く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<興福寺放生会> 在来種のモツゴ約200匹を猿沢池に放流

2020年04月18日 | 祭り

【「生態系を壊す」との批判を受け金魚に代えて】

 奈良市の興福寺で17日、殺生を戒めて猿沢池に魚を放つ伝統行事「放生会(ほうじょうえ)」が営まれた。昨年までは信徒から寄進された大量の金魚を放流していたが、今年から在来種のモツゴの放流に切り替えた。もともと自然界に生息しない金魚の放流は生態系を壊すといった批判が出ていることを踏まえたもの。今年は新型コロナウイルスの感染防止のため、放流の規模も一般の参加者のないこじんまりとしたものになった。

 放生会は午後1時、国宝南円堂のすぐ北側にある一言観音堂で始まった。お堂の前には近畿大学農学部の学生たちによって数日前に捕獲されたモツゴ約200匹が泳ぐ大きな桶が2つ。僧侶たちの読経は小一時間ほど続いた。この法要は「生きとし生けるものは全ていつか仏になれる」という教えに基づき魚たちに戒を授けるというもの。この後、僧侶ら寺関係者は石段を下って猿沢池のほとりへ。奈良を代表する観光名所にもなっているこの池は奈良時代の749年(天平21年)に放生池として造られたともいわれる。

 僧侶たちは般若心経を唱えた後、プラスチック製の2本のスロープ(長さ約4m)に桶を傾けて魚たちを池の中に戻した。昨年までは約2000匹の金魚をちびっ子たちも加わって手桶でにぎやかに放流していた。ところが今年は魚の入った桶は2つだけ、放流するのも僧侶のみ。観光客もほとんどいない中での放流はあっという間に静かに終わってしまった。

 金魚の放流については日本魚類学会が〝第3の外来魚〟として生態系に悪い影響を及ぼすとして問題提議。放流ガイドラインを作ったり、「第3の外来魚問題―人工改良品種の野外放流をめぐって」をテーマにシンポジウム(2017年)を開いたりするなど警鐘を鳴らしてきた。猿沢池での金魚放流については「カメや鳥の餌になってかわいそう」といった声もあったそうだ。この猿沢池では一時北米原産のアカミミガメが爆発的に増殖、カメがハトを襲う衝撃的な場面に出くわしたこともあった(2012年8月12日のブログで紹介)。その後、水抜きによる駆除などで激減した。ただ、この日放生会の前に池をぐるっと1周したところ、7匹のカメを目撃した(多分全てアカミミガメ?)。この日放ったモツゴたちがカメの餌にならず生きながらえますように。

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<ムラサキサギゴケ(紫鷺苔)> 一面を紫色に染める春の野草

2020年04月14日 | 花の四季

【まれに白花のものも、よく似た仲間にトキワハゼ】

 ハエドクソウ科(旧ゴマノハグサ科)サギゴケ属の多年草。本州、四国、九州の田畑の畦や河川敷など、やや湿った明るい草地に生える。朝鮮半島や中国の南部、台湾にも分布する。花期は4~5月。草丈は5~15cmで、花冠の長さが1.5~2cmほどの紫色の唇形花を付ける。上唇は2裂してウサギの耳のように立ち上がり、大きな下唇は3裂し、中央基部に黄褐色の斑点模様が入る。

 サギゴケのサギは花の姿を羽を広げた鳥のサギに見立てたもの。ゴケは匍匐枝を伸ばしコケのように地面を覆う様から。まれに白い花もあり、一般的な紫花と区別するためシロバナサギゴケまたは単にサギゴケと呼ぶことがある。ムラサキサギゴケの学名は「Mazus miquelii(マズス・ミケリイ)」。牧野富太郎博士(1862~1957)が命名した。属名の語源は「乳頭突起」を意味するギリシャ語から。この属の植物には花冠下部に突起があることによるという。種小名はオランダの植物分類学者F.A.W.ミケル(1811~71)の名に因む。

 同属で花がよく似た植物にトキワハゼ(常磐爆)がある。学名は「Mazus pumilus(マズス・プミルス)」。こちらは常緑1年草で、花期が初春から晩秋まで長いのが特徴。花冠は径が約0.5cm、長さ約1cmと、ムラサキサギゴケに比べるとやや小さい。種小名プミルスも「小さい・低い」を意味する。茎が地面を這わずに直立するのもムラサキサギゴトとは大きく異なる。名前のハゼは蒴果がはぜて種子を勢いよく飛ばすことに由来する。

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<ヤマモモ(山桃・楊梅)> 雌雄異株、実は食用・樹皮は薬用に

2020年04月13日 | 花の四季

【高知県の県花、徳島県の県木】

 ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑高木で、樹高は大きくなると20mほどにも達する。関東南部以西の本州と四国、九州、沖縄の山野に自生し、朝鮮半島南部、中国中南部、台湾、フィリピンにも分布する。名前は山に生え、食用にもなる小さなモモのような果実を付けることから。分類上、バラ科サクラ属の果実のモモとは全く関係がない。3~4月頃、花被がなく苞に包まれた小花を数珠玉状に付ける。雄花序の長さは2~4cm、雌花序は1cm前後と短い。雌雄異株で、雌木だけが実を付ける。

