中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

コーチング その9

2017年05月25日 | ブログ
GROWモデル

 前項でコーチングのプロセスを述べたが、ここでは現場で実際にコーチングを実践する場合の典型的な進め方であるGROWモデルについて考察する。

 GROWは、GOALS(目標の明確化)、REALITY(現状把握)、RESOURCE(資源の発見)、OPTIONS(選択肢の創造)及びWILL(意志の確認)と、進め方のステップ順に頭文字を並べてものであるが、Growは、「育てる、育成する」という動詞であり、まさにコーチングの趣旨に適う。

 コーチングの進め方には諸説あって、唯一最善というものはない。しかし、何らかのガイドラインに沿って展開することは効率的で漏れも少なく進めやすい。GROWの5つのステップはシンプルかつ実用的で、非常に有効であると評価されているものだ。

 まず、GOAL(目標)を設定する。目標は曖昧であってはならない。ゴールまで息切れしないために、モチベーションを維持するためには、具体的で明確な目標が必要であり、それは何のために掲げた目標なのか、その目的も重要である。

 目標は、コーチングを受ける人のレベルによって、低めのところに設定する(ベビーステップ)場合もあるが、通常は実力より少し高めの「ストレッチ目標」とすることが多い。それはコーチングを受ける人の「HOPE TO~」(達成できたらいいなあ)というレベルでもある。

 ふさわしい目標を設定するためのフレームワークとして「SMART」の法則がある。S:Specific(具体的である)、M:Mesurable(計測可能である)、A:Agree upon(同意している)、R:Realistic(現実的である)、T:Timely(期日が明確である)の頭文字をとってSMARTである。

 次にREALITY(現状把握)であるが、現状を的確に把握することで、目標との乖離(ギャップ)も明確になり、目標がより見えるようになる。現状把握では、主観、推測、思い込みを排して客観的な事実だけをみること。現状把握を間違えると本当の問題を見逃して効果的な計画に結び付かない。

 現状が把握され、目標とのギャップが確認できれば、アクションプラン(行動計画)を立てるが、そのプランを推進するためのRESOURCE(資源:人、物、金、情報、時間)の確認が必要となる。そしてその実施方法(手段・方法・道筋)は、複数の案から選択できることが望ましく、「他に方法はありませんか?」「もっと良い方法を考えてみてください」などの質問によって、数多くの選択肢(OPTIONS)を得て、その中から最善の方法を選ぶのである。

 GROWの最後は、クライアントがそのアクションプランを絶対に実施し、目標を達成するという強い意思とやる気の確認で、「WILL」となる。具体的には、何を(WHAT)、いつまでに(WHEN)、誰と(WHO)をスケジュール表に記入することで、サポートが開始されるのである。

 以下に、各ステップにおける質問例を上げる。

 Goals:「今、あなたが一番達成したいことは何ですか」、「こうできたらいいと思っていることはありますか」、「その目標が達成されたとき、あなたはどんなふうに変わっていると思いますか」など。

 Reality:「今、一番緊急の問題は何ですか」、「現在の状況を具体的にまとめると、どのようになるのでしょう」、「今、重要なポイントは何だろう」など。

 Resource:「そのために誰かの力を借りることはできますか」、「その情報はどうやったら手に入れることができるのでしょう」、「その件について、詳しい人を知りませんか」、「あなたの一番の強みは何だと思いますか」など。

 Options:「例えば、こうしてみたいという方法はありませんか」、「明日からでもできることがあるとしたら何でしょう」、「これらの選択肢それぞれのメリット、デメリットを上げてみましょう」など。

 Will:「自分に言い訳をさせないために、できることはありますか」、「それを成し遂げたいという強い意思を持っていますか」、「成功のイメージが明瞭に描けていますか」など。

 GROWモデルは、プロのカーレーサーで、ル・マンでの優勝経験をもち、その後、英国でビジネスにスポーツコーチングを導入して高い評価を得た「はじめてのコーチング」の著者として知られるジョン・ウイットモアが用いた訓練法なのである*6)。





*6)by「新、図解コーチング術」佐藤秀郎著2010年8月初版、株式会社アーク出版刊
本稿は、「コーチング入門」<第2版>本間正人・松瀬理保共著2015年8月刊、日本経済新聞社刊及び「新、図解コーチング術」佐藤秀郎著2010年8月初版、株式会社アーク出版刊他を参考にして編集しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする