【第2回定演、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」も】
2年前に創設された奈良県立ジュニアオーケストラの第2回定期演奏会が30日、奈良県文化会館で開かれた。団員は小学生から高校生までの44人。国内外で活躍する若手チェリスト横坂源をゲストに迎えてハイドンの「チェロ協奏曲第1番」を協演したほか、おなじみの「となりのトトロ」やブリテン作曲の難曲「シンプル・シンフォニー」なども披露、みずみずしい熱演に会場からは惜しみない拍手が送られた。
横坂源は1986年、新潟市生まれ。桐朋学園女子高校を卒業後、ドイツのシュトゥットガルト国立音大などで研鑽を積む。13歳の時、東京交響楽団とサン=サーンスのチェロ協奏曲を協演し、15歳の時にはチェリストへの登竜門、全日本ビバホール・チェロコンクールで最年少優勝。2008年、斎藤秀雄メモリアル基金賞受賞、09年、全ドイツ学生音楽コンクール第1位、さらに10年にはミュンヘン国際音楽コンクール第2位と、世界的チェリストへの階段を着実に上っている。
ハイドンのチェロ協奏曲はドボルザークと並ぶ傑作。英国の天才チェリスト、故ジャクリーヌ・デュ・プレが夫のダニエル・バレンボイム指揮/イギリス室内管弦楽団と協演した名盤の印象が深い。高度な技巧を要する曲だが、横坂はチェロに身を委ねるように目を閉じてチェロの豊かな表情を存分に引き出した。実態〝弦楽アンサンブル〟のジュニアオーケストラには奈良交響楽団からホルンとオーボエが応援に加わったが、リズムをほぼ正確に刻みチェロとの掛け合いもまずまずだった。
横坂は協奏曲に続いてスペインのチェリスト、カサド作曲の「無伴奏チェロ組曲」を演奏。ここでも躍動感あふれる名演でチェロの魅力をたっぷり聴かせてくれた。ジュニアオーケストラはこのほかヘンデルの「アルキーナ組曲」、スタジオジブリ作品より「君を乗せて」「いつも何度でも」など4曲、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」などを演奏し、最後は「上を向いて歩こう」で締めくくった。
ジュニアオーケストラの音楽監督・指揮者の梅沢和人(元大阪フィルハーモニー・コンサートマスター)は横坂の演奏を〝神業〟と称えていたが、若いメンバーにとってもこの協演は今後の大きな励みになることだろう。県立オーケストラの創設は既存オーケストラへの補助金カットや市音楽団の存廃問題などで揺れる大阪への1つの〝アンチテーゼ〟としても興味深い。無報酬とプロの楽団という違いはあるが……。成長途上のジュニアオーケストラのさらなる飛躍を期待したい。