日本国内では感染しないが、熱帯、亜熱帯地域から感染症が
輸入され国内で発症する熱帯感染症が増えている。
それにとどまらず、さらに地球温暖化が進むと、日本国内でも、
熱帯感染症がアウトブレイクする恐れもありそうだ。
デング熱 dengue fever は、東南アジア、中南米、アフリカ、
南太平洋にみられるウィルス感染症で、
なんと毎年 5000 万人以上の感染者が推計されている。
あ感染症情報センターHPより
あ
あ
また、悲しいことに、その重症例は小児が多く、
毎年多くの子供たちが命を落としているという。
日本ではなじみの薄い疾患ではあるが、
今夜はちょっと勉強してみようと思う。
The War on Dengue Fever (デング熱戦争)
あ
あ
2週間前、デング熱でバンコクにある主要な小児病院に運ばれた3才の男の子に対し医師たちができることはほとんどなかった。
これまでの何千人の患者と同じように、彼はこの病気の最も危険な局面であるデング・ショック症候群 dengue shock syndrome に陥り、入院して3日後、皮下出血と臓器不全で死亡した。道路を隔てた真向かいにある米陸軍最大の海外医学研究所では、軍の科学者たちが次世代に希望を提供しようとしているところだ。ワクチンである。
長期間の試行の末、開発され、専門家たちがこの5年のうちに商業化されると信じている2つの実験的ワクチンの一つである。デング熱(英語では“デンゲ”と発音)は蚊によって媒介される伝染病である。
関節と筋肉の強い疼痛と激しい頭痛のため、かつて "breakbone fever" (骨折熱?)として知られていた。
死亡率は意外に低く、入院患者の約 2.5 %と World Health Organization (WHO)は報告している。死亡率は低いが、患者には注意深い持続的な観察が必要とされるので、熱帯地域では最も費用のかかる疾患の一つとなっている。
毎年、世界中で約50万人の入院患者が発生しているという。デング熱は米国やヨーロッパではめったにみられないが、途上国から帰国した西洋人の旅行者の発熱症状の原因としてはマラリアに次いで2番目に多い。
一方、米軍にとっても重要である。米軍兵士はハイチやソマリアへの派遣で 1990 年代からデング熱に罹患しはじめている。
このため、本疾患は、ここ Armed Forces Research Institute of Medical Sciences(国防医科学研究施設)での研究の焦点となっている熱帯疾患の一つである。
この施設は、軍が50年前からタイ王国軍とともに運営しているものだ。数百人の人々を雇用しているこの研究施設は、食物の露店商人が油で揚げたバッタやすり潰したパパイヤ・サラダを売り歩く油にまみれた裏通りのそばの人目につかない1960年代の建物の中にある。
「カンザスにはデング熱はありません。マラリアもです。我々がここにいる理由はこのためです」と、この研究所の司令官である James W Boles 大佐は言う。
過去の戦争において、疾病はしばしば敵軍以上に大きな敵となっていた。
19世紀後半の南アフリカで起こったアングロ・ボーア戦争では、戦闘よりもチフスで失われた兵士が多かった。
ベトナム戦争中、兵士の間で起こった何千もの肝炎の発生は、現在、A型肝炎、B型肝炎の予防に用いられている二つのワクチンの開発援助に軍の研究者たちを走らせることとなった。「我々が最も関心を持っていることは、ただ兵士を守るワクチンを手に入れることです。
幸いにも、我々の関心事の多くはまた世界的な衛生上の関心事でもあります」と、バンコク研究所のデング・ワクチン開発部の部長である Stephen J Thomas 中佐は言う。マラリア治療に用いられてきた主要な薬剤は、これまで何年もの間、米軍によって開発されてきた。
今日、熱帯病の研究はより広い集団に広がってきている。デング・ワクチンの開発においては、タイ政府、Bill and Melinda Gates Foundation などの nonprofit organizations(NPO)、および米軍と提携している GlaxoSmithKline などの製薬会社から費用や研究成果が寄せられる。実用化に近い開発段階にあるもう一つのワクチンはバンコクの米軍研究所と同じ通りにあるフランスの製薬会社 Sanofi-Aventis とタイ大学によって共同開発されている。
「これまで以上に我々はデング・ワクチンと付き合っていかなければなりませんが、今後5年から7年の間にワクチンを手に入れる可能性が高いと思われます」と、シンガポールの emerging infectious diseases department of the Duke-N.U.S. Graduate Medical School の Duane J Gubler 部長は言う。
デング・ウィルスは主として Aedes aegypti(ネッタイシマカ)と呼ばれる蚊によって媒介され、ヒトの血液中で生き延びる。
この蚊はまれに、孵化した場所から100ヤード以上移動し、人口の多い地域でその数を増す。この蚊はソーダの瓶のような小さな場所でも繁殖するが、理想的な繁殖環境は、東南アジアの多くの場所で見かける飲み水を貯めるための大きな容器である。(この領域での第一人者である Davis にある University of California の
