中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

品質管理ノート 第8回

2018年11月22日 | ブログ
改善(KAIZEN)

 品質管理と聞けば「改善」という言葉が浮かぶくらい、1970年代頃からこの言葉は世界に普及し、KAIZENとなった。柔道用語(はじめ、一本、技ありなど)、SUSHI(寿司)、SAMURAI(侍)、NINJYA(忍者)、最近の「かわいい」や「おもてなし」まで、世界共通語となっている日本語の先駆的役割を果たした。

 1960年代に加速したわが国の高度経済成長は、乗用車と家電品を筆頭に欧米市場を席巻していった。安いから売れたのではない。品質が良かったのである。性能が良いだけではなく、故障しないという面も含めた品質なのである。もっとも価格という点で言えば、わが国は輸出に関して二重価格を取った。国内販売価格より低価格で輸出したのである。企業は規模の経済により、輸出品の価格を安くしても十分利益を出せる。

 テレビが国内で普及した当時(昭和30年代初頭)、白黒14インチのテレビが4万円くらいしたが、当時の一般的な大企業社員の月給額以上ではなかったか。その意味で庶民はその消費行動で国家施策に貢献している。

 特に家電品の品質で劣勢を強いられた欧米で1970年代頃から、わが国の家電品等の生産・品質管理のやり方(TQC)の研究が進んだ。わが国では欧米の縦割り階層社会では考えられないやり方をしていたのである。またそれができる土壌が豊かであった。

 第二次世界大戦でとことん敗れたわが国は、それまでの社会の有り様が壊れた。明治維新に次ぐ大変換が起こっていた。加えて厳しい窮乏の中、進学できない地方からの中卒の集団就職生や工業高校卒の技能工など中間層が厚く、期待以上の働きができた。QCサークル活動や改善提案制度が人材育成の面でも著しい成果を上げた。小集団活動など、労働者が経営に関わることとして当時の米国などではご法度だった。

 いい加減な会社ではいい加減な改善提案も多かったが、乗用車や家電品を作る企業では従業員は生産者ではあるが、使用者でもあった。使う側の視点で設計にまで提案できたであろう。細かい所まで気配りの設計が行き届くだけでなく、作業員は与えられた作業の細かい点まで、言われなくてもしっかりと仕上げた。

 わが国のTQCを学んだヨーロッパではこれをControl(支配・管理・制御)ではなくManagement(統御・経営)としTQMと呼ぶようになった。KAIZENが世界の企業に浸透した。21世紀アジアの企業にTQMが広がっている。わが国が、IoTだAIだ、M&Aだと、確かにそれも大切だけれど、新しい時代こそ人を育てるところから見直さなければ、この国が足元を掬われる懸念が強くなる。いつの世も企業にKAIZENは不滅である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする