或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

LD回顧(9)[大英博物館]

2006-02-13 06:47:10 | 800 観光
初めてのロンドン観光ということで、かの有名な大英博物館も一応訪問。ここは一言で言えば、かつての大英帝国の戦利品の保管場所。戦争がうまくて植民地政策もしっかりしてたから、いろんなものを略奪してます。この博物館に行ってよく分かりました。

最初に見たのはロゼッタ・ストーン。これは学校の教科書に必ず出てますね。正直なところ見たかったのはこれだけ。話のネタとして。でも縦114cm、横72cm、厚さ28cm重量762kgの花崗閃緑岩の板で、想像したより大きかったなあ。ある意味感激しました。

1798年にフランス軍総司令官のナポレオンがエジプト侵略を開始。占領後、ナポレオンはイギリス軍に対抗するため地中海沿いの要塞の改修工事を命令。ナイル河口のロゼッタ村にあったカイト・ベイ要塞を改修する過程で、1799年に黒い玄武岩の石碑を発見。これがエジプト学史上最大と言われる発見の経緯ということです。

この石碑には3種類の文字が書かれていて、最上段が紀元前3000年頃にできた象形文字。真ん中が民衆文字。そして最下段がギリシャ文字なんだとか。発掘時にギリシャ文字はすぐ読めたけど、他の2つの文字の解読が難航。結局20年以上経ってやっとそれに成功。碑文の内容は、紀元前196年頃エジプトを征服していたヘレニズム国家プトレマイオス王朝の法令だった。

それで何故これが大英博物館にあるのかがポイント。1801年頃英国がカイロに進出した際、フランスに圧力をかけて略奪したんだとか。古代ギリシャのアクロポリスの丘にあったパルテノン神殿の彫刻や、ツタン・カーメン等の有名な展示品をみましたが、それらも同じ。結局残ったのは強い大英帝国の印象だけ。これが今の英国人気質につながってるんでしょうね。

今思うと、美術館は何度でも行きたいけど、博物館は1回行けば十分でした。(笑)

重力ピエロ

2006-02-11 06:08:48 | 010 書籍
今日は「ラッシュライフ」(2002年)に続いて、伊坂幸太郎のミステリー小説「重力ピエロ」(2003年)の紹介。図書館で予約していたら、意外に早く貸し出し可のメールが着てました。この作品は第129回直木賞(2003年)の候補作品。「ラッシュライフ」に魅了されたけど、飛び過ぎの「オーデュボンの祈り」でやや引いて、今度はどうだろうと読んでみるとなかなか面白かった。

テンポの良さと共に、ちょっと鼻につきながらも引き込まれるのが彼の“うんちく”。特に歴史上の人物の逸話や言葉からの引用。そこに彼なりの哲学が感じられます。例えばこの本で言えば、ガンジー、盲目のジャズサックス奏者ローランド・カーク、芥川竜之介のトロッコ、井伏鱒二の山椒魚、エッシャー、シャガール等々。でも若いのにちょっと悟りすぎ。年を取ったらうるさそう。(笑)

その中で印象に残ったのが、敬愛するベートーヴェンの同名のヴァイオリンソナタを聴いて書いたといわれるトルストイの小説「クロイツェル・ソナタ」(1891年)の話。引用はされてなかったけど、この本には「情欲をいだいて女を見る者は、すでにその女と姦淫したにひとしいという福音書の言葉は、他人の妻に対してのみ向けられたものではなく、何よりもまさに、自分の妻に向けられたものにほかならない」なんてのもあって。トルストイの禁欲主義は超強烈。よほどトラウマがあるんでしょうね。

トラウマで思い出したのが高校1年の音楽の授業。先生がレコードをかけて「この曲が分かる奴はいるか?」と。誰も手を挙げない。第5番「春」か第9番「クロイツェル」かどっちかだったよなあ、でも分からない、えーい言っちゃえと答えたのが「クロイツェル」、でも正解は「春」。当時片想いをしていた同級生がいたので、その子にいい所を見せたいと無理をしたんですね。ハズれて恥ずかしかったなあ。結局彼女とは何もありませんでした。まあこの話とは関係ないと思うけど。(笑)

上の写真は持っているCDのジャケット。ヴァイオリンがシェリング、ピアノがヘブラー。豪華な組合せ。でも昔のことを思い出しそうなので普段このアルバムはほとんど聴いてないんですよ。(笑)

重力ピエロ重力ピエロ

トルストイ クロイツェル・ソナタ/悪魔トルストイ クロイツェル・ソナタ/悪魔

CD ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ

レンタルCD

2006-02-09 06:21:23 | 220 POPS
ここ数年レンタルCDをコピーする枚数が増えてます。まあ節約のためというのも大きいけど、TSUTAYA以外に新たに大型レンタル屋を2件発掘したのも大きい。それで最近の基本的な考え方は、マイナーなミュージシャンやレア物は即Amazonで買う、一方でメジャーなアーティストや名盤は、例え聴きたくてもレンタル屋で見つけるまで待つって感じ。

例えばちょっと前に紹介したマイルス・デイビスの「Live at the Fillmore East」の2枚組み。これなんかもう5、6年我慢してたんです。それでようやくこの間、新規開店したレンタル屋で発見して。嬉しかったなあ。その時ちょうど、期間限定とメール会員のダブル割引をやってて、レンタル料金はたったの50円。ぶっ飛びました。小さな節約大きな幸せ。(笑)

それで今日紹介するのは、あえて言う程でもないけどCDコピーの作り方。“B’s Recorder”を使ってコピーして、その後で曲目とかの情報やジャケットの写真をWEBから拾ってレイアウトして、市販のCDラベルに専用ソフトで印刷。

上の写真が最終形のサンプル。これ家族に受けがいいんです。キレイだって。空CDも空ケースも50枚単位で安く買ってる。レンタル料が50円なんかだと全部で100円ちょっと。上のマイルスの2枚組なんて正規に買うと2980円。これはねえ、レンタルしちゃいます。(笑)

だけどいろいろと失敗もしてます。一番多いのが廃盤になるケース。そんな中で買っておいて良かったとつくづく思っているレア物の1枚がイヴァン・リンスの「Love Dance」(1989年)。全編英語の珍しいアルバム。米国進出の戦略だったとか。”Velas”のような有名曲も入っているし、とにかくラリー・ウィリアムスのアレンジとシンセが渋い。このアルバムからです。彼を聞き始めまたのは。

LOVE DANCELOVE DANCE

手のうちはいつもフルハウス

2006-02-07 06:46:25 | 010 書籍
今日はジャズ評論家でエッセイスト兼作家の久保田二郎の著書紹介第3弾で「手のうちはいつもフルハウス」(1979年)。1970年代に隆盛を極めたミニコミ誌の草分け的存在で、矢崎泰久が編集した伝説の雑誌「話の特集」に、1977年と78年に連載されたエッセイ16編をまとめたもの。

久しぶりに読んでみて面白かったのが“フォン・カラヤンの逸物”の話。これ下ネタなのでさらりと紹介します。カラヤンはよほど自信があったみたい。コンサートの後は暑いから、楽屋とかではショートパンツ姿。女性記者がインタビューに訪問してきたりしてもそのまま。だからパンツの隙間からちらちら見えちゃう。女性記者は目のやり場に困ってうわの空。(笑)

その女性の慌てぶりが目に浮かびます。楽しそう。カラヤンもおちゃめ。たぶんわざとだから。でも彼だからいいけど、これがギラギラした中年のおっさんなら、単なるしょうもないセクハラ。(笑)

それで本の題名で思い出したのがトランプ。最近やってませんねえ。昔は家族でオートキャンプに行ってテントの中でよく。一番の思い出と言えば、ラスベガスのホテルでのブラックジャック。安い5ドルテーブルで徹夜。メンバーに米国やイタリアのキレイ系女性がいて。なんか映画の主人公になった気分。すぐ後ろでバンド演奏もあったりして夢のような夜でした。上の写真はその時に泊まったホテル「アラジン」。1998年に破綻して2000年には新たな巨大リゾートとして再建されたとか。

“フルハウス”つながりで、ジャズギターの定番中の定番、ウェス・モンゴメリーの「フルハウス(Full House)」(1952年)を紹介しておきます。米国の西海岸でのライブ。ウェスだけでなく、ジョニー・グリフィンのくすんだテナーサックスやウィントン・ケリーの粋なピアノが絶品。アルバム全体の完成度としてはこれが彼のベスト。とにかくグルーブ感が最高です。

手のうちはいつもフルハウス手のうちはいつもフルハウス

Full HouseFull House

佐伯祐三(4)

2006-02-06 06:42:26 | 300 絵画
前回、独自の画風を築いた第1次渡欧時の1925年の作品を紹介しました。ところが1926年には一時帰国。理由は彼の持病である結核を心配する母が強く要請したとか。佐伯は後ろ髪を引かれる想いで3月に帰国。若手の新進画家として有名になっており、画壇も歓迎したようです。盟友の里見勝蔵らと5人で「1930年協会」を結成。下落合のアトリエを中心に活動。

この頃の被写体の多くは日本の身近な風景。下の写真の上側はその中の2枚で「下落合風景」。悪くはないんだけど、やはりねえ。どうも画題と画風がイマイチしっくりこなくて。

その中でとりわけ目立つのが「滞船」の連作。下の写真の下側はその中の2枚。彼は大阪出身で、帰郷した時に描いたもの。安治川や尻無川へ足繁く出かけたそうです。2枚の色合いの対比がおもしろい。そう言えば船って家屋のように画題として日本っぽくないのがいいのかも。

それでこの時期の作品の代表作でありお気に入りが上の写真の「肥後橋風景」(1927年)。昨年の12月に和歌山県立近代美術館で開催された彼の特別展で実物を見たときには感動しました。インパクトあったなあ。特に空と川のブルーの色合いとタッチが素晴らしい。ちょうど和歌山に行く途中、肥後橋周辺を通ったばかりだったので、なんか妙な親近感を覚えました。

