7-9月期のGDP速報で最も衝撃的な事実は、反動減が民間消費を押し潰し、増税の所得減の効果と合わせて、トレンドから13兆円もGDPを落としてしまったことだ。余りの犠牲の大きさに、一気増税の愚かさから目が覚めなければいけないはずだが、世の中の認識は、ちっとも変わらないみたいだね。
政府も日銀も消費増税の反動が和らいでいるという認識のようだが、7-9月期の民間消費の0.4%増はトレンドより弱いくらいで、反動減は戻らずに終わったと認識せねばなるまい。まあ、枠組がないと、認識ができない典型だね。1997年と違い、トレンドが折れていないのは、不幸中の幸いだったが、それをもって回復とは、おかしかろう。
………
数字を読まない世の中に代わり、今日も、つまらん数字を追うことにしよう。来年度予算の税収はいかほどかである。財政再建派の人に限って、こういう数字は気にせず、当局のものを鵜呑みにするが、本当に心配なら、予想を立てることにより、評価の枠組を作る努力をし、検証していくことが大切だ。
結論から言うと、本コラムの予想は、2014年度が52.7兆円、2015年度が55.9兆円である。日経によれば、財政当局は、前者を51.7兆円、後者を55兆円程度としているらしいから、いつもの大幅な過少算定をしていないのは、意外なほどである。その理由は、あとで探るとして、本コラムが、どのように予想したかという、つまらん説明からしていく。
ベースにするのは、2013年度決算の数字で、これを2014年度の名目成長率の予想値1.48%で伸ばし、税制改正要因を増減する。成長率は12月のフォーキャスト調査の平均値を用いた。これで得られるのが51.6兆円であり、当局の数字とほぼ同じになる。実際には、所得税や法人税が成長率以上に伸びているから、この超過分を上乗せすると、本コラムの予想になる。
所得税の超過分については、10月までは実績値を用い、11月以降は、賃金動向を勘案し、前年より2.6%多いと仮定して、0.55兆円とした。法人税の超過分については、野村證券、日興証券の企業業績見通し(含む金融)を基に、経常利益増加率の平均値から成長率を差し引いたものを乗じることで、0.55兆円とした。2つを合わせて1.1兆円の上乗せとなる。
当局の数字と本コラムの予想の差は1兆円あるが、簡易な方法での予想であるから、まあ、許せる範囲かなと思う。今回の補正では、0.8兆円の国債減額をさせてもらえるらしいので、それなら隠しておくまでもないのだろう。国債減額には次年度の法人減税の見合いという意味もあろうし、過少算定をやめれば、2015年度の補正の規模縮小にもつながるから、賢い選択である。
(表)
………
次に、2015年度の税収の予想である。方法は同じであり、先の2014年度の税収予想の数字を、フォーキャスト調査の名目成長率2.36%で伸ばしていく。これに8%消費増税の平年度化分1.1兆円を足し合わせると、55.0兆円となり、やはり、当局の数字と、ほぼ一致する。ここでも、法人税については、超過分を計算し、その0.84兆円を上乗せすると、55.9兆円となる。
これを眺めると、今度の法人減税の純減の規模は、超過分を帳消しにするくらいが頃合いかと思う。それ以上すると、目立ってしまうだろう。それでも、今年度に実施した投資減税は0.6兆円もあるし、復興法人税の廃止は、2015年度では1.4兆円もの価値があるから、全部を合わせると、消費税1%に相当する大きさになる。
こうして、13兆円もGDPを減らした消費増税の1/3が蕩尽されていく。法人減税で設備投資が加速された様子もないから、消費増税と法人減税の組み合わせは、経済と財政を損壊させる政策でしかない。大幅な円安が実現したのに、相変わらず、国際競争力のためには法人減税が必要とする人もいたりして、理解に苦しむところである。
………
2015年度の税収が55.9兆円になると、中長期の経済財政に関する試算の予定額を、実質的に1.8兆円上回ることになる。国の7割の規模がある地方の税収構造も同様だから、基礎的財政収支のカーブは、GDPで0.5%強、上方へシフトしていると考えられる。したがって、7/27に書いたように、2025年度でのゼロへ向かって、順調に進んでいる。
この歩みへの最大の脅威は、一気の消費増税で成長を屈曲させることである。これが今回なかったことは、本当に運が良かった。次いで問題なのは、無闇な法人減税である。どうしてもしたければ、他方で、利子・配当への税率を25%に上げ、国債金利の上昇によって利払費が増えても、自然増収で相殺できるようにしておくことをお勧めする。
いまだに、基礎的財政収支をゼロにするのに、10%を超える消費増税が不可欠と唱える人もいるが、そうした人は、消費増税の悪影響の計量もしないし、税収の最新動向も把握していないと思わざるを得ない。単に、財政当局の「以前」の見解をオウム返ししているのではないか。つまらん数字を追わなければ、自分の見解など持ちようがないのである。
(昨日の日経)
出光が昭シェル買収へ交渉。原油安・5.4兆円安く・MUFG R&C。補正で交付税1兆円。2013年の年金受給総額0.7%減。冬のボーナス5.26%増。11月百貨店1%減。バイト・パート時給最高更新。
(今日の日経)
東南ア賃金が中国に迫る。法人税3年で20%台。低投票率の主因は中高年・大石格。読書・リーダーなき経済。
※投票率の数字を分析した良い記事だね。
