く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<熱田神宮> 「草薙館」に巨大な大太刀2本

2021年10月31日 | 美術

【重さを実感できる刀剣体験コーナーも】

 仙台で10月31日開かれた全日本大学女子駅伝。熱田神宮(名古屋市熱田区)に祈願したという名城大学が1区から独走し見事5連覇を果たした。その熱田神宮に約1カ月前の10月3日「剣の宝庫 草薙館」がオープンした。昨今の刀剣ブームもあって来場者が詰めかけているという。三種の神器の一つ「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」を御神体としていることから、古くから多くの刀剣類が奉納されてきた。収蔵点数は国宝の「短刀 銘来国俊(らいくにとし)」をはじめ約450点に上る。草薙館はそれらの宝刀の専用展示施設として「くさなぎ広場」の一角に設けられた。

 展示品の中でとりわけ注目を集めているのが「真柄太刀」と呼ばれる特大サイズの大太刀2本。戦国時代に浅井・朝倉の連合軍が織田信長軍と戦った「姉川の戦い」(1570年)で、朝倉氏の家臣真柄十郎左衛門直隆・十郎直基父子が用いたと伝わる。「末之青江」銘の刃長221.5cmの大太刀を俗称で「太郎太刀」、「千代鶴國安」銘で刃長が166.7cmとやや短いものを「次郎太刀」と呼んでいるそうだ。刀剣体験コーナーにこの2本を含む計5本の刀剣レプリカが並ぶ。自由に触ることもできるが、「太郎太刀」は全長が3.4m、重さが約10キロもあって、ほとんど持ち上げることさえできなかった。真柄父子はよほどの怪力自慢だったのだろう。

 大太刀2本は真剣の展示コーナーで常時展示されるが、そのほかの刀剣・脇差類は順次入れ替えられる。入館時には国指定の重要文化財「太刀 銘備中長船重光」「太刀 銘宗吉作」などがガラスケース内に1本ずつ陳列されていた。「草薙館」の竣工を記念して刀匠藤安将平氏が奉納した太刀や、蒔絵の重要無形文化財保持者(人間国宝)室瀬和美氏が制作した奉納太刀用の「雪華文蒔絵刀剣箱」も展示されていた。このほか刀剣にまつわる絵画や、真柄太刀の寄進者や銘文を記した江戸時代の「熱田皇大神宮真柄太刀等覚書」などの古い文書も。

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<大須観音> にぎわう毎月2回の骨董市

2021年10月30日 | 旅・想い出写真館

【8~9月は新型コロナ感染拡大で中止に】

 関西で骨董市といえば、京都の東寺弘法市(毎月21日)や北野天満宮の天神市(25日)が有名だが、中部地方では名古屋の「大須観音骨董市」が人気を集めている。こちらの開催日は毎月18日と28日の2回。新型コロナウイルスが猛威を振るった8月と9月は中止に追い込まれたが、10月からはまた元通りに開催され、参拝客や骨董ファンでにぎわっている。

 大須観音は家内安全・商売繁盛・合格祈願などにご利益があるとされ、浅草観音(東京)、津観音(三重)とともに日本三大観音に数えられている。本堂は戦災で焼失し、50年ほど前の1970年に再建された。周辺の大須商店街は一時期シャッター通りと揶揄されるほど衰退していた。だが、その後多彩なイベントの展開などで再生を遂げ、2006年には「がんばる商店街77選」(中小企業庁選定)にも。この骨董市も大須復興に一役買ってきた。

 10月28日境内に入ると、レトロな飲食器や着物、アクセサリー、玩具、雑貨などを扱う店がずらり。年配客のほか若い男女も結構多く、熱心に品定めしていた。ブローチを手にした女性が店主に声を掛けた。「これ、いくら?」。店主は初め「1500円」と答えるが、女性が思案するのを見ると「1300円」に値下げ。すると今後は女性から「1000円」。店主は苦笑しながら千円札を受け取っていた。店主は最初から値切られることを前提にし、女性もそれを見越していたに違いない。両者とも値切り・値切られる掛け合いを楽しんでいる様子だった。

