中心部、藤原宮跡に広大なコスモス畑が出現、見物客の目を楽しませている。栽培するのは高殿町・醍醐町・縄手町など地元の6町でつくる「藤原宮跡整備協力委員会」。毎年、春に菜の花、夏にキバナコスモスとハナハス、そして秋にはコスモスの植栽に取り組んできた。花の季節になると遠方客も次第に増え、宮跡を彩る花の名所として人気を集めている。

 コスモス畑は約3万㎡と広大。ここに大輪の「センセーション」や「ベルサイユ」、半八重咲きの「サイケ」など6品種を種まきし、最盛期には約300万本ものコスモスが咲き乱れる。ただ今年は夏の天候不順もあって、南北のエリアで生育状況に差が出ているという。北側エリア(約1万㎡)はいま満開から散り始め。南側エリア(約2万㎡)は5~6分咲きで、満開になるのは10月下旬~11月上旬の見込み。

 藤原京は持統・文武・元明天皇の3代にわたり694年から710年まで都が置かれた。天皇の住まいの内裏や大極殿などがあった藤原宮はおよそ900m四方で、高い塀の大垣で囲まれていた。宮跡は国指定の特別史跡。コスモス畑は宮殿を守護する“聖山”と考えられた大和三山を借景にして広がる。(写真㊤は畝傍山)

 藤原京の北側に位置するのが耳成山(140m)。その東南側にはなだらかな山容の天香具山(152m)、西南側には最も高い畝傍山(199m)がある。大和三山は万葉集にも多く詠まれ、いずれも国の名勝になっている。(写真㊤と㊦天香具山)

 南側エリアにコスモス畑の中に浮島のようにススキが群生する一角があった。その背後には持統天皇の歌で有名な天香具山が横たわる。「春過ぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香具山」。香具山は舒明天皇が国見をした山でもある。

 コスモス畑の東側には黄やオレンジ色が鮮やかなキバナコスモスの区画もあった。耳成山(写真㊦の右奥)はその北側にある。中大兄皇子(後の天智天皇)は「香具山は畝傍を惜しと耳成と相争ひき……」という“三山の歌”を残した。そこで示唆されているのは額田王を巡る中大兄皇子と弟大海人皇子(後の天武天皇)との三角関係か? 

 藤原宮跡を訪ねたのは10月18日の昼過ぎ。平日の水曜日にもかかわらず多くの見物客が詰め掛け、コスモス畑と大和三山を眺めながら秋の風情を満喫していた。秋晴れの下、青やオレンジ色の帽子を被った幼稚園児たちも楽しそうに歓声を上げていた。

 橿原市や明日香村などは2026年「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」として世界遺産登録を目指している。藤原宮跡と大和三山もその構成資産。宮跡での草花の植栽にも登録運動への理解を広げたいとの思いが込められている。

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<ホウキギ(箒木)> 旧属名から「コキア」とも

2023年10月14日 | 花の四季

【ヒユ科の1年草、実は「畑のキャビア・とんぶり」に】

 南欧~アジア原産のヒユ科バッシア属の春蒔き1年草。日本には平安時代に中国から渡来し、江戸時代には各地で栽培されていた。草姿はこんもりとした球状または円柱形で、高さは50~100㎝ほど。和名のホウキギは乾燥し束ねて箒として利用したことから。ホウキグサとも呼ばれる。

 学名は「Bassia scoparia(バッシア・スコパリア)」。属名は18世紀のイタリアの植物学者の名前に由来、種小名スコパリアは「箒状の」を意味する。秋に鮮やかに紅葉し、公園などの花壇を彩るのは「trichophylla(トリコフィラ)」という変種。和名は「ハナホウキギ」だが、旧属名から「コキア」の名前で親しまれている。その名所に国営ひたち海浜公園(茨城)、国営みちのく杜の湖畔公園(宮城)など。

 ホウキギは夏に黄緑色の花をたくさん付け、熟した直径1~2㎜の小さな実は「とんぶり」として食用になる。秋田県大館市の特産。その魚卵のような見た目とプリプリとした食感から「畑のキャビア」と呼ばれる。「唐から来たぶりこ(ハタハタの卵)」が転じて、とんぶりになったといわれる。「箒木に秋めく霧の一夜かな」(西島麦南)

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<マツバボタン(松葉牡丹)> 葉が松葉に、花が牡丹に似て

