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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

アインシュタインは“脳”が違います

2012-12-01 16:08:33 | 科学

『アインシュタインは脳が違います』
広島弁で元カープの達っちゃんが機械的にしゃべる
コンビニのCMではない(ローカルですみません)。
独創的な発想を生む脳は、やはり『もの』が違うのか。
凡人との違いは一体何なのだろうか。

11月27日付 Washington Post 電子版

Einstein’s brain was unusual in several respects, rarely seen photos show アインシュタインの脳はいくつかの点で普通ではなかったことが、ほとんど見ることのできなかった写真で示される

Einsteinsbrain

(国立保健医学博物館)新しい研究で物理学者アインシュタインの死亡時に撮影された彼の脳が解析される。これらの画像はこれまで一度も公開されていなかった。

By Michael Balter | ScienceNOW,
 Albert Einstein(アルバート・アインシュタイン)は天才として広く認められているが、どのようにして彼はそうなったのだろうか?近代の物理学の基礎を形成した相対性理論やその他の見識を生み出すにはきわめて特殊な脳が必要であっただろうと多くの研究者らは考えてきた。
 アインシュタインの死後、研究のために保存されていた彼の脳の写真のうち新たに発見された14枚の研究で、実際に多くの点でその脳がきわめて特異であったと断定している。しかし、その脳の普通より多い脳溝や脳回がどのようにアインシュタインの驚くべき能力につながったかについては、研究者らによっていまだ厳密に解明されていない。
 アインシュタインの脳の話は、ノーベル賞を受賞したこの物理学者がニュージャージー州 Princeton で76才で死亡した1955年に始まった。彼の息子 Hans Albert 氏と彼の遺言執行人である Otto Nathan 氏が、検死病理学者の Thomas Harvey に科学的研究のために脳を保存する許可を与えた。
 Harvey 氏はその脳の写真を撮り、240のブロックに切り、樹脂様の物質の中に包埋した。さらに彼は顕微鏡的研究のためにそのブロックを2,000の薄片に切り、その後数年間にスライドと脳の写真を世界中の少なくとも18人の研究者に分配した。Harvey 氏が自身のために保管していたスライドは別にして、それらの標本が今どこにあるのか確かな人物はおらず、恐らくそれらの多くは研究者らが引退するか死亡したときに紛失した。
 数十年間で、これらの広く散らばった資料から生まれたのはわずかに6つの論文審査のある文献だけだった。これらの研究の中にはアインシュタインの脳に興味深い特徴を発見したものがあった。例えば、脳のある部位のニューロンの密度がより高かったり、ニューロンに対するグリア(ニューロンがインパルスを伝えるのを助ける細胞)の割合が通常より高かったのである。Tallahassee(タラハシー)市にある Florida State University の人類学者 Dean Falk 氏によって2009年に発表された研究を含む脳の肉眼的解剖の2つの研究では、物理学的問題を概念化する彼の類まれな能力に関連しているかもしれないアインシュタインの頭頂葉には脳溝や脳回のきわめて特異なパターンが見られることがわかった。
 しかし、このFalk 氏の研究は、2007年に死去した Harvey 氏から手に入れることできたわずかな写真をもとにしたものだった。2010年、Harvey 氏の相続人は、彼の資料のすべてを Silver Spring にある米軍 National Museum of Health and Medicine(国立保健医学博物館)に譲渡することに同意した。
 Brain 誌に11月16日に発表された今回の新しい研究のために、Falk 氏は、ニュージャージー州にある Robert Wood Johnson Medical School の神経学者 Frederick Lepore 氏、博物館館長の Adrianne Noe 氏らと協力してこれまで一度も公開されていなかった Harvey 氏のコレクションから14枚の脳全体の写真を解析した。さらにこの論文には、他の科学者たちが追跡調査を行うために使用できることを願って、それらの写真と彼らから用意された240のブロックおよび顕微鏡用のスライドとを関連づける Harvey 氏によって作られた“road map(手引き)”が盛り込まれている。
 このチームはアインシュタインの脳を、85名の別の人たちの脳と比較し、実際にこの偉大な物理学者が両耳の間に特殊な何かを持っていたことを発見した。その脳の大きさは平均的に過ぎなかったが、いくつかの領域では、他の人たちにはめったにみられない付加的な脳回や脳溝が備わっていた。たとえば、感覚入力や顔や舌の運動制御をつかさどる脳の左側の領域が正常よりはるかに大きいかった。さらに、計画、注意集中、および粘り強さに関連する前頭前皮質もまた非常に増大していた。
 前頭葉、頭頂葉、後頭葉など「それぞれの脳葉において、その脳回が並外れて複雑になっている領域があったのです」と、Falk 氏は言う。増大していた顔や舌に関連する領域に関して、このことは、しばしばアインシュタインの思考が言葉で行われるよりむしろ“筋肉的”なものであるという彼の有名な叙述に関係しているかもしれないと Falk 氏は考えている。
 このコメントは通常、宇宙について考えるときの彼の主観的体験の隠喩として解釈されているが、それは理論的概念化につながる「非凡なやり方で彼の運動皮質を用いていたのかもしれない」と Falk 氏は言う。
 Harvard Medical School の神経科学者 Albert Galaburda 氏は、「この論文の素晴らしいところはアインシュタインの脳の全体の解剖がきわめて綿密に書かれていることです」と言う。とはいえ、この研究は「私たちが説明できないきわめて重要な疑問」を提起していると Galaburda 氏は付け加える。それらの中には、アインシュタインを偉大な物理学者にならしめるような特殊な脳から彼が始まったのか、それとも、すぐれた物理学を遂行することが彼の脳の一定の部位を増大させることになったのかという問題がある。
 Galaburda 氏によると、アインシュタインの才能はおそらく「特殊な脳と、彼が生活してきた環境との組み合わせによるものだったのでしょう」という。
 今回の脳の特徴がアインシュタインに特有のものか、あるいは他の科学者にも見られるものなのかを知るために研究者らは今、アインシュタインの脳を、他の有能な物理学者のそれと比較することを試みようとしていると、彼は言う。
 Falk 氏も、おそらく生まれと育ちの両方が関与していることに同意見で、アインシュタインの両親が“実に子育てに優れており”、科学においてだけでなく音楽においても、負けず嫌いで創造的であるように育てたと指摘する。(音楽的才能に関連する脳の領域もアインシュタインの脳で高度に発達していたことが Falk 氏の2009年の研究で明らかにされている)
 「アインシュタインは自身の脳をプログラムしていたのです」と Falk 氏は言い、こう付け加えた。「物理学において新しい知見の機が熟したとき、「彼は適切な時に、適切な場所で、適切な脳を持っていたのです」
(この記事は Science 誌のデイリー・オンラインサービスである ScienceNOW に掲載されたものである)