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<春日大社国宝殿> 秋季特別展「金工の美」

2021年10月27日 | 美術

【絢爛豪華な国宝の甲冑など35点】

 春日大社は平安~鎌倉時代を中心に貴族、武家から多くの宝物が寄進された。それらの中には国宝や重要文化財に指定されたものも多く、国宝だけでも約350点に上る。開催中の秋季特別展「金工の美―王朝の優美な装飾から豪華な鎧の金具まで」では国宝中の国宝「赤糸威(あかいとおどし)大鎧」2点をはじめ35点を展示中(一部前後期で展示替え)。国宝の甲冑類がそろって展示されるのは久しぶりだが、改めて往時の高度な彫金技術や美的感覚を堪能させてくれる。

 会場を入ると、正面左側に「赤糸威大鎧」のうち「竹虎雀飾」、右側に「梅鶯飾」。前者は左右の大袖に背の高い竹と虎の彫金細工を配し、鎧には全体に小さな雀100羽近くがちりばめられている。威糸(おどしいと)の赤い色が実に鮮やか。社伝では源義経の寄進とされるが、その制作様式などから鎌倉後期の作と推定されている。後者は梅の枝に蝶やウグイスが止まり、鎧の裏側には蓑虫やアブ、クモなども。全体を覆う威糸は紅花染めだが、退色して黄色く見える。

 前期と後期(10/19~12/13)での展示替えは国宝の4点。前期の「黒韋威矢筈札(くろかわおどしやはずざね)胴丸」(南北朝時代)と「籠手(ごて)」(鎌倉時代)に代わって、現在は「黒葦威胴丸」(室町時代)と若宮御料古神宝類の「平胡籙(ひらやなぐい)」(平安時代)を展示している。胡籙は矢を納めて携帯する用具で、蝶や千鳥を黒漆の上にきらびやかな螺鈿で表す。同じ若宮御料古神宝類の国宝「銅造狛犬」「銀鶴」などは通期で展示中。ほかに重文の古神宝銅鏡類や御本殿御簾(みす、1995年製作、金具は江戸時代)なども並ぶ。

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<平城宮跡資料館> 秋期特別展「地下の正倉院展」

2021年10月23日 | 考古・歴史

【今年のテーマは「木簡を科学するⅡ」】

 奈良文化財研究所の平城宮跡資料館(奈良市)で秋恒例の特別展「地下の正倉院展」が開かれている。2007年の第1回から数えて15回目。今回は2014年の「木簡を科学する」の第2弾として「木簡を科学するⅡ」をテーマに掲げる。木簡は文字資料としてその解読に注目が集まりがちだが、モノ(木製品・木質遺物)としての側面から最新の分析・調査の成果を紹介する。会期は11月7日まで。

 奈文研が保管する木簡は「長屋王家木簡」など平城宮・平城京出土の木簡を中心に30万点近くに上る。1000年以上の時を経て出土した木簡は乾燥に弱く脆い。その保護のため同資料館で常設展示する木簡もほとんどがレプリカで、この特別展は一般客が実物を目にできる数少ない機会になっている。今展は「木簡の年輪を測る」「木簡を複製する」など5章で構成。前後期合わせて45点の木簡を展示する。この中には「長門国からのワカメの荷札」など国宝と重要文化財各3点も含まれる。

 木簡は材の切断面から柾目材と板目材に分かれ、年輪と直行する方向に切り出された柾目材には緻密な年輪が横方向に多く走る。年輪には土地の気候に応じた年輪曲線が刻まれており、その詳細な分析は産地や同一材の推定などにつながる。そのため奈文研では年輪年代分析に力を注いでおり、実際にその成果が表れてきた。柾目材の薄い削屑9片が同じ材から削り取られていたことが分かったり、他の削屑5片も同一材と判明して文字の解読につながったりしているそうだ。

