ほなさんの汗かき日記

かくれ肥満の解消に50歳を超えてはじめた健康徒歩ゴルフ。登場する個人名、会社名、内容はフィクションである。

一難去ってまた、、(3)

2009年09月27日 | 日記
金を貸したか、保証人になったか、どういうこ
とから、そうなってしまったのか、ほなさんは
壮絶な話をそれ以上聴いてはいけないと思った。

かの紳士の話は、ここ数年のことだった。
諦めのついた話し方はしてくれてはいるが、退
職金に相当する金額となれば、人生設計が大き
く狂う。いや、設計変更で済む程度で収まるこ
とはなかったろう。

これが30歳や40歳の時なら、挽回のしよう
もある。だが、定年でリタイアしてからでは、
あまりに酷過ぎる。若かりし頃からの汗の結晶
が消えたのだ。
そう思うと、ほなさんは一言も言えないのだっ
た。

かの紳士の場合、それでもなおゴルフができる
環境にあるだけ恵まれているが、分別のつく歳
になってからの躓きへのショックは大きいかっ
たにちがいない。心からご同情申し上げる。

子育てが終わり、これで一息つくことができる
年齢になると、多くの人は「退職」の季節を迎
える。ほなさんのような自営業でも、退職金は
無いだけで、似たりよったりのことになる。

かの紳士は、やっと一息つける、そう思った瞬
間、足元をすくわれたのだ。世の中には、そう
いう隙を狙う悪党がいるし、悪党ばかりじゃな
く、せっかく買った土地や家が半値八掛けに下
がり、処分しても銀行ローンだけが残る計算に
なる人も多い。

人生とはきびしいなぁ。ほなさんらもその只中
にいて、それぞれの直面している問題とダブっ
てみえる。彼だけに起こり得ることではない、
それだけは事実のようだ。

「人生の大波をやっと越えたと思ったら、その
 先にもっと高く大きな波が、こちらへ押し寄
 せようとしているのが見える---それが人生」
と恩師は言った。

いつになったら一息つけるのか、という問いに、
神は人間には死ぬまで安息の場を与えなかった
のかもしれない、と思った。

打ち上げの4番ホールで使った7番アイアンの
感触が、この日ばかりは、ほなさんの手にも、
記憶にも残らなかった。
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一難さってまた、、(2)

2009年09月27日 | 日記
営業職だった彼は、仕事上の仲間も多くいた
が、ゴルフで知り合った友達は、過去の友人
たちと異なっていた。
「仕事仲間はしょせん仕事なんだ。」
と50歳を過ぎて悟ったというのだ。彼はそ
れに気付いて以来、真剣にゴルフをやるよう
になった。

この紳士、穏やかな表情とは異なり、ぽつり
ぽつり話す内容が、人生の核心をついている。

4番の打ち上げホールにつくと、前の若者達
がグリーン周りでワアワアと声をあげていた。
4番ホールは難しいホールなのだ。急な打ち
上げで風になびく旗の頭だけしかみえない。
グリーンは小さく、そのアンジュレーション
はきつい。しかもグリーンの左右はバンカー
が待っていた。
ほなさんの腕なら、ダブルボギー(+2打)に
ならないことを祈るホールだから、ビギナー
の若者たちの手にあまるはずだ。

かの紳士は、
「ほなさんから私は見れば、リタイア後の人生
 を悠々と過ごしているように思うかもしれな
 いが、そうではないのだ。」
と、さっきまで、今週はあと二日コースへ出る
楽しい話をしていたのに、急に憂鬱そうに言っ
た。

以下、こんなやりとりが続いた。

「リタイアしてから、信じていた人に騙されて
 ね。」
「え?お金をとられたんですか?」
「裁判して勝ったんだけど、、なあ、、。」
「持ってない人からは、裁判所も取れないでし
 ょう。」
「そうなんだ。でも金額が大きくて。」
こういったあと、彼は深い息をフーッと吐き出
した。

先を見ると、若者達がやっと終わったと旗を立て
た。
彼は8番アイアンを抜き、二度三度と素振りした
後、ほなさんの顔をみて、
「やられた金額が、退職金の額ぐらいだったん
 だ。大金だった、、、。」
と言い、何事もなかったようにアドレスして、ス
イングした。
球は乾いた音を残し、4番ホールの旗めがけて
飛んでいった。

ほなさんは、何も言えなかった。ただ球を見送
るだけのことだった。
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