KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

奥様たち念願の御来光の滝

2021年10月30日 | 四国の山
10月は石鎚山の紅葉に始まり、月末はやはり石鎚山の南直下の御来光の滝の紅葉が

見頃を迎える。以前から奥様たちから『今年は御来光の滝に是非行ってみたい』と

リクエストがあったので、最終週の今日出かけてきた。

ただ石鎚山の天狗岳の紅葉はそこそこ見応えがあったのに、

そこから標高が下がって行くとまだあまりいい紅葉の便りが聞こえてこない。

御来光の滝もYAMAPで日曜日に出かけてきた人の写真では、滝の周りはまだ

ほとんど緑の状態だった。写真から判断すると来週あたりが見頃の様な雰囲気だが、

来週の天気予報があまり良くない。せっかくなら青空の下で御来光の滝を仰ぎ見たいので、

少しでも日を伸ばして紅葉が進むのを期待して、珍しく金曜日の今日出かけてきた。


今日はいつになく待ち合わせ時間を早めて高速を西へと車を走らせる。

いつも立ち寄る西条市のコンビニからは朝陽に輝く石鎚山が見えた。

空も雲一つなく予定を今日に変更して大正解、期待ができそうだ。

瓶ケ森林道は早朝の空気に包まれ、吹く風が周りの木々を揺らしていた。

澄んだ空気の中、南を見ると朝の柔らかい陽に包まれ山々が墨絵のように続き、

その奥で雲の間から射した光に太平洋が輝いていた。




林道から見る石鎚山は雲一つない。益々期待感が膨らんで行く。

途中でこの辺りではあまり見かけないお猿さんの一家が、木の実を頬張っていた。










長尾根展望所には8時40分に到着。自宅からだとやはり4時間近くかかる。

いつもながら移動時間が長いが、それを差し引いてもこの時期の御来光の滝は見る価値がある。







いつものように展望所から石鎚スカイラインを少し北に歩いて、

カーブミラーのある場所からガードレールを跨ぐと、激坂が始まる。




300mほどの標高差を約30分、下り続けると面河渓の広い河原に着く。

去年、WOC登山部で歩いた時と比べると河原の周りの色付きは、少し薄いような気がする。

いつもはこの河原の左岸から右岸への渡渉が、渡る場所を探して苦労するのだが、

今日は水量が少なくどこでも渡って行ける。







河原の右岸にあるブルーシートが取りつきの目印。木の枝には赤テープもある。

ここからは面河渓の沢を高巻ながら登って行く。途中にはりっぱな木の橋が架かっているが、

これはもともと面河渓谷から本沢を通って石鎚山へ登る登山者の為に造られたものだろう。

途中は所々で倒れた木が道を塞いでいたが、奥様たちもさほど苦も無く歩いてきている。













周りの木々はと言うとやはりまだまだ緑が多い感じがする。







高巻の道を下り2回目の渡渉で左岸に渡り、少し歩いて行くと七釜に着いた。

広い白い岩肌に薄く苔が付き、その岩には小さな段差に小滝ができ、このルートの

最初の景観ポイント。ただ午前中はいつも陽の光が届かず薄暗い。
















七釜から少し上でまた右岸への渡渉と高巻。道は倒木が多く、足を上げたり腰を屈めたりで

距離の割にはけっこう疲れる。







魚止めの滝を横目に見ながら進んで行くと、途中何ヵ所か

山側から水が流れる岩場を渡って行く。そして段差のある場所には梯子と、

一般的な登山道と比べると変化があってスピードはあまり上がらない。










今日四回目の渡渉。次第に渓谷の岩が大きくなっていく。






















南沢の入り口は、沢の両側に岩壁が立つ洞門の手前にある。

ここからこの沢を登り詰めると東陵コースカニの横バイの笹滝に着く。

洞門からは本来なら洞門を通って沢沿いを進むと、御来光の滝への最短ルートとなるのだが、

洞門の手掛かりが浅い斜めの岩棚のトラバースがなかなか難易度が高く、

下手を打つとそのまま水にドボンとなる。今日は水量も少ないので行けない事はないかと思ったが、

安全策を取り昨年と同様に手前のテープのある場所から、また高巻いて行く。













高巻の道にも何ヵ所か岩肌を渡る場所がある。事前にYAMAPで学習してきた奥様たち。

その写真にはロープが張られ水が流れ苔むした岩肌が載っている。

何度か『ここがあの写真の場所?』と聞いてくるが途中の岩肌はさほどでもなく

数歩歩けば渡れるような場所。







三度目に現れた岩肌がその写真の場所だったが、ここも水の流れがほとんど無く、

思っていたより容易に渡って行けた。ここまでの7回の渡渉とこの最後の岩肌用に

今日は新調した登山靴を買って来た。2か月前に買ったシリオの302は、

一応ビブラムソールのなのだが、買って直ぐの状態でも少しでも濡れた岩や、

スルスルとした岩肌ではグリップがあまり効かなかった。

初めてこの御来光の滝に来た時に沢にドボンした記憶がトラウマになっていたので、

絶対に滑らないようにと初めてモンベルの登山靴を買ってみたのだった。

『濡れた岩肌や木道でも驚異的なグリップを発揮』と謳ったソール。

確かに途中の岩ではヒヤッとする場面もなくここまで歩いてこれた。










この岩肌の斜面をクリアーするといよいよ御来光の滝が近づいてくる。

少し木々の茂った右岸を登り、一旦沢に降りると目の前に色づいた木々の間から

御来光の滝が見える。昨年と比べるとやはり未だ緑の木も多く、全体的に色づきがもう少し

先のようだが、普段歩き慣れない沢や荒れた道を長い時間歩いてきて、

やっと見ることのできるこの景色は、何度訪れても感動する。













沢から一旦引き返し、少し登り詰めると滝の直下に着いた。

滝壺では先行者が二組、落ちてくる滝の水を眺めながら寛いでいた。













ここまで2時間30分。やはり奥様たちのペースは速かった。

落差100mと言われる御来光の滝。ゴツゴツと角張った岩壁に流れ落ちる滝の水。

その両側には色付いた木々と南に開けた滝は明るく、青空から流れ落ちているように見える。













少し平らな場所で昼食にする。奥様たちは寝そべってスマホで滝の写真を撮っている。

先行者の一組がドローンを飛ばし始めた。この滝を上空から撮った動画。見てみたいな~!










昼食を摂りながら話をしている内にあっちゃんが『どうやったらこの滝の上に行けるの?』

と聞いてきた。『この手前の左側を登って行くんです。』と答えると

『この水がどこから流れてくるのか見てみたいわ~』と。??・・・・勘弁してください!

『朝4時に家を出発できるなら』と言うと黙り込んでしまった。そうなのだあっちゃんはとにかく

朝に弱い。今日の豊浜SAを6時集合でも先週からずっと気が気でなかったそうだ。

どんな難所や悪路でもものともしないあっちゃんを黙らせるには

刃物はいらない『早起き』の三文字があればいい。(笑)

食事を摂った後は滝壺まで寄ってみる。滝壺に係る虹をバックに自撮りするルリちゃん。

果たして上手く撮れれるだろうか?




















振り返ると南に向かって渓谷が続いている。沢の両側の木々の色付きはあと少しだが、

とにかく青空が花を添えてくれている。







マイナスイオンをたっぷりと浴びて、いつまでも眺めていたいが

名残惜しみながら滝を後に今年一番の彩りにお別れする。











下の河原から徐々に高度を上げてきたとはいえ、帰りの道も楽ではない。

ここまで左岸は比較的緩やかな道だが、右岸の高巻の道はやはり足元が悪い。

木の枝に帽子を引っかけたりしながら戻って行く。
















ただ沢の水の量が少ないのが救われ、帰りもけっこうなスピードで歩いて行く。










何度か渡渉を繰り返し高巻きしながら歩いて行くが、やはり新しい靴は固いせいと

靴紐の締め方が悪かったのか、所々靴の中が当たって足首や指先が痛み始めた。














御来光の滝から約1時間で七釜まで戻ってきた。ここで初めて腰を降ろして休憩をとる。

午前中と比べて日差しの届いた沢は、また違った雰囲気がした。











七釜を後に、左岸から右岸に、そして高巻いた後に朝一番降りてきた河原に着いた。

ホッとした次に頭に浮かんだのは、ここから最後の急登。

毎回感動させてくれる御来光の滝の滝だが、毎回ここからの登りに苦しまされる。













ここまで先頭でいい感じに歩いてきたへっぽこリーダーは、途端に弱腰になり奥様たちに

『車のキー、預けましょうか』とトーンダウン。九十九折れの道を二人に遅れをとらないよう

ハアハア・ゼイゼイ息を切らせながら登って行く。










周りの木々の色付きに励まされながら一歩一歩登って行く。

ロープの架けられた場所まで来るとあと少し。石鎚スカイラインを走る車の音も聞こえ始めた。

今回はここのところ奥様たちに鍛えられているせいか、過去3回と比べると意外と早く登りつめられた。

それでもやはり最後にスカイラインのガードレールを跨ぐ足が重たかった。
















長尾根展望所は観光の人たちの車でいっぱいだった。

ベンチに腰を降ろし靴紐を解くとやっと解放された気分になった。

靴を履き替え落ち着いた後、展望所にある双眼鏡で石鎚山を覗いて見る。

弥山から西ノ冠岳に続く稜線の下に、笹原に続いている道が見えた。

あれが御来光の滝を通って本沢からの道だろうか?