 「木簡を複製する」のコーナーには3セットの本物と複製のレプリカが隣り合わせで並ぶ。複製の手法は①書家が材に直接文字を書く(写真)②古色加工などを施した材に木簡の写真を直接焼き付ける③文字を熱転写用紙で材に印刷する――と、3セットとも異なる。ただ、「実物」「レプリカ」の表示がなければ、どちらが本物か判断に迷うものも。現状では熱転写による手法が墨の濃淡や滲みなども含め最も実物の再現度が高いという。

 木簡には再利用のため墨書した表面を削り取った削屑が多く含まれる。それらの薄いペラペラの削屑の保管方法は? かつては薄いガラス板に挟んだり、伸縮性のあるフィルムに挟んだりしていた。ただ、少しの揺れで削屑が動くことがあり、フィルムの経年劣化といった懸念材料もあった。このため今は劣化の恐れが少ない無酸中性紙の薄葉紙を使って独自に開発した専用容器で保管している。容器は厚さ1.2cmという薄型。薄葉紙を数十枚重ねたクッションの上に削屑を10点ほどまとめて置き、その上に薄葉紙を1枚かぶせ蓋を閉めて固定。この容器を20箱ずつケースに納め保管しているそうだ。

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<ショパンコンクール③> 反田恭平、2位入賞の快挙!

2021年10月21日 | 音楽

【2回目挑戦の小林愛実も4位入賞】

 ポーランドのワルシャワで開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールの本選ファイナルで、反田恭平(27)が2位、小林愛実(26)も4位と日本人2人が入賞に輝いた。日本時間21日朝、主催者の国立ショパン研究所が発表した。世界最高峰のこのピアノコンクールで過去の日本人の最高位は1970年第8回大会での内田光子の2位。反田は惜しくも優勝には届かなかったものの、51年ぶりにそれと肩を並べた。前回2015年にファイナリストとなりながら入賞を逃した小林も今回悲願の入賞を果たした。

 

 審査結果は当初日本時間の21日午前6時半(現地時間20日午後11時半)ごろ発表の予定だった。ところが現地の日付が変わってもなかなか発表されず、結局、審査員たちが発表会場に現れたのは午前9時(同21日午前2時)すぎだった。今回は7月の予備予選応募者が世界約50カ国・地域から500人を超え、10月の1次予選出場者は87人(当初予定80人)、2次進出者45人(同40人)、3次進出者23人(20人)と予定枠より多く、本選にも反田と小林を含む12人(同10人)が進出していた。それだけ有能な若手ピアニストが数多く参加していたことを表す。甲乙つけがたいファイナル進出者12人をどう評価するか。審査員17人が議論に議論を重ねるうち審査時間が大幅に長引いたのだろう。入賞者は通常1~6位の6人だが、今回は2位と4位が2人ずつとなって受賞者は計8人に。その異例の入賞者数と変則的な順位付けが、悩みに悩み抜いた審査員たちの苦悩ぶりを物語っているようだ。

 入賞者は次の通り。【1位】ブルース・リウ(カナダ24歳)【2位】反田恭平(27歳)、アレクサンデル・ガジェヴ(イタリア/スロベニア26歳、ソナタ賞も)【3位】マルティン・ガルシア・ガルシア(スペイン24歳、コンチェルト賞も)【4位】小林愛実(26歳)、ヤクブ・クシュリス(ポーランド24歳、マズルカ賞も)【5位】レオノラ・アルメリーニ(イタリア29歳)【6位】ジェイ・ジェイ・ジュン・リー・ブイ(カナダ17歳)。入賞者の年齢は17歳~29歳と幅広い。ファイナルには17歳がもう2人進出していた。今後の活躍が楽しみだ。

 18~20日の3日間行われた本選ファイナルでは12人がショパンのピアノ協奏曲をワルシャワフィルハーモニー管弦楽団と共演した。協奏曲第1番を演奏したのが9人、残りの3人が第2番だった。反田恭平は初日の3番目に登場し第1番を演奏。緩急・強弱のメリハリの利いた豊かな響きで、第3楽章の最後の1音が鳴ると同時に、まだオーケストラの演奏が終わらないうちにホール全体から大きな拍手が沸き起こった。弾き終えた反田の表情は長丁場のコンクールをやりきった安堵感と達成感にあふれていた。3日目の1番目に登場した小林愛実はやはり協奏曲第1番を選択、繊細なタッチで1音1音を慈しむように響かせて、万雷の拍手に包まれた。