ただ日本にいても彼のパリへの想いはつのるばかりで、結局精力的に絵を書き、完成した絵を売り、資金を作り、翌年の1927年の夏に再び渡欧します。もう二度と日本の地を踏むことはないことをうすうす悟っていたようでもあります。

とにかくパリあっての佐伯だということを、この下落合時代はハッキリと認識させてくれます。

下落合風景(1926年)下落合風景(1926年)
滞船(1926年)滞船(1926年)

カクテルピアノ

2006-02-03 06:25:24 | 200 ジャズ
カクテルピアノというジャンルがあります。まあ平たく言えば高級ホテルのラウンジでやってるやつ。芸術性がどうのこうのと難いこと言わずに、とにかく聴いて楽しいというピアノ。昔はアート・テイタム、ジョージ・シアリング。ちょっと前ならオスカー・ピーターソンやケニー・ドリュー。最近じゃヨーロッパトリオやエディ・ヒギンズ。日本で言えば亡き世良譲が有名かな。

最近やたらかつての名手達がこれをやってる。トミー・フラナガン、ジュニア・マンス。ちょっと聴いてみたけど、なんかお年寄りの同窓会状態。日本のオールドファン目当てみえみえの企画。と思っていたら、なんとモードジャズ全盛期のかつての若手達も。スタンリー・カウエル、なんとお気に入りのジョージ・ケイブルスまで。おいおい。それはないよと哀しくなっちゃった。

そんな中でなかなか洒落た演奏を発見。その名は「New York Trio」。名前が商売気ムンムンで引いてたけど、いざ聴いてみると、これが洗練されたクールなカクテルピアノ。調べてみると、リーダーでピアニストのビル・チャ-ラップ(Bill Charlap)はアルトサックスのフィル・ウッズのグループにも参加。1966年生まれだから今年40歳。なかなかいい味出してます。

オススメのアルバムは、「過ぎし夏の想い出(The Things We Did Last Summer)」(2002年)と「星へのきざはし(Stairway to the stars)」(2005年)。前者は1曲目のピアノソロ“いそしぎ”が素晴らしい。ただジャケットがねえ。なんか大昔のパーシー・フェイスかどこかのムード音楽みたい。アルバムの出来もそうだけどジャケットも上の写真の後者の方が断然いい。試聴できないのが残念。でもNYの星空のもとでこんなシチュエーション。いいですね。想像するだけで胸がキュンと。

でもなんですね。この辺のアルバムはこれからのバレンタインシーズンにピッタリって感じ。さりげなく会話のバックとかに。やはり“ちょい悪”の不良中年の場合、今風のカクテルピアノぐらい知っとかなきゃ女性はくどけませんから。(笑)

過ぎし夏の想い出過ぎし夏の想い出

星へのきざはし

Agatha

2006-02-01 06:30:16 | 350 映画
今日はミステリー映画「Agatha(邦題は”アガサ 愛の失踪事件”)」(1979年)の紹介。1926年に起きた推理小説家アガサ・クリスティの実際の失踪を題材にキャサリン・タイナンが書いた小説が原作。かの有名な“アクロイド殺人事件”の発表をした前後の彼女と夫、そして夫の愛人との三角関係、嫉妬、報復…。主演はダスティン・ホフマンとヴァネッサ・レッドグレイヴ。

封切り時に見ました。きっかけは、音楽を私が大好きな作曲家兼アレンジャーの米人ジョニー・マンデルが担当していたから。映画「いそしぎ」のテーマ、“The shadow of your smile”の作曲者といえば分かりやすいですね。1925年生まれだから今年81歳。若い頃にトロンボーン奏者としてスタートし、その後多くの映画やTVの音楽を担当。写真はサントラのLPのジャケット。

彼の音楽の特徴は、作曲で言えば愁いを含んだメロディー、アレンジで言えばクローズドヴォイシングを多用したハーモニー。オーケストレーションでは、特にフルートとかクラリネットといった木管とハープの使い方に特徴があります。結果として出てくる音楽はとてもしなやかで幻想的。映画そのものはややミスキャストって感じでイマイチだったけど、音楽はすこぶる良かった。

それで大好きなのが、この映画のテーマ曲”Close enough for love”。多くのアーティストが録音してるけど一番のお気に入りは女性ボーカリスト、ダイアン・リーブス(Dianne Reeves)の「That Day...」(1997年)。実は最近の愛聴盤。私の中で彼女のベストアルバム。ねっとりと絡みつくようヴォーカルがたまらない。シンプルなジャズに徹した控えめなアレンジと、ピアノのマルグリュー・ミラー(Mulgrew Miller)のセンスの良いサポートが光ってます。録音も飛び切り素晴らしい。オススメです。

今回新しいレンタル屋でたまたまこのビデオを見つけたので数十年ぶりに観たけど、エンドロールでパティ・ブルックスのヴォーカルが流れて、これはこれでいい感じでした。でももしリメイクされるなら是非このダイアン・リーブスを流して欲しいなあ。

文庫本 アガサ 愛の失踪事件文庫本 アガサ 愛の失踪事件

ビデオ アガサ 愛の失踪事件ビデオ アガサ 愛の失踪事件

That Day...That Day...