IoT
現代の企業経営においては、すでに情報通信技術の活用を考えずには成り立ちにくくなっているのではないか。しかし、小規模企業にあってはまだまだその経営者がインターネットや電子メールなどさえ使用することなく、過ごしていることはよく見かける。eコマース(電子商取引)が盛んになって久しく、またあったからといって急に売上げ向上に結び付くものでもないが、自社のホームページも持っていないことの方が普通であったりする。
まさに従業員は家族のみという小規模企業にとってみれば、財務会計のソフトなど無用の長物であっても、せめてパソコンソフトのエクセルくらいは使って、自社のお金の出入りくらいは経営者自身で管理して貰いたいと思ったりするけれど、これも大きなお世話かもしれない。
しかし、時代はすでにすべの物がインターネットにつながるようになって来た。Internet of ThingsすなわちIoTの時代に入ってきた。また「クラウド」(クラウドコンピューティング)も良く聞く情報通信用語である。これは、ネットワークから提供される情報処理サービスで、ネットワークと接続された環境さえあれば、情報処理やアプリケーションが利用でき、自社でサーバや情報処理ソフトを所有する必要がなく、またデータ量や時間等、利用分のみに費用を支払うことから、低コストでのITの活用が可能となる方法として期待されているものである。そしてAI(人工知能)がある。コンピュータが囲碁の世界さえ制したのである。会話型ロボットは感情さえ持とうとしている。試験的であれ、各種人型ロボットを受付等に配したホテルも登場している。
IoTは、ドイツが進める「インダストリー4.0(第4次産業革命)」が話題となり始めた2014年の暮れの頃から、よく聞くようになった。もともと東大の坂村先生*2)のユビキタス・コンピューティングが元祖で、その初期の論文は1987年。その「ユビキタス」という言葉が話題となったのは21世紀に入った頃だと記憶する。Ubiquitous(神はいずこにおわす(ラテン語)=どこにでもある)すなわち「どこでもコンピュータ」=ユビキタス=IoTとなったそうだ。
『普及するまでに時間のかかる新技術は、ガードナー社*3)が提唱した「ハイプ・サイクル」と言われる社会認知度のカーブに従うことが経験的に知られている。有望な新技術は「黎明期」から抜け出て、新規性で喧伝される過度な期待のピークの「流行期」に至る。しかし、市場投入までには時間がかかることがわかると「幻滅期」に入る。そして、その間も技術は進んで環境が整うと再度登場する啓蒙活動の「回復期」に入り、その後の「安定期」に普及する―――という山あり谷ありのカーブだ。
IoTを最近出てきた新技術と取ると、今が過度な期待の流行期でこれから幻滅期に入ることになるが、実は「ユビキタス」の頃から続いている流れと取れば、まさに今が回復期。これからが普及の本番なのである。』
優れた新技術は、反面大きなリスクも包含する。正しく活用し、リスクを最小限に抑え込む社会システムを構築してゆかねばならない。
企業経営は新しい技術を取り入れることに前向きでなければならないだろう。
*2)坂村健、1951年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。ユビキタス情報社会基盤研究センター長。工学博士。オープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON」を構築したのが1984年。
*3)ガードナー社、1979年に創設された、米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置く業界最大規模のITアドバイザリ企業。世界90ヵ国に拠点を持ち、約1,700人のリサーチ・アナリストおよびコンサルタントを含む7,900人のアソシエイツで構成されている。
本稿は、坂村健著「IoTとは何か」2016年3月刊/角川新書を参考にし、『 』内は直接の引用です。
現代の企業経営においては、すでに情報通信技術の活用を考えずには成り立ちにくくなっているのではないか。しかし、小規模企業にあってはまだまだその経営者がインターネットや電子メールなどさえ使用することなく、過ごしていることはよく見かける。eコマース(電子商取引)が盛んになって久しく、またあったからといって急に売上げ向上に結び付くものでもないが、自社のホームページも持っていないことの方が普通であったりする。
まさに従業員は家族のみという小規模企業にとってみれば、財務会計のソフトなど無用の長物であっても、せめてパソコンソフトのエクセルくらいは使って、自社のお金の出入りくらいは経営者自身で管理して貰いたいと思ったりするけれど、これも大きなお世話かもしれない。
しかし、時代はすでにすべの物がインターネットにつながるようになって来た。Internet of ThingsすなわちIoTの時代に入ってきた。また「クラウド」(クラウドコンピューティング)も良く聞く情報通信用語である。これは、ネットワークから提供される情報処理サービスで、ネットワークと接続された環境さえあれば、情報処理やアプリケーションが利用でき、自社でサーバや情報処理ソフトを所有する必要がなく、またデータ量や時間等、利用分のみに費用を支払うことから、低コストでのITの活用が可能となる方法として期待されているものである。そしてAI(人工知能)がある。コンピュータが囲碁の世界さえ制したのである。会話型ロボットは感情さえ持とうとしている。試験的であれ、各種人型ロボットを受付等に配したホテルも登場している。
IoTは、ドイツが進める「インダストリー4.0(第4次産業革命)」が話題となり始めた2014年の暮れの頃から、よく聞くようになった。もともと東大の坂村先生*2)のユビキタス・コンピューティングが元祖で、その初期の論文は1987年。その「ユビキタス」という言葉が話題となったのは21世紀に入った頃だと記憶する。Ubiquitous(神はいずこにおわす(ラテン語)=どこにでもある)すなわち「どこでもコンピュータ」=ユビキタス=IoTとなったそうだ。
『普及するまでに時間のかかる新技術は、ガードナー社*3)が提唱した「ハイプ・サイクル」と言われる社会認知度のカーブに従うことが経験的に知られている。有望な新技術は「黎明期」から抜け出て、新規性で喧伝される過度な期待のピークの「流行期」に至る。しかし、市場投入までには時間がかかることがわかると「幻滅期」に入る。そして、その間も技術は進んで環境が整うと再度登場する啓蒙活動の「回復期」に入り、その後の「安定期」に普及する―――という山あり谷ありのカーブだ。
IoTを最近出てきた新技術と取ると、今が過度な期待の流行期でこれから幻滅期に入ることになるが、実は「ユビキタス」の頃から続いている流れと取れば、まさに今が回復期。これからが普及の本番なのである。』
優れた新技術は、反面大きなリスクも包含する。正しく活用し、リスクを最小限に抑え込む社会システムを構築してゆかねばならない。
企業経営は新しい技術を取り入れることに前向きでなければならないだろう。
*2)坂村健、1951年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。ユビキタス情報社会基盤研究センター長。工学博士。オープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON」を構築したのが1984年。
*3)ガードナー社、1979年に創設された、米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置く業界最大規模のITアドバイザリ企業。世界90ヵ国に拠点を持ち、約1,700人のリサーチ・アナリストおよびコンサルタントを含む7,900人のアソシエイツで構成されている。
本稿は、坂村健著「IoTとは何か」2016年3月刊/角川新書を参考にし、『 』内は直接の引用です。