2023年10月09日 | 花の四季

【ブラジルなど南米原産、別名「ヒデリソウ」】

 スベリヒユ科スベリヒユ属(ポーチュラカ属)の1年草で、原産地は南米のブラジルやアルゼンチンなど。日本に渡来したのは幕末の1860年代初めで、渡米使節と遣欧使節が相次いで種子を持ち帰ってきたという。高温・乾燥・日照を好む。和名は多肉質の細い葉が松の葉に、花がボタンに似ることから。草丈は10~20㎝ほどで、地面を這うように広がる。

 花期は6~10月ごろ。花色は赤・白・黄・ピンクなど多彩で、一重咲きと八重咲きがある。夏のかんかん照りにも強いことから「ヒデリソウ(日照草・昼照草)」とも呼ばれる。1年草だが、こぼれ種でよく殖える。小説家・園芸家の前田曙山(1872~1941)は『園芸文庫』に「余りよく繁殖するので、卑俗の花とされるが、花は美しく、不遇だ」と記した。爪で茎を切り取って植えても簡単につくことから「ツメキリソウ」という別名もある。

 学名は「Portulaca grandiflora(ポーチュラカ・グランディフローラ)」。属名は「門」「入り口」を意味するラテン語に由来し、種小名は「大きい花の」を表す。花がよく似る同属の仲間に「ハナスベリヒユ」(ポーチュラカとも)がある。靴べらのような幅広の葉の形から違いが分かる。「マツバギク」とも混同されがち。こちらは南アフリカ原産の多年草で、花の形がキクに似ることからの命名。「雑草に咲き勝つ松葉牡丹かな」「梅を干す昼照草の小庭哉」(いずれも正岡子規)

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<アワ(粟)> 祖先はネコジャラシ!

2023年09月17日 | 花の四季

【五穀の一つ、縄文時代から栽培】

 イネ科エノコログサ属の穀物で、原産地はインドや中央アジアといわれる。日本には稲作が伝わる前、縄文時代に朝鮮半島を経て渡来した。穀類の中ではヒエ(稗)とともに栽培の歴史が古く、米・麦・豆・稗(または黍=キビ)とともに五穀の一つに数えられている。

 アワはエノコログサが作物化したものといわれる。子犬の尻尾のような花穂から漢字で書くと「狗尾草」。一般に「ネコジャラシ」という俗称で呼ばれることが多い。草丈は1~2m。長さ10~40㎝の穂に2㎜ほどの黄色い粒状の子実を無数に付ける。穀類の中で最も小粒で、五穀米や団子、菓子、小鳥の餌などに使われる。諺に「濡れ手で粟」など。

 英名は「フォックステイル・ミレット」や産出国から「イタリアン・ミレット」「ジャーマン・ミレット」など。学名は「Setaria italica(セタリア・イタリカ)」と、種小名に「イタリアの」と付けられている。命名者はパリゾ・ド・ボーヴォワ(1752~1820)というフランスの博物学者。

 アワは古くから皇室の伝統儀式「新嘗祭」で米とともに供物として用いられてきた。万葉集にはアワを詠み込んだ歌が5首。その一つに「ちはやふる神の社し無かりせば春日の野辺に粟蒔かましを」(巻3-404娘子)。「神の社」は相手の奥さんを意味する。「粟の穂の垂れし重さにしづかなり」(長谷川素逝)

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<トコロ(野老)> ひげ根から“野の老人”

2023年09月06日 | 花の四季

【ヤマノイモ科、万葉集にも2首】

 ヤマノイモ科ヤマノイモ属のツル性多年草で、全国各地の山野に生える。夏にひも状の花穂を伸ばし、淡緑色の小花をたくさん付ける。雌雄異株。雌花の花穂は下垂し、花を咲かせながら次々に緑色の実を結び始める。蒴果で、秋になると茶色く乾燥し3つに裂けて種子を飛ばす。別名「オニドコロ(鬼野老)」。

 トコロの地下茎は横に這って、ひげ根を多く生やす。「野老」はそのひげ根を老人のひげに見立てたもので、エビが「海老」なのに対し野の老人として野老の漢字が当てられた。古く万葉集にも「ところづら」として2首登場する。「皇祖神(すめろぎ)の神の宮人ところづら いや常(とこ)しくにわれかへり見む」(巻7-1133、作者不詳)。

