く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<奈良公園> 南端に「瑜伽山園地」が開園

2020年05月29日 | メモ

【「旧山口氏南都別邸庭園」を復元整備】

 奈良県が奈良市高畑町裁判所跡地に整備を進めてきた「瑜伽山(ゆうがやま)園地(旧山口氏南都別邸庭園)」がこのほど開園した。奈良公園といえば、シカがあちこちで遊ぶ春日野園地や飛火野園地など広大な芝生公園を連想するが、この新しい園地は巨石を使った滝や池、古い石灯籠や十三重の石塔などを随所に配置した回遊式の和風庭園。東側半分は無数の孟宗竹が林立する竹林になっており、周囲も屋根付きの築地塀で囲まれ、これまでの開放的な園地とは趣を異にする。

 場所は浮見堂で有名な鷺池のすぐ南側一帯。ここには大阪で銀行を経営していた実業家で〝山口財閥〟の当主、4代目山口吉郎兵衛(1883~1951)の別荘があった。戦後は国有地になり1995年までは奈良家庭裁判所分室・官舎として使われていたが、2005年に奈良県が買い取って活用方法を検討していた。その後、発掘調査の結果、庭園遺構としての価値が高いと分かったことから、16年から約6億円を投じ復元整備に取り組んでいた。

 山口氏は陶磁器など古美術品の収集家として知られ、同時に茶道家として「滴翠」という雅号も持っていた。別荘内には庭園の一角に茶室も設けられていた。〝高畑サロン〟と呼ばれた小説家志賀直哉の旧居が近くにあり、別荘には志賀直哉や武者小路実篤ら文化人もしばしば訪れたという。兵庫県芦屋市にあった洋館の邸宅は山口氏の没後、コレクションを一般公開するため改装されて「滴翠美術館」になっている。

 瑜伽山園地の全体面積は約1.3ヘクタール。このうち約0.75ヘクタールの庭園部分が一足早く開園した。小高い瑜伽山の自然の高低さを生かした庭園で、高さ2mを超える巨石を立てた滝から水が流れ落ち、石組みの水路を伝って横に長い池に流れ込む。池には平たい石橋と新しい木製の反橋。歴史を感じさせる古い灯籠の中には火袋の側面などにシカを彫ったものもあった。池の東側から竹林に沿って石畳の園路が緩やかに上る。天を衝くほど高い孟宗竹が風に揺れる光景は実に圧巻だった。

 新園地内では県の公募に応じた民間事業者が建設・運営する交流・飲食施設と高級宿泊施設もほぼ完成、6月5日のオープンに向け開業準備に追われていた。宿泊施設「ふふ奈良」は建築家隈研吾氏のデザイン。客室は5タイプ全30室で、宿泊料金はネットによると1泊2人で6万2000円~18万円(税別)。この施設を巡っては近隣住民が都市公園法に違反するとして、県を相手取り宿泊施設設置許可の取り消しを求め提訴していた。同法施行令は都市公園内の宿泊施設について「特に必要があると認められる場合のほかこれを設けてはならない」と制限している。ただ奈良地方裁判所は今年3月この請求を棄却した。

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<ブドウ・デラウェア> 語源は米オハイオ州の都市名

2020年05月26日 | 花の四季

【開花前後の植物ホルモン剤処理で種なしに】

 ブドウは古くから品種改良が繰り返され、その品種数は今や世界で1万種を超えるという。大別すると欧州種、米国種、欧米雑種に分類される。欧州種のブドウは一般に皮が薄く粒が大きい。ただ乾燥を好み病気に弱いため、日本では栽培しにくいといわれる。一方、米国種は湿潤に強く病気になりにくいが、ブドウの皮が厚く粒も小さめ。欧米雑種には両者の長所を引き継いだものが多く、国内で広く栽培されているブドウにも欧米雑種の品種が目立つ。国内で作出された巨峰、ピオーネ、シャインマスカットなどはいずれも欧米雑種。アメリカ生まれのこのデラウェアも欧米雑種の一つと位置づけられている。

