経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

緊縮速報・4-6月期は年金で緊縮

2019年09月23日 | 経済(主なもの)
 4-6月期の一般政府の収支は、資金循環統計における資金過不足の4期移動平均で見ると、赤字のGDP比が前期より0.2%縮小して-1.8%となり、再び-2%を切る水準となった。もはや、財政再建に焦る必要はなくなっており、景気が減速し、世界経済が不穏な中で、敢えてするような状況ではない。しかし、経済が消費増税に耐えられるかどうかで実施が判断される有様で、成長に最善を尽くすより財政赤字の削減を優先する異常さが常識化し、状況に応じて経済を運営するという当たり前のことができなくなっている。

………
 金曜に公表された4-6月期の日銀・資金循環統計では、資金過不足の前年同期比が、中央政府で+0.4兆円、地方政府で-0.6兆円、公的年金で+1.4兆円となり、一般政府の4期移動平均のGDP比は、前期より若干の改善という結果であった。この1年、一般政府の「赤字」は-2%を切るレベルに定着しており、当然ながら、名目成長率が2%弱あれば、公債残高のGDP比も安定することになる。これで財政再建に焦るなど、バカげている。

 資金過不足とは、「誰かの借金は、誰かの貯蓄」を意味するから、政府が借金を減らすなら、民間が貯蓄を減らすウラハラの動きをしなければならない。具体的には、企業が投資を増やしたり、海外が輸入を増やしたりすることが必要で、それらが厳しい現下において、どうやってバランスを取るつもりなのか。政府の借金しか考えない視野狭窄になっているから、結局は、国民生活を苦しくさせて、家計の貯蓄をもぎ取るようなことに陥る。

 併せて注目しておきたいのは、公的年金の黒字の大きさである。これを「別腹」と思っているから、緊縮し過ぎてしてしまう。中央と地方の財政ばかりを気に病み、公的年金が主体の社会保障基金は埒外にしており、一般政府という全体状況が顧みられない。「中長期の経済財政に関する試算」で、一般政府の収支が2025年度には黒字になることを分かっている人はどれだけいるだろうか。

 厚生年金については、雇用増によって保険料が伸びている状況にある。また、年金水準の底上げを図る観点から、適用拡大も図られる予定である。いずれも望ましいことではあるが、需要管理の上では緊縮の方向になる。バランスを取るためには、中央・地方の財政を緩めなければならない。こうした全体状況の把握抜きで、とにかく財政赤字を減らすというナイーブさでは、成長を阻害し、かえって財政再建を遠のかせるのである。

(図)


………
 ところで、厚生年金の適用拡大をすると、年金財政は大きく好転する。これは、支え手が多くなるだけでなく、企業負担分の保険料が増すためであり、この負担増が最大の問題となる。それを鎮めるために、国が補助を出すとすると、中央政府の赤字は増すが、社会保障基金の黒字が増し、一般政府全体では相殺されて変わりがない。とりあえず、実需には中立であり、影響が出るのは、将来、補助を受けた低所得の人たちが年金を受給する際の話になる。

 この時に、インフレ要因になるかは、需給状況による。何もしない場合と比べて、供給力に変わりがない場合は、それに比して受給権だけが大きくなるので、一定のインフレが進むことを通じて、格差が均されることになる。そして、適用拡大によって労働時間の制約がなくなり、労働供給の拡大に結びつく場合には、供給力が伸びた分だけインフレは抑制されて、全体がより豊かになれる。

 すなわち、新たな加入者への保険料の補助は、格差が均されるか、より豊かになるかのいずれかだから、十分にやる価値はある。ポイントは、供給力が伸びるかだ。単に適用拡大をするだけだと、企業の労働コストが高まり、供給力を下げるおそれもあるから、むしろ、財政赤字を積極的に出してやるべきである。もっとも、こうした供給力を観点とする高度な戦術を説いても、「財政赤字=悪」の観念しかない国には、まったくムダだとは思うが。


(今日までの日経)
 携帯新料金 高止まり 「官製値下げ」道半ば。厚生年金「企業要件撤廃を」 厚労省、有識者検討会が方向性。FRB、景気先行きに迷い 年内追加緩和で二分。福岡・札幌・仙台の伸び顕著 基準地価。

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