 学名は「Dioscorea tokoro(ディオスコレア・トコロ)」。属名は古代ギリシャの医師・植物学者のペダニウス・ディオスコリデスの名前に由来し、種小名は和名のトコロがそのまま使われている。命名者はNHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルにもなっている牧野富太郎博士。

 「○○ドコロ」と名付けられた植物は少なくない。同じヤマノイモ科にはヒメドコロやカエデドコロ、タチドコロ、キジカクシ科にも可憐な白花を付けるアマドコロ、ナス科にもハシリドコロなど。いずれも太い根茎がトコロの形に似ていることから命名された。

 埼玉県南部に位置する所沢の地名の「所」は一説にこのヤマノイモ科のトコロに由来する。所沢市の市章はトコロの葉を図案化したものが使われている。トコロの干したひげ根は正月、長寿を祈る“蓬莱飾り”としてエビなどとともに飾られてきた。「海老野老(えびところ)台を同じく飾りけり」(名和三幹竹)

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<ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)> 北米原産の帰化植物

2023年08月15日 | 花の四季

【全草有毒、黒紫色の実を房状に】

 北米原産のヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。日本に渡ってきたのは明治初期といわれ、今では帰化植物として全国に広がり、道端や空き地、公園の植え込みなどでもよく見かける。古くから人里に近い山野に自生するヤマゴボウの仲間で、海外から渡来したことからその名がついた。別名「アメリカヤマゴボウ」。

 根は細長く食用のゴボウ(キク科ゴボウ属)に似るが、分類上は全く無縁。夏から秋にかけて赤色を帯びた茎の先の総状花序に白い小花をたくさん付け、花後に果実が緑色から黒紫色になって垂れ下がる。草丈は1~2m。学名「Phytolacca americana(フィトラッカ・アメリカーナ)」。属名は「植物」と「紅色の」の合成語、種小名は「アメリカの」を意味する。

 フラワーアレンジメントの花材として使われ、熟した実が草木染に用いられることも。ただ有毒植物のため取り扱いは要注意。誤食すると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こす。モリアザミ(キク科アザミ属)などの根や加工品が「山ごぼう」として市販されていることもあって、ヨウシュヤマゴボウの根も食べられると勘違いする人がいるようだ。子どもが実をブルーベリーと間違って口にするといったケースも報告されている。

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<ハイタムラソウ(這田村草)> 福井県の固有種・絶滅危惧種

2023年07月07日 | 花の四季

【日本海側に分布するタジマタムラソウの変種】

 シソ科アキギリ属(サルビア属)の多年草。自生地は福井県南部の今庄町や敦賀市、美浜町、三方町、小浜市など狭い地域に限られる。京都府北部や兵庫県北部など日本海側の山地に分布する「タジマ(但馬)タムラソウ」の変種。福井県は絶滅の危険が増大しているとして、レッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定している。

 草丈は20~30㎝ほど。花茎の先に赤紫色の唇形花を多く付ける。葉は地に這うように横に伸びる根茎に沿って広がる。学名は「Salvia omerocalyx(サルビア・オメロカリス)var.prostrata(プロストラータ)」。属名サルビアの語源は「安全」や「無傷」を意味するラテン語。種小名の後の「var.」はバラエティーの略で「変種」を表す。変種名のプロストラータは「平臥」や「横に這う」を意味する。

 サルビア属は中南米や地中海沿岸地方を中心に世界に900種以上あり、日本では観賞用を「○○サルビア」、ハーブ用を「○○セージ」と呼んで使い分けている。日本原産のサルビア属はアキノタムラソウ、ハルノタムラソウ、ナツノタムラソウ、シマジタムラソウ、キバナアサギリなど10種ほど。このうちハルノタムラソウの学名は「S.ranzaniana(ランザニアーナ)」。植物学者牧野富太郎が敬愛する江戸時代の本草学者小野蘭山の名前を織り込んで命名した。

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<パッシフローラ・ミニアタ> 真っ赤な大輪トケイソウ

2023年07月01日 | 花の四季

【花弁5枚と萼片5枚が同じ色と形!】

 南米のボリビア原産のトケイソウ科トケイソウ属の常緑蔓性植物。トケイソウ属には中南米の熱帯・亜熱帯地域を中心に世界で500種以上もある。これらを掛け合わせた栽培品種も数多い。属名「Passiflora(パッシフローラ)」は「キリストの受難の花」を意味する。独特な花の構造を十字架や磔に使われた釘、10人の使徒などに見立てた。

