遅ればせながら皆様、
新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて表題からお察しのように、
本エントリーは、『涙』のお話と下ネタで
新春第1号にはどうか、といった内容かもしれない。
しかし今日はすでに『成人の日』ということで
新成人の方々にも是非
『涙』の本当の意味を知っていただきたく
ご紹介した次第である(知ってどーなるの?)。
In Women’s Tears, a Chemical That Says, ‘Not Tonight, Dear’ 女性の涙に含まれる化学物質はこう告げている「今夜はダメよ」
By Pam Belluck
Man Ray 作“Larmes(ガラスの涙)”
実際の抱擁に近い状況にする目的で“本当に良い” 泣き手から集められた涙は男性の鼻の下に置かれたパッドに浸された。
私たちが泣く時、感情表現以上のことを行っているのかもしれない。驚くべき新しい研究によれば、私たちの涙は他の人たちの行動に影響を及ぼす化学的シグナルを送っている可能性があるという。
Science 誌に木曜日に発表された研究は何代にもわたって科学者を悩ませてきた事柄をようやく説明できるようにしてくれる可能性がある。つまり、他のすべての動物と違って人はなぜ感情的な涙を流すのだろうか?ということである。
いくつかの実験において、女性の感情的涙のしずくの臭いを嗅いだ男性は、女性の頬を流れた中性の食塩水の臭いを嗅いだ時よりも性的欲情が抑制されることがわかった。これらの研究は大規模なものではないが、今回の知見は、テストステロンのレベル、皮膚の反応(MrK註:皮膚温)、脳のイメージング、あるいは男性の性的興奮についての記述などさまざまな方法で明らかにされたものである。
「化学的シグナル伝達は言語の一型なのです」と、本研究者の一人でイスラエルにある Weizmann Institute の神経生物学教授 Noam Sobel 博士は言う。「基本的に私たちが発見したことは『ダメ』、もしくは少なくとも『後にして』に代わる化学的シグナル伝達の言葉なのです」
この研究者らは現在、男性の感情的涙については研究中であり、たとえば新しい下院議長John A Boehner 氏( MrK註:演説中泣きだすことで有名、『泣き虫ベイナー』として知られる)が涙を流すことの科学的意味などについてはいまだ不明である。しかし、男性の涙もまた化学的シグナルを送るものであり、おそらく他の男性たちの敵意を減ずるのに役立つのではないかと Sobel 博士は考えているという。
研究者らが容易に泣くことのできるボランティアを募集した時、涙を集める小瓶を楽に満たすことのできる“良い泣き手”となる男性を見つけることができなかったため今回の研究を女性で始めたのだと Sobel 博士は言う。幸いにも「今は男性の泣き手も確保しています」と、彼は言う。
今回の知見は、Roy Orbison(歌手)から Rolling Stones に至るまで昔からの泣かせる歌に隠れた意味を与える可能性があるだけでなく、神秘的なテーマへの突破口に向かう第一歩となり得るだろうと述べる専門家もいる。
涙の中の化学的シグナルの発見は「泣くことの新しい機能的役割」を示唆するものになると、フェロモンと行動についての研究で知られている University of Chicago の心理学教授 Martha K McClintock 氏は言う。「実際これによってシグナルが送られてくる可能性のある部位が広がることになります」
泣くことを研究しているバルチモア郡 University of Maryland の心理学者で神経科学者の Robert R Provine 氏は、今回の発見は実に重大な出来事であると言う。なぜなら、「感情的な涙は社会的種としての人間においてきわめて重要な進化的発達となっているからであり」また「これが新たな人間のフェロモンの証拠となるかもしれない」からである。
この結果が他の研究者によって再現され得るかどうか、どんな物質がこの化学信号を構成しているのか、また、これは鼻を介して感知されるのかそれとも別の手段で感知されるのか、など多くの疑問が残されている。
なぜ女性の涙が『今夜はダメなの』というメッセージを送るのかは不明である。情動ストレスで弱まった女性に向かう男性の攻撃性を減ずるために涙が分泌されるようになってきた可能性を示唆する専門家もいる。今回の一連の研究では攻撃性への影響を測定していないが、今後の研究では行われるだろうと Sobel 博士は言う。もうひとつの考えとして、ある程度涙の効果は月経周期と一致するように発現されるようになっているというものがある。
「女性は生理中により多く泣くといういくつかの証拠があり、生物学的観点からは、この期間中はセックスをするのにむしろ有意義ではないため、この間連れ合いの性的興奮を減じることは実に好都合なのです」と、彼は言う。
McClintock 博士は40年前、一緒に住んでいる女性は月経が同期化する傾向にあることを報告しているが、これには反対意見である。「何ですって?女性が生理中に泣きやすいですって?」と、彼女は言う。
涙の化学的シグナル伝達の「進化的機能について仮説を立てるのは時期尚早です」と彼女は言う。さらに、「彼らの報告のようにそれが性衝動に影響を与えることには疑いは持ちません。しかし、別の流れでその他の情動に全く影響を与えないということがあるとすれば、驚かないわけにはいきません。おそらく彼らが報告している効果を増強するもっと深い根本的な心理学的プロセスに影響が及んでいるものと思われます」
今回の研究者は、女性の涙が男性に対してまるで冷たいシャワーを浴びたかのように感じさせるという証拠を全く偶然に発見した。