  初夏に直径1~2cmの実が暗紫紅色に熟す。キイチゴに似た表面がブツブツの球形で、マツヤニのような匂いがし口にすると甘酸っぱい独特の風味がする。日持ちしないため果実がそのまま広く流通することはなく、果実酒や砂糖漬け、ジャムなどに加工されることが多い。乾燥させた樹皮は「楊梅皮(ようばいひ)」と呼ばれる生薬として、打ち身や下痢止め、鎮痛などに用いられる。また樹皮は古くから黒ずんだ褐黄色に染める染料としても利用されてきた。その色は「媚茶(こびちゃ)」と呼ばれる。

 国内では四国の徳島県や高知県を中心に「瑞光」「森口」「亀蔵」といった実の大きな品種の栽培が盛ん。江戸時代の阿波藩時代に御禁木として保護されたという徳島県ではヤマモモが県木になっており、高知県でも県花になっている。このほか市の木などに定めている自治体も多い。愛知県知多市、徳島県小松島市、香川県丸亀市、高知県南国市、山口県下松市、福岡県那珂川市、宮崎県西都市……。静岡県伊東市の城ケ崎海岸にある蓮着寺のヤマモモの巨樹は国の天然記念物に指定されている。「山桃の日蔭知らで通りけり」(前田普羅)

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<キランソウ(金瘡小草)> シソ科の野草、アジュガの仲間

2020年04月08日 | 花の四季

【怖そうな「ジゴクノカマノフタ」という別名も】

 日当たりのいい草地や道端などでごく普通に見かけるシソ科キランソウ属の多年草。中国や朝鮮半島にも分布する。茎は四方に伸び、葉が地面にへばりつくように広がる。学名は「Ajyuga decumbens(アジュガ・デクムベンス)」。この種小名も「横臥(おうが)した」を意味する。花期は3~5月ごろで、濃い紫色のシソ科特有の唇形花を付ける。上唇は2裂し、下唇は3裂して大きく開く。

 漢字表記の「金瘡小草」は中国名から。「金襴草」や「紫藍草」とも書く。キランソウは古くから虫刺され、切り傷、去痰、解熱、下痢止めなどに効く薬草として用いられてきた。生の茎葉をもんだり、乾燥したものを煎じて服用する。漢方の生薬名は「筋骨草(きんこつそう)」。弘法大師が薬草として広めたとして「弘法草」と呼ばれたり、医者がいらないほどの薬効があるとして「医者倒し」や「医者殺し」などと呼ばれたりすることも。

 ただキランソウの別名としてよく知られているのは「ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)」。その由来ははっきりせず、墓地でよく見られ地面に蓋をするように広がる様からとか、幅広い薬効から死にかけた病人を助け地獄の釜に蓋をしてくれるからとか言われている。しかし、もうひとつぴんと来ない。誰がなぜこんな変てこな名前を思いついたのだろうか。近縁種で茎が立ち上がる北欧原産のセイヨウジュウニヒトエ(西洋十二単、通称アジュガ)は「セイヨウキランソウ」とも呼ばれている。「きらん草古代紫展げけり」(後藤比奈夫)

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<春日大社> 水谷神社で鎮花祭、新型コロナ終息を祈って

2020年04月06日 | 祭り

【狂言の奉納は感染拡大防止のため中止に!】

 春日大社の摂社水谷(みずや)神社で5日、例祭の鎮花祭が執り行われた。水谷神社は若草山と春日山の間を流れる水谷川のほとりに鎮座し、祭神として素戔鳴命などを祀る。鎮花祭では神前に桜の花を供え、新型コロナウイルスの早期終息などを願う祝詞を奏上。この後、巫女4人が雅楽に合わせて古くから伝わる社伝神楽を奉納した。

 本殿の手前にはイブキ(ビャクシン)の巨樹。ほとんど枯れ死状態で斜めに傾いているが、樹高は12.5m、幹周りは6.5mほどもあるそうだ。空洞になったその真ん中から杉の幹が直立、古くから「水谷神社の寄生木(やどりぎ)」として知れ渡っているそうだ。鎮花祭は午前10時に始まり、ほぼ1時間で終了した。この後、例年なら午後1時から春日大社禰宜座による大蔵流の狂言が奉納される。

 少々間が空くため、神楽を見届けた後、万葉集に登場する草花を集めた万葉植物園へ。ぐるっと一周したが、同園自慢のフジの花はまだ芽吹き始めたばかり。この後、なお時間があるので東大寺の二月堂に向かった。その途中にある水谷神社に再び差し掛かったところ、本殿の向かって右側に立て看板が。そこには2行にわたってこう書かれていた。「新型コロナウイルス感染拡大防止のため 本年の水谷狂言奉納は中止となりました」

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