石鎚山もこちらか見ると、見慣れた山容と全く違う形をしている。

『まるでソフトクリームの様!』と奥様たち。疲れているはずなのに食欲旺盛な奥様たち。




帰りの瓶ケ森林道も夕暮れ前の絶景が広がっていた。今月初めに弥山からの帰りにも見た

水平のラインに浮かぶ石鎚山。そしてコメツツジの色付いた東黒森山。途中で何度も車の

スピードを緩めながら、晩秋を迎えた瓶ケ森を満喫しながら帰路についた。


















線で繋ぐ山歩き 京柱峠~矢筈山

2021年10月22日 | 四国の山





今週は線で繋ぐ山歩きを再開。というよりは苦肉の策でコースを決定。

まずルリちゃんが水曜日にWOC登山部に参加する事になり、

あっちゃんはというと今週の水曜日は私用で山に行けない。

それでも山を歩きたいと言うので、取りあえず木曜日に予定を変更した。

そしてルリちゃんが前日の疲れが残って参加できなくても、ルリちゃんが歩いた事のある

コースで、あっちゃんが歩いた事のない山なら抜け駆けにならずに済む。

色々考えた結果、線で繋ぐ山歩きのルート上にある山で土佐矢筈山に白羽の矢を当てた。


WOC登山部では土小屋から二の森まで歩く予定だったので、

往復14km歩いた翌日にルリちゃんがまた歩くのはしんどいかなと思っていたら、

天候が悪くて弥山までで戻ってきたので、疲れも残っていないと言う事で、

ルリちゃんも参加する事になり。いつもの様に奥様ふたりとへっぽこリーダーの三人での山行になった。

前日の石鎚山のガスと強風の話を聞いていたので、果たして今日はどうだろうか?と

思っていたが、曇り空だが何とか天気は持ちそうな感じがした。

財田町の道の駅で待ち合わせをした後。32号線、439号線と車を走らせ、

約2時間で京柱峠に着いた。やはり空一面雲に覆われていたが、幸い風はほとんどなく

車を降りると少し肌寒い程度だった。身支度をして9時35分にスタートする。










峠から東に林道を少し歩くといつもは萱原への取りつきとなるのだが、

その萱原の上を歩く尾根への道が新しくできていた。




しばらくは杉林の中を歩いて行くと、直ぐにこのコースの名物?の三段急登となる。

けっこうな斜度の坂道に、奥様たちのペースも上がらない。

1段目は逆L型の岩の横を通り、登りきると少しだけ平らな場所に出る。










そして露岩が現れると最後の三段目の急登。







その急登を登りきると原生林の分岐に着いた。

その道標に従って分岐を右に折れブナやミズナラの原生林へと進んで行く。










林床は落ち葉で赤く染まっているが、ブナの黄葉や他の木々の紅葉もまだのような感じがした。










緩斜面の原生林を過ぎ広い支尾根に出ると小さな祠とモミ千本の標識。

ここから道の両側にモミの林が続いていく。










モミ林を抜けると足元に笹が目立ち始め、小桧曽山との分岐の手前の笹原に出た。

南東には大きな電波塔で直ぐに同定できる梶ケ森

奥様たちは『石鎚山が見える!』と騒いでいる。そして反対側にはこれも同定しやすい天狗塚と牛の背







笹原から分岐に出ると今度は東側の眺望が広がっていた。広大な笹原と稜線の奥に土佐矢筈山が見える。




まずは小桧曽山に歩いて行く。ここからは先週歩いた一ノ森から槍戸山のように

稜線上に白骨林が点在する道。ただ一旦下って登り返すと直ぐに小桧曽山に着いた。










小桧曽山は山頂と言うよりは小ピークといった感じ。南に目をやると、太平洋と雲の間に

室戸岬の半島が薄く続いているのが確認できた。土佐矢筈山の左に天狗塚、右には綱附森が見える。

三角点は二等三角点そして今日一つ目のYAMAPのポイント。
















ここで行動食を口に入れ、折り返して次の土佐矢筈山へと向かう。

先ほどの分岐から少し登り歩いて行くと、ニセ小桧曽山と呼ばれるピーク。

こちらは1554mほどの標高。先ほどの三角点が1524mなので、果たしてどちらが本物の小桧曽山なのか。

高知側から見るとこのピークが山頂に見えるので、このニセ小桧曾山こそ本物だと言う人もいる。




ニセ小桧曽山からは広い尾根の笹原道が続いていく。今日は天狗塚が随分近くに見える。

するとあっちゃんが『天狗塚まで歩く?』と。奥様、冗談はおやめください。

一旦下って行くと野球のグランド位の広さの笹原。さらに奥にも笹原が続いている。










更に下ると土佐矢筈山の尾根の手前の笹原になる。その尾根の取付きは少し樹林帯になっているが、

後はほとんどが笹。まさに笹・笹・笹の天国!










樹林帯では足元に少し枯れかかったアザミがまだ花を咲かせていた。

その樹林帯を抜け、少し左に巻きながら登って行くと途中にゴリラの木がある。

遠目に見るとオッパイもある様に見えるのでメスゴリラ?その横に並んだメス〇〇。







左に巻いた道から稜線を乗り越えると、いよいよ土佐矢筈山の山頂が見える。

あっちゃんが『あの道が、矢筈峠からの道?』と指さし聞いてくる。

ここまで来る途中、線で繋ぐ山歩きのここから先は次が綱附森になり、

その次が天狗塚ですと説明していた。綱附森は矢筈峠が登山口となり、香川からは結構遠い。

そしてその矢筈峠から土佐矢筈山の往復は2時間程度なので、どうしても中途半端な距離になる。

さてさてどうしたもんかと話をしていたのだ。




矢筈峠への分岐の道標を過ぎると、土佐矢筈山山頂に着いた。

時間は丁度12時。京柱峠から2時間25分。







山頂からは天狗塚や三嶺そして綱附森が見渡せる。










高ノ瀬から石立山そして太平洋へと続く峰々。




お昼ご飯を食べている間、あっちゃんから提案があがった。線で繋ぐには矢筈峠からここまでの

2時間を消化しないといけない。ただ今日このまま矢筈峠を往復するには時間が足りないので、

途中まで降りて引き返すことで、少しは次の消化時間を短縮できるというのだ。

『ん~ん~。奥様なかなかいいアイデアです!』

それではと記念撮影していたらルリちゃんが『リーダーの顔の皺が酷いので後で修正するように』と指示が来た。

あとで確認して見ると、確かに顔中皺だらけだ。ついでにお腹周りも気になる。




写真を撮った後さっそく分岐から矢筈峠へと下って行ってみる。

山頂からの尾根の先を左に回り込み道は続いている。










足元が背の低い笹の急坂を下って行くと、比較的緩やかな樹林帯の道になる。

打合せでは20分ほど下った所で引き返すことになっていたが、樹林帯の中では

次に登って来た時の目印になるようなものがない。丁度、南側が開けて幹が折れた太い木があった。

まだ20分は経過していないが、このまま樹林帯の中を降りて目印となるようなものが無かったら、

矢筈峠まで降りてしまいそうなので、ここを次の折り返し地点として引き返す。











さてここからは予定になかった登り返し。なかなかの急登に息が切れる。







山頂の東側から西側に回り込むと分岐から広がる笹の斜面に不思議な模様が見える。

薄緑の笹原の所々に黄色く円形になった笹。まるでミステリーサークルようだ。

一面でなく所々に点在する円。どうしたらこんな風になるのだろうか?







分岐まで戻ると、後は多少のアップダウンはあるが平坦な道とほぼ下りになる。

ここまで来るとへっぽこリーダーも気持ちが楽になる。










今日は生憎の一日中曇り空。晴れて青空の下なら最高だったけれど、

それでもこの四国随一の笹原はどの季節に来ても何度来ても飽きない。

ここにきて奥様たちがYAMAPのペースを気にしてスピードアップしてきた。

『奥様~!お待ちくだせい・・・・・!』よく見るとこの辺りの笹原にもミステリーサークルが見える。










モミ千本の分岐から右に折れて往路と違う道を下って行く。原生林コースと同じように

割と広めの尾根に迷わないようにテープを見ながら歩いて行く。










原生林コース分岐からは三段の急坂。『こんな急なとこ登って来たんやな~』とルリちゃん。

小桧曽山分岐から京柱峠までのコースタイムは70分。時間は14時10分。

奥様たちは15時までに戻るわよ!と言いながら、更にスピードを上げ下って行った。







70分のところを予定通り50分で降りてきた。峠のベンチに腰掛け登山靴を脱ぎ、

先週と同じように復活したコーヒータイムで雑談。タイムも平均の110~130%

となり奥様たちも満足げな様子。




今月は線で繋ぐ山歩きはお休みして、紅葉狩り月間の予定だったが、

予定を変更した結果、京柱峠から土佐矢筈山とその先少しだけ繋がった。

今週は急に冷え込んできた。歩行中は汗がでて暑いが、稜線に出て風が当たると急に寒くなる。

服装もよく考えないと夏場の様にはいかなくなってきた。

来週は奥様たちのリクエストで御来光の滝を予定。何度行ってもあの最後の

急登が苦手なコースだが。10月最後の紅葉狩りの締めとしては外せない。

奥様たちに付いて行けるかへっぽこリーダーは眠れない日々が続いていく。(笑)

山の芸術祭 一ノ森・槍戸山・剣山

2021年10月16日 | 四国の山



先週は西日本最高峰の石鎚山の錦を堪能した。この石鎚山から四国の山の紅葉は

スタートして、日ごとに他の山々に移っていく。

今週はどこのお山にと考えると、当然石鎚山に次ぐ西日本で二番目の高さを誇る

剣山となる。先週の金曜日にKyoさんが歩いたレポートには

既に山頂から山裾に錦の彩りが広がっていた。そりゃそうだ。石鎚山と剣山では30mほどしか

高さは変わらない。紅葉の時期もほぼ同じ。ひょっとしたらもうピークは過ぎているかもしれない。

天気予報はというと水曜日が雨。木曜日は曇りでまだましな様子。幸い木曜日も予定が

入っていなかったので、奥様たちに曜日の変更の連絡をすると、ルリちゃんのお嬢さんも

休みなので一緒に歩きたいと連絡がきた。『もちろん、山ガールの参加は大歓迎です』と即答する。


朝起きると窓の外は曇り空。予報では昼から晴れるらしいが、やはりテンションは上がらない。

集合場所の貞光に向かう途中の脇町辺りから見えた南の山にも重たく雲がのしかかっている。

『これは眺望は望めないな~』『紅葉はやっぱり青空でないと映えないしな~』などと

考えながら車を走らせる。貞光で乗り合わせて国道438号線を南に、一字を過ぎ

第一ヘヤピンに差し掛かるころにガスが出始めた。第七ヘヤピンまで続く道は

高度が上がるごとにどんどんガスが濃くなっていく。そして最後はホワイトアウト状態に。

ガードレールや白線の無い場所ではどこを走っているか分からないくらい最悪の状況になった。

車内でも重たい空気が流れていく。スキー場を過ぎ夫婦池を過ぎると一瞬、雲の間から青空が見えた。

『あっ!』と山ガールマリリンから声が上がる。そして一字から東祖谷への町境の

カーブを曲がると、目の前には雲ひとつない青空と、朝陽を浴びて光り輝く剣山の姿。

車内で悲鳴ともつかない歓声と拍手が沸き上がる。『やったー!、最高!』

狭い車内でなかったら四人ともが座席から立上がって、スタンディングオベーションしてただろう。


第七ヘヤピン辺りでのテンションの低さはどこ吹く風。身支度をしている間中、

ルンルン気分でテンションアゲアゲ!何十回と来た剣山でこれだけ気持ちは高揚したことはなかった。

見ノ越の駐車場のトイレは前回来た時は工事中だったが、きれいなトイレが完成していた。

いつものように劔神社の石段を登ってスタートする。本殿の前で低頭し、宿泊所の横の

注連縄を潜って登山道へと分け入って行く。










通い慣れたこの道も歩く季節で周りの景色は変わっていく。そして今日はいつも見慣れた

前を歩く二人の姿のさらに後ろに、いつもと違うマリリンの姿があって新鮮だ。










西島神社の巨岩を過ぎるといつもの様に雲海荘から広がる山裾が見える。

太陽がその雲海荘の真上から山肌を光らせ逆光になっているが、それでも色付きは確認できる。







西島駅には約40分で到着。リフトからは軽装の登山者と言うよりは観光客の人たちが

次々に降りてきている。ベンチの横からは三嶺がくっきりと見える。

来る途中で我々のテンションを下げた雲は、やはり塔ノ丸の稜線を乗り越えられずにいる。

丸笹山にはその雲が近づいてきているが、まだ雲に隠れず山頂の笹原が見える。










水分補給で一息入れている三人の中で、あっちゃんの顔色が悪い。

道中はゆっくり運転してきたつもりだったが、見ノ越に着く前にスマホを操作していたのが

良くなかったらしい。この西島駅まで歩いてきてもまだ気分が悪いという。

まぁもう少し歩いていたらその内に回復するだろうから、刀掛けの松まで取りあえず登って行く。

西島駅から見えた丸笹山にかかり始めた雲は、東側の木屋平をすっぽり覆っていた。







刀掛けの松からは雲海荘直下の錦繡の山肌が見渡せた。カエデの紅葉だろうか、

オレンジ色の斜面が輝いている。剣山には屋島の合戦に敗れた平家が、

安徳天皇と東祖谷(剣山の西)に落延び、源氏滅亡を祈願し剣山の頂上付近に宝剣を納めた伝説がある。

安徳帝が剣山へ登る途中、この場所で休んでいた時、汗だくで宝剣を持ち続けている従者に気遣い、

松の枝に宝剣を掛けて汗を拭くよう言葉をかけられたという言伝えの残るのが、

この刀掛けの松。我々も同じようにして汗を拭いで一息入れる。










今日はこの刀掛けの松から行場を通ってまずは一ノ森ヒュッテを目指して行く。

自然林の中に続く道には優しい陽が差し込み、道の上の落ち葉を踏みながら歩く。

その内に道は茶色の枯れた落ち葉の道から、石灰岩の白い道になる。そしてさらに苔玉岩の斜面の横を通り

不動の岩屋を過ぎ、巨岩の横を抜けるとおくさりの鎖場に着いた。













以前に雨の降った翌日にこの鎖場を下ったことがある。その時はツルツルの岩肌に

足を滑らせ、しかも途中で一番狭い岩と岩との間でザックが引っかかり、

身動きが取れなくなり、二進も三進も行かなくなり、死ぬかと思った。

そんな話を以前にあっちゃんに話をしたことがあるので、『今日は見学だけです』と

話をしていたのに、少しよそ見をしているうちに、あっちゃんがもう登ろうとしている。

『あら、ほんとうにツルツル!』と言いながら鎖を登って行くが、さすがのあっちゃんでも

少し難しそうな雰囲気で、数メートル登っただけで降りてきた。

すると横にいたマリリンに『滅多にないことだから登ってみたら』と勧めている。

素直なマリリンがザックを置いて登り始めた。女性の靴なら鎖の輪っかに足が

入るので足掛かりができて『登れそう』と言いながら降りてきた。










おくさりで少し遊んだ後、両劔神社へと少し下って行く。

両劔神社は巨大な岩がご神体。その大岩を背に小さな小屋が建っている。







