経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

子育て負担の明確化と給付の意味付け

2022年12月18日 | 社会保障
 行動を変えるには、認識を変える必要がある。少子化対策をするのは良いが、戦力の逐次投入をするのではなく、戦略性を持って行うべきだ。例えば、非正規への育児休業給付を実現すれば、出産しても生活費の心配はないという認識が作られ、結婚ができるという行動につながる。対照的に、育児用品に10万円分の支援をするとしても、少しは助かるという意味付けしか与えられなくては、結婚につながらない。

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 2022年は少子化が激化し、危機的様相を呈している。正しくは、危機は既に起こっているわけだから、危機に備える防衛問題以上に焦眉の急である。それでも、防衛問題と同様、対応に必要な財源の確保で揉めそうであり、東日本大震災のときに、復興の中身より財源の増税で議論が白熱したことが思い起こされる。少子化が緩和すれば、財政的にも投入以上の成果が期待できるという決定的な違いはあるにせよ、意味付けは大事である。

 女性への育児休業給付は、均すと月13.5万円になっており、児童手当が月1.5万円だから、月15万円の生活保障となっている。まずは、非正規の女性にも拡げないと話にならないが、受給できている女性にとっても、やや低い。子ども予算倍増の中で、児童手当の増額も議論されているようだから、平均12か月の育児休業の期間、すなわち、0歳児には+2万円くらいの上乗せがほしい。そうすると、大卒初任給22.5万円の手取り17.6万円に近くなり、出産で働けなくても生活できるという認識が作られ、行動も変わるというものである。

 また、子供を持つかどうかの判断では、教育費をどう賄うかの悩みもある。肝心の0~2歳児の無償化がなされていないが、0歳児への給付が充実すれば、高コストの0歳児の保育を使わずに済み、実質的に無償化となる。そうやって、需要を減らした上で、1,2歳児の無償化を進めるべきだろう。3~5歳児については、年12万円の児童手当があるが、これは、公立の幼稚園の学校教育費12.1万円に、ほぼ相当する。

 小学生については、年12万円の児童手当に対し、公立の学校教育費は、授業料ゼロで6.3万円だ。中学生は、それが13.9万円で、年12万円の児童手当をやや上回る。高校生となると、公立でも28.0万円なのに、児童手当はない。児童手当は、教育費を賄うことを目的とはしないが、少子化を緩和するには、「子供を持つに当たり、教育費の不安はない」とする意味付けが重要だろう。

 大学や専門学校などの高等教育については、親が負担できなくとも、奨学金があるという形が求められる。2017年からは、給付型奨学金の就学支援新制度が始まったものの、4人世帯で年収380万円未満などと対象が狭い。国立大学の授業料でも53.6万円であり、出生率が1.75だった1980年の当時は、今の半分だったことを思えば、第2子は授業料を半減、第3子は免除といった給付を、ボリュームゾーンの世帯にも拡げるべきだろう。

(図)


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 少子化が激化すると、年金の給付水準は下げざるを得ない。理屈上は、支えてくれる子供を持たない人の年金を減らせば、そうはならないが、社会常識として、受け入れられるものではない。子育ての負担なしに年金を受けることに対しては、子育ての負担を軽くすることでバランスを取ることになる。その負担は、政策的に明確ではないため、まずは、学校に行かせることなどと具体化し、認識の変化を目指しつつ、少子化対策を進める必要があろう。


(今日までの日経)
 投資会社化するニッポン 海外での稼ぎ、GDP比1割。医療費削減 3100億円どまり。自賠責保険料1割下げ。企業規模要件の撤廃を 年金・健保加入巡り提言。米利上げ幅0.5%に縮小。ドイツ、20年超かけ出生率浮上 男女とも柔軟な働き方ができる環境作り。出産・子育て10万円給付の財源確保、来年に議論。中国経済、需要減で再失速。


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