 反田は桐朋女子高校(男女共学)の音楽科に在学中、日本音楽コンクールで第1位・聴衆賞を受賞。その後、モスクワのチャイコフスキー音楽院に進み、4年前からはワルシャワのショパン音楽大学で学ぶ。師事するピオトル・パレチニ教授はポーランドを代表するピアニスト。頻繁に来日公演する傍ら、若手日本人ピアニストを多く指導してきた。2019年にはその功績が認められて旭日中綬章を受章している。ショパンコンクールの常連の審査員でもある(ただし審査員は生徒を採点できない決まりがある)。パレチニ教授は教え子の反田が自分の3位(1970年の第8回大会)を上回る2位に選ばれたことをことのほか喜んでいるに違いない。

 なお優勝者ブルース・リウが弾いたピアノはイタリアのファツィオリで、3位と5位もファツィオリだった。反田恭平と小林愛実の使用ピアノはスタインウェイ。反田と同じ2位のアレクサンデル・ガジェヴと、6位のジェイ⋅ジェイ⋅ジュン⋅リー⋅ブイは日本のカワイだった。カワイピアノの大健闘に関係者もさぞ喜びに沸いていることだろう。

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<ショパンコンクール②> 小林愛実と反田恭平ファイナル進出!

2021年10月17日 | 音楽

【角野隼斗・古海行子・進藤実優は惜しくも】

 ポーランドのワルシャワで6年ぶりに開催中の第18回ショパン国際ピアノコンクール。主催者の国立ショパン研究所は日本時間の17日午前6時、第3次予選で演奏した23人のうち本選ファイナルへの出場者12人を発表した。日本人は小林愛実(26)と反田恭平(27)の2人が選ばれた。小林は前回2015年に続く2回目のファイナリスト。角野隼斗(26)、古海行子(23)、進藤実優(19)の3人は惜しくも涙をのむ結果となった。

 3次予選は現地時間の14~16日の3日間にわたって行われた。各自が指定されたショパンのピアノソナタ・プレリュード(前奏曲)、マズルカの中からそれぞれ選曲する(制限時間45~55分)。最終日に登場した小林は4つのマズルカと24の前奏曲を演奏。抑制の利いた心に染み入る演奏を披露し、前奏曲第4番ホ短調ラルゴは一音一音が天上から舞い下りてくるような優美な響きだった。演奏直後のインタビューに小林は「1次2次予選では楽しんで演奏できなかったが、今回初めて楽しく演奏することができた。今はただおなかがすいて、早くご飯が食べたい」と余裕を交えて手ごたえを語っていた。

 一方、初日に登場した反田は3つのマズルカとソナタ第2番「葬送」、聖歌「神よ、ポーランドをお守りください」(ショパンのラルゴ)、ポロネーズ第6番「英雄」で構成。最後を締めた英雄ポロネーズは力強く堂々とした圧巻の演奏で、満場の拍手が鳴り止まなかった。ただ演奏直後には「自分に負けたかな┄┄伝えたいことは伝えたかな。でもやりたいことはできなかった」と反省の弁を述べていた。でも結果はファイナル進出。今後の大きな自信に繋がることだろう。

 日本人以外のファイナル進出者は地元のポーランドとカナダ、イタリア(イタリア/スロベニアを含む)が2人ずつ、そしてスペイン、中国、韓国、ロシア/アルメニアが各1人。ファイナリスト12人は現地時間の18~20日、ショパンのピアノ協奏曲第1番または第2番をワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団と共演する。優勝者には金メダルと賞金4万ユーロが贈られる。入賞は6位までで、21~23日には受賞者披露演奏会が開かれる。前回惜しくも入賞を逃した小林にとっては大きな雪辱のチャンス。小林と反田には入賞といわず、日本人として初の頂点を目指してほしいものだ。