 デラウェアは米国中西部のオハイオ州で〝偶発実生〟として偶然発見され、165年前の1855年に同州デラウェア市で新品種「デラウェア」として発表された(米東部のデラウェア州とは無関係)。日本に入ってきたのは明治初期の1872年。5~6月ごろ長さ6~8cmの房状の花穂(かすい)に、花弁がない雄しべと雌しべだけの小花を付ける。ブドウの中では熟期が早い極早生品種で、7~8月ごろには赤紫色に熟す。ハウスものは5月頃から出回り始める。種なしブドウとして親しまれているが元々は種あり。開花前後に手作業で1房ずつジベレリンという植物ホルモン剤の溶液に浸すことで、初めて種なしブドウになる(十数年前このジベレリン処理に挑戦してみたが、タイミングが合わなかったのか、うまくいかなかった。というわけで、うちのデラウェアはずっと種あり)。

 デラウェアは国内の栽培面積で長く他品種を圧倒していた。農林水産省の調査では約30年前の1989年、デラウェア(全国シェア38.7%)は2位の巨峰(16.6%)を大きく引き離していた。ところが2016年には巨峰(30.0%)にトップの座を奪われ、デラウェア(16.0%)はピオーネ(16.5%)にも抜かれ、さらにシャインマスカット(8.7%)など新興勢にも激しく追い上げられている。出荷量も1980年代に比べると半減。その中でデラウェア生産県として存在感を増しているのがサクランボで有名な山形県だ。栽培面積(2015年度)は山形県(全国シェア43%)が山梨県(19%)や大阪府(12%)を大きく上回る。県南部の置賜地方で栽培される「山形おきたま産デラウエア」は2006年〝地域団体商標〟として登録された。

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<ソヨゴ(冬青)> 雌雄異株、秋には雌株に赤い実

2020年05月25日 | 花の四季

【語源は葉っぱが風に「そよぐ」様から】

 モチノキ科の常緑広葉樹で、モチノキやクロガネモチなどと同じモチノキ属の仲間。国内では主に東海以西の山地に自生し、中国中南部や台湾にも分布する。大きなものは高さが10m以上にもなる。庭木として人気が高い。樹木の印象が涼やかで、生長が緩く剪定をあまり要しないこと、害虫がつきにくいことなどが人気の理由。幹が複数本の株立ち、または幹1本の単株仕立てとする。

 5~6月頃、若い本年枝の葉腋から長い花柄を伸ばし、直径4ミリほどの白い小花を付ける。雌雄異株で、花の数は雌株より雄株のほうが多い。花弁は通常4~5枚。写真の株立ちのソヨゴには十字の4弁と星形の5弁の花が混在していた。秋になると径7~8ミリの実が赤く熟す。ただし、その実を楽しめるのは雌株だけ。雄株には実がならない。学名「Ilex pedunculosa(アイレックス・ペドゥンクロサ)」。種小名は「花柄のある」を意味する。

 ソヨゴという和名の由来は葉っぱが風にそよそよと「戦(そよ)ぐ」様子から。また漢字表記「冬青」は漢名から。寒さの厳しい冬でも葉が青々としていることを表す。ただ中国で冬青という場合、正確には同じモチノキ属のナナミノキ(七実の木)を指すそうだ。ソヨゴには「フクラシバ」という別称も。これは「膨ら柴」で、葉を火であぶると膨らんで音を立て爆ぜることによるという。えっ、本当? というわけで実際にあぶってみた。残念ながら葉の膨らみはよく確認できなかったが、確かにパン・パンとはじける音はした。葉は褐色の〝ソヨゴ染め〟の染料にもなる。

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<奈良県立美術館「熱い絵画」展> 3館の〝大橋コレクション〟一堂に