Thomas W Scott 教授によると、この Aedes aegypti は他の蚊と異なり、きれいな水を好むそうである)この蚊は寒冷な気候では生存できず、生息域は米国の一部(特に南部)に限られるが、専門家によれば公衆衛生を徹底すればデング・ウィルスの蔓延を防げるという。
それは普通に家屋の中にいて、クローゼットやカーテンにたむろしている。WHOは毎年 5,000 万人が感染していると推計している。
しかし感染者の大部分、およそ90%は軽度の感冒様症状を示すか、全くの無症状のまま経過する。先月ここで死亡した少年のように、重症の例では、激しい頭痛、突発性の高熱、衰弱をもたらす関節や筋肉の疼痛、嘔気・嘔吐、さらに皮下出血の症状が見られる。
しかし、一般には、時期を逸することなく病院に運ばれ、適確に診断される限り、デング熱は治療可能であると考えられている。科学者たちは本疾患が何世紀にわたって存在していたものと信じている。
爆発的流行は 1780 年にフィラデルフィアで起こっていたようである。
しかしデング熱はこの半世紀に、より頻繁に認められるようになり、伝染力も強くなってきている。1970 年には、この疾患の最も重篤な病態であるデング出血熱の流行があったのはわずかに9ヶ国だった。
しかし、1990 年代半ばまでにこの数は4倍となり、専門家たちは、なんらかの変化がこの疾患を航空旅行や国際貿易の時代に特異的に順応させているのだと言う。デング・ウィルスには4タイプがある。
それらの一つに感染した患者はそのタイプだけに免疫を発現すると信じられている。
そして、皮肉なことに、もしそこで二番目のタイプに曝されるとデング出血熱を発症しやすくなるという。人々が遠方へと航空機でウィルスを運ぶ時、これら4タイプは混合されてしまう。
これまでの出血熱の大流行は、特定の飛行路と通商航路に沿って発生していた。「我々がとってきた行動には、これらのウィルスが世界中に広まるための理想的な条件が提供されています」と40年近くデング熱を研究してきた Gubler 博士は言う。
第2次世界大戦中、東南アジアにデング熱の最初の拡大を起こさせたのは恐らく兵士であろう。
「イギリス、米国、オーストラリア、そして日本から兵士の移動がありました。兵士たちは町から町へと移動したわけです」と、本疾患の治療法についてのハンドブックを作成したデング熱研究の先駆者である Suchitra Nimmannitya 医師は言う。
この戦争のさ中、日本の科学者が最初にウィルスを分離し、米軍の医師 Albert Sabin 氏が区別されるウィルス・タイプがあることを発見した。
(Sabin 医師は引き続きポリオワクチンの開発に協力した)「デング熱はきわめてユニークです」と、以前 Centers for Disease Control and Prevention にいて、今は韓国に拠点を持つNPOである Pediatric Dengue Vaccine Initiative の責任者である Harold S Margolis 医師は言う。
「私は何年もの間、伝染病の仕事を多くしてきましたが、デング熱は恐らく最も複雑なものの一つです」ワクチンが4つのすべてのタイプのウィルスに対抗する必要があることからその開発は特に困難を極める。
「もしデングが単独のウィルスであれば、我々はすでに確実にワクチンを手に入れていたでしょう」と Sanofi の新ワクチンプログラムで研究と開発の責任者を努める Jean Lang 医師は言う。
Sanofi のデング・ワクチンは2、3ヶ月のうちにタイで 4,000 人の子供たちに臨床試験が行われる予定だが、本ワクチンは遺伝子工学を用いて作成された最初のワクチンの一つである。
これと同じような開発段階にあり、米国、プエルトリコ、タイにおいてボランティアで臨床試験をされた米軍のワクチンは伝統的手法である弱毒化ウィルスを用いて作成された。
これは何ヶ月かの間を空けて2、3回注射で投与する。営利目的の者もいれば、そうでない者もいるが、関係する多様な研究者たちのおかげで、成功の可能性が高まっており、このワクチンを途上国の人々が手に入れることになるだろうと専門家たちは言う。
「我々は常に研究開発ベースを広げるよう努力してきました」と、ジュネーブにあるWHOでワクチン研究を調整している Joachim Hombach 氏は言う。
「結局のところ、製品の価格を押し下げるのは競争なのです」
本疾患は対症療法が中心で、ウィルスを撃退する特別な治療法は
ない。
重症型のデング出血熱では、出血傾向と血管内から血漿成分の
漏出が顕著となる。
血漿漏出が高度の場合、循環血液量が不足し血圧が下がる
最重症型のデング・ショック症候群となり、
全身の循環不全をきたし死に至る。
記事にあるように、いまだワクチンが確立されていないため
予防は蚊に刺されないようにするしかない。
しかし、途上国の人々に早急な衛生改善を求めても
無理であることは自明だ。
こうした熱帯疾患に対する治療の開発が、
これまでは軍主体で行われてきたことは皮肉なことだ。
今、国家や企業、NPOなどが参画し始めていることは
明るい眺望と言えるかもしれない。
このデングをはじめ HIV など様々な病原体の脅威に
さらされ続けている途上国の子供たちの状況を、
どげんかせんといかん、と思うのだ(ばって、どげんもならん)。