KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

結局、線を繋いだ阿佐尻山

2023年03月16日 | 四国の山


朝はまだ肌寒いが日中は随分と気温が上がり、朝着込んだ上着を一枚脱がなければ

汗をかく、そんな日が続いている。春の訪れに胸躍らせるのは人間だけに限らず、

植物たちも同じようだ。里では梅の花から始まりここ数日で河津桜が満開のニュースも

流れている。山ではスプリングエフェメラル。『春の妖精』と呼ばれる花たちが

ネット上にどんどんアップされ始めた。その春の妖精にも沢山の種類があるようだが、

花音痴の私には未だ二つの花の名前しか知らない。そう福寿草とカタクリの花だ。

その福寿草の群生地で有名な鶏足山の写真をプチファーマさんがアップされていた。

やはりこの季節になると『線で繋ぐ』で里山を歩くよりは、せっかくなら花を目当てに

歩きたい。そう思って鶏足山に変更しようと考えたが、登山口となるキャンプ場の

手前で例年道が荒れているのを思い出した。ここ一カ月の間に2度もパンクをして

荒れた舗装路がトラウマになっている。かと言って寒峰は昨年歩いたし、どうしようかな~

と思っていたら、四年前にWOCのメンバーと歩いた阿佐尻山が頭に浮かんだ。

さっそく奥様たちに連絡をしたら未登の山、しかもYAMAPのポイントができると

あって、即『OK!』の返事が返ってきた。




いつものように『道の駅たからだの里』に集合して32号線を南下。それにしても

猪鼻トンネルが開通して本当に便利になった。あっという間に三好市に入り、

大歩危のローソンで休憩したあと西祖谷へと車を走らせる。

県道から国道439号線を京柱峠方面へ、途中から何度目かのヘアピンカーブから

団体営農道の標識へと直進して登って行くと、前回も車を停めた堀切峠に着いた。








先週の稼勢山で冬の服装と同じように長袖の下着を着て歩いたらとても暑かったので、

今日は半袖の下着にしてみたらやはりまだ肌寒い。三人とも上着を着こんで

スタートする。堀切峠から栂峰の集落へと歩いて行くと、集落に入る手前で

前回は無かった登山口の案内板があった。その案内板の道路の反対からはV字に

切れ込んだ祖谷渓谷の奥に三角の頭の中津山が見える。







間知ブロックが積まれた法面を登って行くと自然木でできた素朴な雰囲気の鳥居があった。

前回歩いた時にこんな鳥居があったかな~と。4年経つと記憶も曖昧だ。

鳥居の奥の祠に一礼して杉林の中へと入って行く。

ここから奥様たちに案内で書いた急登が始まる。WOCのメンバーのコアラさん

山さんヨウちゃんと登った時は、コアラさんが最後は四つん這いになって登って

いたので、急登が待ってますと奥様たちの案内には書いたが、さすが毎週トレーニング

ジムに通っている二人は、力強くグイグイと登って行く。











そのアマゾネスの後ろをハアハア・ゼイゼイとついて行くへっぽこリーダー。

動画なんぞ撮っていたらあっという間に置いてきぼりになる。













何とか急登を登りきると電源施設と電波塔のある尾根に出た。

木には小さく小川と書かれた木札が掛かっていた。三等三角点 小川 994.2m










ここからは南西に向かって緩やかな登りの尾根が阿佐尻山まで続いて行く。

電波塔から直ぐに大きな反射板が現れる。フェンスで囲まれた反射板は、四国電力の

管理となっている。ここから麓にあるダムか変電所施設への中継なのだろう。




その反射板からしばらく歩くと尾根の南側が大きく伐採された場所に出た。隔てる

木々のない斜面から一気に風が吹き抜け、帽子が飛ばされそうになる。

前回は杉の苗木の白い食材防止材が、この斜面一面整然と並んで埋め尽くしていたが、

