【中国原産、総状花序に淡紫色の十字花】
中国原産のアブラナ科オオアラセイトウ属(オリチオフィラグムス属)の2年草。日本には江戸時代に観賞用として渡来したが、広く栽培されるのは1930年代以降になってから。今では野生化し、道端などでも見かけるようになってきた。花期は長く3月から5月頃まで。草丈は30~60cmで、茎の先の総状花序に径2~3cmほどの淡紫色や紅紫色の十字形の4弁花を付ける。
「オオアラセイトウ」の名付け親は植物学者の牧野富太郎博士で、アラセイトウは切り花やブーケなどとして人気があるストック(アブラナ科アラセイトウ属)の和名。若芽が食用にもなるオオアラセイトウには「ショカツサイ(諸葛菜)」や「ムラサキハナナ(紫花菜)」の別名もある。諸葛菜の名前は中国・三国時代の軍師・諸葛孔明(181~234)が兵士の食料用として栽培し広めたことに因むそうだ。東京都武蔵野市はこの植物をムラサキハナナとして「市民の花」の一つとしている。
「ハナダイコン(花大根)」の呼び名でも広く親しまれている。ただ、このハナダイコンは同じアブラナ科でも別属のハナダイコン属(ヘスペリス属)の植物の正式名。花の色形などがよく似ていることによって混乱が生じているが、こちらはヨーロッパ原産で、草丈は50~90cmとやや大きい。紫花のほか白花もある。オオアラセイトウはモンシロチョウの仲間スジグロシロチョウの食草の一つになっている。「諸葛菜咲き伏したるに又風雨」(水原秋櫻子)