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時事散歩Ⅸ 第23回

2021年07月07日 | ブログ
美しい形

 将棋の藤井聡太二冠が、この度棋聖位を防衛しビッグタイトル計3期獲得の規定で、9段となった。9段位の最年少記録を塗り替えたとある。将棋界では10代の9段は初めてのことである。これには早速テレビのワイドショーでも取り上げられていた。棋聖位の防衛戦は、現役最強の棋士と言われる渡辺名人(三冠)を3連勝で破ったのも凄いことだ。

 藤井さんが将棋界で数々の最年少記録を塗り替えているが、囲碁界にはさらに若い棋士が活躍している。仲邑菫二段(12歳)である。囲碁のプロ棋士は初段から(将棋は4段から)で、初段から二段への昇段は公式戦30勝(女流棋戦は含まない)が必要とのこと。これまでの記録は獲得タイトル獲得数最多という趙治勲名誉名人・二十五世本因坊の12歳3か月であった。仲邑二段は12歳0か月。今年は囲碁の最高峰タイトル棋聖戦のCリーグ入りも果たした。こちらもリーグ入り最年少記録とのこと。

 若い才能が開花するのは、その世界の先人の足跡が間違っていなかったことを示す。泥沼のような政界は、先人の金権政治のつけが尾を引いて、本物の政治家を育てていないことでも分かる。

 将棋界では、先先代の将棋界の会長であった米長永世棋聖の語録に、「対戦相手が非常に大切な将棋、すなわち昇級や昇段または陥落などの掛った一戦こそ全力で当たらねばならない」がある。大相撲の世界では、千秋楽を7勝7敗で迎えた力士の勝率が異常に高い時期があり、対戦相手が貸しを作る為手抜きするなどと噂されたものだったが、勝負の世界でそのような忖度が定着すると、その世界そのものが衰退する。その行動が美しくなかったことに起因する。

 囲碁や将棋は、今やAIが最も強くなり、果たして人間の勝負の醍醐味が、プロ棋士の世界を維持できるものかという懸念さえ感じていたが、藤井9段など、AIさえ読めない手を指すほどで、以前に増して将棋の世界は隆盛になった気がする。

 囲碁も将棋も如何にプロであっても、当然にすべて読み切れるものではなく、持ち時間と相談しながら可能な範囲で読み、現況の中で最善ではなくとも勝ちに近く、負けにくい手を選ぶことになるようだ。その際に選択手の拠り所となるのが、形の美しさではないか。どのような形を美しいかの判断基準は、基本的な局面では共通の指標(定石や手筋)があるが、高度な判断は独自の感受性によるものと推測する。

 美しい形で打っておれば、自身がそこまで読んでいたわけではないが、うち進んだ先にありがたいところに石があり、好都合となる場合がある。感想戦で「幸運でした」、「指運が良かった」などの表現になる。形を悪くした悪手を打っていると、巡り巡って必要なところに石がないことになる。

 人生も一寸先は闇、しかし僥倖もある。事故・災害との遭遇では、自己責任ではないことも多いが、幸運は日頃のその人の生き方に起因するところが大きいように思う。今の言動は美しいかどうか、反芻して美しい言動を心掛けねばならない。




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