政府も日銀も消費増税の反動が和らいでいるという認識のようだが、7-9月期の民間消費の0.4%増はトレンドより弱いくらいで、反動減は戻らずに終わったと認識せねばなるまい。まあ、枠組がないと、認識ができない典型だね。1997年と違い、トレンドが折れていないのは、不幸中の幸いだったが、それをもって回復とは、おかしかろう。
………
数字を読まない世の中に代わり、今日も、つまらん数字を追うことにしよう。来年度予算の税収はいかほどかである。財政再建派の人に限って、こういう数字は気にせず、当局のものを鵜呑みにするが、本当に心配なら、予想を立てることにより、評価の枠組を作る努力をし、検証していくことが大切だ。
結論から言うと、本コラムの予想は、2014年度が52.7兆円、2015年度が55.9兆円である。日経によれば、財政当局は、前者を51.7兆円、後者を55兆円程度としているらしいから、いつもの大幅な過少算定をしていないのは、意外なほどである。その理由は、あとで探るとして、本コラムが、どのように予想したかという、つまらん説明からしていく。
ベースにするのは、2013年度決算の数字で、これを2014年度の名目成長率の予想値1.48%で伸ばし、税制改正要因を増減する。成長率は12月のフォーキャスト調査の平均値を用いた。これで得られるのが51.6兆円であり、当局の数字とほぼ同じになる。実際には、所得税や法人税が成長率以上に伸びているから、この超過分を上乗せすると、本コラムの予想になる。
所得税の超過分については、10月までは実績値を用い、11月以降は、賃金動向を勘案し、前年より2.6%多いと仮定して、0.55兆円とした。法人税の超過分については、野村證券、日興証券の企業業績見通し(含む金融)を基に、経常利益増加率の平均値から成長率を差し引いたものを乗じることで、0.55兆円とした。2つを合わせて1.1兆円の上乗せとなる。
当局の数字と本コラムの予想の差は1兆円あるが、簡易な方法での予想であるから、まあ、許せる範囲かなと思う。今回の補正では、0.8兆円の国債減額をさせてもらえるらしいので、それなら隠しておくまでもないのだろう。国債減額には次年度の法人減税の見合いという意味もあろうし、過少算定をやめれば、2015年度の補正の規模縮小にもつながるから、賢い選択である。
(表)
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次に、2015年度の税収の予想である。方法は同じであり、先の2014年度の税収予想の数字を、フォーキャスト調査の名目成長率2.36%で伸ばしていく。これに8%消費増税の平年度化分1.1兆円を足し合わせると、55.0兆円となり、やはり、当局の数字と、ほぼ一致する。ここでも、法人税については、超過分を計算し、その0.84兆円を上乗せすると、55.9兆円となる。
これを眺めると、今度の法人減税の純減の規模は、超過分を帳消しにするくらいが頃合いかと思う。それ以上すると、目立ってしまうだろう。それでも、今年度に実施した投資減税は0.6兆円もあるし、復興法人税の廃止は、2015年度では1.4兆円もの価値があるから、全部を合わせると、消費税1%に相当する大きさになる。
こうして、13兆円もGDPを減らした消費増税の1/3が蕩尽されていく。法人減税で設備投資が加速された様子もないから、消費増税と法人減税の組み合わせは、経済と財政を損壊させる政策でしかない。大幅な円安が実現したのに、相変わらず、国際競争力のためには法人減税が必要とする人もいたりして、理解に苦しむところである。
………
2015年度の税収が55.9兆円になると、中長期の経済財政に関する試算の予定額を、実質的に1.8兆円上回ることになる。国の7割の規模がある地方の税収構造も同様だから、基礎的財政収支のカーブは、GDPで0.5%強、上方へシフトしていると考えられる。したがって、7/27に書いたように、2025年度でのゼロへ向かって、順調に進んでいる。
この歩みへの最大の脅威は、一気の消費増税で成長を屈曲させることである。これが今回なかったことは、本当に運が良かった。次いで問題なのは、無闇な法人減税である。どうしてもしたければ、他方で、利子・配当への税率を25%に上げ、国債金利の上昇によって利払費が増えても、自然増収で相殺できるようにしておくことをお勧めする。
いまだに、基礎的財政収支をゼロにするのに、10%を超える消費増税が不可欠と唱える人もいるが、そうした人は、消費増税の悪影響の計量もしないし、税収の最新動向も把握していないと思わざるを得ない。単に、財政当局の「以前」の見解をオウム返ししているのではないか。つまらん数字を追わなければ、自分の見解など持ちようがないのである。
(昨日の日経)
出光が昭シェル買収へ交渉。原油安・5.4兆円安く・MUFG R&C。補正で交付税1兆円。2013年の年金受給総額0.7%減。冬のボーナス5.26%増。11月百貨店1%減。バイト・パート時給最高更新。
(今日の日経)
東南ア賃金が中国に迫る。法人税3年で20%台。低投票率の主因は中高年・大石格。読書・リーダーなき経済。
※投票率の数字を分析した良い記事だね。
財政再建目標、複数設定を=安倍首相表明
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2014122200791&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
第20回経済財政諮問会議
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/index.html