く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<カスミソウ(霞草)> 白花が群がり咲く様を霞にたとえ

2021年06月29日 | 花の四季

【ナデシコ科、原産地は地中海沿岸~中央アジア】

 ブーケやフラワーアレンジで主役の花々を優しく包み込む清楚なカスミソウ。ナデシコ科カスミソウ属(ジプソフィラ属)の植物で、大別すると地中海沿岸から中央アジアにかけ広く分布する多年性のものと、小アジア~コーカサス地方原産の1年性のものがある。草丈も10~30cmほどの矮性種から、1mを超える高性種まで様々。欧米や日本などで主に高性種から多くの園芸品種が作出され、花色も多彩になってきた。花姿から「ムレナデシコ(群撫子)」や「ハナイト(花糸)ナデシコ」「コゴメ(小米)ナデシコ」などの別名を持つ。

 学名のジプソフィラ(Gypsophila)は「石灰」と「好む」を意味するギリシャ語の合成語で、石灰質のアルカリ性の土壌を好むものが多いことに由来する。繊細な姿から英名には「ベイビーズ・ブレス(赤ちゃんの吐息)」という愛称も。多年性を代表するのが「宿根カスミソウ」として流通しているパニクラータ種。元々は一重の5弁花だが、米国で約100年前に八重咲き品種‘ブリストル・フェアリー’が作られ、切り花用として今も人気を集めている。一重咲きの代表種エレガンスは花茎がやや太く花も大きめなのが特徴。矮性種ケラスティオイデスはヒマラヤ地方原産で、地面を這うように広がることから「カーペットカスミソウ」と呼ばれている。

 国内の主産地には福島・長野・北海道などの寒冷地域と、熊本・和歌山・静岡などの温暖地域がある。出荷時期は寒冷地が主に夏~秋、温暖地が主に冬~春。夏秋期カスミソウの栽培面積・出荷量日本一を誇る福島県昭和村では収穫後のカスミソウを「雪室(ゆきむろ)」という施設に運び込み、開花時期を調整しながら切り花を全国に出荷する。毎年冬の間に搬入する雪の量は3000㎥、10トントラックで300台分にも上るそうだ。カスミソウ栽培の新規就農希望者の受け入れ事業にも取り組んでおり、2017年には「かすみの学校」インターンシップ制度も導入した。冬春期カスミソウの出荷量全国一は熊本県の菊池・宇城・天草地域。JAグループ熊本花き部会はカスミソウの花言葉「感謝」に因み、「いい夫婦の日」の11月22日を「カスミソウを贈る日」にしようとPR運動を展開している。「霞草白き愁ひを散らし咲く」(村山故郷)

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<アメリカオニアザミ(鬼薊)> 葉や総苞に鋭利なトゲ

2021年06月24日 | 花の四季

【ヨーロッパ原産、牧草に混じってアメリカから】

 キク科アザミ属の1~2年草。頭にアメリカと付くためアメリカ大陸原産のようだが、原産地はヨーロッパ。戦後アメリカを経由し牧草や穀物に混じって日本に渡ってきた。このため「セイヨウオニアザミ」とも呼ばれる。国内では1960年代に北海道で初めて確認された。今では礼文、利尻などの離島や知床国立公園なども含め北海道全域に広く分布し、さらに本州、四国にも広がっている。

 草丈は50~150cmで、茎の先に1~3個の紅紫色の頭状花(径3~4cm)を付ける。葉や茎などに硬くて鋭いトゲが多く生え、花のすぐ下の球状の総苞もまるでハリセンボンのようにトゲで覆われているのが特徴。素手ではとても触ることができず、軍手も突き刺すため、駆除の際には厚手の革やゴム製の手袋が欠かせない。まさに鬼にように怖くて危険な植物なのだ。花後にはタンポポのような綿毛の種子を大量に飛ばす。鋭いトゲのせいか、牛や鹿などの動物が食べないことも生息域の拡大につながっている。

 環境省は在来植物の生育環境に影響を与える恐れがあるとして「生態系被害防止外来種」に指定。全国各地の自治体も市民に注意を促したり駆除への協力を呼び掛けたりしている。北海道の知床では地域住民が「オニアザミバスターズ」を結成、大阪府箕面市でも市民の有志が「箕面からアメリカオニアザミをなくす会」を立ち上げ駆除活動に取り組んでいる。以前、奈良市内の道端で大人の背丈ほどもあるアメリカオニアザミに遭遇、そのトゲで武装した草姿の迫力に圧倒された。数日後、写真を撮ろうと行ってみると、跡形なく除草されていた。万一子どもたちが触って怪我でもしたら大変と、地域住民が駆除したのだろう。

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<フロックス> 草夾竹桃、桔梗撫子とも

2021年06月14日 | 花の四季

【北米原産、シバザクラも同じ仲間】

 フロックスはハナシノブ科クサキョウチクトウ属(フロックス属)の植物の総称。北米原産で、1年性から多年性まで70種ほどが分布している。草丈も地を這う矮性種から1m前後まで伸びる高性種までさまざま。高性種で多年草のパニクラータ種を中心に多くの園芸品種が作出されており、花の色も白、紅紫、赤、ピンクなど多彩になっている。サクラに似た形の小花が地面を覆うシバザクラ(スプラータ種)もフロックスの仲間。

 属名フロックス(Phlox)の語源は「炎」を意味するギリシャ語で、鮮やかな明るい花の色からの命名とみられる。日本への渡来は江戸中期といわれる。草丈の高いパニクラータ種は花がキョウチクトウに似ていることから「クサキョウチクトウ(草夾竹桃)」という和名を持つ。かつては長く「オイランソウ(花魁草)」とも呼ばれていた。その名の由来には諸説。花姿を頭に簪(かんざし)をたくさん着けた花魁にたとえたとか、花の香りが花魁の白粉(おしろい)に似ることからなどといわれる。

 代表的な1年草のドラモンディ種は花や葉の形がナデシコに似ているとして「キキョウナデシコ(桔梗撫子)」とも呼ばれる。花びらは丸弁のほか〝スターフロックス〟という星咲きのものも。這性のストロニフェラ種には「ツルハナシノブ」という和名が付けられている。フロックスは世界中で栽培が盛んだが、国内でもかなり前から品種改良が進められてきた。とりわけ「岩手緑化研究会」の会長を務めた毛藤勤治博士(1908~99)はユリノキの研究・普及とともにクサキョウチクトウの育種に努め約300種の作出に成功、1995年には緑化推進運動功労者として内閣総理大臣表彰を受賞した。北海道網走市の「あばしりフロックス公園」には約15万株のクサキョウチクトウが植栽されており、毎年7月下旬~9月上旬に見頃を迎える。「揚羽蝶おいらん草にぶら下る」(高野素十)

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<フレイキネティア・ムルティフロラ> フィリピン原産の蔓植物

2021年06月10日 | 花の四季

【別名ツルタコノキ、橙色の苞の中から肉穂花序】

 タコノキ科ツルアダン属(フレイキネティア属)の木本性の蔓性植物で、原産地はフィリピン。タコノキ科の仲間には沖縄や小笠原諸島に自生するアダン(阿檀)やタコノキ(蛸の木)などがある。蔓性で葉姿などがタコノキに似ていることから和名では「ツルタコノキ」と呼ばれる。英名は「Climbing pandanus(クライミング・パンダヌス)」。パンダヌスもタコノキを意味する。

 フレイキネティア・ムルティフロラは学名「Fraycinetia multiflora」から。属名はフランスの海洋探検家ルイ・ド・フレシネ(1779~1841)の名前に因む。種小名は「多数花の」を意味する。雌雄異株。春、茎の先に小さな雄しべや雌花が密生した肉穂花序を数個ずつ付ける。雄花序は円錐状、雌花序は緑色で卵状の球形。花序を囲むオレンジ色の花びらのように見えるのは花の付け根の葉が変形した苞で、花弁や萼片はない。

 タコノキ科はアジアや環太平洋の熱帯地域を中心に4属約900種が分布する。最も多いのがタコノキ属(パンダヌス属)で、パイナップルのような集合果を付けるアダンや小笠原固有種のタコノキ(別名キアダン)もこのグループに属する。フレイキネティア・ムルティフロラと同じ仲間のツルアダン属はこれまでに180種ほどが確認されており、日本には沖縄の石垣島、西表島などにツルアダンとヒメツルアダンが自生している。これらの植物の多くは葉や茎から丈夫な繊維が取れるため、籠・敷物・履き物・工芸品・屋根の茅葺きなどの材料として活用されてきた。

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<タンチョウソウ(丹頂草)> 原産地は中国東北部~朝鮮半島

2021年06月07日 | 花の四季

【細長い花茎などをツルの丹頂に見立てて】

 中国の遼寧省や吉林省など東北部から朝鮮半島の北部にかけて分布するユキノシタ科タンチョウソウ属の山野草。日本には観賞用として明治時代の初期に渡来したといわれる。草丈は50cmほど。春に大きな掌状の葉の間から花茎をまっすぐ立ち上げて上部で分枝し、茎の先に白い花弁と萼片が重なり合った清楚な小花(径5~10mm)を上向きに付ける。

 別名「イワヤツデ(岩八手)」。半日陰の渓谷の岩場など湿り気のある環境を好むこと、5~7裂に深い切れ込みが入った葉の姿がヤツデに似ていることによる。タンチョウソウの名前は細長い花茎をタンチョウヅルの首に、花を頭に、大きな葉を羽に見立てたいわれる。花は蕾(つぼみ)のとき先のほうが赤みを帯びる。このため蕾の様子を頭頂部が赤いタンチョウに見立てたという説もある。

 学名の正式名は「Mukdenia rossii(Oliv.)Koidz.」。属名のムクデニアは中国遼寧省の省都瀋陽の地名から。清朝時代に首都が置かれたこの都市(旧名盛京、奉天)は欧米で満州語に由来するムクデンの名で知られているという。種小名のロッシーは英国の植物収集家H・J・Ross(1820~1902)への献名。カッコ内のOliv.は最初に命名した英国の植物学者Daniel Oliver(1830~1916)の略記。彼はこの植物をユキノシタ属に分類し「Saxifraga rossii」と命名した。その後ろのKoidz.は日本の植物学者小泉源一(1883~1953)のことで、彼のムクデニア属への属名変更が認められた。小泉は植物分類地理学会(日本植物分類学会の前身)を創設するなど、恩師の松村任三、牧野富太郎とともに日本の植物分類学の基礎を築いた。

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<ウンカリーナ> 別名「シャンプーの木」

2021年06月05日 | 花の四季

【マダガスカル原産、「ライオン殺し」の異名も】

 アフリカ東南部沖のインド洋に浮かぶマダガスカル島は野生生物の固有種の宝庫といわれる。このゴマ科の落葉樹ウンカリーナもその一つ。ウンカリーナ属の植物はこれまでに20種ほどが確認されている。学名Uncarinaの語源は鉤(かぎ)や釣り針を指すラテン語の「uncus(ウンクス)」。ウンカリーナの仲間に鉤状の突起物を持つ果実を付けるものがあることによる。それらの種には「ライオン殺し」という怖い名前も付けられている。

 ウンカリーナは葉を水にしばらく漬けた後揉むと、滲み出す粘液がシャンプー代わりになるとして「シャンプーの木」とも呼ばれている。花は先端が5つに裂けた筒状の合弁花で、一見ペチュニアの花姿に似た雰囲気。花の色は黄やオレンジのものが多い。黄花系統の代表種にロエオエスリアナ(写真、ルーズリアナとも)、グランディディエリ、デカリーなど。このほかには白花種のレプトカルパ、紫花のステルリフェラなどがある。樹高は1mほどの低木から7m以上になる小高木まで様々。

 このうち「ライオン殺し」の異名を持つのはグランディディエリやデカリー。木質の果実に鉤状の返しがある長い棘が付いており、動物の足や体毛に絡み付くことで種子は遠くまで運ばれる。これが分布域を広げるためのこの植物の生存戦略だ。棘が一度刺さると百獣の王ライオンでさえなかなか抜けず致命傷になることもあるとして、こう呼ばれるようになった。ただ「ライオンゴロシ」という正式な和名を持つ植物は別にある。同じゴマ科でも別属の「ハルパゴフィツム・プロクムベンス」(アフリカ南部原産)。この学名そのものが「逆さに曲がった大きな棘のある植物」を意味し、英名でも「デビルズ・クロウ(悪魔の鉤爪)」と呼ばれている。

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<奈良「鹿苑」> 子鹿を特別公開 6月末まで

2021年06月02日 | メモ

【〝公園デビュー〟は7月下旬ごろ】

 春日大社表参道のそばにある鹿の保護施設「鹿苑」(奈良市春日野町)で、この春に生まれたばかりの子鹿の特別公開が始まった。6月1日から30日までの期間限定。昨年は新型コロナウイルス感染防止のため中止になったが、今年は感染対策を徹底することで実施に踏み切った。施設を管理・運営するのは一般財団法人「奈良の鹿愛護会」。会員たちが4月上旬から奈良公園内で見つけた妊娠した母鹿を保護し、安全に出産できるよう見守っている。

 今年の〝子鹿第1号〟は5月9日に鹿苑内で誕生した(昨年は4月30日)。体長約60cmの雌鹿で、体重は約3.8kg。鹿苑には6月1日現在、125頭の母鹿が収容され、これまでに19頭が誕生した。これからが出産ラッシュで、7月ごろまで続く。中には鹿苑に保護されず奈良公園内でひっそり産む母鹿も。数年前、木の根元にじっと蹲ったままの生後間もない赤ちゃんに遭遇したこともあった。奈良公園全体では今年も例年同様200頭ほどの誕生が見込まれている。鹿苑生まれの子鹿の〝公園デビュー〟は7月下旬ごろになりそうとのこと。

 鹿苑では観覧席の上から子鹿公開会場を見下ろすことができる。公開イベント初日の1日は真夏並みの強い日差しの中、おなかの大きな母鹿たちが木陰で休んだり、水道の蛇口から流れる水を飲んだりしていた。子鹿は背中の鹿の子模様がよく目立つ。時々「キュー」という愛らしい鳴き声を上げては芝生の上を飛び跳ねたり母親からおっぱいをもらったり。母鹿は匂いで自分の子を嗅ぎ分けているそうだ。この時期に鹿苑を訪れたのは初めて。明けても暮れてもコロナ・コロナの中で久しぶりにそれを忘れ、ほっこりしたひと時を過ごすことができた。

 

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