ほなさんの汗かき日記

かくれ肥満の解消に50歳を超えてはじめた健康徒歩ゴルフ。登場する個人名、会社名、内容はフィクションである。

ある日の母

2016年07月18日 | 日記
母の使用している歩行器が、合わなくなってきて
いる。出がけに施設長さんが、これもっていく?
と歩行器を指差してくれたのだが、いや大丈夫と
断ってきた。

この日眼科検診に行って、検査につきあってみる
と、左目の検査値が計れないので、若い担当者が
困っていた。3度失敗して、先輩女性から、
「仕方ないからそのまま報告するように。」
と目で合図され、やっと検査は終わったけど、こ
の日はたっぷり2時間以上かかった。

母もつきそいのほなさんも疲れたビー。

球体の中で、順にあちこちで光を発して、それが
わかればボタンを押すことになっていたのに、母
は、正面で光ってもボタンを押すことは無かった。
左目はまったく見えていない、ということだけは、
素人のほなさんにも理解できた。

主治医から検査結果の説明をうけに、先生の部屋
にはいる。いつもの男先生が変わることは知って
いたが、若い女医さんとは知らなかった。

「あまり前回と進んでいませんが、見えなくなる
 ことを遅らせるだけなので、この先、右目も
 見えなくなることを避けるために、’手術’と
 いう選択肢も可能ですが、、。」
と説明してくれました。

あれ?
前の男先生は、一度も’手術’のことなど口にし
なかったのになぁ、、、。

ほんの少し考えて、ほなさんは、
「先生、手術は考えておりません。」
と答えた。息子が一方的に返事した言葉に、母の
反応が気になったが、母は何事もなかったように
じっとしていた。

隣の薬局へ寄り、待合のテーブルに置いてある
お菓子を
「どれでも食べていいから、」
と母に勧めた。

「これ、お金払わんでもええの?」
「うん、ええよ。」
安心したように、クリームたっぷりのビスケット
を頬張り、
「おいしいわぁ。こんなん食べたのはじめて。」
とボリボリやっている。そういえば、今日はホーム
で三時のおやつを返上して検診にきたのだった。

そのうえ3時間近くここまでかかり、体力を使い果
たし、今日はかわいそうなことをさせた。
「もうひとつ食べても、ええ?」
と遠慮がちにいう母に、
「ええよ。良かったなぁ、母ちゃん。」
とほなさんは、母の痩せ細った骨ばった背中をさすり
つつ言った。

いつからか背中をさすると涙が出る。どうしたわけだ
ろう。
こんなことしか、ほなさんにはできん。

手術もしたらええのかもしれんし、勝手にきめてしま
うことへの責任も重大ではあるが、93歳の老婆に痛
い思いや不安を与えたくない。
コメント
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