 世界最高峰のピアノコンクールといわれるショパンコンクールはグランドピアノの製造会社にとっても品質を競うまたとない場となる。今回の公式ピアノはスタインウェイと日本のヤマハ、カワイ、イタリアのファツィオリの4社5機種。今回はスタインウェイが予備予選から圧倒的に人気を集め、3次予選進出者23人のうち17人がスタインウェイの「479」または「300」を選んだ。このほかはカワイとファツィオリがそれぞれ3人ずつ(ヤマハの演奏者は日本の牛田智大と京増修史も含め全員2次予選までで敗退)。ところがそのカワイとファツィオリを弾いた6人全員がファイナルへの進出を果たした。カワイをはじめピアノメーカーの関係者も固唾をのんでファイナルの演奏と結果を待つことになりそうだ。

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<ショパンコンクール①> 日本人5人が3次予選進出!

2021年10月13日 | 音楽

【ファイナル目指す反田・小林・角野・古海・進藤】

 ポーランドの首都ワルシャワで開かれている「第18回ショパン国際ピアノコンクール」がいよいよ佳境を迎える。10月3日の1次予選開始から約10日。日本時間の13日午前5時すぎ、2次予選挑戦者45人の中から、セミファイナルに当たる3次予選進出者23人が発表された。日本人では反田恭平(27)、小林愛実(26)、角野隼斗(26)、古海行子(23)、進藤実優(19)の5人の進出が決まった。3次予選は14~16日。そして17日のショパンの命日を挟んで18~20日に本選ファイナルが行われる。熱演の模様は主催者の国立ショパン研究所が連日ユーチューブでライブ配信中(日本との時差7時間)。クラシックファンにとって眠れない日々が続く。

 ショパンコンクールは1927年に第1回が開かれた。通常5年に1度開かれており、第18回は昨年開催の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1年延期となった。今年7月開催の予備予選には書類とDVD審査をパスした153人が出場し78人が通過。これに主要国際コンクールで上位に入賞し予備予選を免除された9人を加えた87人が10月3~7日の本大会1次予選に挑んだ。その結果、ほぼ半数の45人が2次予選(9~12日)へ。日本人は予備予選を受けた31人のうち13人と予備予選免除の1人の計14人が1次予選に進出、2次にはうち8人が進んでいた。

 3次進出の日本人のうち小林愛実は前回2015年大会での唯一の日本人ファイナリスト。ただ惜しくも入賞を逃しているだけに、今回はその雪辱への強い思いを胸に秘める。反田恭平は高校在学中に日本音楽コンクールを制した逸材。新型コロナ下で有料オンデマンド・コンサートを立ち上げるなど国内外で幅広く活動してきた。角野隼斗は東大大学院修了の異色ピアニストで、「かてぃん」の名前でユーチューバーとしても活躍している。古海行子は2018年の第4回高松国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝。ショパンコンクールには2回目の挑戦で初めて1次、2次予選の突破を果たした。モスクワ音楽院付属中央音楽学校卒の進藤実優はまだ10代と若いものの、大舞台に臆することなく熱演を披露してきた。

 2次進出者の日本人の中では13歳でCDデビューし早熟の天才肌として人気が高い牛田智大(21)にもファイナルに向け大きな期待が寄せられていた。2018年の浜松国際ピアノコンクールで第2位となり日本人唯一の予備予選免除者だったが、まさかの予選敗退となった。医学生ピアニストとして注目を集める沢田蒼梧(22)と東京芸大の大学院生京増修史(25)の2人も残念ながら3次進出はかなわなかった。日本人最後の奏者として13日未明登場した京増は情感溢れる好演で、ほぼ間違いないと予想していたのだが┄┄。

