彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

『人生を豊かにするお城の楽しみ方』

2021年08月25日 | 書籍紹介

Facebookでお友達になって下さっている“お城カタリスト”の野口紀美さんがお城の本『人生を豊かにするお城の楽しみ方』を出版されました。


お城の本と言っても、難しい専門書でも各城の訪れ方でもなく、お城を楽しむことをきっかけに人生も楽しくする内容でした。

ですので、難しいことは書かれていません、どこまでもお城に興味を持ってもらえることに重点が置かれていると思います。


だからだと思いますが、各節の最後に野口さんの主観があることも研究書ではない柔らかさを感じる一冊でした。


いろんなお城を扱っているのに、表紙が国宝五城ではなく丸岡城という点にも、この本の控えめさが現れている気もします。


『井伊家千年紀』

2017年02月02日 | 書籍紹介
毎月第四日曜日に、滋賀県の湖東湖北地域の読売新聞に折り込まれる地域情報紙の『DADAジャーナル』で僕が連載している「湖東湖北ふることふみ」から井伊家千年の歴史だけをまとめた『井伊家千年紀』が本日、遂に形になりました。


入手方法は、
1.著者である管理人を捕まえる。
2.日曜日からは、繖山の石馬寺に置いています。
3.DADAジャーナル編集部に注文する。

が確定です。
今からもしかしたら方法が増えるかもしれませんのでその時はお知らせします。

また
3の場合、680円切手と送付先のメモを書いた紙を入れて、
〒522-0064
彦根市本町2-2-3
DADAジャーナル編集部
にお送り下さい。

50ページ強の冊子ですが、まえがきを井伊谷龍潭寺のご住職が書いて下さっていますし、表紙は墨絵師・御歌頭さんの『井伊直虎』です。
定価は税込500円ですが、たぶんこの二点だけでも定価以上の価値ある気がします。

『剣と紅』

2013年04月14日 | 書籍紹介
小説『剣と紅』を読みました。

主人公は井伊次郎法師直虎です。
最近では女地頭として戦国史の中でも知られてくる存在になりましたが、われらが彦根市民としては、井伊直政の前の井伊家当主であり、直政を徳川家康に引き合わせるように演出した女性としても忘れてはならない存在です。


井伊直盛の娘として誕生し“香”という名を与えられたのですが、生まれた頃からただならぬ力を持ち、見えざるものが見えたためにと呼ばれて井伊谷の領民の信仰の対象にもなりつつあったのです。
そして従兄弟である亀乃丞(後の直親)を婿に迎えて井伊家の家督を継がせるように決まっていたのです。
しかし直盛の3代前直氏の時に家老として井伊谷に迎えた小野政直はこれをよしとせず、今川義元に訴えて、亀乃丞の父である直満とその弟直義が駿府に呼び出されて殺害されたのでした。
義元は亀乃丞殺害も命じ、香の機転で亀乃丞は井伊谷を脱出。そして政直嫡男政次が香を嫁にしようとするのを遮って出家してしまうのでした。
ここから井伊家の崩壊は始まり、直盛は桶狭間で討ち死に、その間に井伊谷に戻って元服し直親と名乗っていた亀乃丞も義元の息子氏真によって殺害されたのです。
跡継ぎが居なくなった井伊家は香の曽祖父直平(直平―直宗―直盛―香)が、預かり直親の嫡子が成長するまで見守ろうとするのだが、小野政次の策によって毒殺され、その後の井伊家を支えていた新野左馬助と中野直由も戦死してしまうのです。
そのような状況から、香は井伊家の当主の証である次郎を受け継ぎ、直虎という男性の名を使って、井伊次郎法師直虎として井伊家の名跡を継ぐのでした。



井伊家千年紀として調べた、直政以前の井伊家の姿が次郎法師を主人公にして描かれています。
「あぁ、この人調べたなぁ」とか井伊家の関係者として登場する、中野・新野・奥山・貫名などの姓を懐かしく見てしまいました。

直虎は、見えざるものが見えるのにその力が何にも役立てない苦悩する人物としても描かれています。滅びゆく井伊家とそれを何とかして守ろうとした人々、策を弄じて井伊家を乗っ取ろうとした小野親子など、彦根藩主井伊家の根柢の部分を読める小説でした。

『地域と語る 大河ドラマ・時代劇』

2012年11月24日 | 書籍紹介
‎12月1日に発売になりますが、すでに先行で出た場所もあるとおもいます。
地域と語る大河ドラマ・時代劇: 歴史都市彦根からの発信


6月2日に行われた『時代考証学会第二回フォーラムin彦根』の記録です。
『どんつき瓦版』編集部は、第一部のフォーラムのテープ起こしを担当しました。

また第二部では「ミニコミ紙で歩む地域発掘‐『どんつき瓦版』を通じて‐」というタイトルで10ページほど瓦版の紹介を書かさせていただきました。
『どんつき瓦版』について流れや活動内容を、できるだけ簡単に書いたつもりですので機会があればご一読下さい。

『時代考証にみる新江戸意識』が出版されました

2011年06月25日 | 書籍紹介
大石学先生ら四人の先生の共著による『時代考証にみる新江戸意識』が刊行されました。


この本は、ここでも何度か聴講記録として書いていますひこね歴史手習塾のセミナー1とセミナー3を再構成して書籍化されたものです。
管理人も、独自の質疑応答をさせていただいたり、それぞれに大河ドラマの裏側ともいえる時代考証の複雑さや面白さを味わえた講演でもありましたから、このような形になったことがとても嬉しく思います。