吹き付ける風の影響か、今はほとんどが倒れてしまって悲惨な状態になっている。























正面には笹原に僅かに雪を残した土佐矢筈山への稜線。



そしてその左に綱附森



そして牛の背の背中がここからは小さく見える。黄砂だろうかどの山も霞んで見える。






冬枯れた落葉樹が続く北側と、伐採された南側の斜面。何だか荒涼とした風景の尾根だ。











今日の行程を日曜日に歩いていたりょうまさんのYAMAPの活動日記のURLを

奥様たちには事前に送っていた。そのりょうまさんの活動日記には、このコース上で

写した山野草の写真を何枚もアップしていた。それを見たあっちゃんが、『今日は

いくつ、お花を見つけられるかな?』と言いながら、右に左に目線を移しながら歩いて

いると最初に見つけたのがりょうまさんが書いていたヤマシャクヤクだった。

緑の葉にふんわりとした花を咲かせているところしか見た事のない素人には

この赤い葉と蕾がどうもヤマシャクヤク?に結びつかない。








すっかり葉を落とした木々にも小さな芽が付き始めている。もうしばらくすると

若い緑の葉に囲まれた尾根道になるのだろう。その尾根にはここ数日の晴天で

乾いた色をした、苔むした露岩がポツポツ現れ始める。













阿佐尻山まではゆるゆると登って行けると思っていたが、時々まあまあの急登が現れる。

土が露出していると何となく踏み跡が分るが、杉の枝葉で覆われるとその踏み跡も

分からなくなる。とにかく尾根を外さぬように登って行く。








1168mの標高点辺りから、苔岩が点在する尾根から次第に大きな岩が行く手を阻み始めた。

小さめの岩は乗り越え、大きな岩は巻いたりしながら進んで行く。












杉の木が多い尾根から落葉樹だけの尾根になると一気に風景が変わった。

巨岩と灌木の中を岩と岩の間をすり抜け右に左にと歩いて行く。













周りの雰囲気的にはそろそろかな?と思っていたら、尾根から少し右に今日の

お目当てが待っていた。この群生地、以前より花の数が随分と増えたような感じがした。

人気の寒峰もいいけれど、まだ人が少なく、意外と変化にとんだコースのこの山で

これだけの群生が見られたら十分だ。








ルリちゃんもとにかく踏みつけないように、そ~っと歩いて飴色に輝く花を写し始めた。










『素敵な花を見ながら・・・・・』と言ってあっちゃんが何やらザックから取り出したのは

魚肉ソーセージだった。ん?さっきもおにぎり食べたような気がするんだが。








しばしの撮影会と若干1名の腹ごしらえの後、群生地をあとにすると、少し先に

二又になった尾根の窪地にまた群生地が現れた。『踏んだらいかんよ!』と

ルリちゃん。今度はあっちゃが踏まないようにしながら写真を撮っている。














二つ目の群生地では上から若い男性が降りて来た。登山口に停まっていたハスラーの

持ち主の様だ。『花には詳しいですか?』とあっちゃんが問いかけると、『全くです』と

返事が返ってきた。詳しければりょうまさんが写していた10枚近くの花の居場所を

聞き出そうとしたのだが、『残~念!』。

その群生地から少し登って行くとコンクリートの林道に飛び出した。ここから山頂近くまで

林道は続いているが、ルリちゃんとあっちゃんは尾根を歩くと言って登って行った。

私は前回歩いていたので、独りのんびりと林道を歩いて行く。

道はコンクリートから地道になると南から東にかけての眺望も広がって来た。

ススキの穂を揺らす風の音と時折聞こえる鳥の鳴き声、そして歩みを進める

私の靴音だけが聞こえる。静かだな~!