 3次進出者を国別にみると、地元ポーランドが6人で最も多く、次いで日本の5人、イタリアの3人(イタリア/スロベニアの1人を含む)と続く。韓国とカナダとロシア(ロシア/アルメニアの1人を含む)は2人ずつ残り、米国と中国とスペインが1人だった。海外勢の中にはシモン・ネーリング、ピョートル・アレクセヴィッツ(ともにポーランド)、ニコライ・ホジャイノフ(ロシア)、アレクサンデル・ガジェヴ(イタリア/スロベニア)ら実力者も順当に選ばれており、日本人にとっては手強いライバルがひしめく。

 3次予選では課題曲のピアノソナタとマズルカの中から数曲を選んで演奏するが、制限時間が45~55分と2次より10分ほど長くなる。審査は1次・2次同様、審査員17人による次のステージ進出へのYES/NO判定と25点満点のポイント評価で行われる。ちなみにファイナルではショパンのピアノ協奏曲第1番または第2番をオーケストラと共演し、審査は1点(最高点)~10点(最低点)で採点する。

 ファイナル進出者は3次出場者の中から半数の10人ほどに絞り込まれる見込み。最近のショパンコンクールでは2010年にロシアのユリアンナ・アヴデーエワがマルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)以来45年ぶりに女性として2人目の優勝を果たし、前回2015年には韓国のチョ・ソンジンが優勝した。アジア人としては1980年のダン・タイ・ソン(ベトナム)、2000年のユンディ・リ(中国)に次いで3人目。ただ日本人では1970年の内田光子の2位が最高でまだ優勝者は出ていない。ファイナルに日本人が1人でも多く残って、表彰式で日本人の名前が最後の最後に呼ばれることを願ってやまない。

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<興福寺> 東金堂の西側から門と回廊の遺構

2021年10月10日 | 考古・歴史

【平家焼き討ちの跡とみられる焼土も!】

 奈良文化財研究所が発掘調査中の興福寺(奈良市)の国宝東金堂の西側正面から、平家の南都焼き討ち(1180年)後に再建されたとみられる門と回廊の遺構が出土し、10月9日に現地説明会が開かれた。回廊の基壇のそばからは焼き討ちに伴うものとみられる焼土や平安~鎌倉時代初期の土器なども確認された。

 今回の調査区域は東金堂の西約20mの260㎡(南北20m・東西13m)。東金堂は奈良時代の創建以降、五重塔とともに過去5回大火に遭っており、現在の建物は室町時代の1415年(応永22年)に再建されたもの。これまでの周辺の発掘調査で、東金堂院は北と西が礎石建ちの回廊、東と南が築地塀で囲まれていたとみられていた。今回の調査では西の門とそれから南北に伸びる回廊について、それぞれの基壇と建物の規模・構造を確認することができた。

 門の基壇は南北約10.8m、東西約8.0mで、建物は礎石の抜き取り穴などから桁行が約8.8m、梁行が約4.7mの切妻造りの八脚門だったとみられる。この建物規模は平安時代に記された『興福寺流記』の伝える奈良時代の内容と符合する。また門の東西方向の中心軸も東金堂とそろっており、創建当時の姿を踏襲して復興されていたことが伺われる。回廊の基壇は幅が約 6.2mで、建物は梁行1間の単廊だったことが分かった。

 現地説明会には秋晴れの土曜日とあって多くの見学者が詰め掛けた。新型コロナのため入り口では係員による検温と手の消毒。午前中には入場制限が行われ長蛇の列ができていた。隣接する五重塔は来年から約120年ぶりの大修理に入る。塔全体が素屋根ですっぽり覆われて、屋根瓦の葺き替え工事などが行われる予定だ。この日からは工事前の塔内部の特別公開も始まった。普段閉じられている初層の扉が開かれ、四方に安置された三尊像計12体を拝観できる(公開は前期が11月23日まで、後期は来年3月1~31日)。その見学は平日に改めて出直すことにして東金堂のすぐ北側にある国宝館へ。そこで高さが5mあまりある大迫力の千手観音菩薩像や十大弟子、阿修羅像などの八部衆を久しぶりに拝観させていただいた。

