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■科学技術ニュース■東京薬科大学、微生物燃料電池の廃水処理性能を向上させ実用レベル化に成功

2013-05-30 10:13:48 |    生物・医学

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の基盤技術開発プロジェクトに取り組んでいる、渡邉一哉東京薬科大学教授らのグループは、微生物を利用した創電型の廃水処理に適した微生物燃料電池装置を開発、実験室サイズの装置(容積約1リットル)を用いた模擬廃水処理実験により、従来方式の廃水処理法である活性汚泥法と同等の処理速度を確認した。

 この実験結果は、微生物燃料電池の廃水処理性能が実用レベルに達したことを示すもの。

 同事業の成果により、汚濁廃水中の有機物から電気エネルギーが回収されるだけでなく、活性汚泥法よりも少ないエネルギーでの処理が可能となることから、まったく新しい創電型の廃水処理に繋がることが期待される。

 現在、生活下水や工場廃水の処理には活性汚泥法という微生物処理法が広く用いられている。しかし、活性汚泥法は、曝気(微生物に酸素を供給すること)に多大な電気エネルギーを消費し、また電力供給が止まると処理ができなくなるという問題を抱えている。

 一方、21世紀になって有機物を分解して電気を発生させる微生物(発電菌)が発見され、このような微生物を使った微生物燃料電池が考案された。

 この装置を廃水処理に適用すると、汚濁廃水中の有機物から電気エネルギーが回収され、また曝気も不要であるため、省エネ型の廃水処理が可能になると期待されている。しかしこれまでの技術では、従来の活性汚泥法に比べ、微生物燃料電池法の廃水処理性能が低い(数分の1程度)ことが問題となっていた。

 今回、渡邉一哉東京薬科大学教授らのグループは、絶縁膜(プロトン交換膜)を挟んで正極と負極を一体化した"カセット電極"を作成し、このカセット電極を微生物反応槽に複数挿入することで、スラローム型流路を形成した微生物燃料電池を開発した。
 
 実験室サイズの本形式の装置(容積約1L)を用いた模擬廃水処理実験において、水滞留時間9時間、有機物処理速度1.3kg-COD m-3 day-1という効率を達成。

 この効率は、並行して行った活性汚泥法による模擬廃水処理実験の効率と同等のものであり、微生物燃料電池式の廃水処理性能が実用レベルに達したことを示すもの。

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