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安全考その9

2011年05月25日 | Weblog
自然災害

 四方を海に囲まれ、四季に恵まれた日本列島は、どこを切り取っても美しい風景が広がる。四季折々の山海の珍味が食卓を潤してくれる。しかし一方で、もし太平洋の海水がなかったとした風景を想い描けば、日本列島の私たちの住んでいる土地は、8000メートルにも及ぶ深い渓谷*19)の上にあり、まさに崖っぷちに住んでいることに気づくであろう。さらに日本列島は火山列島でもある。それは国内どこでも温泉が湧く幸運に恵まれた一方で、火山の噴火と地震の脅威にも晒されるということだ。加えて夏から秋にかけては台風の通り道となる列島でもある。自然に恵まれるということは半面、種々の自然災害の脅威も併せ持つことになる。

 昔から、「地震、雷、火事、親父」とはよく聞いたものだけれど、四国は瀬戸内海沿いの町に育った私には、子供のころ地震はほとんど経験せず、夏に雷はよく発生していたけれど、落雷で誰かが負傷した話も聞かず、もっぱら怖いのは台風だった。

 台風は毎年やって来た。そのたびに父は雨戸を固定するなど対策を行っていた。結果、屋根瓦が風でずれたくらいの被害はあったが、大きな川が近くにあるわけでもなく、災害にまでなることはなかった。ただ、国内には台風の風水害被害は多く、特に昭和34年の伊勢湾台風は強く印象に残っている。5千を超える人の命が失われたが、高潮と川の氾濫による洪水の被害だった。当時は東京でも洪水の被害は多かったようで、高度経済成長に併せダムと堤防作りの河川の治水はその後急ピッチで進んだ印象がある。

 自然災害をすべて無くすことは難しい。冒頭に触れた通り、海辺や山間の風光明美な例えば温泉宿は、常に危険と隣合わせだ。行政も分かっていても踏み込んだ規制はできない。住民だってリスクは承知している筈である。山間の民家や温泉宿さえ豪雨による土石流や河川の氾濫で流された話など、日本には幾らもあろう。

 対策が難しいからと言って放置して良いものではない。その対策は、企業等で行う日常の問題解決法と基本的には変わらないと思う。まず現状把握をしっかりと行うことだ。自分の住んでいる土地、地域にどのような自然災害の危険があるのか。現在は国土のハザードマップ作りも進んでいるようだ。火山が噴火した場合の溶岩流の予測も、山津波の恐れのある地域も、津波や川の氾濫で浸水の恐れのある範囲もある程度予測できる。であれば、その際にどのような行動を取るべきか、地域で個人で書き出しておくことだ。行政でできるハード面の対策と共に、地域のコミュニティーはさらに重要であるけれど、個人の責任においても、自らの命を守る手立てを考えておく必要があろう。

 三原山の大噴火*20)で全島避難のあった伊豆大島へ、数年後職場旅行で出かけたけれど、島は火山噴火の大災害を見事に観光資源に変えていた。定期観光バスの運転手は、諸々当時の大変だった様子を聞かせる一方で、「万一今、山が噴火をはじめても、みなさまをまず安全な場所に誘導しますのでご安心ください」のようにアナウンスしていた。そこには危機を乗り越え復活した自信が漲っていた。







*19)日本海溝、ここに太平洋プレートが潜り込んでいる。
*20)1986年11月。噴火の衝撃波は、ここ千葉県市原市まで届いた。
コメント
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