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<高取町かかし祭り> 土佐街道沿いに約200体

2021年10月08日 | 祭り

【メーン会場は「東京五輪」をテーマに】

 奈良県高取町で秋の恒例行事「かかし祭り」が開かれている。2009年にスタートし今年で13回目。高取は高取山(標高583.6m)に築かれ〝日本最強の山城〟ともいわれる高取城の城下町。かかし祭りの会場は最寄り駅の近鉄吉野線壷阪山駅の駅前から、緩やかな坂道が続く石畳の土佐街道沿いにかけた一帯で、広場や町家、神社など50カ所あまりに工夫を凝らしたかかし約200体が飾られている。

 メーン会場は街道脇の「街の駅城跡」内の催しスペース。ここは毎年春の「町家の雛めぐり」でもメーン会場になっており、無数のお雛さまがうず高く積み上げられた巨大雛壇で観光客の人気を集めている。今年のかかし祭りは「東京五輪」をテーマに掲げて、水泳や柔道などの試合の場面が表現されていた。ほかの会場では牧場や七福神、たこ焼きなどの出店、結婚式などの光景もあり、ユーモラスなかかしの表情にほっこり癒やしのひと時を過ごさせてもらった。会期は10月31日まで。

【神社の境内にいたカマキリから針金虫!】

 高取町の小島神社にお参りし、帰りにふと足元を見ると小さなハラビロカマキリが一匹。おなかがパンパンに膨らんでいた。もしかしたらハリガネムシ(針金虫)が寄生しているのでは……。以前少し水を張った洗面器にカマキリを入れた途端、お尻からまさに針金のような虫が3匹出てきたことがあった(2016年9月28日付けブログ)。家に持ち帰って早速洗面器に入れてみた。すると数秒のうちにやっぱり出てきた! 今回は1匹だけだったが、長さは優に30cm以上も。ハリガネムシは寄生先で成長すると、カマキリなど宿主を〝洗脳〟し水場に誘導するといわれる。このカマキリも神社境内で水のある場所に向かっていたのかもしれない。

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<和歌山県立博物館> 企画展「きのくにの宗教美術」

2021年10月02日 | 美術

【仏像や仏画、神像など38点、うち24点が初公開!】

 和歌山県立博物館で8月28日から開催中だった企画展「きのくにの宗教美術―神仏のさまざまな姿」も10月3日で最終日を迎える。今年が創立50周年に当たる同博物館では県内各地の寺社が守り続けてきた文化財の掘り起こしと公開に力を注いできた。この企画展でも出展中の仏像や神像、仏画など38点のうち初公開が24点と実に6割も占めていた。

 初公開のうち如意輪寺(有田川町)の「弘法大師像」は鎌倉時代の作で、寺伝によると鳥羽法皇から熊野御幸の折に寄進されたという。画絹(えぎぬ)の退色が進み剥落も多いため全体的に暗く不鮮明だが、赤外線画像では大師の姿がくっきり浮かび上がってくる。霊験寺(和歌山市)蔵の「一字金輪曼荼羅」(写真、鎌倉~南北朝時代)は赤身・三目・六臂で智拳印を結び、一見愛染明王のようにも見える。個人像の「高野山参詣曼荼羅」(江戸前期)は縦約1.7m、横約1.4mの大画面に、聖地高野山の諸堂のほか墓石や地蔵までも描き込まれている。参詣者など人物描写だけでも88人に上るそうだ。

 前坊観音堂(紀の川市)に伝わる「千手観音及び地蔵菩薩・毘沙門天像」(室町時代)はバンザイをするように脇手2本を頭上に掲げ、その掌上に化仏を載せる。いわゆる〝清水寺式千手観音〟といわれるもので、脇侍も左に毘沙門天、右に地蔵菩薩を配しており京都の清水寺本堂と一致する。初公開の文化財にはほかに深専寺(湯浅町)蔵の「東大寺大仏殿曼荼羅」(室町~桃山時代)、大崎観音堂(海南市)蔵の「宝冠釈迦如来坐像」(室町時代)、道成寺(日高川町)蔵の珍しい中国・明時代の「鉄製丸瓦」なども展示されていた。

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