そもそも彼らは、涙からの化学的シグナルが他人に悲しみや感情移入を惹起すると推測していた。しかし当初の実験では、女性の涙を嗅がせても男性の気分や感情移入への影響はみられなかった。「ところが、性的興奮に顕著な影響があったのです。驚きでした」と Sobel 博士は言う。
さらに厳密に調べることになり、研究者たちは容易に泣ける人を求めて数ヶ所のイスラエルの大学のキャンパスにビラを掲示した。その結果1人の男性と70人の女性が志願してきた。しかし、この70人の女性のうち、実際に涙一杯に大泣きをするのがうまくできたのはわずか6人だったと、Sobel 博士は言う。彼らは研究者らの『泣き手集団』となり、『補助の泣き手』の集団が予備として設けられた。
「私たちはせいぜい出てから2時間までの新鮮な涙を用いなければなりませんでした」と、Sobel 博士は言う。凍結されたものは使えなかった。そのため泣き手たちはその都度新たな必要量、毎回 1 ml を泣いてもらうため、頻回に招集された。20才代後半と30才代前半の女性たちには “ My Sister’s Keeper(私の中のあなた)” や “ When a Man Loves A Woman(男が女を愛するとき)” などの涙を誘うハリウッド映画や、イスラエル映画 “ Broken Wings ” からのシーンを観てもらったと、研究チームの大学院生 Yaara Yeshurun さんは言う。Yeshurun 女史自身も泣き手の一人であり、“Terms of Endearment(愛と追憶の日々)” を観て感情を抑えられなかった。
対照群として、女性の頬に食塩水をつたわらせそれらも小瓶に集められた。涙を流している女性を抱擁している状態に似せるため、涙と食塩水は男性の鼻の下に貼られたパッドに浸された。20才代後半の男性たちはそれがどちらなのかを知らされないままに、一日は涙を、もう一日は食塩水を嗅がされた。
一つの実験では、涙を嗅がせることで男性には写真の女性たちを性的に魅力のないものと評価する傾向がみられた。もう一つの実験では、悲しみの感情の状況を明確にするために、涙あるいは食塩水を嗅がされた後、男性たちは映画 “ The Champ (チャンプ)” からのシーンを観さされた。涙でも食塩水でも彼らは同じように悲しみを感じていたが、涙を嗅いだ者たちは性的興奮度が下がっており、テストステロンのレベルが低下していた。
最後に、研究者らは脳イメージングを行った。彼らは男性たちに “ 9 1/2 Weeks(ナイン・ハーフ)” のヨーロッパで上映された特にどぎついバージョンを観させた。Sobel 博士によれば、「それはとりわけ性的に興奮させるには有効なものだった」という。機能的 MRI によって、特定の脳の領域に男性の性的興奮が確認された。その後彼らは、涙あるいは食塩水を嗅がされ、悲しい映画を観さされた。涙を嗅いだ男性では性的興奮を示していた脳の領域の活動の低下が認められた。
この研究は Minerva Stiftung Foundation から資金提供されている。これはイスラエルとドイツの科学者が関係する研究を支援するドイツの団体で、しばしばドイツ政府からも資金が供与されている。
Sobel 博士は子供の涙についても研究する計画であるが、問題の物質はたんぱくあるいはステロイドであり、恐らく鼻から感知されるのであろうと述べている。彼はまた、動物の涙も化学的信号効果を持っているのではないかと考えている。メクラネズミが涙で顔を洗うとき、他のオスたちの攻撃性が減じていることを示した研究を引用する。
感情的な涙の化学的組成は、玉ねぎを剥くときのような反射的な涙とは異なっていることを示した生化学者 William H FreyⅡ氏は、「感情的涙の化学について何かを成そうとする者がいることを知りワクワクしています」と言う。彼は、泣くことがストレス関連毒素を排出することに関与しているという自身の説に今回の結果が適合している可能性があると言う。
しかし、セントポールにある Regions Hospital の Alzheimer’s Research Center 所長である Frey 博士は、なぜ性的抑制が起こるのかなどさらなる理解が必要であると指摘する。「進化の立場からは、泣いている連れ合いに向かう性的積極性の減弱は有利かもしれないが、もし女性の涙が攻撃者によってもたらされたならば、果たしてテストステロンの減った夫は彼の家族を守ることに多かれ少なかれ攻撃的になるのだろうか?」と、彼は言う。
Provine 博士によれば、今回の知見は、いたわりを誘い、敵意を弱める、などこれまで提唱されてきた涙の役割には矛盾していないという。さらに彼は次のように付け加えた。「涙に脱性的興奮作用があることは多くの男性にとって驚きではないでしょう。私自身、涙を誘う映画を観にいくと、何もしたくなくなってしまいます」
感情的涙の進化的起源が何であれ、彼の知見には現代的なロマンチックな妥当性がないことを主張することになってしまうと、Sobel 博士は述べている。「いかなる女性に対しても、メッセージを送るために泣くことを勧めようとしているのではありません」と彼は言う。「はっきりイヤと言うことの方がはるかにいいでしょう」
『女の涙には勝てないな』
『男は女の涙にゃ弱いからな~』
ドラマなどでよく耳にするこういったセリフには
ちゃんと科学的裏付けが存在していた?
涙はただ流すためにだけ分泌されているのではない。
その可能性が限りなく高くなったと言えそうである。
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