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経営分析入門第3回

2013年08月07日 | Weblog
財務分析のポイント

 企業の決算書から経営状況を評価する場合のポイントは、1.安全性、2.収益性、3.効率性、4.成長性、5.生産性の5項目くらいが普通である。効率性は活性度、成長性は発展性などと表現を変え、生産性は人材資源全般への評価に含めていたりする専門書も見られる。キャッシュフローや損益分岐点分析などからの視点も重要である。

 企業の財務分析は、われわれ診断士などが企業から依頼されて、問題点を摘出し改善に繋げるために行う場合、上場企業の有価証券報告書から投資(株や社債の購入)の可否判断のために行う、銀行などが企業への融資の適否を判断するために行う、与信管理として当該企業やそこから依頼された調査会社が新規取引先を評価する場合や自社の管理のために自社で行うものなど様々であろうと思うけれど、それらの目的によって分析結果に異なりを見せる場合が考えられる。それは、決算書のデータの信頼性についての取り扱いが変わるからである。

 われわれ企業側から依頼されて当該企業の経営分析を行う場合は、当面その決算書の数値を信じてやるしかないが、融資の適否判断であれば、粉飾はないか等、融資担当者の知識・経験に基づく独自のノウハウからの見立てもあり、数値の信憑性について疑義を挟むことは当然にあり得る。

 日曜夜のテレビドラマ大手銀行の融資課長を描いた「半沢直樹」*2)が評判である。ネットなどによると、現役の銀行員も多くが見ていると言う。中には「メガバンクでは5億円くらいの融資失敗では、ドラマほどの大騒ぎにはならない」という感想があったりした。銀行の融資担当者などの融資先企業の決算書評価は、われわれ診断士よりさらにプロフェッショナルな仕事に思えて、そんな話を飲み友達の中小企業の社長にしたところ、「結構いい加減だよ」みたいな答えが返って来たのは、5億くらいで大騒ぎしないという話に連動するものかもしれない。

 財務分析の「安全性」とは、勿論企業の倒産の危険性を問う。この評価が低ければ倒産の危険が大きいことになる。例えば自己資本比率*3)がマイナスとなれば、所謂債務超過(金融検査マニュアルで、「ハケ」と呼ばれる破綻懸念先にランクされる。この状態が長く続けば「ジッパ」実質破綻先となる)といわれるように、自己資本比率は高い方が安全性は高い。勿論流動性分析と言われる流動比率*4)や当座比率*5)、固定比率*6)や固定長期適合率*7)などでも評価される。

 以下次号。






*2)池井戸潤による企業エンターテインメント小説。バブル末期に大手都市銀行に入行した半沢直樹が銀行内外の人間や組織による数々の圧力や逆境と戦う姿を描くシリーズ小説のテレビドラマ化。2013年7月7日よりTBS「日曜劇場」枠で放送中。
*3)自己資本(純資産)/総資本(総資産)
*4)流動資産/流動負債 なお、流動資産とは現金・預金はじめ1年以内に現金化可能と思われる資産をいい、流動負債とは仕入れ債務はじめ短期借入金など1年以内に返済期限の来る負債をいう。少なくとも100%以上あることが必要。
*5)当座資産/流動負債 なお、当座資産とは現金・預金流動資産の中でもさらに短期に現金化できる資産(受取手形、売掛金、有価証券など)をいう。100%以上であることが望ましい。
*6)固定資産/自己資本 固定資産が返済義務のない自己資本でどの程度カバーされているかを見る指標。この指標が小さいほど資金面で安定的な設備投資が行われていると評価できる。
*7)固定資産/自己資本+固定負債 固定資産が長期資本(自己資本+固定負債(長期借入金など))によってどの程度カバーされているかを見る指標。100%以下であることが必要。
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