2020年05月23日 | 美術

【33人の作品90点…桂ゆき・前田常作・草間彌生・白髪一雄】

 臨時休館中だった奈良県立美術館が19日に開館、特別展「熱い絵画―大橋コレクションに見る戦後日本美術の力」(7月5日まで)が開幕した。この特別展は当初4月18日から始まる予定だったが、コロナの影響でほぼ1カ月遅れとなった。奈良県立美術館と国立国際美術館、京都工芸繊維大学美術工芸資料館の3館が分散所蔵する大橋コレクションの中から、戦後間もない1950~60年代の選りすぐりの作品90点が並ぶ。

 大橋コレクションの収集者は1928年大阪に大橋焼付漆工業所(現大橋化学工業)を創業した大橋嘉一氏(1896~1978)。1950年代後半から70年代初めにかけ絵画や版画、彫刻など現代美術作品を精力的に収集した。総数は約2000点に及ぶ。それらの作品群は没後、奈良・大阪・京都の3館に寄贈された。このうち奈良県立美術館は絵画約500点を収蔵する。京都工芸繊維大学は大橋氏が卒業した旧制京都高等工芸学校の後身。コレクションの一部とはいえ、3館の作品が一堂に会するのは今回が初めてという。

 館内は関連展示も含め6つのコーナーで構成する。第1展示室には戦前から創作活動に取り組んでいた世代の作家、桂ゆきや小山田二郎、杉全直(すぎまたただし)、須田剋太らの作品が並ぶ。具象より抽象中心ということで少し身構える部分もあったが、最初の桂のユーモラスな作品「ふくろう」に癒やされ心が軽くなった。桂は終戦直後の1947年に旗揚げした「女流画家協会」の設立者の一人。第2展示室は戦後本格的に創作を始めた江見絹子、津高和一、前田常作らの作品を取り上げる。江見は1962年、ベネチア・ビエンナーレに初の日本代表の女性作家として参加した。小説家荻野アンナは長女。津高は阪神大震災で自宅が倒壊し不慮の死を遂げた。

 第3展示室で紹介するのは日本を脱出し欧米の前衛美術の波に身を投じた今井俊満や草間彌生、宮脇愛子らの作品。草間は無限増殖する水玉やカボチャの作品で人気を集めているが、展示作は25歳の頃の初期の小品。青や緑色にぼんやり輝く光の輪の中に、下から細い線が直立し先端から数本のジグザグの線が伸びる。なんとも不思議な構図と色使いだ。第4室には岩崎巴人、大野俶嵩(ひでたか)、長崎莫人ら日本画の伝統に拘泥せず変革に挑戦した作家たちの作品が並ぶ。

  第5室は大阪の前衛集団「具体美術協会」を代表する白髪一雄と元永定正の2人の作品だけで全スペースを占める。白髪は素足で絵具を塗り付ける躍動的なフット・ペインティングで有名。大橋コレクションの白髪作品約180点のうち121点を奈良県立美術館が所蔵しているそうだ。第6室は「奈良の現代作家―館蔵品から」と題した関連展示コーナー。大橋コレクションには含まれないが、大橋氏が生前に東京藝術大学に寄付して設けられた「大橋賞」の受賞者で奈良出身の絹谷幸二や金森良泰の作品などを展示している。館内には戦後の混乱期の中で新しい価値観や存在感を求めて模索し挑戦する画家たちの息吹があふれていた。

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<ノイバラ(野茨、野薔薇)> 野山に自生するバラの原種

2020年05月22日 | 花の四季

【国内産バラ苗の多くが接ぎ木用台木として使用】

 バラ科の落葉低木で、全国各地の山野や河岸などに自生し、朝鮮半島や台湾などにも分布する。高さは2m前後。5~6月頃、枝先の円錐花序に径2cmほどの白い5弁花を付ける。学名は「Rosa multiflora(ロサ・ムルティフローラ)」で、種小名も「多数花の」を意味する。よく似た仲間に花がやや小型のヤブイバラ、花が大きく淡紅色のツクシイバラ、日本海側に自生するミヤコイバラ、葉に光沢があるテリハノイバラなど。

