以前からネットで見かけていた仁淀町の中津明神山。
それは山自体ではなく、山頂から見える天空の林道と天空の鳥居の写真。
どちらも瓶ケ森林道と高屋神社の鳥居が全国的には有名だが、
こちらもなかなか絵になる風景なのでぜひ一度は見てみたいと思っていた。
WOC登山部も未踏の山なので恐らく興味のある人も多いと思い今回計画してみた。
先週に続いて秋雨前線の影響で天気予報は各社ともあまり良くない、
唯一、日本気象協会の予報だけが晴れマークがついている。
麺法師さんには事前に、『一応集合して当日判断しましょう』と
連絡していたが、やはり朝から曇り空。高知道の新宮IC辺りからは雨も降り始めた。
大豊ICで降りて本山町のコンビニで『どうしましょうか?』と麺法師さんと杉さんと
相談になったが、雲は割と高い位置にかかっているので、『行ってみましょう!』と決行することにした。
国道439号線は土佐町に入ってしばらくは道幅が狭くなるが、あとは二車線の道幅も広い
走りやすい道が続いている。西に進むにつれ空はどんどん明るくなり、青空も見え始めた。
丸亀からは約3時間弱で登山口となる吾川スカイパークに着いた。
スカイパークの建屋には近所の方だろうか、おじいちゃん、おばあちゃんが数人で
軒先で寛いでいた。『すみません!トイレはないですか?』と尋ねると、
『ここのトイレは鍵がかかっているから、今、開けてあげるわ』と言ってくれた。
ここからはまだ先を車で登って行く人も多いらしく、『歩いて中津山まで登ります!』と言うと、
途中はテープと標識があるから迷う事はないと教えてくれた。スカイパークから見える山には
まだ重く雲がかかっていたので、『今日は雲がかかったままですかね?』と尋ねると、
『そのうち晴れるろ~』とニッコとしながら高知弁でおじいちゃんが答えてくれた。
スカイパークのすぐ上の大山祇神社の向かいに登山口の標識があり、今日はここからスタート。
歩き始めて直ぐに木の根元に今まで見た事もないような大きなキノコが目に入った。
しばらくして切った太い倒木の間を通り過ぎると、徐々に道の勾配も急になって来た。
道の脇にはハガクレツリフネが群生といっていいくらい咲いている。
道は枝打ちされ真直ぐに伸びた杉林の中を続いていくが、足元は小さな石がザレていて歩きずらい。
山の中ではあまり見かけない色をしたフシブロセンノウが所々で咲いている。
登山道は何度も林道を横断していくが、その都度、標識がちゃんとあるので迷う事はない。
相変わらず九十九折れの急登が続いていくので、既に額からは滝のように汗が流れていく。
前を歩くセニョさんの足取りは重いが、このところ修行僧のように
毎週歩いているIRIBITOさんの足取りは軽やかだ!
後ろの方で杉さんの喘ぐ声がここまで聞こえてくる。
みやさんも久しぶりなので『さぼったらいかんな~』などと言っている横で
アキチョウジが咲いている。
地形図を見ると等高線の間隔が狭く、ほとんど直登のようにして道は続いているので
予想以上に急登なのは肯ける。登山道から林道に出る度にホッとする。
うなだれているのでよく判らないがジャコウソウだろうか?紫色が少し薄いように思う。
やっとのことで尾根に出た。麓でおじいちゃんが言っていたように空は晴れて来た。
北にはこんなに近くに?と思うくらい石鎚山が綺麗に見える。
相変わらず林道を横断しながら歩いて行くと、白いレーダードームが頭の半分覗かせているのが見えた。
目印が見えると何故だか気分が変わってきて、山頂がどんどん近づいてくる。
振り返ると車を停めたスカイパークが見える。『あそこから登って来たんや~!』
足元に笹が広がり始めると、ヤマラッキョウ・ツリガネニンジン・ツルリンドウの花が目につく。
ここ最近の山歩きの中では、これだけの花が咲いているのを目にするは珍しい。
山頂を目の前にしてセニョさんのエンジンがかかりどんどん先を登って行く。
笹路を登りきると小さな鳥居に着いた。先を歩いていた健脚メンバーが山頂から北に続く
天空の林道を見て歓声を上げている。
東側もどこまでも山々が見渡せ、流れ星さんのレポートでは剣山まで見えるらしいが
初めての山とあまりにもたくさん見える山の数で特定する事が出来ない。
セニョさんも久しぶりの一等三角点にご満悦!
石鎚山からの稜線の続きで先週登った筒上山はその山容で何となく特定できる。
石鎚山から二ノ森そして堂ケ森と続く稜線も、いつか歩いてみたい。
登山口から2時間30分。少し早いがこの山頂でお昼ご飯にする。
足元ではシコクフウロが小さく風に揺れている。
南に見える鳥形山には雲がかかり始めた。
石灰岩の露天掘りとしては日本一の産出量を誇っていたという鳥形山は、長年の採掘によって
標高が200m近くも低くなったいう。
その鳥形山の見える山頂の南側にも可愛らしい小さな天空の鳥居が立っている。
集合写真を撮った後、天空の林道に別れを告げて下山開始。
山頂からの帰り道はピストン組と林道歩き組の二手に分かれて下って行く。
次第にこの山頂にも雲が流れ始めて来た。
急登を登って来たと言う事は、急な下りが続くと言う事。
前を歩くセニョさんも後ろから来るあっちゃんや、やっさんも、時々足を滑らせ
小さく声が上がっている。他人ごとではなく私も濡れた岩の上でツル~と足を滑らせ尻もちをついた。
さらに後ろから来ていたひなちゃんとまゆゆ、杉さんと一緒に
林道で合流しては一息つく。道が杉林から広葉樹の森になると登山口まであと一息。
祠もない鳥居の前を過ぎると山頂から1時間20分ほどで登山口に着いた。
しばらくの間、林道歩き組を待つ事に。
先にIRIBITOさんが下って来たので少し下がった芝生の広場になった場所の
特徴のある一本の大木の下で恒例のコーヒータイムのお湯を沸かすことにする。
そのうちスカイパークの芝生の斜面を降りてくる林道組の姿が見えた。
全員が揃ったところで持ち寄ったお菓子とコーヒーでゆっくりとする。
メンバーが寛いでいる中で、ゆかりんがセニョさんを引っ張ってスカイパークの
中にある803mの三角点を探してまた斜面を登り始めた。点名を調べると吾川スキー場となっている。
パラグライダーの発着場としては整備が行き届いているので不思議に思っていたが、
どうやら以前はスキー場だったようだ。
帰り道の途中にある中津渓谷に寄り道してみる。
渓谷沿いには巨岩がゴロゴロとして、川沿いには遊歩道が続いていた。
仁淀川へと続くこの渓谷の水はやはり透き通って透明度はバツグンだ。
秋にはモミジが色づいて更に趣のある景観となることだろう。
来週には例年ならそろそろ石鎚山では色付き始める頃。
短い季節の中で秋を探しに行ける山はたくさんあって目移りがする。
国道439号線の茶畑やなつかしい稲藁干しの風景を眺めながら車を走らせ帰路についた。