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この春の桜の季節ももうそろそろ終わりを告げようとしている。そこで先週の花紀行に
続いて、今週も奥様と花めぐり。
桜の花と言えばここのところのお気に入りはしだれ桜の神山町。全国的に桜の名所とい
えば8割以上がソメイヨシノだが、ここ神山町ではしだれ桜が有名な町。人口5,000人
の町に6,000本の桜が植えられていて、その内の4,000本がしだれ桜だという。
ただ事前にインターネットを調べてみると、先週にはすでに町内の桜は散り始めとなっ
ていた。しかも昨日は雨が降り風も結構強く吹いていた。あまり期待はせずにと言い訳
をして車を走らせた。
途中、今日の目的のひとつの奥様の祖母のお墓参りを済ませ、国道492号線を南に木屋
平方面に向かう。道は広くなったり狭くなったりで、大きなダンプカーが対向する度に
ハンドルをキュッと握りしめる。二年前に西の奥様たちと通ったときは、沿道のしだれ
桜が満開で、度々車を止めては写真を撮ったが、今日はほとんどが葉桜になりかけてい
て、あまり見栄えがしない。
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木屋平から川井峠への道は国道439号線になる。『つるぎの湯大桜』の看板を見ながら峠
へと向かって高度を上げていくと、何本かのしだれ桜が満開になっていた。『ひょっとし
たら峠のしだれ桜はまだ咲いているかも』と思いながら車を走らせると、その期待を裏
切らずに花を咲かせて待っていてくれた。
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たしかに峠は標高700mほどになるので、平坦部よりは開花が遅くなっている。20本
ほどの大きな桜の古木からは、長く垂れ下がった枝に幾重もの花が付き、まるで空から
降り注ぐ桜のシャワーのようだ。
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参道に沿って歩いて行くと西側の眺望が開けて、一の森から剣山そして丸笹山が望める。
今まで見たことのないような大きなしだれ桜に、取りあえずは奥様にはご満足いただけ
たようだ。
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川井峠から次に向かうのは神通滝。実は今日の私の目的のひとつは神通滝にあった。滝
に向かう途中にミツマタの群生地があるというのを知って、ぜひ一度見てみたいと思っ
ていた。峠から東に国道を下って神山町に入る。途中でいつもは雲早山に出かけるとき
に通る国道193号線に入って神通滝へと向かう。
前回WOC登山部で来た時に車を停めた、ワーゲンの車が捨てられている広場に駐車する。
その手前に『新しい遊歩道』と書かれた矢印看板に従って林道を登って行くと、広い駐
車場にきれいなトイレも新しく設置されていた。
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以前は神通谷川の左岸に道が続いていたが、新しい遊歩道は右岸になっている。以前の
道からは行き止まりが神通滝になっていたが、右岸からだと川を渡ることになる。遊歩
道から神通谷川ははるか下を流れているので『果たして川を渡ることができるんだろう
か?』と思いながら歩いて行く。遊歩道は谷側には手すりが設けられているが、足元は
石でガタガタしていて、しかも意外と急な個所もあった。『これって遊歩道じゃなくて
登山道やね』と息を切らせながら奥様が言っている。
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するとその遊歩道の先に滝が流れているのが見えた。滝の手前ではコンクリートの階段
を降り、木の一枚板を渡した場所で左岸へと渡って行く。
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昨日降った雨で滝の水は勢いよく流れ落ちている。先月梶ケ森の龍王の滝を見た奥様だ
ったが、落差も一段とあり、滝口の光の中から輝き落ちてくる滝の水にひとしきり感動
の声をあげている。
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感心して長い時間写真や動画を撮っている奥様の横で『ミツマタ』という名前がぐるぐ
ると私の頭の中を巡っていた。『新しい遊歩道にはそれらしい場所はなかった』、ひょっ
とすると以前の左岸の道にあるかもしれないと思い奥様に『一人で来た道を戻ってくれ
る、私は以前の道を歩いてみる』と話をする。というのも左岸に続く以前からの道は、
すぐ目の前で斜面からの落石で道の体をなしていなかったからだ。
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以前からの道はほぼ斜面からの落石で埋まっていた。その土砂が谷側まで覆いかぶさ
って足元が危うく、ヒヤッとする箇所があった。それでも足元と山側の斜面を注意深
く見ながら歩いて行くと何本かのミツマタの木が斜面に生えているのが見えた。
少し山側に登ってみると何となく群生しているような雰囲気があったが、足元が悪く、
しかも奥様が一人で戻っているので時間的に難しく諦めて道に戻る。
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ある程度下まで降りてくると道は杉林の中の道になり、歩きやすい道になった。ほど
なく車を停めた広場のすぐ下に飛び出た。するとちょうど上から奥様が降りて来てい
たので手を振る。車まで戻り奥様の顔を見ると涙ぐんでいる。『どうしたん?』と聞く
と、一人で降りて来ていて途中で林の中から物音がして、何かがいると思ってとても
怖かったと仰っている。『それはそれは』と言いながら思わず吹き出してしまう。
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神通滝を後にまずは腹こしらえ。以前にも来たことのある『めし処 萬や 山びこ』で
ランチを頂く。神山町にはこんなおしゃれなお店が至る所にある。
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今日は30年ぶりに買った一眼レフ(以前はフイルムだったが今回はデジタル)のデビ
ュー。まだ設定があまりできていないし取説もないのでオートで撮影。それでも液晶の
モニターではなくファインダーを覗きながら撮っていると、何となく気持ちが高揚して
画角も色々試してみたくなり楽しくなってくる。
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ここからはお決まりのコースでまずは『四季の里 創造の森』へ。やはりしだれ桜は前
回に来た時ほどではなく、半分以上が散っていた。
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それでもしだれ桜の横の園では色の濃い八重桜が満開近くになっていた。その八重桜の
下でシートを敷いて花見を楽しむ年配の女性たちの笑い声が聞こえてくる。
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神山温泉を挟んで流れる上角谷川沿いのしだれ桜は見ごろを迎えていた。
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次に向かったのは500本のしだれ桜を個人が植えたという『ゆうかの里』は、山肌一
面を覆いつくすしだれ桜と黄色いレンギョウが咲く桃源郷だが、ここもやはりピークを
過ぎていた。
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それでも足元を埋め尽くす花びらの絨毯と目の前が桜色の霞がかかったように見える景
色に、奥様もうっとりしている。
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レンギョウもほとんど咲き終わっていたが、代わりにシャガとサクラソウが目に付いた。
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そして最後は前回同様、神山森林公園へ。国営まんのう公園ほどではないが、かなり広
い園内にはまだ少ししだれ桜とソメイヨシノの花が残っていた。
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花見も終わった平日のせいか人の姿もまばらで、二人で園内をのんびりと散策。散り始
めた桜と入れ替わるようにして若葉がイキイキし始めている。
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約200種の木々が植えられている園内のあちらこちらに大きく育った木々が気持ちよさ
そうに枝葉を広げている。今回はおそらく1週間ほど訪れるのが遅かったが、『来年は
満開のときに来たいね』と奥様。
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毎年桜を見るたびに思うのは、『あと何回、桜が見られるだろうか』と。80歳まで生
きられたとしても20回。20年と聞くとまだ随分あるように思うが、20回と聞くと
急になんだか寂しくなってくる。それは自身の親たちにとってはもっと極端に少ない回
数になる。せっかくの華やか桜の花を見て素直に見られない、もうそんな歳になった。
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