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経営分析入門第7回

2013年08月19日 | Weblog
生産性

 「生産性」とは、製品やサービスを生み出す為に必要な、労働力、資金、機械・設備、原材料、土地等の「生産要素」をどれだけ有効に利用されているかの度合いを示す指標である。生産性を数式で表すと生産性=産出量÷投入量であり、産出量とは、生産量、輸送量、加工量、サービス額、販売高等で投入量とは、原材料、資本、機械・設備、エネルギー、土地、労働力等である。

 これまでに診てきた効率性と同義のところがあり、資本回転率などは資本の効率性であるが、結局資本の生産性であるとも言える。先の稿にも触れたけれど、財務分析は与えられた財務諸表を多面的に診る作業である。円錐は上や下から見れば丸に見え、横から見れば三角形に見える。何を診るにも一面からの評価では見誤ることが多い。

 ここに改めて「生産性」を取り上げるが、ここでは生産要素のうちでこれまで取り上げていない労働力の面から診ることになる。労働力は最近では「人財」などとも言われ、その重要性が再認識される中、ロボットの発達で工場などどこまで無人化出来るかも改めて企業の課題となっている向きもある。

 「人財」とはいって、従業員が貸借対照表の資産に載ることはない。人件費は損益計算書において費用であるが、一方企業が生み出す付加価値額の一角でもある。中小企業の財務指標における付加価値額とは、「経常利益+労務費+人件費+支払利息割引料-受取利息配当金+賃借料+租税公課+減価償却実施額」(日銀方式)*14)で表される。付加価値とは、企業が生み出した経営成果のうち、当該企業が新たに生み出した価値のことである。

 生産性分析の代表的な指標に「付加価値生産性」がある。当該企業当期の付加価値額を従業員数で割ったもので、従業員一人当たりの付加価値額となり、これが大きいと人的生産性が高いといえる。単に売上高を従業員数で割って、従業員一人当たりの売上高というのも生産性の目安となる。また売上高に占める付加価値額の割合である付加価値率*15)という指標もある。

 機械化の目安として、「資本装備率(または労働装備率)」があり、従業員一人当たりの有形固定資産額で計算する。この額が大きいということは、機械化が進んでいることを示すが、その資産が有効に付加価値を生み出しているかを診る「資本生産性(設備生産性)」という指標(付加価値額/有形固定資産)もある。有形固定資産当たりどれだけの付加価値を生み出しているかの指標である。

 従って付加価値生産性とは、「従業員一人当たり売上高」(売上高/従業員数)×「付加価値率」(付加価値額/売上高)また「資本装備率」(有形固定資産/従業員数)×「資本生産性」(付加価値額/有形固定資産)とも表現できるが、いずれも付加価値額を従業員数で割った式となることが分かる。

 付加価値生産性は業種・業態によって大きく異なるが、自社の過去のデータや同業他社との比較において生産性が低くなっておれば、人と機械・設備の効率性に着目して改善を促す指標なのである。



*14)中小企業新事業活動促進法における付加価値額は、「付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費」のように計算される。
*15)わが国全産業の付加価値率の平均は20%程度である。不動産業やサービス業などは70%を超える企業が最も多く、流通業や建設業では10~30%に集中し、飲食業・宿泊業では30~50%が中心である。運輸業は10%台から70%以上まで同じような割合であるなど当然ながら業種間で異なりを見せる。利益率が良い業種、人件費のウェイトが高い業種など付加価値率は高くなる。
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