 種小名の「miniata(ミニアタ)」は「朱色の」「赤くなる」を意味する。その学名が示すように、鮮やかな赤い大輪の花を付けるのが特徴。10枚の花弁でできているように見えるが、うち5枚は萼が変化したもので、萼片も花弁とほぼ同じ色と形になっている。同じ種小名を持つ植物にクンシラン(クリヴィア・ミニアタ)やサルビア・ミニアタ(別名ベリーズセージ)などがある。

 和名のトケイソウはトケイソウ属の植物の総称だが、狭義では白い花弁・萼片と放射状に広がる青い糸状の副花冠が美しい「P.caerulea(カエルレア)」を指す。3つに分かれた雌しべの柱頭を時計の長針・短針・秒針に、副花冠を文字盤に見立ててトケイソウと名付けられた。ミニアタ種はそのカエルレア種ほど特徴が鮮明ではないが、その分、花弁・萼片の燃えるような赤色が際立つ。赤色系にはほかにコッキネア種(ベニバナトケイソウ)やラセモサ種(ホザキトケイソウ)などがある。

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<ワタゲツルハナグルマ(綿毛蔓花車)> 南アフリカ原産の多年草

2023年06月28日 | 花の四季

【舌状花も内側の筒状花も明るい黄色】

 南アフリカ・ケープ地方原産のキク科ワタゲハナグルマ属(アークトセカ属)の多年草。4~9月頃、花茎の先に直径4~7㎝の明るい黄花を一つ付ける。草丈は20~40㎝。花も葉も一見タンポポの花によく似るが、舌状花のみのタンポポと違って舌状花の内側に筒状花があり、花もタンポポより一回り大きいといった違いがある。

 葉はロゼット状に広がり、葉裏には白い綿毛が密生する。繁殖力旺盛で、花後にランナー(匍匐枝)が地表を這い、節から根を出して広がる。ハナグルマは明治末期に渡来し「花車」と呼ばれていたガーベラのこと。和名はその花姿が似ていることなどから「綿毛蔓花車」と名付けられた。学名は「Arctotheca prostrata(アークトセカ・プロストラタ)」。種小名プロストラタはラテン語で「平伏の」や「地を這う」を意味する。

 よく似た植物に属名にもなっているワタゲハナグルマがある。学名は「A.calendula(カレンデュラ)」。同じ南アフリカ原産で繁殖力も強く、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどに帰化し、日本でも分布域を次第に広げている。花径は5㎝前後。ワタゲツルハナグルマが筒状花、舌状花とも鮮やかな黄色なのに対し、こちらは中心部の筒状花が暗紫色という特徴を持つ。

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<ヨウラクボク(瓔珞木)> ミャンマー原産の熱帯花木

2023年06月21日 | 花の四季

【華麗な花序を仏像の装身具「瓔珞」に見立て】

 マメ科ヨウラクボク属の1属1種の熱帯常緑花木で、原産地のミャンマーでは高さが10~15mにもなる。垂れ下がる花序は長さが60~90㎝もあって、マメ科植物の中では最長。その花序に艶やかな朱色の5弁花を多数付ける。上側の花弁には黄色い縞模様が入り、花の中心から1本の雌しべと複数の雄しべが勢いよく飛び出し反り返る。

 和名は下垂する華麗な花序を、仏像の首飾りなどの装身具や仏堂・仏壇の荘厳具として用いられる「瓔珞(ようらく)」に見立てて名付けられた。英名では優美な花姿から「Pride of Burma(ビルマの誇り)」や「Queen of Flowering Tree(花木の女王)」と呼ばれている。

 学名は「Amherstia nobilis(アマースティア・ノビリス)」。属名は19世紀のベンガル(インド)総督の夫人で、博物学者だった英国人サラ・アマーストへの献名。種小名は「気高い」を意味する。アマースト夫人の名前はキジ科の鳥ギンケイ(銀鶏)にも残されている。ギンケイの英名は「Lady Amherst’s Pheasant(レディ・アマーストの雉)」で、学名(種小名)もアマースト夫人の名前に由来する。

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<ルリヂシャ(瑠璃苣)> 星形の鮮やかな青花

2023年06月15日 | 花の四季

【地中海沿岸原産、全草に白い剛毛】

 ムラサキ科ルリヂシャ属の一年草。和名では「ルリジサ」「ルリヂサ」とも呼ばれる。その名は瑠璃色の花を付けるチシャ(=レタス)から。ただ「ボリジ」という英名のほうで広く親しまれている。原産地はヨーロッパ南部の地中海沿岸地域。こぼれ種で簡単に殖えることもあって世界各地で野生化、南北アメリカやオーストラリアなどで帰化している。

