中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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品質管理ノート 第1回

2018年11月01日 | ブログ
哲学無き経営

 企業の製品品質不正が止まらない。この10月にも油圧機器メーカーの免震・制振装置の検査データ改竄が発覚。すでに多くの建造物に組み込まれていただけに、公表もままならない所もあって、正確な被害は確認されていないが、1000件は優に超えるようだ。

 背景に、競争が激化する中で、コストダウンを求められる現場は人手不足という現状がある。品質問題、一年前に神戸製鋼所が不正を公表し、三菱マテリアル、日産、スバル、東レと続いた。

 特に製造業にあっては「安全第一」「品質第一」「顧客第一」は単なる建前ではなく、企業存続の前提であり、有識者が後付けでいろいろ苦言を呈するまでもなく、企業の経営者から現場担当者まで、本来骨身に沁みてついていなければならないことだ。

 企業は、製品やサービスを顧客に提供することで収益を上げ、利益を得て発展する。ところがどんなに良い製品やサービスであっても、世間の人が知ってくれなくては売れない。また顧客の投資/効果を満足させるには適切な価格戦略も必要である。マーケティングの4つの要素のうち広告・宣伝や価格に目が行き、最も肝心の製品品質が疎かになる。

 また企業の発展には、ボチボチとモノづくりするより、余った金で金貸しをしたり、M&Aで企業買収を仕掛けたりの方が手っ取り早いという風潮が20世紀後半ごろからこの国にも蔓延した。作業着を汗まみれにして働くより、パリッとしたスーツに身を包み、高層ビルのオフィスでパソコンでも打っている方がお好みとなる。ホンダの本田宗一郎氏やソニーの井深大氏をモデルの世界ではなくなった。

 そして現代の経営者の多くが哲学を失ったのではなかろうか。直截に言えば、お金儲けにしか関心が薄くなり、従業員を一流の技術者・技能者、そして人間的にも立派な人材に育てようとする意志が疎かになっている。

 人件費は費用であり、従ってこれを固定費ではなく、変動費化することだとして、非正規社員の割合を増やす。グローバル競争の中で「背に腹は代えられない」ことも現実であろうが、そこに哲学の趣はない。

 政治にも今や哲学はない。私などが中学生の頃、高度経済成長を主導した池田勇人首相と松下電器(現、パナソニック)創業者松下幸之助氏が「総理と語る」というテレビ番組でこの国の将来について熱く語り合う姿を何度か見た。中学生の目にもこの国の政治家も企業経営者も信じられる存在に思えたものだった。

 現在の政治家も経団連の上層部も学者さえ当時と何かが違うのである。それは人間として自身の生き方に哲学を持っているか否かではなかろうかと思う。





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