両劔神社からも山の北側を一ノ森へと緩やかな登りの道が続いている。

穴吹川源流の谷で冷たい水に手をつけ、その先のテンニンソウのお花畑は今は枯れた花ばかりだった。

秋から冬への季節が移っているのを少し感じながら歩いて行く。その途中所々で北側の景色が

開けているが、赤帽子山も雲の上に少し頭を覗かせているだけだった。










樹林帯のなかから明るい場所に出ると、一ノ森と剣山との分岐になる。

この分岐には殉職の碑がある。55年ほど前、剣山測候所の職員二人が、

雷による通信ケーブルの途絶の点検に向かう途中、この辺りで表層雪崩にあい

一人が行方不明になった。捜索は延べ1,000人にものぼり、35日目に遺体が

発見された。発見したのは山頂ヒュッテの新居綱男さんだった。そして当時の

気象庁山岳部長の新田次郎が同僚の為に送った「山を愛し気象観測を愛し
 
こよなく妻子を愛せし男ここに眠る」の言葉がこの碑に刻まれている。







この分岐では西側と東側では景色が全く違っていた。西には青空の下次郎笈

明るすぎる陽を浴びて輝いて見える。一方東側はやはり白い雲にすっぽり覆われていた。







丁度一ノ森と剣山の鞍部になるこの分岐から、まずは一ノ森ヒュッテへと登って行く。

車酔いから解放されたあっちゃんが『お腹が空いた、お腹が空いた』と言い始めた。




ヒュッテの前では男性が三人がベンチに腰掛け食事を摂っていた。

我々もベンチに腰を降ろして各々行動食を口にする。

案内にはここでマリリンの調子を見ながら、槍戸山に行くかを決めましょうと書いたが、

さすが若いだけあって心配する事は全くなかった。逆にへっぽこリーダーの方が心配になってきた。










一ノ森ヒュッテから槍戸山へは一旦下って登り返す道。するとお腹も満たして

元気にあっちゃんがYAMAPの平均ペースを気にしてスピードを上げ始めた。

白骨林が見事なこの稜線。写真を撮ったり、動画を撮ったりしている内に

ルリちゃんもマリリンも随分先を歩いている。







今日は南からの風なのか、日奈田峠へと続く稜線を雲が乗り越えられずにいる。

以前WOC登山部できた時は、胸ほどの高さまで笹が生い茂っていたが、

今日は膝くらいまでの高さで随分様子が変わっていた。










まだ青々としたゴヨウマツと、枯れてしまったゴヨウマツの白骨林の間を歩いて行く。







確かに笹の背は低くなっていたが、足元の見えない道の上には石がゴロゴロして

油断すると踏み外して足首を捻りそうになる。小さなピークを一つ越えると槍戸山が見えた。

もうすでに到着しているあっちゃんの姿が小さく見えた。










槍戸山には山名標と四等三角点・槍戸山。そして今日一つ目のYAMAPの山頂ポイントをゲットする。

『もう遅いわね!』といった感じの冷たい視線を送るあっちゃんとマリリン。











集合写真を撮った後は一ノ森への折り返し。するとマリリンがザックからストックを取り出した。

先ほどの笹道の足元が悪かったので用心の為と言っている。『ん、なかなかこの子、歩き慣れてるな!』

するとそのストックの一本をあっちゃんに『貸しましょうか』と言って手渡した。

今日は珍しくへっぽこリーダーはストックを持ってきていない。剣山は歩き慣れているのでと

思ってなめていた。すぐに先週の石鎚山の東稜コースでの転倒が頭に浮かんだ。

さすがに『私に貸してください』とは言えず、靴で足元の笹を払いながら注意深く歩いて行く。








途中の白骨林は太く大きく低い位置から枝が広がり、枯れていても堂々としている。

マリリンが魔女の森に迷い込み、魔女の手下の木々に囲まれているように見える。

反対に細い白骨林も青空の下、凛としてまっすぐ立っている。










当初、今日の計画は、次郎笈の南東にある『鬼人の岩屋』を探しに行こうと思っていたが、

予定を変更したので、その岩屋の岩が見えないかカメラをズームで撮ってみるが皆目見当がつかない。

次回の課題と楽しみにしておこう。







一ノ森への登り返し。相変わらず三人とも元気だ。静かな尾根道に鳥の鳴く声と

情けないへっぽこリーダーの喘ぎ声だけが聞こえるだけ。







一ノ森の三角点は三等三角点。その三角点からヒュッテを横目に見下ろしながら歩いて行くと

一ノ森山頂。そして二つ目のYAMAPの山頂ポイント。










槍戸山から一ノ森そして剣山の西から南にかけては国有林として買い取られ、

鑓戸シコクシラベ林木遺伝資源保護林に指定され、シコクシラベの純林が

見ることができる貴重な林が続いている。







石灰岩の大岩が現れ足元のゴロゴロとした岩を登って行くと二ノ森。

この場所は山頂らしくなく、道標に書かれた消えかけた二ノ森の文字を見逃すと

気づかずにそのまま通り過ぎてしまいそうになる。










二ノ森から剣山までも笹尾根に登山道が続いていく。6月にコリトリから登って来た時は

霧の中で一切周りは見えなかったが、今日は気持ちのいい稜線歩きができる。
















剣山山頂の東のテラスへの階段は段差があっていつもしんどい思いをする。

奥様たちも同じなのか階段の脇の笹の中を登っていっている。







東のテラスでは大勢の人が思い思いに寛いでいた。テラスの北側を覗き込んだ三人から

『わ~すごい!』と歓声が上がった。歩み寄って見るとテラスの向こうには

紺碧の空の下、真っ白な雲の大海原が広がっていた。時間はもうすでに13時。お昼を過ぎて

ここまでの雲海を見られるのは珍しい。曜日を変更したり、コースを変更したりはしたが

思いもしなかった大雲海に、へっぽこリーダーの予想しなかった株価の上昇に思わずにんまり!










テラスでの雲海を満喫した後は、山頂ヒュッテでお昼ご飯。少し気温が下がってきたこの季節には、

温かい出汁を飲みたくなる。へっぽこリーダーはうどん+きつねを頂く。

うどんの出汁の塩分ときつねの甘く染み出る汁を美味しくいただく。













女性陣が会話を楽しみながら食事をしている間、へっぽこリーダーはさっさとうどんをたいらげ、

外に出てトイレの手前のベンチに腰掛け一服タイム。

先週の轍を踏まないように新しいライターを持ってきてタバコに火をつけようとするが、

一向に火がつかない。何度やってもダメなので諦めかけていたら、男性がやってきて

おもむろにタバコに火をつけた。しめしめと思いながら『すみません、火をお借りできませんか?』。

先週の石鎚山では女性の天使が舞い降りてきたが、ここ剣山では髭を蓄えた天使がやって来た。

お腹を満たした後は山頂の北側のテラスでコーヒータイムを取ろうとヒュッテを出る。

食事を終えた後のヒュッテ横の階段が、全く足が上がらない。他の三人も同様の様だ。







北のテラスまで歩幅が合わず歩きづらい木道を歩いて行くと、塔ノ丸の稜線を

雲が流れて乗り越えようとしていた。もう少し動きが早かったら滝雲に見える。

雲の高さは一定なのか、丸笹山の頭だけは隠れずにいた。










北のテラスでも絶景が待っていた。ザックを降ろして、あっちゃんが持ってきた

IRIBITOさんのお店のコーヒーを、今日はマリリンが淹れてくれている。













同じ場所にいても刻々と周りの山の表情は変わって行く。今日最後の記念撮影。
















北のテラスでものんびりした後は、今日は三人が歩いた事のない山頂から

『二度見展望所』のコースを下って行く。次郎笈は雲の影になってうす暗い色になっている。

紅葉も昨年に比べると色付きが少し薄いような気がする。













途中にある展望岩に三人を誘導する。岩の上に登ると大劔神社のお塔石への色付いた山肌が見えた。

ここから見下ろすお塔石は、少しぽっちゃりした馬が走っているように見える。

反対を見ると次郎笈への稜線の紅葉。色付きが少し悪いとはいえ見応えがある。







ここでは当然、あっちゃんのポーズ。




二度見展望所まで降りて今度は山の北側を歩いて行く。お塔石への斜面はカエデのオレンジと

笹の薄緑の斜面、そして白骨林とのコントラストが何とも言えない美しさだ。











御神水までの道は行場コースの落ち葉と違って、色付いたままの赤やオレンジ色の落ち葉が積もつている。

女性陣がレッドカーペットの上を優雅に歩いて行く女優たちに見える。







前を見ても振り返っても錦繍の山肌。若いころに宮本輝の小説を好んで読んだ時期がある。

その小説『錦繍』の中で蔵王のゴンドラで再開した二人が見た山肌に思いをはせた。










御神水からひと登りして大劔神社にお参りをした後、大剣道を下って行く。







樹林帯の中から明るい場所に飛び出すと西島駅に着いた。もう人影も疎らだ。

ここから西島神社の巨岩の手前を、これも三人が歩いた事のない遊歩道へと進んで行く。

見上げた空と今日最後の山肌の彩りが名残惜しい。










遊歩道コースはいつもあまり人と会う事のない、お気に入りの静かなダケカンバの森の道。













そして朝に通った行場コースと共に、吉野川へと流れ込む祖谷川の源流のある道。

あっちゃんが手を付け『冷たいわよ~』と。この小さな水の流れが、あの険しい祖谷渓谷や

悠々と流れる吉野川へと繋がっていると思うと、何だか愛しささえ感じる。




見ノ越の近くまで降りてくると周りは山霧に包まれ始め、幽玄な雰囲気さえ漂ってきた。










最後に劔神社に一礼し、石段を下って行くと見ノ越の駐車場では車も疎らになっていた。







世界的に紅葉の色は3種類と言われるが、日本は27種の錦織りなす紅葉があるという。

今日は果たして何色の彩りを見ることができたのだろう。夏を過ぎ少し薄くなった笹原の緑の稜線。

そして白骨林とどこまでも広く遠く広がる雲海の白。山の芸術を思う存分堪能した一日だった。

『また良かったら一緒に歩こうね』とあっちゃんがマリリンに声をかけて車に乗り込んだ。


WOC登山部2021.10.06 石鎚山

2021年10月08日 | 四国の山


随分と長引いているギックリ腰も少しづつ改善が見られ、

しばらくお休みにしていた『線で繋ぐ石鎚山~剣山』も再開の目途がたってきた。

しかし月日は流れ早や10月となり、10月と言えばやはり石鎚山の紅葉から、

お山の紅葉狩りがスタートする。四国の山歩きをしているものとしては石鎚詣では

欠かすことのできない恒例行事となる。『次に線で繋ぐで予定している東光森山の急登に

決して腰が引けているわけではないです!』と奥様たちには言い訳をして、予定を変更していざ石鎚山へ!

と言う事で奥様たちに連絡していると、WOC登山部の第二班も石鎚山に登るという

情報が入った。第二班のリーダーと連絡を取り合い、土小屋で待ち合わせをすることに・・・。


途中の寒風茶屋の駐車場にもそこそこ車が停まっていた。更に瓶ヶ森林道を入って行くと

スカイブルーとスカイライン。車を停めて三人で見入る。




瓶ケ森の山肌も結構色づいている。これだと石鎚山の紅葉も期待できるはずだ。

瓶ケ森まで来ると急にお腹が痛み始めた。道路脇のトイレに駆け込もうと車を停めると

『またトイレ!毎回ここで用を済ますね!』と前回もここで用を済ませた私を奥様たちが冷やかす。







瓶ケ森展望所からは正面に石鎚山。遠目に見ても色づいているのが判る。

それにしても雲一つない青空が広がっている。『ね!今日は石鎚山にして正解でしょ!』と

奥様たちに言うと『ハ~イ、大正解』と返ってきた。ここの所へっぽこリーダーになってしまって

いたが、少しは株価が上がってきたかな?







予想通り土小屋の駐車場はほぼ満車。石鎚山スカイラインを少し下った未舗装の路肩が

広がった場所に停められたが、次から次と車が停め始める。慌ててまだ到着していない

第二班の場所を確保していると、ほどなくやまさんが運転する車が到着した。

WOC登山部のメンバーと会うのはほぼ半年ぶり。『線で繋ぐ山歩き』を始めてからは

ほとんど登山部の山行には参加できていない。軽く挨拶をしながら身支度をしてスタートする。

前を歩くコアラさんとは1年以上ぶりくらい。以前はこの大きい背中を見ながら

歩いていたのが懐かしい。今日は杉さんとやま奥さんも参加して総勢7名となった。




土小屋からしばらくウラジロモリの林の中を進んでい行く。あっちゃん

コアラさんとは久しぶりで、話が弾んでいる。木々の間から瓶ケ森の氷見二千石

広大な笹原が見えた。以前WOC登山部で歩いた時、時々見えるこの瓶ケ森を見て、何度も

『あの山はなんていう山?』と聞いてきたあっちゃんだったが、今はそんな愚門をする事はない。

やはり『線で繋ぐ山歩き』でこの界隈を何度も歩いた成果は出ているようだ。













鶴ノ子ノ頭の尾根の北側をトラバースするようにして道は続いている。

鶴ノ子ノ頭と次の小ピークとの鞍部に出ると第一ベンチ。ここからは尾根の南側の道になり、

石鎚山が顔を覗かせ始める。『おっ、南尖峰だ!』
















土小屋からここまでの間、何人もの人を抜いて歩いてきたが、既に下ってくる

大勢の人ともすれ違う。ほとんどの人が大きな一眼レフを抱えて御来光目当ての人たちだ。

その内の一人の年配の方に声を掛けると、『御来光は良かったけど、雲海が見られなかったのが

残念。でも紅葉は最高ですよ』と言ってくれた。その年配の方の言う通り、

無骨な岩峰から裾野へと広がり色付いた南尖峰がどんどん近づいてくる。











1677mの小ピークを過ぎ、尾根に沿って続く階段状の登山道には

隊列をなして歩いて行く人たちが見える。駐車場も満車、登って行く人たちの数も

相当なもの。今日の弥山は恐らく密な状態だろうなと思いながら登って行く。










東稜基部の第三ベンチの手前で、立ち止まっている女性に声を掛けられた。

近眼の私には近づくまで顔がぼやけて見えない。するとその女性が『リップです!』と

挨拶をしてくれた。エントツ山さんの掲示板でお馴染みのリップさん!

初めてお会いしたのはもう16年も前、石立山に登った時の別府峡でのテント泊の時。

それ以来、何度か山でお会いしているリップさん、『今日はのんびりと歩きます。清掃活動は無しで!』と。

第三ベンチは休憩している人たちで空席が無い。ここで一服しようと企んでいたが、

大勢の人前では気が引ける。その内にルリちゃんが追い付いてきたので一服は諦めた。

南尖峰からの支尾根の一つが東稜コースとなっている。今日は下りで歩く予定なので

そのまま登山道を東稜から天狗岳の足元を巻くようにして進んで行く。

ここから奥様たちが揃って前を歩くいつもの様子になってきた。写真を撮ったり、

動画を撮ったりしているとあっという間に二人の姿は見えなくなった。










それでも何度も立ち止まらずにはいられない。見上げては感嘆しカメラを取り出す。

白い岩肌に覆いかぶさるようにして広がる錦秋。同じようにして写真を撮る人の姿が

途中のあちらこちらで見られた。この山頂から日覆うごとに裾野へと紅葉が降りていき

そして四国の山の紅葉が次々と感染するようにして始まっていく。
















登山道が成就社へと続く支尾根との分岐まで来ると、二之鎖の基部の公衆トイレ。

ここでも既に大勢の人が休んでいた。成就社(中宮)からは試しの鎖(この鎖が登れれば、

一~三之鎖は登れると云われている)、一之鎖、そしてここから二之鎖、三之鎖を経て

奥宮の頂上社とたどり着く事が出来る。

そもそも鎖の行場は険しい岩場にかかる鎖にすがる時に、邪心を捨て、

無我の境地を体験する修行の場。邪心のない私とルリちゃんはそのまま登山道へ。

邪心を捨てなければならないあっちゃんは鎖場へと登って行く。(笑)







というのは冗談で。ここから弥山にかけての紅葉も見逃せないのが本音のところ。

帰りは東稜コースを降りるので、ぜひ写真にとっておきたいと思ったからだ。










前半に奥様たちにつられてスピードを上げたせいか、ここからのお上りさんの階段が

一番足が重く感じられた。それでも期待通り周りに色付きは最高潮。

モミジやカエデのオレンジや赤の山肌にピンクの色のルリちゃんのシャツが映える。
















九十九折れの道は折り返すたびに、景色が変わって行く。天狗岳の北壁はいつものように

逆光になってしまうので、目にしている感動ほどはあまりきれいに映らない。










弥山山頂が目の前まで来ると今度は西の冠岳に続く稜線が目に飛び込んでくる。

そして振り返ると成就社へと続く道と瓶ケ森!











山頂はやはり大勢の人で賑わっていた。それでも最ピークの時は周りに座る場所が無く、

真ん中にも座り込んでいる人の姿が見られるが、今日はそこまでではないようだ。

弥山の端から見える天狗岳は予想通り最高潮を迎えようとしていた。

















今日は朝方風が意外と強かったせいか空気が澄んで、天狗岳だけでなく

周りに見える景色の全てが綺麗に見渡せる。西ノ冠岳の奥には松山の市街。

瓶ケ森からは今まで『線で繋ぐ山歩きで』繋いできた稜線と、手前から奥へと

濃淡をつけて峰々が続いている。







大勢の人で賑わう奥宮頂上社の前を避け、山頂小屋の前で腰掛ていると

鎖場を登って来たあっちゃんがしばらくして到着した。

少し早いが後から来るWOC登山部のメンバーを待つ間、先にお昼ご飯にする。

今日は久しぶりにカップ麺を持ってきた。しかもカレー味。気温が下がり始めたこの時期には

やはり温かい食べ物が喉に染みていく。そのカップ麺を食べ終えると今度はコアラさんが到着した。

空腹を満たした後はやっぱり一服タイム!と思って山小屋の陰でライターで火をつけようとしたが

火がつかない。仕方がないので三人のいる場所まで戻ると、コアラさんが味噌汁のお湯を沸かそうと

山さんに借りたガスバーナーを取り出し始めた。その山さんは東稜基部の辺りで不整脈がでて

調子が悪くなり引き返したという。それで山頂でお湯を沸かすならと言う事で、コアラさんに

ガスバーナーを託したそうだ。するとコアラさんが『これどうやって組み立てるん?』と聞いてきた

ので、手渡してもらってゴトクとカートリッジを組み立てているとあっちゃんが、

『KAZASHIさん、火ができて良かったね、タバコが吸えるわよ!』と言って、

コアラさんにライターの火がつかないのを説明すると、『それなら味噌汁飲むのをやめようか』なんて

意地悪を言ってきた。『ほんと意地の悪い人やな~』と言いながら、組み立てた後空かさず着火して

タバコに火をつけた後、バーナーの火を止めてコアラさんに戻して、足早に人のいない山小屋の脇へ。




ひとしきり煙を燻らせ戻ってくると、コアラさんが何度やっても着火できないと文句を言っている。

貸してくださいと言って私も何回か点火装置を押してみても火がつかない。

『残念です!意地悪言うからですよ~』とバーナーを返すと、『なんで火を消したん!』と怒っている。

『なんて意地の悪い事をするん!』と言いながら困っていると、横にいた女性が小物入れから

ライターを手渡してくれた。まさに弥山の上から天使が降りてきた!そのライターで無事に着火でき

事なきを得、お湯を沸かせたコアラさんの機嫌も直った(笑)


