経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

介護保険と成長の意味

2010年10月11日 | 社会保障
 今日の日経社説は、介護保険についてである。介護保険に関する基礎数字が並んでいるので、これを基にしながら、少し考えてみよう。高齢化に対しては、国民は強い不安を抱いているが、やや行き過ぎのきらいがある。それを解き明かすことにしたい。

 介護費用の総額は7.9兆円。老人医療の10.3兆円と年金の46.8兆円(2007年度社会保障給付費)と比べれば小さいが、それでも「兆」がつくと大きく見える。また、急速に伸びてきている。介護保険がスタートした2000年度には、老人医療の3分の1であったが、いまや肩を並べるところまできた。もっとも、そうなったのは、老人医療の方が、対象年齢の段階的に引き上げによって、2001年度以降、10兆円台で変わらずにあったためであるが。

 さて、今後の75歳以上の人口は、社説にもあるように、2025年には、現在の1400万人の1.6倍になる。そうすると人口要因で12.6兆円に膨らむことになる。いかがだろうか、15年間で4.7兆円の増加だ。これは「わずか」GDPの1%弱である。こうしてみれば、がんばって日本経済を1%成長させれば、賄える程度であることが分かる。

 同様に、老人医療はどうか。75歳以上人口は、2007年の1300万人から2025年の2200万人へは1.7倍であるから、10.3兆円×1.7=17.5兆円で、7.2兆円の増である。また、年金は、65歳以上の増加倍率を用いると、2700万人が3600万人になるから、46.8兆円は、1.33倍の62.2兆円、15.4兆円の増になる。老人医療はGDPの約1.5%、年金は約3%に相当する。

 他方、今後、15年間で日本経済は、どのくらい成長するだろうか。大まかに言って、1%成長なら15%、2%なら30%成長する。高齢化による負担がすべて合わせて5.5%ということからすれば、十分に呑み込める数字である。

 結局、高齢者への1人当たりの給付水準が現状並みなら、それを背負えるだけの力を日本経済は十分に持っており、給付水準を貧しくしないと持たないような状況にはないし、高齢者関係の負担によって現役世代が豊かになれないということでもない。いたずらに不安を持つ必要はないのである。

 むろん、財政的には、増税が必要になってくるから、政治的には重い課題である。それでも、経済は担えるのだから、財政がどう担うかは工夫の問題に過ぎない。むしろ、高齢者が増える分は仕方がないと腹を括り、経済を伸ばすために努力することが遥かに重要である。

(今日の日経)
 公的年金、新興国株にも投資。33社、生態系保全へ評価基準。社説・介護保険財源は効率化と保険料上げで。年金記録回復へ未知数の総力戦、全件照会に5800億円、年金増加額は経費の10%。核心・定数減より1票の平等。セブン、タイで出店加速。オバマ政権補佐官にドニロン氏。超音波の熱でがん治療、気泡目印に集中照射。経済教室・迷惑メール損失・鵜飼康東。大学と職業の接続見直しを。

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