物から受けるコーチング
将棋の最年少棋士(藤井聡太四段)のプロデビュー以来の連勝記録が話題を呼び、お昼のワイドショーで紹介されるほどになっている。AI(人工知能)に席巻されそうだった将棋界には嬉しいスター誕生であろう。
そして、彼が将棋を覚えたきっかけとなった、祖母が買い与えたという将棋のおもちゃ(スタディ将棋)や、幼少期に遊んでいたという立体パズルのCuboro(キュボロ・クボロ)が売れているそうだ。それらのおもちゃに天才を生み出した仕掛けがあるのではないかとの世間の想いである。確かに幼児期に子供に与えるおもちゃは、安全であることを前提に、何となく器用さや思考力を伸ばしそうな意味合いで購入するケースは大いにある。
サービス業の品質保証で学んだことだが、サービスは通常「人対人」で行われると考えがちで、確かに「人対人」は大切であるが、実は、例えばホテル業などでは、客室という空間、すなわち“物”が顧客にサービスを行う割合が高いのだという。そこで、ホテル側はまず客室という物に対して、人が手を掛け心を尽くして顧客満足すなわち品質保証のために十分に配慮し設計する。それを「人対物」サービスと言う。お客さまが客室を使う間は客室がお客さまにサービスを行う。すなわち「物対人」サービスとなる。*5)
子供のおもちゃでは、それを設計し製造するメーカーが、それで遊ぶ子供の満足と、加えて成長に資する部分を付加する設計を考えるのではないか。まず人がおもちゃに仕掛けを施し、そのおもちゃは子供が遊んでいる間に、遊びそのものだけでない示唆を与える。すなわちコーチングをしていることになるのではないか。
おもちゃによって生まれたかもしれない天才は、そのおもちゃの作り手を知らない。おもちゃのお陰とも思わない。勿論その因果関係が立証されているわけではないが、現実には見事なコーチングが成立しているのかも知れないのだ。
われわれは本からも刺激を受ける。専門分野とは全く関係のない書物から仕事に有益な大いなるヒントを得ていることもあるかもしれない。
日頃使っている身の回りの品々。良く見ればいろんな工夫が施されている。当たり前と使っているけれど、アイディアを実用化し生産し販売し売れるまでには、困難な状況もあったであろう。
数十年前は漫画の世界が、現実になっている。超高速鉄道(リニア)も立体交差の高速道路網もスマートフォンも自動運転乗用車も。そのうち何処でもドアが出来るかもしれない。いろんな刺激の知らぬ間の寡黙なコーチングを受けながら、天才と言う超高感度の受信機を持つ一部の人類によって、その努力によって過去の天才から物を介したコーチングが功を奏して、文明は発展して来たのではないか。
*5)「新版品質保証ガイドブック」(社)日本品質管理学会偏、日科技連2009年11月刊
将棋の最年少棋士(藤井聡太四段)のプロデビュー以来の連勝記録が話題を呼び、お昼のワイドショーで紹介されるほどになっている。AI(人工知能)に席巻されそうだった将棋界には嬉しいスター誕生であろう。
そして、彼が将棋を覚えたきっかけとなった、祖母が買い与えたという将棋のおもちゃ(スタディ将棋)や、幼少期に遊んでいたという立体パズルのCuboro(キュボロ・クボロ)が売れているそうだ。それらのおもちゃに天才を生み出した仕掛けがあるのではないかとの世間の想いである。確かに幼児期に子供に与えるおもちゃは、安全であることを前提に、何となく器用さや思考力を伸ばしそうな意味合いで購入するケースは大いにある。
サービス業の品質保証で学んだことだが、サービスは通常「人対人」で行われると考えがちで、確かに「人対人」は大切であるが、実は、例えばホテル業などでは、客室という空間、すなわち“物”が顧客にサービスを行う割合が高いのだという。そこで、ホテル側はまず客室という物に対して、人が手を掛け心を尽くして顧客満足すなわち品質保証のために十分に配慮し設計する。それを「人対物」サービスと言う。お客さまが客室を使う間は客室がお客さまにサービスを行う。すなわち「物対人」サービスとなる。*5)
子供のおもちゃでは、それを設計し製造するメーカーが、それで遊ぶ子供の満足と、加えて成長に資する部分を付加する設計を考えるのではないか。まず人がおもちゃに仕掛けを施し、そのおもちゃは子供が遊んでいる間に、遊びそのものだけでない示唆を与える。すなわちコーチングをしていることになるのではないか。
おもちゃによって生まれたかもしれない天才は、そのおもちゃの作り手を知らない。おもちゃのお陰とも思わない。勿論その因果関係が立証されているわけではないが、現実には見事なコーチングが成立しているのかも知れないのだ。
われわれは本からも刺激を受ける。専門分野とは全く関係のない書物から仕事に有益な大いなるヒントを得ていることもあるかもしれない。
日頃使っている身の回りの品々。良く見ればいろんな工夫が施されている。当たり前と使っているけれど、アイディアを実用化し生産し販売し売れるまでには、困難な状況もあったであろう。
数十年前は漫画の世界が、現実になっている。超高速鉄道(リニア)も立体交差の高速道路網もスマートフォンも自動運転乗用車も。そのうち何処でもドアが出来るかもしれない。いろんな刺激の知らぬ間の寡黙なコーチングを受けながら、天才と言う超高感度の受信機を持つ一部の人類によって、その努力によって過去の天才から物を介したコーチングが功を奏して、文明は発展して来たのではないか。
*5)「新版品質保証ガイドブック」(社)日本品質管理学会偏、日科技連2009年11月刊