近鉄奈良駅そばにある2つの神社で、毎年6月17日には“ゆりまつり”が営まれる。漢国(かんごう)神社の「鎮華(はなしずめ)三枝祭(さきくさまつり)」と大神神社(桜井市)の摂社率川(いさがわ)神社の「三枝祭(さいくさのまつり)」。いずれも神前にササユリを供えて悪疫退散や五穀豊穣を祈願する。しかし今年も新型コロナの感染防止のため参列は神社関係者に限られ、奉納祭事も残念ながら中止や規模縮小に追い込まれた。
【漢国神社、包丁儀式も見送り】
2つの神社の三枝祭は例年なら同じ時刻の午前10時半に始まる。だが漢国神社に行ってみると、開始は午前11時で「今回もまた神社関係者のみで執り行います」との張り紙。同神社では平安初期から伝わるという清和四条流の「式包丁儀式」が行われることで知られる。お供えの魚に手を触れず、包丁と真魚箸(まなばし)だけで3枚に下ろし、ササユリで飾り付ける。その儀式を一度目の前で見たいと勇んで出かけたのだが、神社関係者から「ありません」と聞いてがっくり。
それでも神事の後、一般の参拝客がほとんどいない中で獅子舞や神楽が奉納された。奉納したのは「漢国神社韓園講(からそのこう)」の面々。太鼓と笛の演奏に合わせ、大盃で獅子や氏子ら参列者にお神酒を飲ませる「へべれけ」などの演目が披露された。これ、確か以前見たぞ! 調べてみると、2018年12月29日の獅子神楽の奉納の時だった。4年前のその日境内は参拝客で埋め尽くされ、笑いと拍手で大賑わいだった。獅子舞の奉納が終わると、獅子頭が邪気払いと招福のため参列者一人ひとりの元へ。後方にいた私も獅子に頭を噛んでもらった。
【率川神社、巫女の舞も境内の外からちらりと】
率川神社は奈良市内最古の神社といわれる。その三枝祭は701年制定の「大宝令」に国の祭祀と規定されるほど由緒のあるお祭り。しかし同神社にもこの日入り口に「午前10時から正午まで、参列許可証をお持ちでない方は入場できません」との掲示板が立っていた。しかも「16、17日の行列、18日の奉納演芸は中止致します」とも。鳥居の前には一般の参拝者が20~30人集まっていたが、やむなく遠くから神事を垣間見る形に。最大の見どころ、巫女たちがユリを手に舞う「うま酒みわの舞」もちらっと少し見えるだけだった。事前チェックを怠ったことを反省。同時に来年こそコロナが収まって2つの三枝祭が通常の形で営まれることを願ってやまない。