 草丈は20~80㎝。茎先の集散花序に径2~3㎝の星形の花をうつむき加減に十数輪付ける。花色は紫色を帯びた鮮やかな青色が一般的だが、白や赤紫色も。青花の汁はかつて聖母マリアの青い衣装を描く絵の具として使われ「マドンナ・ブルー」と呼ばれた。茎や葉、蕾など株全体に白い剛毛が密に生える。茎は中空。若葉にはキュウリのような香りがある。

 学名は「Borago officinalis(ボラゴ・オフィシナリス)」。属名はラテン語で「剛毛」、種小名は「薬効の」を意味する。薬用や食用植物として長い栽培の歴史を持ち、全草がサラダやハーブティーなどに、種子から抽出した油は皮膚病などに利用されてきた。ただ、ルリヂシャには少量ながら肝臓障害の原因となるアルカロイド系成分を含むことが判明、「飲食には適さない」と注意喚起する声も出ている。

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<ケショウボク(化粧木)> 花を包む苞葉が鮮やかなピンク色に

2023年06月02日 | 花の四季

【メキシコなど中南米原産の熱帯性植物】

 高さ30~100㎝のトウダイグサ科ケショウボク属(ダレカンピア属またはダレシャンピア属)の常緑小低木。原産地は中南米のメキシコ~コスタリカで、日本には明治時代中頃に入ってきた。開花期は4月から10月頃まで。この花木の魅力は和名が示すように、花がお化粧をしたように綺麗なピンク色に染まること。

 ただ花びらのように見えるのは葉が変化した苞葉(総苞)と呼ばれるもの。2枚の苞葉の真ん中に咲く花は小さな雄花と雌花があるだけで花弁がない。苞葉に比べると目立たないが、芳香を放つのが特徴。葉は長さ10~20㎝の匙の形のような濃い緑色、縁はやや波打つ。ケショウボクには「フウチョウガシワ(風蝶柏)」という別名もある。

 学名は「Dalechampia spathulata(ダレカンピア・スパツラタ)」。属名は16世紀のフランスの医師・植物学者のジャック・ダレシャン(1513~88)の名前に因む。ダレシャンは約2700種の植物図を収めた著作『一般植物誌』で知られる。種小名スパツラタは「匙形の」を意味する。シノニム(同種異名)に「roezliana(レツリアナ)」がある。

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<ロウソクノキ(蝋燭木)> 細長い果実をロウソクにたとえ

2023年05月30日 | 花の四季

【花が幹から直接咲いて結実する“幹生花”】

 パナマなど中南米の熱帯地域原産のノウゼンカズラ科ロウソクノキ属の常緑樹。高さは6~7mにもなる。花の後に細長いツヤのある果実がぶら下がって実る。長さは30㎝ほど。原産地では1m前後にもなるという。その姿形から英語名が「candle tree(キャンドル・ツリー)」となり、和名もその直訳で「ロウソクノキ」と名付けられた。

 大きな特徴は花や実が太い幹や枝に直接付く“幹生花(かんせいか)”であること(果実を指す場合は“幹生果”)。幹生花は熱帯の樹木に多い。ロウソクノキのほかにもカカオやパパイヤ、ドリアン、パンノキ、タコノキ、ソーセージノキ、ホウガンノキなどがある。日本では枝にびっしり花を付けるハナモモやハナズオウなど。桜のソメイヨシノもしばしば古木の幹に直接愛らしい花を数輪付ける。これは“胴吹き桜”と呼ばれている。

 花は直径5㎝ほどの筒状花。黄みを帯びた乳白色で、花びらの縁はフリル状に波打つ。夜に咲いてコウモリなどに花粉を媒介してもらう。学名は「Parmentiera cereifera(パルメンティエラ・ケレイフェラ)」。属名はフランスの農学者A.A.Parmentier(パルメンティエ、1737~1813)の名前に因む。種小名は「ワックスを持つ」「蝋を有する」を意味し、果実の特徴を表す。果実は原産地で主に家畜の飼料として利用されているという。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストには絶滅危惧種(EN)として登録されているそうだ。

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