藤沢 周平著 文春文庫 2007年1月 第35刷
時代物短編集である。次の8編が納めてある。
鬼ごっこ、雪間草、寒い灯、疑惑、旅の誘い、冬の日、悪癖、花のあと。
町人ものと武家ものが多いが、唯一つ”旅の誘い”は、
広重のことを書いた芸術ものである。
この短編集いおいても、各編のフィナーレは、ほのぼのとした暖かい雰囲気を持つ。
読後感がさわやかである。また自然描写が美しく、石川啄木の
”ふるさとの山に向かいて言うことなし、ふるさとの山は懐かしきかな”
という郷愁を感じさせる。
”花のあと”
老女の昔語りとして、物語が進行する。
以登は、色白で細面ではあるが、目尻の上がった目と大きめの口を気にしている。
美貌ではないが、醜女と言うほどでもなく、
18歳の年相応の華やぎを身にまとう娘である。夕雲流の修練に凝っていて、
男を恐れはしない武家の娘である。
花見からの帰り道(桜の花の描写が美しい)、
粗末な木綿着を身に付けた部屋住みらしい若者に声をかけられる。
それが、江口孫四郎である。先日の試合に参加できなかったので、
一度機会をみてお手合わせをとのことである。孫四郎は、以登に対して
侮ってもおもねってもいない率直な態度で接する。
以登の胸に恋風が吹き込んでしまった。
以登は、孫四郎と立ち合えば負けるとわかっていながら、
あの人と竹刀を交えたいものだと焦がれるように思い、父の配慮で試合がかなう。
試合後、庭を案内しお茶を出して、目が眩むほどの1日が去った。
二度と孫四郎と会うことは無かった。
ひょんなことから孫四郎の縁談相手を知る。
その女は、男癖の悪い堕落した女である。
ある日、妻子のある藤井勘解由との交際が続いたまま、
孫四郎を婿に迎えたと言う事実をつきとめてしまう。しかし、どうしようもない。
2年後、孫四郎は、藤井の罠にはめられて自裁した。
その事実を掴んだ以登は、藤井を呼び出し、懐剣で藤井の胸を一刺し。
二度と花見には行かなかった。
時代物短編集である。次の8編が納めてある。
鬼ごっこ、雪間草、寒い灯、疑惑、旅の誘い、冬の日、悪癖、花のあと。
町人ものと武家ものが多いが、唯一つ”旅の誘い”は、
広重のことを書いた芸術ものである。
この短編集いおいても、各編のフィナーレは、ほのぼのとした暖かい雰囲気を持つ。
読後感がさわやかである。また自然描写が美しく、石川啄木の
”ふるさとの山に向かいて言うことなし、ふるさとの山は懐かしきかな”
という郷愁を感じさせる。
”花のあと”
老女の昔語りとして、物語が進行する。
以登は、色白で細面ではあるが、目尻の上がった目と大きめの口を気にしている。
美貌ではないが、醜女と言うほどでもなく、
18歳の年相応の華やぎを身にまとう娘である。夕雲流の修練に凝っていて、
男を恐れはしない武家の娘である。
花見からの帰り道(桜の花の描写が美しい)、
粗末な木綿着を身に付けた部屋住みらしい若者に声をかけられる。
それが、江口孫四郎である。先日の試合に参加できなかったので、
一度機会をみてお手合わせをとのことである。孫四郎は、以登に対して
侮ってもおもねってもいない率直な態度で接する。
以登の胸に恋風が吹き込んでしまった。
以登は、孫四郎と立ち合えば負けるとわかっていながら、
あの人と竹刀を交えたいものだと焦がれるように思い、父の配慮で試合がかなう。
試合後、庭を案内しお茶を出して、目が眩むほどの1日が去った。
二度と孫四郎と会うことは無かった。
ひょんなことから孫四郎の縁談相手を知る。
その女は、男癖の悪い堕落した女である。
ある日、妻子のある藤井勘解由との交際が続いたまま、
孫四郎を婿に迎えたと言う事実をつきとめてしまう。しかし、どうしようもない。
2年後、孫四郎は、藤井の罠にはめられて自裁した。
その事実を掴んだ以登は、藤井を呼び出し、懐剣で藤井の胸を一刺し。
二度と花見には行かなかった。