かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録13-14冬

2014-03-09 19:33:58 | 本と雑誌

 パソコンがダウンして遅れていた恒例の読書録を再開します。今年も3か月ごとに古本屋で安価(100円+α)に手に入れた本を紹介していきたいと思います。100円で手に入る本とは、新刊本から半値程度で古本屋の棚に並び、そこでも売れなくて最低価格100円に値下げされた本のことで、これを「周回遅れの読書」と私はいいます。現在の出版業界の回転率もしくは流動性重視の仕組みはでは、継続してチェックすると優れた本も手に入ります。これが肝です。

 能書きはそうなんですが、実は今回はどうしても読みたいイアン・ブレマーの本2冊は図書館(?)で借りて読んだ。又、家内がくれた図書券で新刊本を3冊(?)買って読んだので、「周回遅れ」というより「半歩遅れ」程度の読書録になってしまった。?と?印のついた本は古本屋では手に入らない可能性が高いので悪しからず。

 さて最初にお勧めしたいのは、上記のIブレマー氏著の2冊です。氏は各国首脳(民主共和大統領候補、ロシア、安倍首相)が助言を受けたこともある当代きっての政治学者で、年頭の新聞インタビューを見て読みたいと思いました。「自由市場の終焉」は中国・ロシア等の国家資本主義とどう対峙していくか、当座と将来あるべき姿について考えるベースを与えてくれる。もう一つの『「Gゼロ」後の世界』ではG20は世界を移行期と捉えどこに向かうか深い洞察力で本質に迫る、後述のG20(藤井彰夫)が表面的な事象を追っているのと読み比べると面白い。

 ファーガソンの「劣化国家」はもっと時間軸を広げて西洋民主主義の成功と没落の予感を4つの分野に分けて追及している。行き着くところは成功要因(民主制度)が将来の失敗要因になりそうだと警告するもの。西洋文明は成功して高齢化社会を実現したが、それは「肉体の寿命を延ばしただけで精神はむしろ劣化し将来世界を脅かしている」、これを西洋文明共通の問題として提起している。

 その他に「イエレンのFRB」は、イエレン新FRB議長がどうのこうのというよりリーマンショック後の中央銀行の役割の変化を理解するための非常に良い入門書として位置づけ読書を勧めたい。下手な経済書よりも金融論だけでは済ませられない実践的で政治的なファクターが織り交ぜられ、リーマンショック後の中央銀行が何を考え何をしてきたか理解できる。

 (3.0-)?自由市場の終焉 Iブレマー 2011 日本経済新聞 中国・ロシア・中東産油国・南米等の国営企業の台頭と、政権維持を目的とした経済運営を特徴とする国家資本主義の実際と将来、その脅威と対応策について持論を提案した佳作。権威主義的な政権運営が不公平と戦うより政府の収益最大化を目指し、国内の難問への対処に忙殺され永続しないが、当座はアメリカの地位を保ち相互依存関係を保つべきという。ただ現実の情勢は、最近の中国の膨張主義的な対外姿勢は、中国が軍事的な企てをしないという著者の予測が外れそうだ。

 (3.5)?「Gゼロ」後の世界 Iブレマー 2012 日本経済新聞 グローバル化が米国の力に代わり得る新興国の台頭を招いたが、彼等はリーダーとしてのリスクや責務に躊躇し、9.11後の軍事支出に疲弊した米国と合わせGゼロの世界を作った。だが、Gゼロの世界は次の世界への移行期で、新たな紛争を次々に生むと説く。今日の世界観と次の世界は地域分裂社会に向かう可能性が高いという著者の予測(予言)は鋭い洞察力で説得力がある名著だ。

 (2.5)?劣化国家 Nファーガソン 2013 東洋経済 過去500年比較優位にあった西洋文明が衰退を迎えていると、政治経済(金融規制と執行)・法の支配(現実法律家の支配)・市民社会への国家介入の分野から劣化が進んでいると説く佳作。西洋文明の成功をもたらした諸制度が深刻な公的債務危機を引き起こした、将来世代への裏切りと指摘。高齢化を「肉体の寿命を延ばしても精神の寿命が延びなければ単に扶養が必要な高齢者が増えるだけ」と厳しい。

 (2.0+)?G20 藤井彰夫 2011 日本経済新聞 リーマンショックを経て世界経済の中心が東にシフト、G8から世界の80%をカバーするG20に役割が移行する様を描いたもの。時々の状況に応じて政治的存在感向上を伺う英仏独やブラジル・中国の不満と、危機対応では機能したのに危機が終わるとバラバラになっていくG20とユーロ危機まで漏れなく網羅。何故か読んでつまらないのは総花的でメリハリの効いた読み物になっていないせいかもしれない。