その後、杉さんも山奥さんも到着してしばしの雑談。ただ、かれこれこの山頂で1時間以上いるので

早々に集合写真を撮ろうとしていると、東稜から登って来たはらちゃんの姿が。

結局、途中で一人山さんがリタイヤしたが、一人増えて変わらず7名で『ハイ、ポーズ!』




山頂でWOC登山部のメンバーと別れて、奥様たちと天狗岳向かう。

すると山頂直下の鎖で男女の二人のうちの女性が怖がって手間取っている。

この鎖で怖がっているようでは天狗まで大丈夫かな?と思いながら待っていると、

鎖の下では天狗から戻ってきた人が並び始め待っている。

一つ目の鎖を何とか降りたその女性は二つ目の鎖でも同じように時間がかかっている。

そして弥山からもどんどん人が降りてくる。







何とか降り終えた女性とその前を歩く男性。この先々もちょっとした岩場で戸惑う女性。

それなのに道を譲ろうとしない男性。前からも後ろからも人がどんどん詰まってくる。

仕方がないので途中から北壁の端を歩いて追い抜いて歩いて行が、今度は離合のため前から下りて来る人待ち。













すると離合待ちしている横を通ってまた二人が先に行き始めた。何とも迷惑な話だ。

天狗岳の手前の岩でも足がかりが判らず登れない女性。前の男性は指示はするけど

女性は怖がってばかりでどうしようもない。そのうちにしびれを効かしたあっちゃんが

『右の脚をそこに、左の足をあちらに・・・・そうそう上手ね~!』と足掛かりを教えてあげると、

『私、褒められると伸びるタイプなんです!』とその女性。何ともはや・・・・・・!











天狗岳までに何とかその二人をやり過ごし、西日本最高峰で記念撮影。

















天狗岳から南尖峰までは行き交う人も少なくなったが、山頂での大休憩とここまでの混雑、

人の迷惑を顧みない二人のお陰で、予定していた時間を随分と過ぎてしまい、

墓場尾根へはあっちゃんには諦めてもらって、今日は遠目で眺めるだけ。







さ~それでは東稜へと降りて行きますか!南尖峰からは歩いてきた土小屋までの稜線が見える。

岩の上に立つ一本の白骨林が東稜への取付きの目印。







その白骨林の下にもう一本の白骨林があり、その木に持ってきたロープを架けて降りて行く。

以前に比べて足がかりの岩が少なくなったこの岩壁も、ロープがあれば何とか二人も降りられる。

ここに来るまでに『今日はちゃんとロープを持ってきてます。』二人に話をすると

『さすがリーダーでございますわ!』と。またひとつへっぽこリーダーの株が上がった!










本日の最難関をクリアした後、次はカニの横這いへと降りて行く。

見下ろすと横ばいの上部の色付きもなかなか見ごたえがある。







所々とちょっとした岩場があるが、少しは手間取っても問題なく降りて行く奥様たち。

カニの横ばいもルリちゃんもノープロブレム!











この辺りから見上げる南尖峰の岩峰は、柱状節理の独特な形をしている。

ゴツゴツとした岩肌の間に赤やオレンジ、緑の花が咲いているように見える。

目線を斜め下に移すと墓場尾根がちょこんと顔を覗かせていた。










カニの横バイからしばらくは痩せ尾根を下って行く。ここからは岩黒山がけっこうトンガリ山に見える。







痩せ尾根から左に折れて少し下って行くと笹滝(エントツ山さん命名)。矢筈岩と反対の岩峰の間の笹が

下から見上げると滝の流れのように見える。その笹滝を両手で笹を掴みながら下って行くのだが、

足元は所々で結構な段差がある。その二つの岩峰の間に差し掛かるころ、足を踏み出した途端に足元の岩が

ぐらついて一瞬体が宙に浮いて前に一回転した。『しまった!』と思ったが遅かりし、

気が付くとあっちゃんの足元に転がり、あっちゃんが腰を屈めて両手で笹を持ち踏ん張っている。

『助かった~!』と思ったら、『とって、とって』とあっちゃんが下にいるルリちゃんに叫んでいる。

最初は何を言っているのか判らなかったが、どうやらルリちゃんに写真を撮れと言っている。

笹の傾斜でしばらく起き上がれない私を心配するどころか・・・・・何という事だ!

しかし飛び落ちた下に岩がなかったのが幸いだった。ここでは今回せっかく上がったきた株価が下がった。







何とか立上り、あっちゃんにお礼を言うとやっと『大丈夫?』と声を掛けてくれた。

その後は足先で足元の笹を払いながら慎重に降りて行く。

笹滝を何とか下った後もさらに笹の生い茂る道が続いていく。

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そして最後に南尖峰に別れを告げて支尾根から樹林帯の中へ。










踏み跡を辿りながら下って行くと下の方から人の話す声が聞こえてきた。

暫くすると第三ベンチに飛び出した。第三ベンチではおや?WOC登山部のメンバーの姿が。

他にもベンチに腰かけているリップさんの姿も見える。少し擦りむいた左腕を気にしながら、

メンバーやリップさんと話をしながらしばしの休憩。




いつまでもメンバーと話し込む奥様たちを制して、『ハイ、もうスタートしますよ!』と

声を掛けると、奥様たちが今度はYAMAPのコースタイムを気にし始めた。

『15時までには下りるわよ!』と二人で話をして猛ダッシュして前を歩いて行く。

あっという間に見えなくなった二人を他所に、写真を撮りながら独り歩いて行く。

山頂ではあれだけ晴れていた空にはガスがかかり始めた。











そうこうしているうちに南尖峰はガスに隠れた。弥山から降りてきた人達の列が道を塞ぐ。

何度も声を掛け追い越させてもらいながら土小屋に着くと、第三ベンチから一人で戻り、

車の中でお弁当を食べたという山さんが待っていた。











後続のメンバーはまだ時間がかかりそうなので、山さんと別れて先に車に乗り込む。

瓶ケ森林道をゆっくりと走っていると、そんなに時間差が無かったのか、

WOC登山部メンバーの車が追い付いてきた。途中で石鎚山や瓶ケ森、

そしてUFOラインの稜線を車を停めては眺めながら寒風茶屋へ。











せっかくなので寒風茶屋でWOC登山部恒例のコーヒータイムをとることに。

コアラさんは相変わらず女性陣に減らず口。それを聞きながら山さんと私でいじるという

今までもよくある情景が見られて、なんだか懐かしく楽しい時間。










平日にも関わらず予想通りに大勢の人で賑わっていた石鎚山。この山からどんどんと四国の山が

色付いて行く秋。さてさて来週はどののお山に紅葉を狩りに出かけようかな?