尾根の南側に続いていた林道が、今度は尾根を跨いで北側に続いている。その尾根に

落石注意と阿佐尻山登山口の道標。ここから尾根に登って行く。少し籔いた尾根道。

前回はもう少しすっきりしていたと思いながら、時々木の枝に服を引っかけながら

登って行くと、これも少し周りの草も増えた?山頂に着いた。





そして4年前に比べると木々の背丈も伸びたのか、以前に比べると少し木の枝で

遮られる方向もあったが、それでも360度、祖谷系から剣山系の名だたる

峰々が見渡せる絶景だ。そんな景色を眺めながら尾根を歩いて来ている奥様たちが

来る間に、お湯を沸かして独り待つ事にした。


中津山と国見山


牛の背・西熊山・三嶺と塔ノ丸


以前より伸びた木の枝が邪魔をする、寒峰から矢筈山へと続く稜線


土佐矢筈山



前回の動画。残雪がもっと多かった



尾根を歩いてきた奥様たちが10分ほど遅れて到着した。二人もこの大展望に感激している。

でもそれも一瞬。『お腹減った~~!』と。花より団子、景色よりやっぱり団子のようだ。

今日は以前からあっちゃんが持ってきてくれていたのに、ここ最近下山後にうどん屋さんで

食べることが多くて、いつになっても食べられなかった『最強どん兵衛』を頂くことに。

ただしこの最強どん兵衛。普段のきつねうどんなら5分のところ、8分かかるらしくて、

それが長すぎる待てないとあっちゃんが文句を言っている。

それでも待った甲斐があって、きつねうどんのきつねも、かき揚げうどんのかき揚げも

そして出汁も全く違う特別感があって美味しくいただいた。








特別な最強どん兵衛を頂いた後、先ほど奥様たちを待っている間に思いついた考えを

提案してみる。それはここから更に先を歩くと、京柱峠から弘瀬山の稜線に繋がる。

その線が繋がると、ここから剣山まで一気に繋がり、そこから今度は北側の丸笹山・

塔ノ丸そして黒笠山・矢筈山・寒峰と繋がればぐるっと周回が線で繋がる。

それを奥様たちに説明すると、『いい、いいですね!』と快諾を頂いた。

題して『ぐるりん祖谷と剣の峰々』。どこかで聞いた事のあるようなキャッチだが、

それはそれで置いといて、また一つ目標ができた。

それがこのコース



寒峰方面のルートを確認する



山頂からしばらくは尾根を下って行く。すると突然林道に出た。『これは・・・!』

山頂手前で北側に続いていた林道だ。そしてもうひとつと思い出したのは、たしか

京柱峠から弘瀬山・三方山を歩いた時に、弘瀬山の手前でも尾根から林道に飛び出した。

ひょっとしたら同じ林道?と脳裏をよぎった。







未舗装の林道は尾根の南側を無理やり削ったような形で造られ、その削られた

斜面からは大小さまざまな形の落石が道の上に転がっていた。







その林道が尾根の北側に回り込むと、今度は雪が現れた。日中の温度で溶けては

朝の冷え込みで凍った雪はザラザラで、油断すると壺足で踏み抜いてしまう。

壺足でガクンと体制を崩すとルリちゃんが、『気を付けてよ腰が悪いんやから!』と。

『ハイ・ハイ奥様!』。時々凝りが酷くなるがここの所はガラスの腰も幾分か調子がいい。










残雪を通り過ぎると見覚えのある場所に出た。広場になった場所には前回来た時には

伐採された木が積み上げられていた。それを奥様たちに言うと全く記憶にないという。

ここから少し林道を歩いて弘瀬山の尾根へと取り付いたのも憶えていない。

まあ林道歩きになると途端にお二人は朝ドラの話になり、話に夢中になって

憶えていないのもやむ無しか~。いやいやそれではイカンので、これから厳しく

指導していこう!(なんてね)




ここで剣山系への線が繋がったところで折り返して行く。

途中からは朝に比べて霞んだ空が随分とクリアになってた。京柱峠の北にあった

放牧場跡や京柱峠、そして土佐矢筈山と綱附森の笹原もはっきりと見える。











帰りは阿佐尻山山頂には行かずに林道をそのまま歩いて行く。すると日の当たらない

場所にさらにたくさん雪が残っていた。奥様たちは今日は朝ドラの話ではなく、

わけぎの料理の話に夢中になっている。しかも雪の上で立ち止まり酢味噌和えの話をしている。







そして林道が尾根の南側に回り込むと、周りの山々がやはり随分とキレイに見えている。

気温は上がっているが強い南風の影響か、黄砂も流れてしまったのか?

そんな周りの景色を他所に、奥様たちはまた次の料理の話が始まった。











林道がコンクリートのヘヤピンカーブになった場所から尾根へと取り付く。

直ぐにある2番目の群生地では朝よりさらに花が開いているように見えた。

反り返った花弁が中心部に光を集め輝いている。冬の長い間暗い地中で過ごし、

春の陽気と共に思い切り花を広げて短い春を謳歌している健気な花だ。











足元の悪い岩尾根を過ぎ1168mの標高点は北に巻いて下って行く。
















大規模伐採地でも朝の景色がウソのように牛の背が綺麗に見えた。

まだ黄色く色づく前のミツマタの白い色の奥に、わずかに残る牛の背の残雪の白。













電波塔まで緩やかだった尾根から最後急坂を下って行く。前の二人が『こんなに

急だったかな?』と言いながら注意深く下っている。山頂で『今日どこに急登が

あった?』と言っていたのはルリちゃんだったのに・・・・・。




















急坂が終わり杉林を抜け、最初にあった山神さんだろうか、小さな祠に一礼して

舗装路に飛び出した。道路から見える集落には新しそうな車が停まっているのが

見えるので、まだこの栂峰集落に人は住んでいるようだ。

長い冬が終わり雪が融ける春を待ちわびたのは福寿草だけではなく、山深くに住まう

この辺りの人達も同じだろう。そんな人たちの生活に思いを馳せながら堀切峠を後にした。








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