ツタンカーメン王は紀元前1300年代、
つまり今から3,300年以上も前の
古代エジプト第18代王朝のファラオである。
19才の若さで死亡したとされているが、
その死因には謎が多い。他殺説もある。
近年は骨折にマラリアを合併して死亡したとの説が
有力だったのだが…。
A new theory emerges about the mysterious death of Tutankhamen ツタンカーメンの謎の死について新たな説が浮上
あるイギリスの外科医はツタンカーメンの身体の特徴から、この少年王がまだ10代の若さで死亡した理由を説明できるかもしれないと主張するBy Jessica Hamzelou and New Scientist,
ツタンカーメン(Tutankhamen)の10代での死の謎がついに解明されるかもしれない。一方でエジプトの支配者の死を早めた病気が最古の一神教を起こすきっかけとなった可能性があると、彼の一族の歴史に対する新たな考察によって示唆されている。
ふんだんに装飾された墓がほとんど荒らされることのない状態で 1922年に発見されて以来、3,000年以上も昔のツタンカーメンの死因が激しい議論の的となってきた。殺人、ハンセン病、結核、マラリア、鎌状赤血球貧血、蛇咬傷のほか、この若い王が二輪戦車から転落し死んだとの説もある。
しかし、それらの説はすべて一つの重要な点を見落としている、そう医学史に関心を持つ Imperial College London の外科医 Hutan Ashrafian 氏は指摘する。ツタンカーメンは女性化した体型を持ち若死にしていたのだが、彼の先代の王たちもそうだった。
ツタンカーメンの叔父または兄の可能性があるファラオ Smenkhkare (スメンクケア)や、この少年王の父親と考えられている Akhenaten(アクエンアテン)の両人とも、異常に大きな胸と大きなお尻を持つ女性化した姿をしていた。アクエンアテンの前の二人のファラオ、Amenhotep Ⅲ(アメンホテプ3世)と Tuthmosis Ⅳ(トトモシス4世)も似たような体型をしていたようである。これらの王はすべて若いうちに奇妙な死に方をしていると Ashrafian 氏は言う。「たいへん多くの説がありますが、それらはそれぞれのファラオに個別に焦点を当てたものです」
それぞれのファラオがその先代の王より多少若い年齢で死亡していることを Ashrafian 氏は発見した。このことから遺伝性疾患が示唆される。個々に関連した歴史的事実にその疾患が何であったかのヒントがある。
「(5人の血縁関係にあるファラオのうち)2人に、彼らに備わった宗教的光景の話があるのは重要です」と Ashrafian 氏は言う。発作が脳の側頭葉に始まるタイプのてんかんの患者は、特に日光にさらされた後、幻覚や宗教的な光景を経験することが知られている。ファラオの家族に、遺伝するタイプの側頭葉てんかんがあった可能性があると彼は言う。
この診断はまた女性化した容姿も説明できる。側頭葉はホルモンの放出に関係する脳の領域と連絡しており、側頭葉てんかんでは性的発育に関与するホルモン値を変化することが知られている。これはファラオが大きな乳房を持つに至った事実を説明できる可能性がある。さらに、てんかん発作はツタンカーメンの足(MrK註:大腿骨とされている)の骨折の原因だったかもしれないと Ashrafian 氏は言う。
ギザの大スフィンクス近くにある碑文 Dream Stele には、トトモシス4世が晴天のひる日中、宗教的体験をしたと記録されている。しかしアクエンアテンによって経験された光景と比べ、彼のそれはつまらないものだった。アクエンアテンの場合、その光景により彼は、“sun-disk(太陽円盤)” または Aten と呼ばれていたさして重要ではなかった神の地位を最高の神へと引き上げることとなった。これにより、古代エジプトの多神教の伝統が廃され、記録上最古となる一神教と考えられるものが始まった。もし Ashrafian 氏の説が正しいなら、アクエンアテンの宗教体験やツタンカーメンの早逝は、ともに医学的疾患の結果ということになるのかもしれない。
「側頭葉てんかんの患者が日光に当たると、精神や宗教的熱情に対して同じような刺激を受けます」と Ashrafian 氏は言う。
「これは非常に興味深くもっともらしい説明です」と Ann Arbor にある University of Michigan の医学歴史家 Howard Markel 氏は言う。しかし、てんかんに対する確定的な遺伝子検査が存在しないことからこの説の証明はほとんど不可能であると彼はつけ加えた。
New York University、Langone Medical Center の神経内科医 Orrin Devinski 氏は、この説は推測の域を出ないと言う。
「アクエンアテンが宗教的信念を持つに至った正確な時期はそれほど明確に記録されていないし、突然の宗教的転向のほとんどのケースがてんかんによるものではありません」と彼は言う。「一神論は、てんかんのほかにも、双極性障害、統合失調症、あるいはキノコ毒中毒などに関連している可能性があります。この論文はこれらのいかなる説にも私を誘導するものではありません」
Markel 氏も同意見である:「果たしててんかん発作が一神論を導くものでしょうか?いい思い付きではありますが、果たしてどうでしょう」と彼は言う。「それは非常に興味深い説ではありますが、ただ言えることは確かな証拠はないということです」
興味深い話ではあるが、
早死に・女性化の家系、宗教的幻覚などを根拠に
側頭葉てんかんを一元的な要因とするのは
無理がありそうだ。
女性化した体型のミイラの原因は側頭葉てんかんではなく、
そこには何か隠された秘密があるのかもしれない。
また当時のファラオたちは
若年でもちゃんと子を成していた(ツタンカーメンにも
子女がいたとされている)ようなので
他に原因が存在する可能性がある。
ただ、当時は親近婚が一般的だったこともあり、
遺伝病が発現しやすかったのは間違いなさそうである。
いずれにしても3,000年以上も昔のことであり、
人々がどのような考えを持ち、どのように生活していたのか、
MrK には遠く想像が及ばないのである。
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