 (2.5+)?イエレンのFRB 藤井彰夫 2013 日本経済新聞 イエレンが次期FRB議長に選ばれる経緯と彼女の経歴、バーナンキ議長時代のリーマンショック対応、イエレンを待っている課題、日欧とのかかわり等、最新テーマについて中央銀行に役割を解説したもの。「イエレンのFRB」というより中央銀行の金融政策について大局的でよく目配りされたタイムリーな入門書。

 (2.0)日本復興計画 大前研一 2011 文芸春秋 東日本大震災・大津波の直後にどう日本を復興させるか提言をまとめたもの。原発技術者だった著者だけに原発事故の原因と対処法に殆ど紙数を使い解説、今でも的を射た指摘だと思った。当時対応した東電・原子力保安規制委・政府中枢が知識不足だったことを改めて実感した。原発以外の提言は至極一般論で終わっている。

 (2.0)クラウドの衝撃 城田真琴 2009 東洋経済 コンピュータとネットワークの性能向上と低コスト化が進展し、従来のPCベースとクライアントサーバー時代を経て、プロバイダーが提供するコンピュータサービスSaaSPaaSHaaSを切り売りする時代への移行を解説したもの。現役を離れ10年余りの私には浦島太郎みたいに感じる。世の中変わった。5年前の予測は概ね妥当だが、今日タブレットがPCを置き換える勢いは予想されてない、著者も追いつけなかったようだ。

 (2.0+)35歳を救え NHK三菱総研 2009 阪急コミュニケーションズ 1万人の35歳にアンケートをとった結果、2009年当時の35歳世代(今日の40歳世代で団塊ジュニアと呼ばれる)の1/3が非正規で低給与のシングルパラサイトで、将来に不安を持ち出生率が低い(0.86)というショッキングなデータを報告したもの。じゃあどうするのかと聞くと「積極的雇用政策」と「子育て支援策」という月並みな提言に終わっている。だが、現実を伝える豊富なデータは貴重で今日の問題だ。

 (2.5)日本のお金持ち妻研究 森剛志・小林淑恵 2008 東洋経済 マスコミが作ったブランド好きで豪華な生活をするイメージとは異なり、日本のお金持ち妻が質素で堅実な生活を送っている実態を報告した内容。調査の結果では容姿端麗より教育がお金持ち妻の条件という。年収3000万円以上の51%が会社経営、24%が医師というのは予想通りだが、日本の税制度に対応して家族が節税の道具になっている実態に驚いた。こういう本が実は重要だと私は思う。

 (2.0-)財産危機時代 蓮見正純 2011 経済界 財産を増やしにくい時代(経済低迷、低金利、低株価)における7つの資産運用法と相続税の節税を提案するもの。最低でも数億円以上の資産を持つお金持ちの為の資産運用の指南書。成程と思うこともあるが、著者の会社の宣伝ぽく感じる。アベノミクスで状況が変わったことを認識して読むべきだ。

 *.*錨を上げよ(上下) 百田尚樹 2010 講談社 直情的・暴力的な主人公の小学生から30歳まで愛を求めて波乱に満ちた滅茶苦茶な生き様を一人称で描いた青春小説。昭和40年代(戦後20年頃)の世相を生き生きと描いており、青春時代を思い出した。1200ページもある長編小説で主人公の行き当たりばったりで学習効果のないどぎつい生き方の繰り返しにはやや辟易した。

 *.*用心棒日月抄・凶刃 藤沢周平 1994 新潮文庫 国元の隠密の元締めの命を受けて、江戸の隠密と連携して藩主側室が幕府反逆者の娘という秘密を守る為に、隠密組織と戦う40過ぎの剣の達人の物語。もしかしたら一度読んだかもしれない。 

 *.*逆軍の旗 藤沢周平 1985 文芸春秋 明智光秀・竹俣当綱(鷹山の家老)という歴史上の人物と、著者の郷土史の人物を描いた歴史小説と時代小説の中間的な読み物。光秀の側近の名前が出てくるのが珍しい。

 年初なので、私の評価の目安がどういうものか改めて紹介したい。

 評価は下記の5段階に分かれ、2以上が私が読書を勧める本です。今迄で最高点は3.5です。今回から「古本屋では手に入りそうもない本、読みたければ図書館で借りてください」を示す?、或いは「定価で買って読みました」を示す?を追加しました。

  評価は時間をかけて読む価値があるか否か、知識を得るという個人的視点での評価です
 
 (0):読む価値なし  (1):他になければ読めば! (2):読んで損は無い
 
 (3):お勧め、得るもの多い  (4):名著です  (5):人生観が変わった

  私ごときが中々断定できないので下記の中間の評価を追加しました。謂わば優柔不断ファクターであり、同じ数値でも個人的な好き嫌いに近い評価を表します。

  0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
 
 -/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。
 
 ?:図書館で借りた本、 ?:新版を買った本

 今年もどうぞよろしくお願いします。■

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