腹部大動脈瘤のために76才で死亡したアインシュタインは
数奇な人生を送っている。
幼少時は話し始めるのが遅く、読字障害もあったと
言われているが科学への目覚めは早かった。
9才でピタゴラスの定理を自力で証明し、
12才で微積分学を独学で習得。
学生時代は学校をさぼることも多く決して成績は
良くなかった。
1905年、憑りつかれたようにきわめて重要な
論文を立て続けに5本発表。
その後一般相対性理論を確立し
1921年ノーベル物理学賞を受賞したが、
当時は批判も多かったようである。
ナチに追われ、1935年アメリカ国籍を取得。
彼の理論に基づいて原子爆弾が製造されたが、
彼自身が製造に関与したことはなく、
広島・長崎に投下されたことには深く心を痛めたという。
彼のあとにもすばらしい頭脳を持った学者が
続々と現れてはいると思われるが、
アインシュタインほどの科学者には
当分お目にかかることはできないかもしれない。

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青年よ、風変わりであれ!

2012-10-12 23:28:54 | 科学

今回の山中伸弥氏のノーベル医学生理学賞受賞は
私たち日本人にとって実に喜ばしいことである。
iPS 細胞(人工多能性幹細胞)の開発が
今後の医学の発展において
計り知れない原動力となるであろうことは間違いない。
ところで、同賞のもう一人の受賞者、
ハリーポッターに出てくる魔法使いの先生のような風貌で
キテレツな髪型の(失礼!)、Gurdon(ガードン)先生は
一体何をなさったのであろうか。
一応チェックしておこう。

10月8日付 Washington Post 電子版

Nobel Prize for medicine awarded to Gurdon, Yamanaka for stem cell discoveries ノーベル医学賞は幹細胞の発見で Gurdon 氏と Yamanaka 氏に

Yamanaka_2
2008年9月1日に撮影された京都大学再生医科学研究所の日本人科学者 Shinya Yamanaka(山中伸弥)氏

By Brian Vastag,
 10月8日、2012年のノーベル医学生理学賞は、動物の発生に対し深い洞察を加えオーダーメイド医療の新時代に希望を提供することになった、両者にほぼ50年間の隔たりがある研究で、イギリスの科学者 John Gurdon(ジョン・ガードン)氏と日本の Yamanaka Shinya(山中伸弥)氏の受賞が決まった。
 「彼らの発見は、細胞や器官がどのように成長するかについての私たちの理解に革命をもたらした」と、授賞発表でノーベル賞選考委員が述べている。
 1962年、Gurdon 氏は巧妙な技術によってカエルのクローンを作ることで生物学の世界を驚かせた。彼は、あるカエルの小腸の細胞からの遺伝物質を別のカエルの卵細胞に移植した。その卵がオタマジャクシとなったことで、通常の細胞に生命体全体のあらゆる遺伝的指令マニュアルが含まれていることを明らかにした。
 他の科学者たちがその妥当性を容認するのに時間を要したこの実験は1997年の最初の哺乳類のクローニングである羊の Dolly につながった。それ以来、科学者たちはマウス、犬、猫、豚、馬、および牛のクローンを作ってきたが猿のクローンを作る試みは、ヒトの胎児のクローンを生み出す試みと同じ様に何度も失敗に終わっている。現在マウスのクローンが研究室の中心となっている。
 Cambridge University の名誉教授である 79 才の Gurdon 氏は、今でも彼の名がつけられた施設で研究を行っており、1995年には発生学の業績でナイト爵に叙せられた。半世紀前の彼のカエルの実験は次のことを明らかにした。「あらゆる種類の細胞はすべて同じ遺伝子を持っているため、ある種の細胞は別の細胞から導くことができるはずである」と、8日のロンドンでの記者会見で Gurdon 氏は述べた。