 ノイバラは秋になると小さな赤い実を結ぶ。漢方では「営実(えいじつ)」と呼び利尿剤などになるそうだ。国内で生産されるバラ苗の多くに、このノイバラが接ぎ木用の台木(だいぎ)として使われる。これはノイバラの根を借りることで、日本の気候風土に合った強い苗木を育てることができ早い成長が見込めるため。一方、イングリッシュローズなど外国産輸入苗は台木に「Rosa laxa(ロサ・ラクサ)」などヨーロッパ原産の野バラが使われることが多い。それらの輸入苗は高温多湿にやや弱く成長も緩やかだが、その分株がコンパクトにまとまって花付きもいいという利点がある。

 ノイバラの古名は「うばら」または「うまら」。万葉集では防人の歌の中で「うまら(万葉仮名・宇万良)」として1首詠まれている。「道の辺の茨(うまら)の末(うれ)に這(は)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」(巻20-4352、丈部鳥=はせつかべのとり)。俳句では「花茨」「枯茨」「茨の実」などが季語になっている。「花いばら故郷の路に似たるかな」(与謝蕪村)

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<イヨカン(伊予柑)> 生まれは山口、育ちは愛媛・松山

2020年05月18日 | 花の四季

【65年前発見の突然変異による〝枝変わり〟が転機に】

 イヨカンの主産地はその名が示すように〝柑橘王国〟といわれる愛媛県。生産量は全国の約9割と圧倒的なシェアを誇る。高さ3~4mの常緑低木で、5月頃、枝先に甘い香りの真っ白な5弁花を付ける。花径は約4cmと、キシュウミカン(コミカン)のほぼ2倍の大きさ。イヨカンはミカン類とオレンジ類の性質を併せ持つことから、両者の交雑種ではないかとみられている。

 イヨカン発祥の地は山口県。今から約130年前の1886年、現在の萩市内の農園で〝偶発実生〟として発見された。その苗木を松山市の三好保徳さんが入手したのを機に、市内の柑橘農家の間で栽培が広がった。以来「伊予蜜柑」と呼ばれていたが、その名前では愛媛県産ウンシュウ(温州)ミカンと誤解を招くとして、昭和初期から「伊予柑」と呼ぶように。ただ果実自体の人気は酸味が強いことなどもあっていまひとつだったという。

 転機となったのは65年前の1955年のこと。松山市郊外の果樹園で宮内義正さんが他の枝より大きな実を付けた〝枝変わり〟を偶然見つけた。栽培を重ねた結果、在来種より甘く実付きもいいことから、1966年に「宮内伊予柑」として種苗登録した。近年、果皮に光沢があって美しい「大谷伊予柑」や早生系の「勝山伊予柑」など新品種が次々に生まれている。だが「宮内伊予柑」の栽培量は今も他を圧倒する。〝枝変わり〟発見からちょうど60年の2015年、松山市内では「宮内いよかん還暦祭」と銘打った記念イベントが開かれた。

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<シロヤブケマン(白藪華鬘)> 先端が紅紫色の小花を横向きに

2020年05月16日 | 花の四季

【ケシ科の野草、ムラサキケマンの白花種】

 ケシ科キケマン属の越年草で、全国各地の草地や畦道、野山などのやや湿った場所でごく普通に目にすることができる。台湾や中国などにも分布する。草丈は20~50cm。この植物は花全体が紫色のムラサキケマン(別名ヤブケマン)の白花種で、4~6月頃、花茎上部の総状花序に長さ1~2cmの先端の花弁が紅紫色の筒状の小花を密に付ける。筒の奥の袋状の距(きょ)には蜜腺がある。

