近鉄グループの美術館「大和文華館」(奈良市学園南)で特別展「レスコヴィッチコレクションの摺物―パリから来た北斎⋅広重⋅北渓⋅岳亭」が始まった。摺物は江戸時代の版画のうち特別な注文によって制作された作品。数十~数百部しか作られなかったため伝存数も少ない貴重品だ。
展示作品はポーランド出身でパリ在住のジョルジュ⋅レスコヴィッチ氏の収集品。約260点が9月1日までの会期中、前期⋅後期に分けて展示される。葛飾北斎をはじめ魚屋北渓(ととやほっけい)、岳亭春信、歌川広重、歌川国芳、渓斎英泉ら、浮世絵全盛期の19世紀前半に活躍した絵師の作品が多く並ぶ。
【葛飾北斎「富士図」】
富士山と芦ノ湖が描かれた春興の俳諧摺物。「舞雲雀声も高根と丈いくらべ」(桂花)などの句が添えられている。
【葛飾北斎「やつし六歌仙」】
六歌仙を当時の江戸の様々な女性にやつした趣向の狂歌摺物。右から順に破魔矢を持つ商人の妻(在原業平)、花魁(小野小町)┄┄禿(僧正遍昭)、本をかざす生娘(文屋康秀)。
【葛飾北斎「始皇帝図」】
秦の始皇帝が太山に登り暴風雨に遭ったとき松の木の下で難を逃れ、その松に太夫の位を与えたという故事を描いた。日本では常磐津の演目「老松」で知られ、この摺物も常磐津の会の案内状を飾った。
【葛飾北斎「空満屋連 和漢武勇合三番之内弁慶と韃靼美人」】
同様の「首引き」の図柄に勝川春亭画の大判錦絵「武蔵坊弁慶とだつたんの首引」があるという。元々の出典はどこからだろうか? 義経が大陸に渡って王になったという伝説はあるけど┄┄。
【葛飾北斎「七代目市川団十郎の工藤祐経と五代目岩井半四郎の舞鶴」】
江戸歌舞伎春恒例の曽我狂言の主要登場人物を描いた5枚揃いの1枚。
【魚屋北渓「虎退治」】
幟や軍配、冑を飾った虎が描かれ、左上に秀吉に従い朝鮮に渡って虎退治をしたという加藤清正の伝説に絡めた南亭葉々広による文章が添えられている。
【魚屋北渓「夢中の坂田金時」】
幼少時に金太郎として足柄山で熊と相撲をして遊んだ日々を坂田金時が夢見る図。文政(1818~30)後期頃の作。この物語はすでに当時、子ども向けの本で広く親しまれていたそうだ。
【魚屋北渓「京 三国志 桃宴結妓」】
「三国志演義」の名場面、劉備と関羽と張飛が義兄弟の契りを結んだ桃園の宴のやつしとして、三都(京、江戸、大坂)の遊女の華やかな競演を描いた作品。
【魚屋北渓「鞠の神」】
描かれているのは猿の姿をした鞠の神と蹴鞠の名手といわれた藤原成道。蹴鞠の神は「精大明神」で、通常猿田彦として各地の神社で広く祀られている。
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