「政治がだらしないから、日本の財政赤字は膨大になった」という話は、よく聞くところだ。一般の方からであれば、「まあ、そういうところもありますかね」と受け流すが、学生がそんなことを研究したいなどと言って来たら、「若さを無為にするようなことはやめなさい」と諫めることになる。こういう学生は、債務=債権という経済の基本的な概念も身についていないのは明白で、とてもモノにならないと心配するからだ。
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確かに、日本の政府は、膨大な借金を抱える。他方、借金は、貸す者がいないと成立しない。日本の場合、これは基本的に企業部門である。すると、「政治がだらしないと、企業はカネを貸すようになる」のか。表裏一体の事柄なのに、片面の説明が不自然になるのは、そもそも、説明自体が誤りであることを示している。民主主義の下での大衆迎合が財政赤字を作るというのは、一知半解の見方でしかない。
むろん、ポピュリズムの政治家が外国から借金をして、消費など非生産的なものに使い、大衆を喜ばせたりすれば、政治と国民の甘えを表すものと言えるが、日本は世界一の債権国である。また、国債に高利を付し、企業の資金をかき集め、設備や人材への投資を阻害するようでは、国の将来を危くすることになる。しかるに、日本の長期金利はゼロ状態にあり、市中銀行は貸し先に困る有様で、まったく当てはまらない。
下図で分かるように、企業の資金過剰と政府の資金不足は対称的になっている。企業が資金をたくさん使って投資する状態は、景気が良いわけで、税収も伸び、財政赤字は縮小する。景気が悪くなると、経済の安定のために、財政が需要不足を補うから、財政赤字は拡大する。そういう裏腹の関係にある。こうした数字を眺めた上で、政治のだらしなさが循環的に変動していると受け取る人はいないだろう。財政赤字は、経済で決まるものなのだ
(図)
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財政赤字を削減する最善の方法は、企業が設備投資をしてくれることである。教科書的には、収益率を高めれば良いとなって、金融緩和、法人減税、規制改革が押し進められることになる。しかし、現実には、企業が投資するかどうかは、売上げ次第である。すなわち、需要リスクが遥かに強く支配している。そのため、教科書を鵜呑みにするエリートが、低金利の維持に不可欠と称し、緊縮財政を組み合わせると、大失敗をすることになる。
日本は、1997年に、公的年金の黒字を勘定すれば、深刻な赤字にはなかったのに、財政だけを気に病む視野狭窄によって、過激な緊縮財政を打ち、デフレ経済へと転落した。その上、慌てて効果の薄い法人減税を行い、税収構造まで壊してしまう。その後は、景気か良くなりかけると、緊縮を仕掛けて、回復の芽を摘む繰り返しである。この4月に予定どおり消費増税をしていたら、足元の回復局面がどうなっていたかを思えば、容易に理解できよう。
あえて言えば、財政再建という政治路線こそが財政危機の元凶である。研究するなら、ポピュリズムと財政赤字の関係より、なぜ、エリートが失敗を認知できず、同じ過ちを繰り返すのかを対象にしたらどうか。もっとも、「思想は一般に考えられているよりもはるかに強力である」という、昔、ケインズが言及したことを再確認するだけに終わろう。そして、選挙に勝ちたい一心で、増税を先送りした政権が、現実に合った選択をできたのだから、皮肉としか言いようがあるまい。
(今日までの日経)
ヤマト、アマゾンの当日配送撤退へ。消費者心理じわり改善。公的年金運用益7.6兆円。日銀、国債貸し膨らむ7.5兆円。
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確かに、日本の政府は、膨大な借金を抱える。他方、借金は、貸す者がいないと成立しない。日本の場合、これは基本的に企業部門である。すると、「政治がだらしないと、企業はカネを貸すようになる」のか。表裏一体の事柄なのに、片面の説明が不自然になるのは、そもそも、説明自体が誤りであることを示している。民主主義の下での大衆迎合が財政赤字を作るというのは、一知半解の見方でしかない。