 ムラサキケマンの学名は「Corydalis incisa(コリダリス・インキサ)」。属名の語源はギリシャ語の「雲雀(ヒバリ)」から。種小名は「鋭く裂けた」を意味し、葉に深く切れ込みが入っている様子を表す。シロヤブケマンにはこの種小名の後ろに「f. pallescens(パレスセンス)」がくっ付く。「f.」はラテン語の「forma(品種)」の略。パレスセンスは「淡白色の」を意味する。ムラサキケマンの白花種にはこのシロヤブケマンのほかにもう一種ある。「ユキ(雪)ヤブケマン」と呼ばれるもので、こちらは花弁全体が真っ白になる。

 和名後ろの「ケマン」は金属や革に天女や花鳥などを透かし彫りして仏殿の内部を飾る荘厳具の華鬘のこと。同じケシ科植物のケマンソウ(別名タイツリソウ=鯛釣り草)の花の形がハート形で華鬘に似ていることから名付けられた。ムラサキケマンはアゲハチョウの仲間、ウスバシロチョウの幼虫の食草になっている。ただ全草にプロトピンという有毒成分を含んでおり、誤って口にすると嘔吐や心筋麻痺により痙攣などを起こす恐れがある、とのことなのでご用心。

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<キシュウミカン(紀州蜜柑)> 温州ミカンの種子親?

2020年05月15日 | 花の四季

【「コミカン」とも、紀伊国屋文左衛門が船で江戸へ】

 ミカン科ミカン属の常緑低木。5月頃、径2cmほどの真っ白な5弁花をびっしり付け、秋に手のひらにすっぽり収まりそうな小ぶりの果実が実る。柑橘類の中では最も小さく「コミカン(小蜜柑)」とも呼ばれる。果皮が薄く酸味が弱くて甘いが、房ごとに種があるのが特徴。今でこそミカンといえばウンシュウ(温州)ミカンを指すが、明治の中頃まではこれが柑橘類の代表格だった。「種なし」のウンシュウミカンは子孫が途絶えるに通じることもあってその当時忌み嫌われていたそうだ。

 キシュウミカンが中国南部から日本に渡来したのは700年ほど前のこと。現在の熊本・八代地方に伝わり、その後、安土桃山時代に和歌山・有田地方に移植されて盛んに栽培されるようになった。元禄時代に紀伊国屋文左衛門が嵐の中を船で江戸まで運んで大金を手にしたとされるのもこのミカンだった。学名は「Citrus kinokuni(シトラス・キノクニ)」。鹿児島県の桜島で栽培されている「桜島小みかん」が世界一小さいミカンとしてギネスブックに認定されたが、これもキシュウミカンとほぼ同一の品種とみられている。

 キシュウミカンはその後登場したより大きなウンシュウミカンに圧倒され最近では影が薄い。ただ、今も和歌山や鹿児島などで栽培され、葉付きミカンはダイダイの代わりに正月飾りなどにも使われている。鹿児島では10年ほど前から「桜島種なし小みかん」も流通しているそうだ。そのキシュウミカンが実はウンシュウミカンの〝産みの親〟だったのかもしれない。国立研究開発法人農研機構が4年前の2016年12月、DNA鑑定の結果としてキシュウミカンがウンシュウミカンの種子親(母親)、同じ柑橘類の仲間のクネンボが花粉親(父親)と推定されると発表したのだ。

 キシュウミカンは老木になっても樹勢が衰えることなく、樹齢を重ねた巨木が各地に残る。大分県津久見市の「尾崎小ミカン先祖木」(国指定天然記念物)は樹齢800年といわれ柑橘類の中で国内最古。静岡市の駿府城公園の「家康手植えのミカン」(静岡県の天然記念物)は徳川家康が将軍職を退いて駿府城に隠居の折、紀州藩から献上されたという。愛媛県今治市の「名駒のコミカン」と「盛口の小ミカン」はいずれも県指定の天然記念物。「潮風の止めば蜜柑の花匂ふ」(瀧春一)

