熱中症の季節
会社勤めの最後の5年間は、倉庫での製品充填作業と出荷物流管理を担当した。それまではプラントオペレーターの5年間を経て、化学の研究業務が長かったが、出荷物流に関しては新規事業(電子部品の製造)で少し経験があった。
実際の現場作業は、すべて協力会社の人達によるもので、もっぱら経費管理(コストダウン)と現場の安全管理が業務だった。
倉庫作業はこの夏場が最も厳しい。大きな建屋にフォークリフトが始終出入りするため、冷房はできない。ひとつは、毎年スポットクーラーを買い増しして対応した。酷暑と言われるようになったのはいつの頃からか明瞭に覚えがないが、倉庫での熱中症の危険が言われるようになった時期と一にしているように思う。
担当した初年度から6月に入ると、倉庫の協力会社の人達を二班に分けて、事務所会議室に集まって貰い、「熱中症」について講義した。熱中症だけでも味気ないので、「品質管理」など日頃の業務に関係する管理技術についても講義した。上にお伺いを立てて会社経費で参加者に缶コーヒーなど配るのも面倒なので、自前で購入して配った。
講義など講師には苦にならないが、聞く方がくたびれるものだ。しかし、こちらの熱意も感じてか、みなさん熱心に聞いてくれたものだ。
倉庫の現場事務所には、協力会社持ちで休憩時間に飲めるよう、ドリンク類を準備してくれており、休憩も適宜取れるようになっていたので、担当した5年間に熱中症で倒れた人は居なかった。熱中症の講義でも特に繰り返しお願いしたことは、昨晩の深酒等での体調不良で出勤することのないようプロ意識をお願いしたものだ。
この夏、熱中症で亡くなった人の情報ではやはり70歳以上の方が危ない。初期症状はコロナと良く似ていると聞くけれど、重症化が高齢者に多いことも共通している。加齢とともに、あらゆる病魔への抵抗力は低下するので、当然の話だ。これを遅らせるために、各種サプリンメトが数多く出ているけれど、老化すなわち筋力の低下ではないかと考えている。講義ではそんな話はしなかったけれど、70歳台も半ばになるとひしひしと感じるものだ。
昨年度から診断士協会の支部のスキツアップ勉強会で、「工場診断」の講義を仰せつかった。私ごときが同じ中小企業診断士の有資格に説得力のある話ができるのか。私が社会に出て、装置産業の現場で叩き込まれたことは、「安全第一」ということ。
「安全活動は、従業員の命を守る活動である。従業員の家族の幸せを守る活動である。この意識を経営者は従業員と共有しなくてはならない」
このことを講義の中心に据えて話を進めれば、受講生の心にもつながるのではなかろうかと考えて資料を作成したものだった。酷暑の夏も屋外の仕事をされる人は多い。ご安全に!