このテーマにピッタリのニュースが毎日のように流れてくる。共通するのは明らかにオカシイことを開き直って責任を果たさず、もっと大きな物を失っている人達がいることだ。連日の報道でこういう人達が溢れているようで寂しい。かつて恥の文化といわれた国は恥知らずになったのか。
松 |
岡勝利農相の事務所経費の空虚で恥知らずの言い訳を最初に取り上げる。たった500万円余の事務所経費の内訳を説明できなくて安倍内閣全体の信頼性を傷つけている。彼が守ろうとしている物は何か、彼を選出した熊本県の選挙民はどう考えているのか。500万円で随分高い値打ちの買い物をしている。
西武球団の裏金事件はバレるまで隠蔽を続け、バレた後も細部の隠蔽工作をした。小事を隠して球団の信頼を損なった。それを説明する太田社長は、プロ球界の信頼を保つ為に西武球団自体が球界に残れるかどうか問われているという発想がなかった。発想の次元が低い点では現場と大差ない。
ところが今度はプロ野球界全体も同じ発想だった。ドラフト制度の「希望枠廃止改革」をめぐって議論は迷走、プロ球界全体の信頼が問われているのに球団次元の利益でしか物事を考えられない。既にアマチア球界のプロ野球機構に対する信頼は全く無くなった。
危機管理の鉄則である初動を誤ると、その後何をやろうと信頼の回復は難しい。今何が問われているのか大局を理解できないまま現場レベルの発想での決定が傷口を広げ、しかもそれに気付かない。正にこういうのを悲喜劇という。
人は何故、小さい利益を守るため必死の努力(隠蔽)をし、大きな利益を損なってしまうのか。大きな利益とはいっても規制や仕組みで守られた既得権益の場合の不祥事が多いのだが。逆説的に守る価値がないのか!何れにしろ、この必死の努力が「あってはならない」ことをやってしまう。
北陸電力の原発臨界事故隠蔽、不二家の賞味期限偽装、愛知県地下鉄工事の談合、うんざりするほど不祥事の枚挙に暇がない。当事者は小さい利益を守るための確信犯だが、結果は屋台柱を揺るがし数千億円のビジネスを危機に曝すことになる。
多くの場合は直接手を下さずともそれを許す環境を組織全体が作っているので、全体の被る損失は自業自得ともいえる。プロ野球機構の場合、その極めて常識的な道筋すら理解してない向きがあるのは哀れとしか言いようがない。
その意味では官僚の天下りも全く同様だ。あってはならない酷い例が山ほどあるのに官僚は自浄能力を持たず、一部政治家はあからさまに利益誘導天下り規制に反対する。首相が退路を断ったといわれる裁定といえども骨抜きにされる可能性がある。野球のドラフト制度と似た構図だ。
しかし事態は悪い方向に向っているとは私は思わない。検察や公取委が動けるよう法が整備されたからこそ不正を見逃さず内部告発が増え、談合が摘発されたのであって、不正が増えたわけではない。最近の金融庁や経産省の消費者側に立った姿勢は一時的なものとは思えない。
とは言っても長い間に培われた談合・隠蔽・タカリの構造は国民の精神を貶めライブドア事件等より余程根が深い。官僚から地方役人、経営者から従業員、大人も子供まで恥を恥とも思わない人達が生まれた。小泉改革を引き継いだ安倍政権の役割が、「あってはならない」ことを「普通にない国」にして活力を取り戻し、それを「美しい国」というなら100%支持する。■