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<ハゴロモ(羽衣)ジャスミン> 清楚な花から甘~い芳香

2020年05月13日 | 花の四季

【ジャスミンの仲間、原産地は中国雲南省】

 モクセイ科ソケイ属の常緑つる性低木。中国南西部の雲南省の原産で、オーストラリアやニュージーランドでは帰化植物として各地にはびこっているそうだ。日本への渡来時期は不明だが、広く流通し始めたのは40年ほど前の昭和50年代に入ってから。高さが1.5~3mで、行灯仕立ての鉢植えにしたり、垣根やラティスにつるを絡ませたりして栽培されることが多い。

 花期は4~6月頃。針金のような細い茎の先に径2cmほどの五芒星のような形の白い花をたくさん付ける。開花とともに辺りは甘い香りに包まれる。学名は「Jasminum polyanthum(ヤスミヌム・ポリアンツム)」。属名の語源は「神様からの贈り物」を意味する「yasmin(ヤースミーン)」というペルシャ語が語源。種小名は「多花の」を意味する。その名の通り、最盛期には無数の白花が株全体を覆うように咲き乱れる。和名の「ハゴロモ」も一説に天女が身にまとう羽衣のような美しい花姿から名付けられた。別名に「ハゴロモソケイ(素馨)」や「ツルジャスミン」。

 ジャスミンは〝香りの女王〟と呼ばれ、古代エジプトのクレオパトラも愛したといわれる。甘い香り成分は主に酢酸ベンジルや安息香酸ベンジルなど。ただジャスミンの仲間のうち香料となる精油が採れるのはソケイやオオバナソケイ、マツリカ(アラビアンジャスミン)。ハゴロモジャスミンは香りが強いものの精油は採れない。なおジャスミンと名が付いた植物にカロライナジャスミンとマダガスカルジャスミンがあるが、これらはそれぞれマチン科、ガガイモ科に属し、分類上ジャスミンとは全く無関係。いずれもアルカロイド系成分を含む有毒植物で、かつて群馬県でカロライナの花をお茶にして飲んだ2人が中毒症状を起こしたこともあった。ジャスミンの名前に騙されてはいけない。

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<アヤメ(菖蒲・文目)> 花弁基部に特徴的な網目模様

2020年05月11日 | 花の四季

【湿地に生えるハナショウブと異なり草原に自生】

 アヤメ科アヤメ属の宿根草。一般にアヤメという場合、アヤメ属の総称として使われることが多いが、狭義では日本から朝鮮半島、中国東北部、ロシア南東部にかけて分布する少し赤みを帯びた紫色の花のアヤメを指す。同じアヤメ属のハナショウブ(花菖蒲)やカキツバタ(杜若)が水生なのに対し、アヤメは陸生で乾いた草原などに生える。草丈は30~60cm。5月頃すくっと立ち上がった茎の先端にふつう2個の蕾を付け順々に開く。

 花冠は外側に垂れる大きな外花被片3つと直立する小さめの内花被片3つから成る。そのうち外側の花弁付け根の黄色地に網目模様が入るのが大きな特徴。アヤメの名前はその網目模様に由来するという説や、細長い剣状の葉が整然と立ち並ぶ様子を織物などの文目模様にたとえたといった説などがある。漢字の菖蒲は「ショウブ」とも読む。その場合は菖蒲湯などに使われるショウブ科(旧サトイモ科)の植物で、アヤメとは全く別のものを指す。

 学名は「Iris sanguinea(イリス・サングイネア)」。属名はギリシャ語で「虹」を意味し、ギリシャ神話の虹の女神の名に因む。種小名は「血紅色の」を意味する。アヤメには白花もあり、また草丈が10~20cmと低い「チャボ(矮鶏)アヤメ」(三寸アヤメとも)や「トバタ(戸畑)アヤメ」などの矮性種もある。アヤメは宮城県多賀城市や茨城県潮来市、大分県日田市などで「市の花」になっており、各地に「あやめ園」や「あやめパーク」もある。ただ、そこでいうアヤメはより華やかで種類も多い古典的園芸植物のハナショウブを指すことが多いようだ。「思はずもあやめ咲きゐつ城の中」(武定巨口)