他の手習塾講演がこのような形になるかどうかは不明ですが、彦根ではこんな話が聞けるということも知って下さるとますます歴史都市彦根の魅力がアップしますよね。


彦根藩が舞台の小説『萩大名』

2009年06月25日 | 書籍紹介
彦根藩の国元でお抱えとなっていた能役者・喜多文十郎と息子の七之進。
井伊直弼が大老に就任にし国許に戻ってこない事から江戸の上屋敷に招かれ、上屋敷で直弼と対面する…

そんな直弼から発せられる声が変わっている事に気が付いた文十郎。直弼の政治に織田信長を重ねさせた長野主膳。己が直弼を大老という役者に仕立て上げた主膳と、そんな主膳を冷たい目で見る井伊家の家臣たち。
そして立ち合い能を各策し、上屋敷内の空気を引き締めようとする主膳と直弼。
様々な思惑と芸術が交差してゆきます。

「神の宿る声」をテーマに能役者から観た大老井伊直弼が綴られています。
たか女を直弼や主膳の愛人としない試みや、能という文化面から直弼を語る形。そして史実を曲げながらも演出した喜多親子の悲劇なども花を添えて、まさしく舞台の一幕を見るようでした。
大老期間中の直弼のみを語るのも直弼小説としては新鮮でしたね~

唯一の惜しさは、時々登場する僧(たぶん若竹の弟?)のインパクトの割には上手く生きていなかった事、でもそれ以外は面白かったです。

タイトルの『萩大老』も狂言の『萩大名』からアレンジされたのだと思いますが、おとぼけ大名とそれを陰からサポートしようとして失敗した太郎冠者の関係が、直弼と主膳にも重なって納得のタイトルでした。

『滋賀の繊維力』

2009年06月06日 | 書籍紹介
彦根で繊維と言えは、江戸時代に高宮宿に集積されていた麻織物の“近江上布(高宮上布)”がある程度知られていて「近江商人によって全国に広がった近江の繊維は上布だ」という認識を持っている人もいます。

しかし、近江には他にも風土を生かした繊維産業が存在するのです。

それを教えてくれるのが今回紹介します『近江の繊維力』です。
これは滋賀県立大学の森下研究室の学生さんが調査してまとめられたパンフレットで、既に2年分の成果を掲載されています。

・長濱の絹(浜縮緬)
・湖東の麻(近江上布)
・高島の綿(綿クレープ)

という歴史も伝統もあり、そして技術力も高い滋賀県内3地域の繊維の説明・歴史・こだわり・現代の活かされ方が写真やイラストも交えて読み易く掲載されています。
生活必需分なのに、何気なく使っている繊維がもしかしたら滋賀県で作られた物かも知れない…

そんな風に感じさせてくれて、繊維をますます近い存在にさせてくれますよ。


このパンフレットは2年分で、2009年に出された物は青い冊子の方になります。
2009年分には研究室で作成されたDVDも付いていて、映像としても滋賀の繊維を知れる内容になっています。
滋賀県立大学の森下研究室に連絡すると譲っていただけますよ(ただし数に限りがありますので、興味がある方はお早めに)
連絡先は、0749‐28‐8425 です。

滋賀県に興味がある方にはお勧めの内容です。

情報求む!“彦根書林”

2009年05月08日 | 書籍紹介
『どんつき瓦版』編集部が最近気になっている事に、出版に関する動向があります。

きっかけは、長浜の曳山の番組瓦版を見つけた事。
ここに「版本 長濱 鍛冶屋甚八郎」と記されていたのです。
この鍛冶屋という存在も謎を深めますが、同時に当時の彦根城下での出版事情がいかなるものであったのかがを知りたくなりました。

その結果、“彦根書林”という存在が浮かび上がって来たのです。
書林は、届け出を出して許可される書店の事で、製本から販売まで行っていたのだとか…
江戸時代後期には全国にあったようですが、どのような人々がどの辺りの時代からどのようにいつ事まで行った事なのか見当が付きません。

もし情報をお持ちの方はお教えいただくと嬉しいです。

写真は明治五年の『日本外史訓蒙』に書かれていた彦根書林の明記。

『新修 彦根市史』第三巻

2009年03月13日 | 書籍紹介
2009年3月10日、『新修 彦根市史』の八冊目の配本となる第三巻(通史編 近代)が発売されました。

今回の巻は井伊直弼が彦根藩主に就任した嘉永3年(1850)から、太平洋戦争が終わる昭和20年(1945)までの彦根の歴史が綴られています。

彦根では井伊直弼が暗殺される桜田門外の変までの話はよく話題に上っても、その後にどのような立場に彦根藩がいて、新政府とどうやって関わっていったのかを語られる事はほとんどありません。


そして、明治維新の功労者で明治初期から戦前まで居た薩長系の元老職の方々が作った「井伊直弼は吉田松陰を殺したし、違勅開国したから悪人」という評価を受けて彦根市民が「みんなそう言うから直弼は悪人なんだ」と勝手に納得している節があります。
それが現在の彦根市民や彦根の子どもたちが井伊直弼の本当の姿を知らない結果にもなっています。
せっかくの歴史があるのに勿体ないです。

このブログでも応援している『井伊直弼と開国150年祭』ですが、その直弼像は「チャカポン」と開国しか浮かんでこないのも地元市民のレベルです。


では、直弼は何をしたの?
何故暗殺されなければいけなかったの?
直弼が死んだ後の彦根藩って?
そして彦根人は明治をどう生きたの?
彦根の地場産業の誕生は?
彦根の教育は?
戦争と言う暗い時代を彦根市民はどうやって生き抜いたの?

などなど、150年祭開催期間だからこそふさわしい彦根の本当の意味で激動150年の前半分を教えてくれています。
彦根市民が今まで殆ど見てこなかった時代だからこそ、この機会とイベント開催中に見て欲しいですね。
昔の彦根市民は直弼や井伊家を検証する為に今とは比べ物にならない位に本気で動いている様子もうかがえます。