 2006年と2007年、Yamanaka 氏はマウスとヒトのそれぞれの細胞で時間を戻すことによってこの見識を発展させた。Yamanaka 氏は普通の皮膚細胞に4つの遺伝子を導入することで、実質的に不老の泉を見つけ出したのである。いかなる細胞も胚形成の初期段階に戻すことが可能であることを彼は発見した。
 これらの“人工的”胚細胞は、倫理上議論の多いヒトの胎芽から集められた幹細胞ときわめてよく似た機能を持つ。胎芽細胞と同じように他の多くのタイプの組織に分化し得る一方、胎芽を全く壊す必要がない。
 この大発見によって、いつの日か患者から皮膚細胞を採取し、しかるべき時にそれを胚形成段階に戻し、心筋や神経細胞などの代替組織に分化させることができるという希望がもたらされた。
 多能性幹細胞と呼ばれているそれらを、心疾患、失明性疾患、パーキンソン病、および他の多くの疾患の治療に発展させるために莫大な世界的研究努力が行われている。
 この技術で作られた細胞はその患者と遺伝的に同一であることから、「いつの日か拒絶反応を起こさない組織の移植を可能にするかもしれない」と Harvard Stem Cell Institute の所長で、アメリカの幹細胞研究の第一人者である George Daley 氏は言う。
 Yamanaka 氏の業績は「世界中の数百の研究室に広がっており、ほとんどすべての種類の疾患を研究するためにこの技術が用いられています。その影響はどれだけ誇張してもし過ぎることはありません」と Daley 氏は言う。
 すでに、科学者たちによって、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病の患者から作られた“シャーレの中の疾病”を研究するのに、そういった形質転換した細胞が用いられている。さらに研究チームは皮膚細胞を直接、筋線維や脳のニューロンに直接変換する手っ取り早い方法も見つけ出している。
 人工幹細胞治療のヒトでの最初の臨床試験は来年からの開始が可能となったと 8日の記者会見で Yamanaka 氏は述べた。彼によると、これら3つの疾患は最初の試験の格好のターゲットとなるという。
 8日、Yamanaka 氏は自身の前進を可能にしてくれたのは同時受賞者のおかげであると述べた。「この分野は John Gurdon 氏とともに始まった長い歴史があります」ノーベル賞のウェブサイトに載せられた短い電話インタビューで彼は述べている。Yamanaka 氏は1962年生まれだというが、これは Gurdon 氏は自身の重要なカエルの実験を発表したまさに同じ年である。
 現在、日本の京都大学とサンフランシスコにある Gladstone Institute の2ヶ所に籍を置く Yamanaka 氏はかつて外科医としての訓練を受けたことがあり、患者を治療することが常に彼の目的だと述べている。「生涯の私の目標はこの幹細胞技術を、臨床に、そして患者に応用することです」
 しかし、人工幹細胞の治療応用の可能性には問題が残る。この細胞が腫瘍を形成する可能性がいくつかの研究で示されており、そのことで、身体の特異的な細胞が機能を失う心臓疾患、パーキンソン病、および他の多くの疾病を治療するのに絶対的に安全かということに対する懐疑的な考えがもたらされている。
 しかし、ノーベル委員会は次のように語っている。「両者の画期的な発見は、これまでの私たちの発生や細胞分化に対する考え方を完全に覆した。教科書は書き直され、新しい研究分野が確立された。ヒトの細胞をリプログラムし直すことで、疾患を研究し診断や治療の手段を開発する新たなチャンスが科学者たちによって生み出されている」

Gurdon 博士のカエルの実験は
彼の大学院生時代に行われたという。
あのユニークな髪型ばかりに目がいってしまうが、
実は相当偉大な生物学者なのである。
ノーベル賞をもらうには、
やはり普通の人が考えつかないような発想を
持たなければだめなのでしょうね。

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意識と無意識の境界

2012-04-24 00:03:10 | 科学

4月12日、京都祇園で起こった
痛ましい軽ワゴン車の暴走事件…
結局、死亡した運転手に意識はあったのかなかったのか?
障害物を視認し、
それに応じてハンドル操作を行うことができていれば、
意識はあったと見るべきなのか?…
しかしそういった操作はいわゆる原始脳だけでも
行える可能性がある。ひょっとしたら無意識下でも…

そもそも意識を失うとはどういうことか?
それは意識がなくなること…。
それなら、意識とは一体なんぞや?
「意識しているとき自明的に存在了解される何かである」
なんのこっちゃ?
自然科学の発達した現代においても、
意識・無意識を明確に定義することは困難である。
一見意識がないようでも意識のあることがあり、
意識があるようでも
実は意識が起動されていない可能性もある。
最新の手法を用いればその境界の解明は果たして可能か?

4月17日付 New York Times 電子版

SIDE EFFECTS(意外な結果)
Awake or Knocked Out? The Line Gets Blurrier 覚醒状態、それとも意識喪失状態?その境界はさらに不鮮明に
By JAMES GORMAN
 意識のパズルはあまりにも難しく、それについていかに語るべきか科学者や哲学者らの議論は続いている。

