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経済学のすすめ2

2011年06月04日 | Weblog
経済学とは

 『イギリスにおいて産業革命が起こり、経済学(古典派)は道徳哲学から独立して発展は始めるものの、19世紀の後半まで、なお学問の世界では独立した地位を確立していない。前稿に上げた、近代経済学を築いたアルフレッド・マーシャルが1870年代にケンブリッジの初代経済学部教授に就任*5)し、同校で1903年に経済学優等試験が設立された時を持って経済学が市民権を得た』と、伊東光晴先生、佐藤金三郎先生共著「経済学のすすめ」にある。非常に新しい学問であることは確かだ。

 では、経済学とは何か。「経済学とは、希少な資源*6)の配分を供給側と需要側の問題の組合せとして研究する学問である」と古い診断士の経済学のテキストにある。また先の「経済学のすすめ」で著者は、「経済学は法則科学である」と言う。『社会科学の中で法則的展開が可能な学問は、経済学ただ一つであります。このことが経済学を主要な科学にしているのです。なんとなれば、そのために経済学は他の社会科学と違って、自然科学に近い学問だということができるからです』。さらにマーシャルに次いで二代目のケンブリッジの教授に就いたA.・C・ピグー(1877-1959)*7)の著書*8)から次の言葉を引用している。

 『アダム・スミスの時代からこの方、イギリスの経済学者たちは、平常状態における経済過程の運行を研究してきた。彼らが観察したのは、無数に多くの人々からなる一国民が、何らかの計画的に作り上げられた一個の巨大な組織の結果ではなく、いわんや、各個人や世帯が自己の必要とするものを直接に調達しようとする個々別々な努力によってではなく、私的貨幣利潤の動機をめぐって打ち立てられた、異常に込み入った相互交換のシステムによって衣食住と娯楽を絶え間なく供給されるということである。・・・ この奇跡の神秘を探ること、すなわちいかにしてそれは運転するのか、そのメカニズムは正しくどのようなものであるのか、またこのメカニズムの背後にある人間の力がいかにそれを指導し統制するかを理解すること、これこそ有能な人々の生涯をささげた課題である。』

 そして、これまで多くの賢者が、この社会的法則の一部を見出し理解し、定義し公式化した事で、経済現象の分析や予測に役立ててきた。しかし、経済現象はあまりに多くの変動要因に支配されているため、その予測が必ずしも的確であるとは限らないけれど、経済の仕組み(経済学)を知ることは政治家や企業経営者、経営コンサルタント、投資家などにとっては特に重要であり、家計を預かる主婦まで一般国民にとっても必要なことであろう。しかしながら、『金儲けをするために経済学を学ぶのではない。イギリスの19世紀半ば以後、イギリスにとってかってない繁栄の時代に、なぜ一方においてイーストエンド(ロンドン貧民街)のような貧乏が生まれているのか。この問題を解くことこそが経済学の問題であるということであった』。と「経済学のすすめ」の著者は言う。

 『ピグーが経済の正常状態に視点を当てたのに対し、マルクス(1818-1883)は、この経済が不均衡を生み、やがて恐慌という破局を経ることなしには調整できなくなる病を持っており、しかもそれは周期性を持っているところに法則を見出そうとした。「生産力の発展が生産力を破壊する」、国家の統制による計画経済こそ働く者にとって理想の社会になると考えた』。

 経済に対するスタンスが国家の政治形態にさえ決定的な影響を与え、その対立が長く世界を覆った。経済に対する国家の過度の関与は、人間本来の自由な活動や所有の欲望を押さえつけることになり、1989年11月東西対立の象徴であったベルリンの壁の破壊により一応の決着をみた。しかし、資本主義の成長、拡大志向は資源と市場を求めて他国の領分を侵すことに為りかねず、国家間の武力紛争にまで発展する恐れもあることには今も注意が必要となる。
 








*5)彼の就任のときに言った言葉は「冷静な頭脳とあたたかき心“cool head but warm heart”を持って」であった。
*6)「財やサービスは、人間の欲望を満たすほど十分に存在しない場合、稀少であるといわれる」西村和雄他著「早わかり経済学入門」東洋経済社1997年刊
*7)イギリスの経済学者。ピグー効果(資産効果)やピグー税などが有名である。
*8)「厚生経済学」The Economics of Welfare, 1ed, 1920. 4th, 1932. 永田清監訳、東洋経済

本稿は、伊東光晴、佐藤金三郎共著「経済学のすすめ」筑波書房1968年刊を中心に、中小企業診断士テキスト日本マンパワー社版「経済学・経済政策」を一部参考にしています。
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