むろん、ポピュリズムの政治家が外国から借金をして、消費など非生産的なものに使い、大衆を喜ばせたりすれば、政治と国民の甘えを表すものと言えるが、日本は世界一の債権国である。また、国債に高利を付し、企業の資金をかき集め、設備や人材への投資を阻害するようでは、国の将来を危くすることになる。しかるに、日本の長期金利はゼロ状態にあり、市中銀行は貸し先に困る有様で、まったく当てはまらない。
下図で分かるように、企業の資金過剰と政府の資金不足は対称的になっている。企業が資金をたくさん使って投資する状態は、景気が良いわけで、税収も伸び、財政赤字は縮小する。景気が悪くなると、経済の安定のために、財政が需要不足を補うから、財政赤字は拡大する。そういう裏腹の関係にある。こうした数字を眺めた上で、政治のだらしなさが循環的に変動していると受け取る人はいないだろう。財政赤字は、経済で決まるものなのだ
(図)
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財政赤字を削減する最善の方法は、企業が設備投資をしてくれることである。教科書的には、収益率を高めれば良いとなって、金融緩和、法人減税、規制改革が押し進められることになる。しかし、現実には、企業が投資するかどうかは、売上げ次第である。すなわち、需要リスクが遥かに強く支配している。そのため、教科書を鵜呑みにするエリートが、低金利の維持に不可欠と称し、緊縮財政を組み合わせると、大失敗をすることになる。
日本は、1997年に、公的年金の黒字を勘定すれば、深刻な赤字にはなかったのに、財政だけを気に病む視野狭窄によって、過激な緊縮財政を打ち、デフレ経済へと転落した。その上、慌てて効果の薄い法人減税を行い、税収構造まで壊してしまう。その後は、景気か良くなりかけると、緊縮を仕掛けて、回復の芽を摘む繰り返しである。この4月に予定どおり消費増税をしていたら、足元の回復局面がどうなっていたかを思えば、容易に理解できよう。
あえて言えば、財政再建という政治路線こそが財政危機の元凶である。研究するなら、ポピュリズムと財政赤字の関係より、なぜ、エリートが失敗を認知できず、同じ過ちを繰り返すのかを対象にしたらどうか。もっとも、「思想は一般に考えられているよりもはるかに強力である」という、昔、ケインズが言及したことを再確認するだけに終わろう。そして、選挙に勝ちたい一心で、増税を先送りした政権が、現実に合った選択をできたのだから、皮肉としか言いようがあるまい。
(今日までの日経)
ヤマト、アマゾンの当日配送撤退へ。消費者心理じわり改善。公的年金運用益7.6兆円。日銀、国債貸し膨らむ7.5兆円。
「構造改革の遅れが~」「人口減少が~」「成長戦略の不発が~」「内部留保をため込む企業の守銭奴ぶりが~」「日本人の資質低下が~」「将来不安が~」など明後日の方向に原因を求める者が多くて・・・。彼らはもう異常者にしか見えない状態です・・・。
彼らは新聞やテレビが垂れ流すデタラメな情報を妄信するだけで、自分なりに本やネットで深く知ろうともしないし学ぼうともしない。実にたちが悪い連中です。国家の構成員としての自覚が足りないと思います。
私は、この長期不況については「国民戦犯説」の立場を取ります。振り返ると、日本の経済は国民の要求通りの政策が行われ、そしてどんどん悪化してきました。
1997年のデフレ転落も、前年の総選挙で当時反緊縮を訴えていた新進党を勝たせれば回避できました。デフレを固定させたのも、マヌケな大衆が小泉を5年も支持したからです。デフレを深化させたのも、拡張財政で頑張っていた麻生政権をクビにして、民主党政権を生み出したからです。
どう考えても国民の取捨選択能力の拙さも主因の一つなのに、「俺たちは馬鹿な政治家のせいで苦しめられている可哀想な小市民なんだ」と逆切れして政治家に責任を丸かぶせしている光景は実に醜いと思います。人として最低な行為の一つを何年も見せられ続けてる気がします。