Awakeorknockedout
麻酔からの意識の回復には比較的新しい新皮質ではなく、ずっと昔に進化した脳の古い構造が関係していることが PET で示されている。側面および水平像で、MRIの断面と重ねると(ⅰ)全帯状回、(ⅱ)視床、および(ⅲ)脳幹に活性化が認められる
 一つの問題として、この意識という言葉には一つの意味以上があるということがある。自己認識や自意識の本質を理解しようとすれば、いわゆるウサギの穴にはまってしまう。しかし、もし問題を、意識があることと意識がないことの間に見られる脳活動の違いに限定した場合はどうなるだろうか?
 科学者や医師は人の意識を失わせる方法を確かに知っている。カリフォルニア州 Irvine にある University of California の Michael T. Alkire 氏は2008年に Science の論文で次のように表現している。「意識が脳の中でどのように生じているのかは依然わからない。しかし、ほぼ2世紀の間、我々の無知が、ごく普通に手術中に意識を失わせるための全身麻酔の使用を妨げることはなかった」と彼は書いている。そしてそれはそれで良かったことでもある。
 哲学者たちが“むずかしい問題”と呼んできたもの(つまり自己認識)はさておいて、1846年に手術のために患者を管理するために使われる言葉となって以来、覚醒している、あるいは意識があることと、意識がないことの間の境界について多くのことが明らかにされてきた。研究者らは、人の意識が遠のいたり意識を失う時に脳に起こっていること、どの部分が活性化しどの部分が停止するのか、を見る道具として、麻酔を用い、最近では脳検査を組み合わせてきた。
 たとえば、最近の研究(被験者はすべて右利きの男性)では、脳の高次領域がまだ活性化していないときに目を開けるといった簡単な命令に応じられることが研究者によって示された。この所見は麻酔の影響をどう評価すべきかを決定するのに有用かもしれない。また、脳内で何が起こっているかの知見に重要なデータを補足するものである。
 これまでの研究と同じように、フィンランド University of Turku の Harry Scheinin 氏と Jaakko W. Langsjo 氏を中心とする研究者らは、視床をはじめとする脳幹や脳のその他の原始的な領域が最初に覚醒することを示した。すべての複雑な思考が行われる領域である新皮質は遅れて覚醒する。
 意識は作動中または停止中といったような単純な状態ではないこともこれまでの研究で示唆されている。段階的な変化があるということだ。反応しないことと、意識のないこととの間の違いのように、一見して明確ではない差異が存在する。たとえば、2006年、イギリスの Cambridge University の Adrian M. Owen 氏は、植物状態と思われる患者に、テニスをすることや、他の運動を想像するように命じたところ、彼女の脳内で意識的活動の徴候が認められたことを Science 誌に報告した。
 この知見は、同じような状態の患者に対する治療法をめぐって議論を巻き起こすことになった。それは植物状態にあるフロリダ州の女性 Terri Schiavo の栄養チューブの抜去をめぐる法廷闘争の直後のことだったからである。結局裁判に勝利した彼女の夫は、彼女は過度の措置を続けることを望んでいなかっただろうと主張したのである。
 麻酔を用いた研究では、手術中に用いられる薬剤の弛緩作用は一側の前腕から解けることから、その患者との疎通する試みが行われた。Alkire 博士は次のように記している。「全身麻酔下にある患者はしばしば手の合図を用いて会話を図ることができるのだが、術後には彼らは覚醒していたことを否定する。このように後ろ向きの忘却は無意識の証拠とはならないのである」
 Alkire 博士を含めた Scheinin、Langsjo 両博士らのグループによる最近の研究では意識の証拠を探求した。この研究者らは、マイケル・ジャクソンの死の原因となった propofol(プロポフォール)と、異なる麻酔薬 dexmedetomidine(デキスメデトミジン:α2アドレナリン受容体作動薬)の2つの薬剤を組み合わせて脳画像検査を行った。
 意識のない状態の標準的な評価は、被験者あるいは患者が命令に応じないということである。その基準によれば、被験者が反応すれば彼は意識があるということになる。Dexmedetomidine が理想的な薬剤とされているのは、たとえ、本麻酔薬の通常量が投与された状態であっても、完全に意識を失くしている人が軽度の揺さぶりや声かけによって容易に無意識の状態から覚醒しうることによる。
 Scheinin 博士の研究では、この薬剤が効いている意識のない被験者に目を空けるように命じると、彼らは反応したという。その後、彼らのほとんどは、脳の新皮質が活性化することなく、外見的に無意識の状態に戻って行った。脳幹、視床、および皮質の一部だけが活性化していたのである。
 一方、propofol が投与されている被験者は目が覚めなかったが、本薬剤の投与が中止されると、彼らの覚醒のパターンは他のデータと合致していた。
 疑問は残る。新皮質の働いていない状態ではどの程度のレベルの意識が存在するのだろうか?このことは、より原始的な脳の領域だけで被験者が起こっていることを理解できることを意味するのだろうか?
 そして、広い見方をするならば、Alkire 博士が書いていた例の記憶の問題もある。もし患者が手術中意識はあるものの、それを何も覚えていないのだとしたらそれで十分と言えるのか?それは、誰も聞くことのない状態で森の中で木が倒れるようなものかもしれない。麻酔科医のkoan(公案:悟りを開くための課題、禅問答)である。その患者に手術の記憶が全くなかったとしても、彼はそれに気付いていたのでは?
 そしてたぶん我々にはわかりっこないだろう。

結局、ますます混沌としてしまいましたね。
(訳し方が悪いのか…)
ま、この問題は
またの機会にあらためて考えることにいたしましょう。

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美女ロボットの役割って?

2012-04-03 21:25:21 | 科学

日本のロボット工学は今も世界の最先端?

3月30日付 Time.com

Watch: Woman or Machine? Sophisticated Japanese She-Bot Blurs the Line
At Hong Kong's "Robots in Motion 2012" Expo, one of the world's most sophisticated (and beautiful) robots came to life  
注目:女性?、それとも機械?最先端の日本製 She-Bot はその区別を曖昧にする
香港での“Robots in Motion 2012”Expo(全互動機械人大博覧2012)で、世界で最新の(そして美しい)ロボットの一つが本領を発揮
By Kate Springer

Womanormachine_2
写真うつりのよいGeminoid F(ジェミノイド F)が写真のためにポーズをとる(香港のシティプラザ・モールにて)

 ロボットが商売をしたり、工場で働いたり、寿司を作ったり、オフィスの床に掃除機をかけたりする世界を想像していただきたい。それは遠い未来のことではないかもしれない。日本では、ロボットはすでにありふれた備品となっており、最新の試作品は、人と機械を区別するラインにずっと近づいてきている。今週、女性のアンドロイド(人造人間)Geminoid F は、香港への初めての訪問で、話しをし、歌い、畏敬の念を抱いた群衆が写真を撮ろうとすると微笑み返したりした。彼女の製作者で、日本のロボット工学の第一人者 Hiroshi Ishiguro(石黒浩)氏は、彼女に組み込まれたコンピューターに65の動作をプログラムし、彼女を世界で最も知的能力を持ったロボットの1つに仕立て上げた。
 Ishiguro 氏が前回、2006年にアンドロイドの自身の複製 Geminoid HI-1 を作ったとき国際的見出しを飾っている。彼の先駆的な仕事に対して、CNN は彼を“あなたの生活を変える天才”8人のうちの1人と称し、BBC は2008年のドキュメンタリー Man-Machine で彼の物語を記録に留めた。彼の命名による F というこの新しいロボットは、彼の過去の創造物に比べて、さらにエレガントで、親しみやすいものになっていると Ishiguro 氏は言う。
 Ishiguro 氏の複製と F との最大の違いは、動作を制御する作動装置(アクチュエータ)、すなわちモーター様の機械の数である。Germinoid HI-1 は約50を有しているが、F はわずかに12となっている。これによって費用は100万ドル以上だったものが11万ドルまで下げることができ、これによりこの製品の普及が進むことに Ishiguro 氏は期待している。ロボットに組み込まれたコンピューターでの電気的信号を用いて科学者たちは人間と同じような動作をシミュレートすることが可能となっている。ロボットのそっくりさんは微笑んだり顔をしかめたり、眉間にしわを寄せたりできるが、大抵の場合、シリコン製の皮膚を持つクローンは少しボーっとした感じに見える。
 F はすでに精力的に働いている。昨年東京アートフェスティバルでステージの上に立ったとき、短い演技の仕事をこなしており、最近では東京のデパートのウィンドウ展示の一部として衣装のモデルを務めている。もちろん、ロボットが主流になってきたとき人々がそれらをどのように使うようになるかを予測することは不可能だが、F の実用的な応用範囲は限りないものとなると Ishiguro 氏は言う。彼女はマネキンとして、代用教員として、あるいはホステスとして用いることができる。「人がロボットを使うであろう手段のすべてを予測することはできません」と Ishiguro 氏は言う。「私たちはテクノロジーを提供しますが、その活用法までは管理しません」
 ロボットは究極的には私たちの友人、親しい仲間となるのだろうか?Ishiguro 氏はそうなると踏んでいる。正当なテクノロジーを持ってすれば、人と同じように思考し、行動し、反応するアンドロイドを作ることができると彼は言う。「人間とは何でしょう?」と彼は問う。「どうぞ決めて下さい。そうすれば私たちはコピーを作りましょう」