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<オオムラサキツツジ(大紫躑躅)> 鮮やかな紅紫色の大輪花

2020年05月08日 | 花の四季

【ヒラドツツジ系の代表的な園芸品種】

 ツツジ科ツツジ属の植物は北半球に広く分布する。その中でも日本には約50種の野生種が自生するほか交配によって生まれた園芸品種も数多く、その種類は世界随一ともいわれる。栽培品種は主に霧島系、琉球系、久留米系、平戸系などに大別されるが、このオオムラサキツツジは江戸時代に長崎・平戸藩で品種改良されたヒラドツツジ約300種の中の代表的な品種。耐寒性に富み丈夫で花付きもいいことから最も広く栽培されており、今ではツツジといえばこの花を指すほど馴染みが深い。

 学名は「Rhododendron pulchrum(ロードデンドロン・プルクルム) cv. Oomurasaki」。属名はギリシャ語の「バラ」と「樹木」の合成語、種小名は「美しい」「優雅な」を意味する。その後の「cv.」は栽培品種を表す。このツツジのルーツははっきりしていない。一説では沖縄のケラマツツジとリュウキュウツツジの交配によるものとされ、あるいはケラマツツジとキリシマツツジの雑種ではないかともいわれる。オオムラサキツツジは単に「オオムラサキ」とも呼ばれ、「オオムラサキリュウキュウ」「オオサカズキ」などの別名もある。

 高さ1~3mほどの常緑低木で、公園や庭園、道路沿いなどで見かけることが多い。4月中旬から5月にかけて枝先に漏斗状の紅紫色の花を2~4輪ずつ付ける。花の径は大きいものなら10cm前後になり、ツツジの中では最も大きい。花冠の先は5つに深く裂け、上弁には濃い紫色の斑点模様が入る。これは昆虫に蜜のありかを知らせる目印で〝蜜標〟と呼ばれる。「吾子の瞳(め)に緋躑躅宿るむらさきに」(中村草田男)

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<オオカワヂシャ(大川萵苣)> 用水路などに生える帰化植物

2020年05月04日 | 花の四季

【特定外来生物、小花はオオイヌノフグリに似た淡紫色】

 オオバコ科(旧ゴマノハグサ科)クワガタソウ属の多年性の帰化植物。原産地はヨーロッパ~アジア北部だが、今では南北アメリカやアフリカなど世界各地に広く分布する。日本への侵入時期は不明。ただ最初の標本は約150年前の1867年に神奈川県で採取されたそうだ。草丈は30~100cmほどで、用水路や川岸などで見かけることが増えてきた。晩春から夏にかけ、穂状の花序に径5mmほどの一見オオイヌノフグリにそっくりな淡い紫色の小花をたくさん付ける。

 名前は日本在来植物で川辺に生える近縁種カワヂシャによく似て、全体的に大型であることによる。カワヂシャはレタスの仲間のチシャ(キク科)に似ており若葉はおひたしや胡麻和えなどとして食べられる。オオカワヂシャは葉の鋸歯が目立たずほとんど凹凸のない全縁であること、花色がカワヂシャに比べるとやや濃く、花の中心から放射状に伸びる青い条線模様も鮮明といった違いがある。学名は「Veronica anagallis-aquatica(ヴェロニカ・アナガリス-アクアティカ)」。属名はキリスト教の聖者ヴェロニカに因み、種小名のアクアティカは「水生の」を意味する。

 繁殖力が旺盛なオオカワヂシャは各地で在来のカワヂシャを駆逐する勢い。両者が混在する場所では花序が細長い「ホナガカワヂシャ」と呼ばれる交雑種も生まれている。このため環境省は2006年、外来生物法に基づいてオオカワヂシャを〝特定外来生物〟に指定、栽培や販売を厳しく禁じている。一方、減少傾向のカワヂシャについてはレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定しており、都道府県段階でも絶滅危惧種または準絶滅危惧種に指定しているところが多い。

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