く~にゃん雑記帳

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<BOOK> 「大東亜戦争の謎を解く 第二次大戦の基礎知識・常識」

2013年04月24日 | BOOK

【別宮暖朗・兵頭二十八共著、潮書房光人社発行】

 まえがきの冒頭に「日本の近代戦史で特徴的なことは『陸軍の影が薄い』ことである」(別宮氏)。太平洋戦争も日本海軍のハワイ真珠湾攻撃で始まった。このため「『当初作戦計画』を立案・実行した大日本帝国海軍軍令部ならびに聯合艦隊司令部の責任は、他の誰よりも重くなくてはならない。これが我々の結論である」と主張する。さらに「『大東亜共栄圏』は単に海軍戦略の手段、すなわち内南洋防衛網の構築のために重要だったのである」とみる。

   

 別宮氏は1948年生まれの近現代史家だが、信託銀行での証券金融ビジネスやロンドンの証券調査会社パートナーなどの経歴を持つ。著書に「中国、この困った隣人」「『坂の上の雲』では分からない日本海海戦」など。兵頭氏は1960年生まれで自衛隊入隊後、大学に入り直し東京工大大学院で江藤淳研究室の最後の院生に。著書に「たんたんたたた―機関銃と近代日本」「有坂銃―日露戦争の本当の勝因」など。別宮氏との共著に「東京裁判の謎を解く」がある。

 別宮氏は明治維新以降の大きな戦争で海軍がイニシアティブを取った点について「日本の戦争のみに見られる世界的に稀な現象」という。本書はこうした日本の戦争の特質を兵頭氏と徹底的に討論しながら互いに原稿を行き来してまとめた。2部構成で第1部は「大東亜戦争はどのように始まったか」、第2部は「大東亜戦争はどのように戦われたか」。1・2部合わせ79項目について事実経過に背景説明を加えている。

 本書の特徴は各項目を「難」「中」「易」の3つのレベルの難易度に分類し符号を付けていること。あまり詳しくない初心者は「難」を飛ばして最初に「易」の項目を中心に読んでいけば理解が深まるというわけだ。かつて日本が米国と戦争したことすら知らない人が増えているという。そんな中で若者世代にも読んでほしいという願いを込めたのだろう。

 各レベルの項目を一部列挙すると――。「易」は「新聞記者が作った『玉砕』の美名」「日系人の強制収容」「ひめゆりの塔」、「中」は「中国にしかない『租界』」「なぜ日本人だけが徴兵を嫌ったか」「天皇に戦争責任はあったのか」、「難」は「統帥権は干犯されていた?」「戦費はどうやって捻出されたか?」「大東亜共栄圏」など。

 そのうち「天皇に戦争責任はあったのか」では南方作戦計画の発動を決めた1941年9月6日の御前会議に触れ「この時、昭和天皇は明治天皇の御製を詠み上げ、発動に反対するお気持ちを伝えた。しかし、それ以上の反対は近代国家の『機関』としての天皇にはできないことになっていた。つまり、昭和天皇に戦争責任はない」とする。また「大東亜共栄圏」は「経済的に誤りであるばかりでなく、戦略的にも失敗だった」と断じる。

 「日系人の強制収容」の項目ではこんなエピソードが紹介されている。欧州から米国に復員した日系人兵士も多くは強制収容所に隔離された。収容所から釈放されたある兵士がレストランに入るや、店の主人が「日本人は出て行け」と怒鳴った。兵士の胸には欧州戦線で得た勲章。店内にいた1人の元兵士が事情を説明すると、店主は慌てて日系人兵士の後を追い懸命に詫びた。米国では「除隊兵士がレストランで食事した際、周囲の人は酒や軽食をおごるのが普通である」という。

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