記事に出てくる Hiroshi Ishiguro 氏は
大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻の
石黒浩教授である。
ジェミノイド F の詳細は
以下の記事(すでに2年前だが)を参考に
していただきたい。
http://robo-labo.jp/modules/d3blog3/details.php?bid=51
モデルは実在の20才代ロシア人のクオーターだそうである。
離れたところにいる操作者がカメラとヘッドホンを通じて
見聞きしながら話をし、ロボットのスピーカーを通じて
音声が発せられる。
操作者の口の開き具合や頸の動きをセンサーが捉え、
瞬時にロボットに同じ動きを伝えるという。
またロボットには笑い、悲しみ、怒り、驚きの4つのパターンの
表情を表出することが可能となっている。
様々な活用法が検討されているが、その一つに陪席人としての
役割に期待が集まっている。
患者が医師から説明を受ける際に看護師などのジェミノイドが
そばにいることで安心感が得られ、
説明に対する理解度が増すという。
また慢性疼痛の治療に際しては、
ジェミノイドが患者に共感することで
痛みを和らげる効果が期待できるそうである。。
そのほか、1人暮らしの高齢者の家にジェミノイドを置いておき
子供たちや友人が入り込んで話しかけることでメンタルケアを
図ることも可能である。
また教育の現場への応用も検討されている。
というわけで、ちょっと人間の責任放棄的な感じもするが
集客施設やエンターテインメントだけでなく、
医療・教育・研究など幅広い分野での活躍が
大いに期待されているということである。

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脳全体がイク~

2011-12-06 20:41:13 | 科学

女性のイク~(英語ではcoming~)の時、
脳では一体何が起こっているのか?
そんな研究が行われているらしい。

12月1日付 Time.com

First 3D Movie of Orgasm in the Female Brain 世界初、女性の脳におけるオーガズムの3D映像
By Maia Szalavitz

<object width="373" height="272" id="FiveminPlayer" classid="clsid:d27cdb6e-ae6d-11cf-96b8-444553540000" style="width: 373px; height: 272px;"> <param name="allowfullscreen" value="true" /> <param name="allowScriptAccess" value="always" /> <param name="movie" value="http://embed.5min.com/517206892/" /> <param name="wmode" value="opaque" /></object>

 今、オーガズムが生じている瞬間が脳の3Dビデオで映像化されている。そして、科学の歴史上おそらく初めて、女性が男性の先を行った。
 最近 Washington, D.C. で行われた Society for Neuroscience の会合で発表されたこのビデオは、性的絶頂に上りつめる過程において女性の脳の各領域が活性化される詳細な状態を初めて見るものである。ただしこの発見はまだ公表の審査を受けていない。
 これはばかげた研究のように見えるかも知れないが、実際には、脳が最高の快感をどのように経験するかということは、中毒や抑うつと並んで欲望や意欲がうまく調節できないような状況の根底にあるものの解明にとってきわめて重要かもしれない。
 筆頭研究者で Rutgers University の心理学教授 Barry Komisaruk 氏は、機能的MRIの全く非性的な雰囲気の中でマスターベーションによってオーガズムに達することのできる数人の女性において脳の活動を画像化した。(オーガズムは指による刺激、あるいはルーサイト棒製の “非電動人工ペニス” を用いて得られた:バイブレーターは金属製のため磁場スキャンに持ち込めなかった)
 Komisaruk 氏は脳の80ヶ所以上の領域で活性化したことを発見した。それには前頭前野皮質が含まれていたが、この領域は高次思考に関係しており、より以前のオランダの研究者たちによる女性のオーガズムの画像化では活動しないことが発見されている。「その文献とは明確な矛盾があります」と、Komisaruk 氏は言う。「オランダのそのグループは、前頭葉皮質はオーガズムの間、活動性は低下するとしていますが、私たちはそこが活性化することを確認しています」
 それはスキャンのテクニックの違いによる可能性があると、Komisaruk 氏は言う。あるいは、さらに興味深い理由として、オランダの研究では性的刺激が自分自身でなくその女性それぞれのパートナーによって行われたという事実が挙げられるかもしれない。「それによって異なった結果になった可能性があります。なぜなら、自分自身でオーガズムを引き起こす女性は、前頭前野皮質に特徴的な実行調節を引き起こしているのに対し、パートナーによって誘発される刺激においては、女性はパートナーに身を委ねており、そのことがその活動性の低下の原因になっているのかもしれません」そう彼は説明する。
 一連の脳活動そのものが示されている。まず最初に、性器に対応する脳の感覚領域に活性化が認められるがそのことに不思議はない。Komisaruk 氏のグループによる以前の研究では、乳頭部の刺激でもこの感覚領域を興奮させることが示されており、なぜそれが性欲を掻き立てるものとなりうるかが説明できる。
 次に、島と呼ばれる領域が活性化する。「島はオーガズム中に活動するだけでなく、痛みに対する反応においても活動します」と Komisaruk 氏は言うが、“活性化”は様々な脳細胞における様々な状況を意味している可能性があることから、脳イメージングは解釈が難しいと説明する。もし抑制ニューロンが活性化した場合、これによって実際には他のニューロンの信号は弱まり、処理は進むのではなく阻害されることを意味することになる。「我々は、オーガズムと痛みとの間に抑制的な強い相互作用があることを確認しています」と彼は言う。「オーガズムの最中には、女性は痛みに対してはるかに鈍感となっています」
 オーガズム中の表情(いわゆる“O face”=イク時の顔)は、痛みでもたらされる表情としばしば判別不能であると Komisaruk 氏は言うが、これは島の活動で説明される可能性があることを示唆する。
 続いて、島と関連を持つ領域である前帯状回が興奮し、活動は扁桃体に移行する。扁桃体は恐怖に関連する情報を処理することで最も知られているが、ここは実際にはすべてのタイプの情動に関与しており、オーガズム中に通常経験される強度の陽性の感情をもたらしている可能性がある。
 活動性は次に海馬で認められるが、ここは記憶をする箇所であり、性的空想や、経験の記録、あるいはその両者に関与している可能性がある。海馬はまた一度に多くの脳の領域を活性化することが可能であり、オーガズム、てんかん発作の両者における役割の根底をなしているかも知れない。
 Komisaruk 氏は海馬の次に、立案、抽象的思考、行動制御に関係する領域である前頭前皮質に活性化を認めた。彼は、研究によってこの領域に活性化を見たり、見なかったりするのはなぜかという問題が解決できるか否かを調べるために、パートナーによってもたらされたオーガズムと、自慰によるオーガズムとを比較する研究を現在行っている。
 この皮質に続いて、活性化はオーガズム中に生ずる運動や筋緊張に関係する領域を通過する。続いて視床下部につながった。この領域はオキシトシンを分泌するが、これは、社会的および情動的な結合・関係に関連していることがよく知られている“愛のホルモン”である。
 最後に、オーガズムの至高体験として、脳の“快楽中枢”にスイッチが入る。これは恐らく高度に活性化した側坐核におけるドパミンの放出を意味する。
 そしてそれから脳は静まって行く。

感心させられるのは
この実験に参加したという数名のボランティアの女性たち。
MRIの部屋の中に1人とはいえ、撮影技師らの環視下で
自慰によってオーガズムに達する瞬間を検査とは…
しかもMRIだからあの瞬間も頭を動かしてはならないわけで。
いやはや欧米研究者たちの探求心・執念や恐るべしっ!
一方、人間を含めた動物たちに備わった、
子孫を残すための脳の精巧なシステムにも
改めて驚かされるのである。

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